16日
正直、カウントダウンはもう始まっているような気がした。
認めたくなんかないに決まっているし、僕が認めてしまっては終わりだとは思っているのだけれど、わかっているのだけれど、そろそろ覚悟を本格的に決めないといけないかと思った。
残り時間の長くないことを、否定することが苦しくなってきているのが、苦しくてならなかった。
それまで元気でいられて、死ぬときは一瞬で死ねる。それなら、同じときに死ぬんだとしても、事故の方がまだいい。
いつか彼女はそんな感じのことを言っていた。
準備もないままに連れて行かれるよりも、先に教えてくれた方がいいって、僕はそう思っている。
恐怖は覚悟だ。不必要だとは思わない。
けれど今の彼女の姿を見ていて、僕はまだ、そのようなことが言えるだろうか。
苦しみを感じて、覚悟を持って死ねなどと、酷なことが言えるだろうか。
実際に彼女はこれほどまでに苦しんでいるのに、僕は……
僕は何を選ぶことが正解なのだろう。
僕の行動の中に、正解はあるのだろうか。
正解ってなんだよ。
どんな結末がハッピーエンドかもわからないもので、そこへ向かう道筋において、正解だなんてものを知れるはずがなかった。
ハッピーエンドがないのに、正解なんて、あるはずがなかった……。
それなら僕はどこを目指したらいい。
それなら僕は、何を求めたらいい。
「光のない世界で、僕はどう生きていったらいいのだろう」
闇には慣れているけれど、どこにも光のない闇なんて、どんな深い闇も比べものにならないほどの暗闇だ。
逃げる道さえ、ないのだから。
僕はどうしたらいいんだろう。
考えていなかった。
彼女のいない世界で、僕は生きることが可能なのだろうか?




