表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
狐の花嫁  作者: 雪
2/3

第2話 新学期



 ぐるりと囲むように聳え立つ山々。




 その麓には小さな町がある。





 

 古風な雰囲気を残す建物とその町並み。



 

 町のあちこちに紫陽花や金木犀などがあり、人々に季節ごとの違った景観を楽しませてくれる。


 



 窓から見える庭に目をやると、桜が満開に咲き誇り、散ってゆくのが見えた。



 




(懐かしいな…)







「…桜ちゃーん、楓くーん」





窓からぼんやりと外を眺めていると、私を呼ぶ声が聞こえた。




「はーい」





私は急いで居間へ向かう。


そこには既に、私の祖父と祖母が待ってた。





「遅いぞ、何してたんだ」



「大して待ってないでしょう?そのくらいでイライラしないの」






少しイラついていた祖父を、祖母がなだめる。



小さい時は怖かったけれど、怒る理由がわかってからはそんなに怖くない。






「おじいちゃん、ごめん」





そういうと気が済んだのか、朝食に目を向け待っている。





「じゃあ、食べましょうかね」




祖母はにこやかに言い、みんなで手を合わせ…





「「「いただきます!」」」




朝食を食べ始めた。







「今日から二人とも学校だねぇ、迷わないように気を付けてるんだよ?」




「大丈夫だよ、ばあちゃん。入試で1回行ってるし、道も覚えてるから」




「通学ルートも電車で1本、最寄り駅からも道沿いに行けば着くから!」





「でも、桜ちゃんは方向音痴だからねぇ。

それに、3年生で編入なんて可哀想なことをさせてしまったから…」





 

 …そう、私と弟はこの春から新しい高校に通う。





半年前、両親が交通事故により亡くなってしまい、祖父母が引き取ってくれたことにより、この狐花(こはな)町にきた。





自分たちだけで生活することもできたが、一緒に暮らしたいという祖父母の願いを断ることは出来なかった。





しかし、弟が中学を卒業するまで二人で暮らし、近くに頼れる大人がいるというのは心強いことが分かったため、一緒に暮らすことにして良かったと思っている。






 

「あ、姉ちゃん、そろそろ出ないと」




「後から入学式には行くからねぇ」






「ありがと!じゃあ、行ってくんね」




「行ってきます!」





私達は新しい高校生活に胸を踊らせながら、学校へ向かった。





******





(わぁ…!)




 新しい学校の校門を抜けると、昇降口までの数十メートルの道の脇には桜が咲き誇っている。



 そよそよと吹く風が花びらを散らしてゆき、花びら舞う様はまさに春の雪だ。





「…ねーちゃん、桜に見惚れてるのはいいんだけど、新入生はそのまま体育館に行くみたいだから、俺についてきても行き先違うよ?」




「あ、そうだった…!私は職員室に行かないと!」




「…俺、このまま入学式行って、終わったら先に帰るけど、道迷わないでね」




「さすがにもう分かるよ!」




入学、編入の手続きで何回か来ているのだ。迷うわけない。



そんなやり取りをしつつ、私は弟と別れ、職員室に向かった。




******




「失礼します。」



「お、やっと来たな。遅刻ギリギリだぞ?それじゃあ、教室行くか。」



職員室に行くと、すぐさま教室に行くこととなった。どうやら、少し迷ってしまっていたらしい。




(おかしいなぁ…。)




「じゃあ、先生が先に教室に入って軽く説明するから、呼んだら入ってきてくれ。」

 


教室の前まで来ると、そう説明されたので、扉の近くで待つ。

 



少し待つと呼ばれたので、教室に入った。




 ガラガラッ

 



「それじゃあ、自己紹介をしてくれ。」




「はい。初めまして、山乃桜です!事情があり、祖父母の家へ引っ越してきました。1年という短い時間ですが、よろしくお願いします!」




『よろしくー!』



『よろしくね!』




クラスメイトは口々に挨拶を返してくれた。

 


しかし、その反面…

 




『え、山乃って『あの』家の?』

 


『あそこの家ってうちらと同い年の子いたっけ?』





 (…?)




なんだか気になる会話も聞こえる。

 

 

私はその会話が気になったが、転校初日、聞けるような人はいない。


そのまま先生に促され、指定された窓際の後ろの席に座った。





(あ…、窓から今朝の桜が見える。綺麗だなぁ…。)





そんなことを考えつつ、その日のHRを終え、帰ろうかと思っていると…





「…ちょっといい?」





私は1人の女の子に声をかけられたのだった…。







評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ