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狐の花嫁  作者: 雪
1/3

第1話 子狐

初投稿です!


スローペース投稿ですが、お付き合いいただけると幸いです。



 雪がひらひらと空に舞う季節。


 その日、私たちは高校の入試と編入試験の帰り道、山の中にある神社に向かっていた。


 山の麓からの一本道。

 道沿いに歩いていけば、30分くらいで着く。


 はずだった…。



「なぁ、姉ちゃん」


「ん?」


「まだ着かねえの?もう1時間くらい歩いてんけど」


「…だよね。おかしいなぁ、たしかこの道だと思ったんだけど…」



 ここは私が子どもの頃、何度も遊びに来ていた場所だ。いつの頃からか行くことを禁止され、そのまま来ることはなかった。やはり、記憶が曖昧になっていたのか。



「ていうか、試験終わった後に神頼みって意味あんの?こういうのって普通、やる前に行くだろ…」


「だって、神社があるって思い出したのさっきなんだもん。お祈りしておけば、気休めにもなるでしょ?」


「だからってなぁ…」




……きゅ~ん




「「…?」」



 私と弟が言い合いになる直前、かすかに何かの鳴き声が聞こえた。



「…今、なんか聞こえたよね?」


「…うん。」




…きゅ~ん




「ほら、また!あっちから聞こえるよ、行ってみよう!」


「えっ、ちょっ、姉ちゃんっ!?」



私は鳴き声のする方へ駆け出した。




…きゅ~ん




(どこからだろう?)



 私は鳴き声を頼りにその声の主を探した。どんな生き物か分からないが、その声は弱々しい。怪我をしているのではないか、他の生き物にやられているのではないか、色々なことを考えていた。




きゅ~ん




 なんにせよ、このまま放っては置けない。鳴き声は少しずつ近くなってきている。その声のほうへ、道路脇の坂を少し登り、草を掻き分けた。




「きゅーん」




 (…いた!)




 鳴き声の主は小さな狐だった。猟師が仕掛けた罠にかかっており、足をケガしたようだ。




「きゅ……ヴー」




 子狐は私に気がつくと、威嚇した。痛みがあるからだろうか。力のない声ながら、敵意をあらわにしていた。




「大丈夫だよ」




 私は子狐を落ち着かせるため、少し離れたところからゆったりとした声で話しかけた。



「あなたの傷の手当をしたいだけなの、終わったらすぐに帰るから…」



 そう言うと、私は昼食の残りのおにぎりを一口サイズ手にとり、子狐に差し出した。



「ヴー……」



 威嚇しつつも、子狐はこちらに頭を向けてきた。しばらくおにぎりのにおいを嗅ぎ…



 パクっ



 子狐はおにぎりを食べた。



 すると…



「キャン、キャン!」



 もっとくれ、と言わんばかりに子狐は鳴き出した。弱々しかったのは、罠のせいでごはんが食べられなかったからのようだ。



「ちょ、ちょっと待って、ごはんはあげるから先に罠外そう?」


「キャン!」



 私の言葉が通じたのだろうか。子狐は返事をするように大きな鳴き声をひとつ上げ、大人しくなった。しっぽを振りながらじっとこちらを見ている。



 (か…可愛い…!)



 私はすぐに罠を外し、薄ピンク色のハンカチで傷口を保護して、残りのおにぎりを与えた。子狐はそれを必死に食べている。

 一体、いつから罠にかかっていたのだろう…。



「…姉ちゃん!!」



 考えにふけっていると、弟が呼ぶ声が聞こえた。



「こんなとこにいたのかよ、めっちゃ探したんだけど…」


「あ…、ごめん、置いてきてたことすっかり忘れてた」


「ひでぇ…」



 弟は私の横にいる子狐に目を向けた。



「え、狐?」


「うん、この子が罠にかかってた」



 子狐はおにぎりを食べ終え、私をじっと見ていた。



「お腹いっぱいになった?」


「キャン!」



 子狐は元気に返事をした。もう大丈夫だろう。



「もう罠にかからないようにね、気をつけて帰るんだよ?」


「キャン!」



 そういうと、子狐はチラチラとこちらを振り返りつつ、最後は元気に走って山の中へ帰っていった。



「じゃあ、俺らも帰ろっか」


「え、神社は!?」


「もうすぐ日が暮れるだろ、暗い山道は危険だよ」


 

 そう言われ、辺りを見回すといつの間に夕陽が向かいの山に差し掛かっていた。


 (しょうがないか…)


 それに1度、道を確認してから来たほうが良さそうだ。



「そうだね、帰ろう」



私達は元いた道へ戻り、帰宅をしたのだった。
























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