第7話 タロウ、パーティーデビュー
よろしくお願いします
パーティーは午前中から行われた。午後からは王女様の成長の儀があるからだ。俺もだけど。
そのため朝から最終チェックをしている。主に母様が俺の服装をだけど…
「やっぱりこっちの方がいいかしらねぇ~」
どっちでもいい。いや、靴下とかどっちでもいい。ホント。
「カリナ、急がないと出発の時間だよ。」
「でも、あなた!今日はタロウちゃんのお披露目でもあるのよ!」
いや、王女のお披露目である。だが、母様にとっては俺のパーティーデビューも大事なんだろうな。ありがとう母様!
なんやかんやで出発ギリギリである。うちは伯爵家だから少し後に入場すればいいが遅れるのはよろしく無いことだ。
馬車に乗り込み王城へ向けて動き出した。建物多いし人も多いな。道幅は馬車もらくらく通れるくらいに広いし道もなだらかだ。
王都は王城を中心にして円形に広がっている。北の方が貴族街で東が商業や工業地区で宿屋も多いな。、西が学校や冒険者ギルドにそれに関連する施設等で南が平民の住居区だと教えて貰った。
もちろんその割合が多いと言うだけで貴族街にも商業施設はあったりカジノに似た娯楽施設もあるらしい。
なんたって広いからな。いろんな所にいろんなものがあるのは当然か。
学校はいくつかあるが、王都で学校と言えば王都第1学園と皆が答えるだろう。だいたいの子供はここに入学するだろう。俺も10歳になったらここに入学する。貴族と平民で入った後に若干の差はあれども入学自体はさほど難しいものではない。
鍛治師になりたいやつは鍛治職人に弟子入りするし、農民の家の子はわざわざ学校に通ったりはしない。
だから、学園に通う生徒は貴族の子や商人の子かなんとか金を払える平民くらいだろう。
少しずつ王城に近づいてきた。
「き、緊張します。父様、母様。」
割とマジだ。この5年間訪ねて来る人もいたけどほぼ関わった事はないし。ましてや同い年ぐらいの子供と遊んだ事もない。
「大丈夫だタロウ。いつも通り…とはいかないが気を張りすぎることはない。お前はまだ5歳だ、失敗を恐れるには早すぎるぞ」
と、父様‼
「そうよ~タロウちゃん、あなたはあなたのままでいいのよ~」
か、母様‼
変わらず優しい父様と母様のおかけで少し気は楽になったな。
聞くとこによると今日は王女様の年齢に合わせて5歳あたりから上は10歳くらいの子供達が集まるらしい。王女様に顔を覚えて貰いあわよくばという思惑だろう。うちもそうかもしれないけど。
「父様、王女様に覚えて貰った方がいいのですか?」
父様は言いたい事を察してくれたのだろう。
「うちは5歳になったらパーティーに出る習慣なだけだ。お前はパーティーがどういう物か知って、その上で今日は楽しめばいいさ。無理をする必要はないぞ。」
父様はそう言って頭を撫でてくれた。父様はそう言っているが、まぁ出来るか分からないが出来る限りの良い息子とやらを演じてみようか。
「そろそろ着くな。タロウ、とりあえず父さんと母さんの後ろをついてきなさい。」
「はい。がんばります!」
やっぱりまだ緊張しているみたいだ。
◇◇◇
王城に着いた。で、でけぇ!横にでけぇし縦になげぇ!
こんな所に住んでんのか王様は…
「招待状を拝見いたします。」
門番さんにそう言われて父様は懐から紙をとりだした。
「グラウェル家当主リヨン様ですね。確認いたしました。どうぞお入りください。」
門から玄関までが長いな。少し不便だな。
やっと、入り口までついた。馬車から降りて2人の後をついていく。
「父様、広いですね…」
「入り口通ったらあと少しだ。ほら会場から音楽が聞こえてくるだろ?」
たしかにゆったりとしたメロディーが聞こえてくる。
少しあるいて大きな部屋の前についた。
部屋の扉をあける専用の人とかいるのか。雇ってんのかな?給料次第じゃやってもいいかな。
ドアの奥ではきらびやかな衣装を着た貴族がいた。けっこうな数よな~。目がチカチカするぞ。料理はテーブルの上か、見えづらいな。
「おやおや、これはリヨン殿。お久しぶりです。」
いきなりスマートなおじ様が話しかけてきた。割と親しげだな。
「これはホーネス殿。お久しぶりです。さっそくですが、これが我が息子のタロウです。」
「お初にお目にかかります。グラウェル家三男タロウ=グラウェルです。」
ふ、普通の事しか言えなかったーーー。ここはもっといい感じに賢そうな事言う予定だったのに!頭から抜けたよ。
「そうかそうか。君がタロウ君か賢い子だとリヨン殿から聞いているよ」
「まだまだ勉強中の身でございます。」
緊張する。会話1つでこの感じか。今日乗り切れるかな…
「兄上、お久しぶりです~。」
兄上!?母様が今兄上って言ったか!?
「カリナ、久しぶりだね。元気にしてたかい?」
えぇ!!?
母様の兄上って事は…伯父さんじゃんか!はわわわ…
「えぇ、元気にしていましたよ~。どう?うちのタロウちゃん可愛いでしょ~?」
道理で父様とも親しげな理由だ義理の兄にあたるわけだし。知らなかった。家の繋がりとか全く知らないな。一人目からなんかもう帰りたい気分だ。
「カリナとリヨン殿の子だけあって、元気で利発そうな子だね。」
「恐縮です。伯父上。」
「これから会う機会もあるだろう。いつかうちの息子達も紹介しよう。」
「機会がありましたら。よろしくお願いします。」
「私も混ぜて貰って良いかね。」
どこからと渋いダンディーな声が聞こえた。
「これは、ジル閣下。お久しぶりにございます。」
ホーネスが挨拶をしてすぐうちの父様もあいさつしていた。態度的に上の立場の人っぽいな。
「タロウ、この方はジル=ヴァナール侯爵閣下だ。挨拶なさい。」
こここ、侯爵様だとぉ!?
見た感じ50近い年齢だろうがびっしりして知的な雰囲気と侯爵という立場に負けない威厳が漂っている。
「グラウェル家が三男、タロウ=グラウェルです。今年5歳になったばかりです。お見知りおきを。」
どうだ?いけたか?
「なるほど。見た目はリヨン殿に似てるが内面はカリナ殿似だな。賢い子に育つだろう。精進するといい。」
「恐縮です。」
リアルに恐縮だわ。この会場恐いわ。他の子供達もガチガチだな。俺だけじゃなくて良かった。
父様とホーネス伯そしてジル侯爵で話始めた。一息つけるな。母様も他の貴婦人の元へ向かったし。ふぅ~。
しばらくすると。演奏が止まった。
「国王陛下ならびに第2王女様のご登場です。」
ドアが開くと同時に会場にいる全員が頭を下げた。礼儀作法は教えられたからな。間違ったら汚点として残ってしまう事になるから徹底して教えられた。
「全員楽にしてよい」
国王の言葉で一斉に頭をあげる。
「今日は我が娘カルミナの為によくぞ参ってくれた。感謝する。豪勢な料理も準備した。思う存分楽しんでいってくれ。」
言葉が重い。普通の事しか話してないはずなのに重みが違うな。
国王は金髪でシワこそあるが、相当に顔が整っている。
隣に居るのがカルミナ姫か。金髪で少しつり目でホントにワガママそうだ。だが、小さい子供の中で萎縮もしないで堂々としているのは彼女だけだ。凄いな、さすが王族。ワガママそうだけど。
国王と王女に挨拶の時間が始まった位の高い者から順に挨拶をしている。そういう決まり事らしい。並ぶのは父様と俺だけで母様は貴婦人の集まりにいる。そういうものらしい。
順番が回ってきた。
「国王陛下お久しぶりでございます。この度は誠におめでとうございます。カルミナ姫、5歳になりましたお祝い申し上げます。
こちらにおりますのが、我が息子、タロウでございます。」
「し、紹介にあずかりました。グラウェル家が三男タロウ=グラウェルでございます。こ、この度はカルミナ姫の生誕をお祝い申し上げます。これは、い、家からとは別に私からカルミナ姫へのプレゼントにございます。よろしければ、お受け取りください。」
い、言えたぞ。噛まずに。もう帰りたいし成長の儀したい…
「リヨン、久しいな。手紙でのやり取りはしておるが、会うのはどのくらいぶりだろうか。タロウと申したな。なかなか出来た息子じゃいか。カルミナ挨拶なさい。」
「お初にお目にかかります。リヨン様。タロウ様。カルミナ=ルールトでございます。この度は私の為に足を運んでいただき誠にありがとうございます。」
めっちゃ、すらすらですやん。ワガママ姫と聞いていたからどんなものかと思ったけど。金髪のさらさらした髪に少し強気に見える目元。あれだな。うん。天使だな。
「タロウ様、このプレゼントありがたく受け取らせていただきます。」
「あ、はい。喜んでいただけましたら幸いでございます。」
ええ子やええ子やなぁ~
「それでは陛下、カルミナ姫、名残惜しくもありますが後も控えております故にまた後程。」
「うむ。また後程にな。」
いや、もうお腹いっぱいっす。
この後はつつがなくパーティーを終えた。同い年の子ともお互いの領地の事で話したりできたし。顔合わせとしては十分、楽しさは十二分だった。
さ、午後はやっと成長の儀だ!