第95話 タロウ、一足先にエドヌへ向かう
よろしくお願いします!
「う…ん?」
何だろうか?めちゃくちゃ体が重い気がする…。
「ふぁ~っあ!ふぅ…。なんか…よく眠った気がするな」
『主、目を覚まされましたか?』
「あれ?緋鬼王…どうしてここに?」
『えぇ、四天王とかいう輩を倒しまして、敵の数も減りましたので主の元へと。』
あぁ、そういえば四天王の1人と戦ったんだっけ。緋鬼王の所にも現れたという事は4ヶ所それぞれの所に現れたのかな?
「あ、そういえば紅緋が消えた感じがしたんだった!西はどうなってる!?」
『紅緋はちゃんと仕事をしました。安心してくだされ。それよりも…』
そうか、紅緋もやったか。緋鬼王が下を指差してるな…なんだ?…って、カルミナか…。この重さはカルミナだったのか。それは…なんか意外でも何でもないな。
「カルミナ、カルミナ」
「ん…タロウ?タロウ…っ!?タロウ、大丈夫?どこも痛くない!
?」
「あぁ、少し眠ってただけだよ」
「少しじゃないわの!1日よ1日!」
「え?1日?俺、そんなに寝てたのか!?」
『我が到着したのが夜です。その時には既に眠っておられましたが?』
「1日…か。血をだいぶ流したからかな?多分起きたけど起きれなくて寝てたんだと思う…。そうか、看病ありがとうカルミナ」
「えぇ。今は北と同じで敵の数も減ってきているわ。もう少ししたらある程度の数は残してエドヌに戻る事になると思うわ」
「分かった。…羽柴秀政はどうしてる?」
「拘束しているわ。このままとりあえずは連れて帰るみたいよ」
「後は、ベリー先生達の戦場がどうなってるかだな」
「ま、ベリー先生が居るんですもの大丈夫よ。タロウ、まだキツいなら休んでて良いわよ」
「そうか、なら横になってるよ」
「私は外に行ってるけど何かあったらすぐに呼ぶのよ」
「はいよ!」
そうか…。晴海さんの所は分からないけど、四天王を退けられたか。敵の戦力も削れたし上々かな。
「紅緋」
『かっかっかっー!タロウ、菓子を寄越すがいい…ひぃ!緋鬼王…様…』
『紅緋…』
『ち、違う!妾はちゃんと倒したゆえに褒美をじゃ!』
『引き分け、共倒れ…ではないか。褒美は勝った者が与えられる物だ』
『くぅ…妾は頑張った!タロウお菓子じゃ!菓子を!妾に!』
「緋鬼王、一応四天王の1人は倒しているから褒美くらいは構わないよ。緋鬼王も欲しい物があったら言ってくれ。えーっと…はい、紅緋」
『くふっ!これの為に頑張ったからのー』
早速モグモグと食べ始めた。それはいいけど…こぼれてるからな?
『紅緋、落ち着いて食べろ。誰も取らぬ。…では、主。アトラス殿との再戦を所望します』
あー、そういえば腕相撲で負けてたな。でも、それくらいならアトラスが良いと言うだけだから楽かな。
「たしか、アトラスは外に居た筈だから…先に台を作っておくか。よいしょっと…」
『いえ、主。再戦出来るなら今でなくても大丈夫です。今は休息なさってください』
流石は緋鬼王…。気配りが出来るな。それに比べて…
『な、なんじゃ?返せと言われても渡さぬからの!』
「取らないから大丈夫だって」
その後、お菓子に満足した紅緋は俺の隣で横になった。緋鬼王も近くに座ってじっとしている。鬼の居ぬ間に…じゃなく、鬼が居る間になってしまっているが、味方だから普通に休める。しいて言わせて貰うなら、こちらに寝返りをする紅緋の角が当たる事くらいですかね。
それから更に1日。エドヌに向けて帰還する事になった。
◇◇◇
「進め!このまま織田本陣まで突き進めぇぇぇぇ!!」
「「「おぉ~!!」」」
最初の援軍が来てから次々に援軍も集まって、今や徳川勢の人数差が圧倒的になっており勢いが出ていた。
「よし、このまま押しきって打ち倒す!」
本日中には敵の降伏も出るだろうという所まで追い詰めていた。後は、織田家当主である織田史郭と魔族を倒すだけとなり、冒険者は我先にと魔族を倒しに走り出していた。
「父上!大変でござる!」
「苺、どうした?」
「居なかったでござる!」
「落ち着け苺。誰が、どこに?」
「だから!織田史郭が、織田本陣に居なかったでござるよ!!」
「…は?どういう事だ!大将が戦場から居なくなるだと!?大将とはいえ、戦において敵前逃亡はご法度…重罪たとだと知っておる筈だ!」
「だから、大変なのでござるよ!私が裏から様子を探った時には既に居なかったでござる!魔族まで居て逃げるとは考えにくいでござるよ!」
「まさか…勝てばなんとでもなると思っておるのか!?たわけ者め!苺、お前はすぐエドヌへ走れ!」
「いつ居なくなったか分からないでござる。間に合わぬかもしれないでござるよ?」
「忠晴がおる!だが、とりあえず追いかけろ。まだ、下級魔族の目撃情報しかない。中級より上の魔族が一緒にいる可能性もある…。こちらはすぐに降伏させて人を送る!苺、急げ!」
「承知したでござる!」
まさか、ここまで形振り構わず来るとは予想が甘かった。駿様や麻津里様を直接狙いに行きよったか。
「この戦いを終わらせるぞ!者共、私に続け!!」
「「「おう!!」」」
◇◇◇
「おい、魔族。敵前逃亡は重罪だぞ」
「それは人間の約束事でしょう?私は魔族。関係ありませんね。それに貴方は手段を選んでる様な立場じゃないでしょうに。もう、後戻りは出来ないのですよ?何がなんでも徳川の首を取って貰わないと私も困るのです」
「だが、我が家臣達の報告を待ってもよかろうに?」
「遅いんですよ、予定より。しかも大幅に…です。負けたと思って行動に出た方が賢いですよ」
「負けただと!?まだ若い明智や滝川ならともかく、丹羽や羽柴が負けるとは思えん!」
「ですが、まだ帰ってきていないですし。だから、わざわざこの私も乗り込んでいるのですよ?私なら魔力や気配を遮断して、気づかれずにエドヌに侵入できます。もちろん貴方にもその魔法を掛けてあげますよ。なので…しっかり戦ってくださいね」
中級魔族のウェプルには侵入出来る魔法があるみたいだ…な。織田家四天王がやられた事は信じられないが実際に帰ってきていない。その事を考えると…いや、どちらにせよ、徳川の首を取る為の戦いだ。それさえ成せれば…それでいい!要は徳川を殺し、エドヌを混乱に落とし入れられれば…ん?…今…私は…何を?
「とりあえず混乱させれば徳川の所にも行きやすくなりますよ。頼みますよ…傀儡人形さん」
「ああ…任せろ…」
◇◇◇
「眠ってしまったのでして~」
『そうですね…疲れでも出たのでしょう。私が荷馬車まで運びます、ご主人様の家へ帰りましょう』
「一応は敵の攻勢も止まったようでして~」
「晴海様、後は我々が警備に当たりますので任せてください」
「では、お願いするのでして~」
さて、双葉を父上達に紹介しないといけないのでして~。上手く話せるか不安ですが、頑張るのでして!
◇◇◇
「駿様、麻津里様…ご安心ください。織田家でも単独で相当な強さを誇る四天王は…撃退されました!私の式神にて確認しておりましたので間違いはございません」
「そうか。では、倒した者には褒美を与えんとな。」
「それだと…恐らく南ではタロウ君。北と西はタロウ君の式神、東は私の娘の晴海…と、なってしまいますが…」
「タロウさんが!?凄いですね、父上。」
「そうだな。タロウ君には麻津里を助けて貰った時の褒美もまだ与えて居らぬのにな…はて、どうするか…。」
今の所、街に侵入するものは式札の力で探知して早めに警備を回している為、被害は出ていない。今の所魔族は来ていないみたいだ。式札から感じる気配には異常が無い。2つの式札を使って両方で確認しているが2つに違いはない。
「晴海には私から何か褒美を与えますからお気になさらずに」
「これは、徳川から与えないとダメであろうよ」
「はっ、ありがとうございます」
「タ、タロウさんはいつ頃帰ってくるのでしょうか?あと、ついでにカルミナさんも」
「そうですね…明日か明後日頃には帰ってくるでしょうか…」
「そうですか、とりあえずお二方が無事な様で安心しました。御守りを渡した甲斐がありました」
「戻ってきたら労って差し上げないと行けませんね。六道さんが行っている戦場も美輿様の兄上殿やその他の方達の助力のお陰でもう一息という所まで来ているのが分かってますし…そのうち降伏させて戻ってくるでしょう」
「あぁ、此度の戦の戦死者の家族には手厚く補償金を与えんとな…。お金を配る事しか出来なく申し訳ないが…な」
「いえ、駿様が心を痛められてる事は民も知ることでしょう。戦死者を供養する際には一言頂戴する事になると思います。その時に駿様の気持ちを伝えるのがよろしいでしょう」
「そうだな…。これ以上、戦死者も出なくて良いよう早めに終らせたい所だ」
「ですね。とりあえず吉報を持ち帰ってくる本人達を待つことにしましょう」
◇◇◇
「緋鬼王、緋鬼王が戦った奴は強かったのか?」
『力はありましたがそれくらいですね。あと男なのに女のような言葉使いで化粧も施していました』
あぁ…そういうタイプ。滅多に居ないから珍しい奴と出会ったんだな緋鬼王は。
「ほー…緋鬼王とかその敵に気に入られそうだよな。力強いけどめちゃくちゃ腕が太い訳でもないし」
『どうでしょうか?力が強い者を狙って攻撃していた様には思えますが…』
そういう事じゃないけど…そういう事にしておくか。
「紅緋はどんな奴と戦ったんだ?」
『妾か?妾の相手はの、小僧だったぞ?槍を使っておってそこそこ強いみたいだが、妾の金棒で砕いてやったわ!かっかっか!』
「勝ったんだよな?何で消える事になったんだ?」
『そ、それは!奥の手を使ったからじゃ!くっくっく…妾はもう1段階強くなるぞえ…』
「まぁ、どうせあれだろ?お菓子食べたくて暴れたらうっかり…みたいな?」
『違うわい!お菓子は食べたいけど、妖艶な妾にもなれるのじゃ!』
「妖艶ねぇ…」
『あー!疑っておるの!?見るかえ?見るかえ!?』
「見てもいいなら見るけど…魔力のかんけいでしばらくは喚ばないぞ?」
『…くくっ!次の機会を楽しみにしとくといいぞ、タロウよ』
消えたらお菓子が食べれないもんな。その辺は考えられるんだなぁ。
『ご主人!今、頭の中に直接話し掛けてるッピ!』
誰だピヨリに変な事教えた奴は!!…俺しか居ないか。
「どうしたピヨリ?」
『大変ッピ!大変ッピ!』
「だから、どうしたんだ?ピヨリ」
『こっちの戦場でほぼ戦いは終わったッピ!でも、何かあったみたいッピ!』
「何かって…分かるかピヨリ?」
『遠くから見てただけだから分からないッピ!見えたのはご主人と居た女の人が凄い速さでエドヌの方向に走って行ったッピ!』
俺と一緒に居た女の人で戦場にいるのは…ベリー先生か!ベリー先生がエドヌに走っているのか?何でだ?エドヌで何かが合ったのか?それともこれからか?
「ベリー先生だな。ピヨリ、他に分かることはあるか?」
『そうだッピね、1番最初に空から見た時に敵の方の後方の仕切りの中に座ってた人がさっき飛んだ時には居なかったッピ!まぁ…どうでもいい話ッピ!』
敵の後方の仕切りの中に…?俺の想像だとそこには大将とか副将とか参謀の人が居る所じゃないか?そこに居た人が…居なくなった!?そして、ベリーさんは走り出した…
「召喚 ピヨリ」
『ピヨッ!ご主人、ただいまッピ!』
「お疲れ様、ピヨリ。さっきの話が本当なら危ないかもしれない。ピヨリ今から紙に書くからそれを安部家の忠晴さんに届けてくれるか?間に合うかは分からないけど」
『分かったッピ!でも、お腹減ったッピ…果物が…食べたいッピ…』
「この、おねだり上手め。ほら、これ食べていいからお願いね」
『分かったっぴ!』
『主、今の鳥は…』
『くくっ、タロウが鳥と話してたの…不思議よな』
「ピヨリは二人と少し違って使い魔だから離れていても話せるんだ。言葉も解るしね。ピヨリも昔は掌に乗るくらい小さかったんだけどな」
『今のは…普通の鳥にしては大きすぎると思いますが…?』
『食べられるのかえ?』
「種類は分かんないんだよねぇ…。でも、ピヨリはピヨリだし、大きくても小さくてもどっちでもいいかなって。まだ成長するなら、いつかは乗せて貰いたいとは思うけどね。あと、食べれるかは知らないが食べないぞ」
『ピヨリ殿ですか。偵察が役目ですか?』
「いや、基本はペットだ。たまに偵察でごく稀に戦闘で氷の息吹きで手伝って貰ったりするよ」
『なるほど。主、空からの攻撃は有利ですからピヨリ殿も戦闘に加わらせたらいかがですか?』
『くふー!妾の魔法にかかれば空飛ぶ敵も撃ち落とせるぞえ?』
「そうだな…とりあえず狩りからやらせてみようかな?紅緋、お菓子でも食べてて」
『タロウ、気が利くの』
『あ~ズルいぞ~アタシもお菓子欲しいぞ~』
『なぬ?これは妾が貰った物じゃ、やらぬぞ!』
『紅緋、アトラス殿に差し上げなさい』
『い、いやじゃ!これは妾のじゃ!』
「アトラスの為にありがとう緋鬼王。でも、アトラスと紅緋の為に買ってあるお菓子はまだあるから大丈夫だよ」
『流石は主、準備がよろしいのですね。』
「でも、今回は頑張って貰ったからだからな!紅緋、アトラス、普段からはもっと節約だからな。ほら…緋鬼王にはこの果物をあげるよ。甘くて美味いから食べな」
『主、ありがとうございます。…!これは…今まで食べたどの果実よりも美味です』
それは良かった。紅緋とアトラスがこっちを見てるが二人にはお菓子をあげたからエルフ産の果物は無しだ。こっちは本当に貴重だからな。
「…結構な人数になったわね、タロウ」
「最初は俺とカルミナの二人で旅してたもんな」
「さ、早くエドヌに帰りましょう」
「あ、そうだ。もしかしたらエドヌに織田史郭が向かってるかも」
「何で早く言わないのよ!馬鹿!」
「すまん、ピヨリに忠晴さんの所に急いで貰ったけどどうなるか分からなくて…」
「とりあえず私達だけでも早く帰るわよ!」
『急ぎなら、主は私が背負って走ります。カルミナ殿は紅緋が背負います』
『妾もかえ!?』
「紅緋、頼む」
『ぬっ…分かったえ。さ、妾の背中に乗るがいい』
「お願いね紅緋ちゃん。命先生、私達ちょっと先に行きます!」
『この妾をちゃん…とな?小娘、言うではないか…』
「分かったわよ。気をつけてね」
「はい、紅緋ちゃん、よろしくね!」
『小娘、妾の話を聞くのじゃ!』
「アトラスは戻ってるか?」
『1度帰るぞ~』
「分かった。また頼むな…送還。よし、頼んだ緋鬼王!」
『承知しました』
俺達は一足先にエドヌへと帰ることになった。
誤字脱字がありましたら報告お願いします!
(´ω`)




