第3話 友達
クラスメイトの女の子はじっと私を見ている。
「えっと…、何か用ですか?」
私に何か用があるのだと思い訊ねたが、彼女は無言のまま視線を逸らさない。
しばらくの沈黙のあと、彼女は言った。
「…私を見て、何か思い出さない?」
そう言われて、今度は私が彼女をじっと見る。
アンバーの色をした瞳と明るい栗色の長い髪。その髪を、高い位置でサイドテールし、毛先はくるくると巻いてある。
まるいの大きな目は、ぱっちりと開き、私を映している。
「…もしかして、レナちゃん?」
そう言うと、彼女はパッと目を輝かせ、私に抱きついた。
「そうだよ!レナだよ!桜、気づくの遅いよ!!」
「ご…、ごめん…。レナちゃん…、苦しい…。」
「あ、ごめんごめん。嬉しくってつい」
レナちゃんは私を放し、前の席に腰かけ、こちらに体を向けた。
「いやー、びっくりしたよ!転校生って言うから誰かと思ったら桜だし!」
「黙ってないで、言ってくれれば良かったのに…」
「レナが言わなくても気づいて欲しかったんだよ」
「それにしても、私ってよくわかったね。最後に会ったの確か12年くらい前じゃない?」
そう、私は5歳まであの町に住んでいた。
その時よく一緒に遊んでいたのがレナちゃんだ。
レナちゃんは祖父がイギリス人のクウォーターで小さいときはおしとやかな格好をしており、お嬢様のような印象を受けていた。
なので私は少しギャルっぽくなったレナちゃんを見ても分からなかったのだ。
「わかるよ!だって桜は変わってないもん!顔もそのまま!」
「う…、相変わらず直球だなぁ…」
私は童顔なので小さい頃とそんなに変化がない。いつでも幼く見られるので、実は少し気にしている。
こんなやり取りを繰り返していると廊下から小さな声が聞こえた。
「…レナちゃーん」
「あ、葵!」
(…葵?)
「転校生、桜だったよ!」
「…えっ!?」
レナちゃんは手招きしながら言った。
「あ、本当だ!懐かしい…!」
そう言いって微笑んだ彼女は教室に入り、私とレナちゃんのそばにかけ寄ってきた。
「ほら、桜、葵だよ!」
「うん、久しぶり!」
葵ちゃんもあの町にいた時からの友達だ。レナちゃんと私と3人でよく遊んでいた。
長かった髪は肩に着く長さでカットされていたが、人見知りで物静かな性格は変わっておらず、すぐに分かった。
「えー、なんでレナは分かんなかったのー?」
「…レナちゃんはイメチェンしたからでしょ」
葵ちゃんは苦笑いを浮かべながら、なだめている。
「ねぇ、桜ももう帰るでしょ?一緒に帰ろっ!!」
「うん!」
その後、私達は駅前のファミレスでお茶をしながら、話に花を咲かせたのだった。