第71話 タロウ、緊急クエストに行く
せ、戦闘シーンの成長は見られるのでしょうか!?
感想等お待ちしてますね(;´д`)
「緊急クエストです!緊急クエストです!冒険者の方はギルド付近までお集まりください!」
朝、眠そうなカルミナを起こして一緒にランニングをし、これから朝食にしようという時に誰かが宿に緊急クエストを伝えに来ていた。
「緊急クエスト…」
「とりあえず行ってみましょう?」
朝食を抜きにして俺達はギルドまで向かった。ギルドの近くにまで来ると道は冒険者で溢れていた。
「結構な人数がいるな」
「1番大きな街だものね」
「他の人もクエストの詳細はまだ知らないみたいだな」
「私達と一緒でとりあえず集まったって感じかしら?」
しばらく待っていると冒険者の数もさっきより増えた。それを見計らってたかは分からないがギルド前に男が現れて、クエストの説明をしだした。
「朝からすまない。知らせた通りの緊急クエストだ。敵の数が多い事もあり、本来はCランク以上だけを呼ぶところだが来れるものは集まってもらった。」
なるほど、敵の数が…だからこんなに冒険者が集まっていたのか。
「先日、あるクエストに向かった冒険者からの知らせで小鬼、豚人、鬼人の集団がこちらに移動しているとの事だった。王クラスと皇帝クラスが現れたという報告もある」
冒険者達から驚きの声や心配する声など反応があった。
ゴブリン王、オーク王、オーガ王…さらにその上をいく皇帝が現れたとなるとBランク以下は集団でも相手にならない可能性がある。
「Bランク以下の者、C、Dランクは街周辺で王、皇帝以外の魔物の討伐。E、Fランクの者は集団で行動し、街へと侵入した魔物の討伐だ。街の住人は安倍家や九重家を始めとした武家が守ってくれる事になっている!俺達は魔物を狩り尽くす事だけを考えろ!」
「魔物を狩る事だけを考えれば良いなら楽だな。」
「そうね、街の防衛を少しでも楽にするために王クラスはさっさと倒したいわね」
これは、修行の始まる日が延びるな…なんて考えていると、ギルド職員がランク毎に冒険者を集め始めていた。俺とカルミナは大人ばかりの冒険者の中で周りから浮いていたがBランクの場所に行くことで更に浮いてしまった。
「どこの街もCとDランクあたりが1番多いんだな」
「Aランクなんて…あ、ベリーさんが手を振っているわよ!」
ジパンヌですらAランクは4人程しか居なかった。冒険者じゃない人…六道さんや忠晴さんの様な強者が居るのは知っているが、AランクとBランクを合わせて20人も居ないのは少し不安になるな。
「やっぱりBランク、Aランクは1ヵ所に集まってくれ…よし。早速説明を始めるぞ」
先程クエストの内容を話していた男がAランクBランクを集めて話をし始めた。
「見ない顔もいるな…軽く自己紹介だ。俺はエドヌのギルド長をしている坂本颯馬だ。お前達にして貰うのはボスの討伐だ。今からAランクの4人をトップにグループに別れて貰う」
なるほど、確かに…AランクのフォローとしてBランクを配置するというのはバランスが取れて良いかもしれない。
「ギルド長!どういう組み合わせでござるか?」
「Aランクのお前らがバランスを考えて勝手に決めろ。決まったら4方向に別れて貰うぞ。質は落ちるがとにかく数の多い小鬼担当。質も数もそこそこの豚人担当。数は少ないが質の高い鬼人担当。そして、皇帝クラスの担当。この4つだ。」
さすがのAランク達の動きは早い。高ランク同士で実力が判っているのか、俺とカルミナを残してパーティーが出来上がっていく。
「他の者も見る目が無いでござるなぁ?二人共、行くでござるよ!」
「ベリーさん!信じてましたよ!」
「ま、当然よね」
「おい、黒霧。そいつらを連れて行くとか正気か?ま、お前は1人でも大丈夫だと思うがな」
他のAランク冒険者がベリーさんへと話しかけてくる。
「はぁ…見る目が無いでござるなぁ、『紅剣』の万里殿」
「ほぅ。そいつらが出来るとでも?」
「剣の腕ならBランク下位くらいでござろうが…魔法が加わったら普通にAランクに届いてるでござるよ?」
ベリーさんの言葉を聞いて、冒険者達が笑い出す。んまぁ…見た目は子供だもんな。
「はぁ…見る目は冒険者じゃない者の方が確かでござるな…。ギルド長!私達3人でいいでござる。」
「お前が言うならそれでいいが…。どいつを担当する?」
「タロウ君、カルミナさん、分かるでござるな?」
「もちろんです」
「当たり前じゃない!」
「「「皇帝を!!」」」
◇◇◇
「アクエス!いくぞ!」
『任せてなの!』
「水魔法奥義 『巨大海蛇!!』」
「行くわよみんな!」
『任せてください』
『えぇ、行きましょう』
『おうよ!』
「吹き飛ばせ!燃やし尽くせ! 穿て! 『風炎土の光線!』」
「はっはっはーでござるよ!二人共、少し会わない内に魔法が桁違いでござるな!」
エドヌから出発し、1日もかからない所で俺達はゴブリン、オーク、オーガを倒しながら皇帝達の居るであろう魔物達の最後尾に向けて突進をしていた。目の前にいる魔物は倒してはいるが、最悪、無視しても他のグループが倒してくれる事になっている。
「カルミナ、魔力はこの辺から温存していこう。出番だ『吸魔血』。クロマ!」
『ハハッ、良い血の匂いだなぁ!』
「そうね、白槍『鬼骨』…行くわよ~」
クロマに血を吸わせると刀身が深紅に染まっていく。それに合わせ、クロマの気性も荒くなっていく。
『いいぜ…イイゼ!モットダ…モットモット!!』
「タ、タロウ君!?それ…まさか妖刀ではござらぬか?」
「そうですよ!…よし、溜まったか!喰らい尽くせ、クロマ!」
『ガァァァァァァァァァ!!』
深紅に染まった刀身が伸びていく。曲がり、縮み、自由自在に敵を食い破る。これはこれで走りやすくなるな。
「タロウ君…どうして刀身が伸びるでござるか!?どうして曲がるでござるか!?」
「どうしてって言われても…そういう能力としか…」
クロマに道を切り開いて貰い、俺達3人は1時間ほど掛けて皇帝達の元へ辿り着いた。
◇◇◇
「ベリーさん、皇帝って何かやばそうじゃないですか?想像より凶悪な感じなんですけど…」
「1番弱いゴブリン皇帝でさえ…」
「何を言ってるでござるか、皇帝は災厄及の魔物でござるよ?」
災厄及!?確かにこの姿を見たら災害及は越えてるだろうけど…。1体でも街を壊滅させる魔物が3体現れるとかどうなってんだよ。
「修行でござるよ、修行。二人共、とりあえず使って良いのは武器のみ。タロウ君は妖刀もいいでござるよ。魔力は流していいでござるが、なるべく自分の腕前だけで戦って欲しいでござる。」
「ちょ…それはキツ過ぎませんか?」
「とりあえず、でござるよ。ある程度戦えたら召喚でも魔法でも何でもいいから倒すでござる。」
「わ、分かったわ。タロウは妖刀持ってるんだからゴブリンは私が貰うわよ!」
「了解だよ!ベリーさん、オーガは任せますよ」
「うむ。二人共、よく励むでござるよ」
◇◇◇
「来なさいゴブリン!」
『ギィエシャャャャア!!』
私はゴブリンを誘導しながら他の二人の邪魔にならないように少し離れた場所までやってきた。
ゴブリン皇帝はゴブリンといっても身長1メートルくらいの弱いやつと比較にもならない。身長はオーガに近い2メートルくらいに太い手足。手には岩で出来た棍棒と盾を持っている。角も目立つくらいにはあり、牙も鋭い。ゴブリンにも魔法を使う者は居るし、皇帝なら使えると思って動いた方が良さそうだ。
「槍…だけとは少し厳しいわね。間合いを取って削っていくのが無難かしら?」
『ギォアアアアアアアア!』
皇帝がゴブリンとは考えられないスピードで迫ってくる。
「思ったより…ずっと速い!」
『ギュアアア!』
振り下ろされた棍棒を横に回避して足に向けて槍を突くが盾で防がれる。槍の弱点は間合いに入られて槍をちゃんと構えられない事にある。だから、私はすぐに後ろへと下がった…が…
『ギィィィィィィ!!』
「ちっ!」
離れた私を追うように皇帝も詰め寄ってくる。
棍棒を振り回し、地面や木々を凹ませる。棍棒を掻い潜り背中へ掌底突きを放つが…。
「かったいわね!!あぶなっ!」
跳び下がり棍棒を避けるがバランスを崩して尻餅をついてしまう。
「ヤバいヤバいヤバいヤバい!」
『ギャギャギャギャギャ!!』
地面を転がり棍棒を避けるが楽しむように振り下ろしてくる。
槍を支えにどうにか距離を取るが完全に立場が決まったかのように皇帝が笑い声をあげる。
「ムカつく笑い声ねぇ…技術が足りないからよりムカつくのよ!」
私は諦め、1段階ギアを上げる事にした。
「ランディア!」
『あいよ!』
「槍の強化と、力負けしないように打ち合ってる間は足を固定してて!足の固定を外すタイミングは任せるわよ!」
『あい分かった!!』
『ギャギャ?ギィィィィィィ!!』
「引かないわよ!!はぁぁぁぁ!!」
走り出した皇帝の足元に槍を突き出し動きを止める。足踏みをした一瞬に槍で足を裂く。振り下ろし始めた棍棒に槍を添えて横にずらす。その隙にまた足を攻撃する。
『ギュアアア!!?』
「来なさい!ここからが勝負よ!」
ゴブリンが怒りに任せて棍棒を振り回す。だが、私の鬼骨もランディアの魔力で強化され、打ち合える!
「はぁ!いっ!うらぁ!!」
『ギィエシャャャャア!!』
皇帝の腹に槍を突き刺すが、皇帝が勢いのまま突っ込んでくる
「キャアアアア!?」
ランディアの魔力で作っていた固定を上手く外してくれたお陰で後ろに跳び衝撃を少し逃せた。
「っつ…。いったいわね…。でも、まだ立てるわ」
槍は皇帝に刺さったままだし…そろそろ賭けにでましょうか…
「タロウに面白い武器を買って貰った訳だしね…。シェリーフ!」
『はい、ここに』
「この槍を飛ばすから今から言うとおりに操って!」
『任せてください』
「……という感じでよろしく頼むわ」
『えぇ、タイミングは間違えないでくださいね』
「もちろん!行くわよ…飛べ!魔槍!!」
私は槍を皇帝とは離れた方へ飛ばし、同時に皇帝へ向けて走り出す。
『ギュオオオ!!』
棍棒を寸で避け、腹に刺さった槍を蹴り上げ皇帝の後ろへと貫通させる。
『ギィヤァアアアアアアア!!』
皇帝がすかさず棍棒を振り回す。私は跳んで棍棒に両足を合わせ、飛ばされる。地面を転がり傷は増えるがこれでいい。私は立ち上がり鬼骨を取りに走る。
『ギイイイ!!』
私の狙いが分かってるかのように槍との間に体を滑り込ませる。
私は構わず出せる全力で皇帝へと突き進む。
1歩1歩、皇帝との距離が近付く度に思考だけが加速しているのか、動きがゆっくりに感じる。私を潰そうと皇帝が棍棒を振り上げた。
「今よ!!」
『グギャアアアア!?』
皇帝の股下を滑るように掻い潜り、鬼骨を手にする。シェリーフにお願いした通りに皇帝の振り上げた腕へ槍の先端が刺さっている。
「シェリーフ!力を!!」
『行きなさいカルミナ!』
「はああああああああ!!!」
風の力を纏わせた槍を一瞬の溜めと共に皇帝の心臓へ突き刺す。
『グギュ…ギィ…ガッ…』
「はぁ…はぁ…はぁぁぁぁ…もう無理、疲れた」
皇帝は倒れ、動かない。私も疲れてその場に座り込んでしまった。
魔法主体では無く、槍を使って倒せた事に少しの達成感を覚えたが…それ以上に体と心に疲労が溜まっているみたいだ。
「フレイミア…ゴブリンの傷口を焼いて止血して。シェリーフは周辺の木々を直せたら直しといて。ランディアはボコボコになった地面をよろしく」
私はみんなにお願いして、少し休むことにした。アイテムボックスから回復薬を取り出して飲み干し横になった。
「次はもっと楽に倒してやるんだから!!」
修行をする前に新しい目標が出来たのは良かったかもしれない。目指す物があれば頑張れるからだ。ベリーさんが武器で戦う様に言ったのはもしかしたらこういう風に思うことを見越してかもしれないわね。
『カルミナ、終わりましたよ』
『こっちもですよ』
『地面も元通りだ』
「ありがとう。少し休憩したら戻りましょうか?」
◇◇◇
私が戻って来ると、そこには息をしていないオーガ皇帝とベリーさんが待っていた。
「さすがですねベリーさん。仕事が早いですね」
「カルミナさんも無事倒せたみたいでごさるな。どうだったでござるか?」
「槍に魔力を流してギリギリ勝てましたよ…。魔法は使いませんでしたが…キツかったです」
「使わなかっただけ凄いでござるよ!ゴブリン皇帝は災厄及の中でも弱いとは言え、Bランクじゃ勝てないレベルでござるからなぁ。」
「次はもっと楽に勝てるよう修行しますよ」
「びしばし行くでござるからな!…っと、タロウ君はまだでござるかな?」
確かにオーク皇帝だから防御力も高いしパワーもあるから苦戦すると思うけど…ま、タロウなら大丈夫ね。
「う~ん。少し様子を見に行ってみるでござるか?」
「心配要りませんよ。タロウの事です、どうせオークが色々な攻撃に耐えるから試しているに違いありません?」
「そうでござるか?でも、相手は皇帝でござるよ?」
「いてててて…あれ?俺が1番最後ですか?」
ほら、やっぱり!心配なんて要らないのよ。一緒に戦うって決めたんだもん。こんな所でタロウが負ける訳は無いのよ。タロウの事は私が1番知っているんですもの!
「タロウ!1番遅かったから街で甘味の奢りだからね!」
「ったく、まぁ、今回は疲れたし…それもありかな」
タロウは何かしら理由を付けて「しょうがない」なんてよく言うけど、私のお願いを素直に頷くのが照れくさいだけって事もお見通しなのよ!まぁ、そういう優しい所も好きなんだけどね。
「ふふっ。お疲れ様タロウ」
「ああ、カルミナもね」
さ、街に帰ったら祝勝会よ!
fateの映画、ヘブンズフィールを観てるので予約投稿してます。(´ω`)
評価や感想、レビューにブクマもお待ちしております!




