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タロウ冒険記  作者: じょー
第3章 神秘を求めて
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第60話 タロウ、火山へ向けて出発する

移動回なので軽めに読む感じで大丈夫だと思います。よろしくお願いします。


旅立ってから三日が経った。だいぶ移動はしている気もするが、まだ街は見えてこない…ということは火山のある国までまだまだかかるということだ。


「タロウ~今どの辺~?」

「んあー、多分地図だとこの辺じゃないか?目的地の国はまだまだ先だな。」


「遠いわね…迷いの森からここまではそう遠く感じなかったのに!」

「まぁ、街を経由しながら移動してたからな。今回は国境付近の街までも遠いし、国境越えてからはもっと遠いぞ」


「そう…私はシェリーフと色んな技について話してくるわ、何かあったら教えてね」

「分かった。…俺も何か考えないとなぁ、上位精霊の力をまだ引き出しきれて無いような気がするし…。水の概念について深く考えないと」


水の魔法については強化されているし、出来ることも増えたけど…どうしてもこれじゃない感がある。今のままだと精霊と契約する前でも努力すれば出来たような気がする。


「んー、全然分からんな。えっと…お水、お水っと。アクエス、ちょっといいか」

『何か用なの?』


「うん、ちょっとね。アクエスと契約して水魔法の強化はされたんだけど…どうしてもまだ何か違う様な気がしてね。何か知らないかなって」

『私は水の精霊だから直接手は出せないの。知ってる事は…熱湯や水蒸気も温かい水と解釈してもおかしくないの。人の体にも空気中にも水は存在してるの。あとは、浮力に水圧に水の抵抗。いろいろとあるの。』


浮力か…浮かせたり沈めたりも出来るな。水圧何かは使えそうだ。足の裏から水を発射させれば高いところまで跳べるだろうし、普通に攻撃にもつかえるな。水の抵抗はあれだな。動きにくくなるやつ。抵抗の力を強めれば遠距離からの攻撃も通さないだろう。


「考えれば考える程に幅が広がっていくな。熱湯や水蒸気なんかも地味に使えるな。ありがとうアクエス。いろいろ考えてみるよ」

『頑張るの、私は力を貸すだけなの。何をするのもあなた次第なの』


力を貸すだけ…か。改めて考えてみるか、水といえば何だ?冷たい。透明。川なんかでは流れもある。液体。アクエス曰く、熱湯もいいし、海なんかで感じられる浮力。水溶液はどうだ?


「コップは…あった。食塩水!…ん、ただの水だな。水溶液は別物って事かな。そういえば電気って水を通しやすいんだったかな?」

『ちょっと違うの!電気は水の中に不純物があると通り易いの!』


「じゃあ、不純物が全く無い水を作れたとしたら…」

『電気はほぼほぼ通さないの!』


「不純物を沢山にしたら…」

『電気を物凄く通すの!』


これは、何かしら使えるんじゃないだろうか!とりあえず雷属性の相手に対処は出来そうだ。


水について考えたり、戦闘の幅を広げる為に蹴りや投げの練習をしながら更に2日経ってようやくエルフ達の居た国の端にあるサンガーラの国境付近の街にたどり着けた。今日はここに泊まって、明日は国境を渡ろう。



「カルミナ、今日はここで泊まろう。」

「分かったわ。寝るだけなら別に街じゃなくてもテントでもいいのよ?」


「…食料もまだあるし…国境に近いところで休むか?」

「えぇ、節約はしていかないとね!ふふ、私は出来る子ね」


まぁ、カルミナがそう言うのなら俺もそれで構わないし、困る事は夜に魔物が襲ってくる事があるくらいだし。


「カルミナ、後で体術を教えてくれ。まだ何となく上手くいってないみたいで」

「分かったわ!ビシバシ行くからね!」


カルミナにまずは受けからと言われ、投げられ投げられ、そして投げられて受け身の練習をこなしていった。正直辞めたい気持ちしかないけど…ここで手を抜いたらダメらしいが、すぐ終わらせたい気持ちに従って、カルミナに言われた事を徹底していくと寝る前になってようやく及第点をいただけた。



「うんうん、受け身はとりあえず大丈夫ね。次のステップは受け身の後の行動よ。」

「いてて…なに、それ?」


「タロウ、投げられてそのまま寝転がってる訳にはいかないでしょ?投げられた後に、横に転がるか後転するか反撃するか。受け身はその前段階でしかないのよ?」

「な、なるほど。分かった、体術の事はカルミナに任せるよ」


その日はテントを張ってもう寝ることにした。久しぶりに体が痛いが…これも修行の内だな。



◇◇◇


翌朝、テントのポツポツという音で目が覚めた。雨…か?


「あ、リリーとトリーが濡れちまう!」


俺は慌ててテントを出て、リリーとトリーに魔法で雨避けをしてあげた。まだ降り始めたばっかりだったのが幸いして、そこまで濡れてなくて良かった。うーん、馬用の雨具はないしな…しょうがない。魔法で雨を当たらない様にして動いていくしかないな。


「風で弾くかな…でも魔力の効率を考えると使いなれた氷か水魔法の方がいいかもな。」


「アクエス~」

『雨はいい…の。水が沢山…力が沸くの。』


「そういうものか?」

『そうなの。タロウさん達で言うと、魔力が濃い場所にいる感覚なの。つまり、いつもより強いの!』


そういう特性があったのか!なら、風が強い日、暑い日、寒い日。色んなシチュエーションで精霊が活性化する可能性があるな。


「うん、良いこと知れた。今日はリリーとトリーの為に雨避けをするから効率よくやっていきたい。力を貸してくれ」

『分かったの!とりあえず水の膜を張っておくの。魔力を借りるの』


アクエスから微々たる魔力を取られてるが、取られた以上の魔法が展開されている。本当に調子がいいようだ。


「カルミナを起こして準備をしないとな。」


俺はテント周りに魔法を展開してカルミナを起こしてテントを片付けた。まだ眠そうなカルミナを屋根付きの荷台に押し込み、出発の準備をする。


「リリー、トリー、朝はとりあえずこれで我慢してくれ。国境越えて雨宿りが出来そうな場所に着いたらちゃんと食事にするからな」

「ヒヒィィン!」

「ヒヒブルルゥ」


「よ~し、出発だ。」


雨で地面がぬかるんでる事もあり、そこまでスピードは出さずに進む事にした。昨日の内に国境付近にまで来ることを選択したカルミナに感謝して、30分かけて国境までやってきた。時間が朝で雨という事もあり、すんなりと国境を越えられそうだ。


「はい、止まって~。荷物の検査させて貰うよ~。うん、女の子1人だねぇ。それで、ヒートテ国に入る目的は~?」

「あ、はい。火山に向かおうと」


「そうなんだ~。山登りかな?う~ん。ゴーグルや口元を隠すマスクは持ってる~?あの山は火山だから持ってないとキツいよ?あと熱を冷やす手段もね~」

「あー…持ってないですね」


「そう~、なら火山付近の街で買えると思うよ~。ここから10日は掛かると思うけどね~。必要な物だから忘れない様にね~、じゃあ通っていいよ~。」

「あ、はい。ありがとうございます」


なんか、緩い検問官だったな。まぁ、いいか。ここから長いから気を引き締めて行かないとな!


◇◇◇


道なりを進んで3時間もすると、雨が少しは遮れそうな木々が生えている場所があった。あそこで休憩にしよう。


「カルミナ、あそこで休憩にするから」

「分かったわ。リリーとトリーにかかりそうな雨は私が防ぐからタロウも休んでね」


「了解だ。…おし、この辺でいいだろう。エサとご飯の用意するからよろしくな」

「風魔法 風円(ウィングドーム)。これでいいわね。はぁ、お腹空いたわ~」


遅めの朝食…早めの昼食を取りながら空模様を窺い見る。うーん、強くは無いんだけど…止みそうには無いな。


「近くに宿のある街とか村って無いのかね?」

『タロウさん、私が探してくるの。こんだけ広範囲に雨が降っているならすぐに見つけられると思うの!』


「じゃあ、よろしく…」


『見つけたの!!』


「え!はっや!というか動いて無いよね?」

『私が水で、水が私なの!』


そ、そうか。そんな事も出来たんだなアクエスは。海上とか最強じゃねーか。…うん。最強かもしれないな


「じゃあ、もう少ししたら出発するから案内して貰っていいか?」

『任せるの!今日は絶好調なの!』


アクエスは雨の日が絶好調なんだな。砂漠地帯とかだと逆に弱体化しそうだな。こうして話してみると良いところ悪いところが見えてくる。何でも知ることが始まりなのかもしれないな。



アクエスの案内で馬を走らせる事10分と少し、家や畑が多く見られる、頭の中の田舎の風景を映し出した様な村へと到着した。こういう所は意外とよそ者に厳しい一面があるため低姿勢で挑むのがベストだろう。


「雨のせいか、人が全然歩いてないな。…アクエス、ありがとう。宿に着いたら好きにしてていいよ」

『分かったの!絶好の散歩日和だから歩いてくるの』


村を進んで行くと2階建ての他よりは大きな建物が見えてきた。看板を見る限りおそらくあそこが宿屋で間違いないだろう。



「すいません、ここ宿屋で間違いないですか?」

「いらっしゃい。あら、雨で大変だったでしょ?はやくお入り。それより先に馬を裏の馬小屋に連れてってやんな」


おばちゃんに促されて、馬小屋にリリーとトリーを入れて休ませてあげることにした。エサと果物を今日の分置いてきて受付へと戻ってきた。


「すいません、お待たせしました。雨…止みそうには無いんで1日宿泊でお願いします」

「あいよ、部屋はどうするんだい?うちは一部屋銀貨1枚だけど、二部屋取るかい?」


「せっかく安いし、一部屋で大丈夫よ!その分ご飯にお金をかけましょう!ね!」

「うーん、うちはそこまで広い部屋って訳じゃないから二部屋をオススメするけど…」


「そうですか、なら…」

「やっぱり一部屋ですね!」


「という事で、一部屋でお願いします。食事ってここで食べれるんですか?」

「分かったよ。お腹が空いたら隣の店がうちの食堂にもなってるからそっちへ行っておくれ。遅すぎると閉まっちまうからそこは注意しな。ほら、これが部屋の鍵だよ。階段上って突き当たりの部屋だから」


「ありがとうございます。行こうかカルミナ」

「うん。とりあえず休みながらこれからの予定を話しましょ」


部屋にくると1人用だと思うくらいの部屋の広さだった。これなら二部屋の方がいいんじゃないか?と、思うくらいだ。


「うん、ちょうどいい広さね!落ち着くわ」


だ、そうだ。狭い所の方が落ち着くのは共感出来るだけに何も言えなくなってしまった。


「まぁ、とりあえず座って現状の確認しようか。地図上だと国境を越えたからこの辺で目的地はこっち。」

「だいぶ下の方ね。天気が悪くて見えなかったけど、晴れたら真っ赤な火山って見えるのかしら?」


「少しくらいは見れるかもな。とりあえずこのまま南下して、街を経由して食料を買ったらまた南下するって流れだ。火山に近い街まで来たら、ゴーグルとか必要な物と火山について聞いて突入する。」

「大まかな流れは分かったわ!1日終わりには稽古を挟むけど、今日みたいな雨の日は休みましょう」


そういって、ゴロンとカルミナが横になった。つられて俺も横になる。雨の音を聞きながら横になると何か落ち着くし眠たくなるよな…


「すぅー。すぅー。」

「いや、早いな!カルミナ…あ、完全に寝てる。凄い特技だな。…俺も寝るか」


◇◇◇


「まぁ、狭い部屋だしな…」


目が覚めた…というよりはカルミナの寝相で起こされた俺は、自分の体にくっついて寝てるカルミナをどうしようか考えていた。


「起こすか、まだ寝かせておくか…」


俺の隣で寝ていたカルミナがうつ伏せで右手と右足を俺の体を包んでる状態に、わざとか疑ったがヨダレをみてその線は捨てた。

この状況が嬉しくないわけじゃないがどうにも照れ臭くて、はやくどうにかしたかった。


「うむむ…あたたか…い…むにゃ…」

「…もう少しだけ、寝かせてあげるか。」


カルミナが起きた時に俺が起きてても気まずいし、とりあえず寝たフリで対処するか。


それからカルミナが起きて、自分の状態に気付き、動揺するどころか人が寝てるのを良いことによりくっついて来たのは予想外だが…可愛いくて少し寝たフリを続けたのはしょうがないよな。



「タロウ、やっと起きたのね?もう日が暮れたわよ。ご飯食べに行きましょう」

「いや、ヨダレを拭かないと」


「ふふん!私には付いてないのよ?」

「そうだけど、俺の肩に付いてんだよ。擦り付けるから」


「す、擦り付けて無いわよ!な、何を根拠に」

「ゴメン起きてたけど、可愛くてつい…」


「~~~ッ!ついじゃないわよ!は、恥ずかしいじゃない!」

「まぁ、俺ももうなれたから遠慮しなくていいよ?」


「え、いいの…?じゃなかった、しませんー!」

「ははっ、とりあえずその話は置いといて飯行こうぜ。俺もお腹空いたし」


後ろでカルミナがブツブツ何かを言っているが気にしないで食堂へ行き、ご飯をいただいた。部屋に戻って来ても眠気がないしカルミナとしりとりでもしていたが、カルミナが考えながらも先に寝てしまった。


1人で目を閉じていると色んな事を考えてしまう。ルールトの事とかこれからの事とか。魔王についても考えてみたりする。容姿どころか名前すら知らない。魔族の住む大陸にいるのだろうが情報が無さすぎる。魔王というくらいだし強いんだろうがベリーさんより強い相手だとしたら今の俺に勝てるビジョンは見えない。

俺達二人がかりならベリーさんを抑えきれる気はするが油断すればまけるだろうし、早く強くならないと。そんな事を考えていたら、いつの間にか意識は睡魔に乗っ取られていた。





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「転移したよ in 異世界」 http://ncode.syosetu.com/n1888eg/ という物も書いてます!よろしくお願いします。 こっちはラブコメです! https://ncode.syosetu.com/n7917ej/ よろしくお願いします!
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