第54話 タロウ、隣の国へ行く
よろしくお願いします!(-.-)Zzz・・・・
やはり移動の時は暇でしょうがないらしく、使い魔のみんなは送還して、カルミナもシェリーフに必要な時には呼び出すからどこに行ってても良いと言っていた。
「地図上ではアクエスの居る森は隣の国だな。結構遠そうだ」
「ここから近い街ってどこら辺にあるの?」
「ええっと、国境の手前に街があるな。まぁ、そこまでもだいぶかかりそうだけと。」
「そこはリリーとトリーに頑張って貰いましょ。そう言えばちゃんと国境を越えるのは3国武道祭の時以来ね。」
「そうだな。本来なら入国料とか荷物検査とかで時間がかかるけどこの国に来るときは不法侵入しちゃったしな。」
「また移動すれば良いんじゃないの?」
「あれは行ったことある場所にしか移動できなくてな。ルミナスならどこでも行けるけど、移動した先で人に見られたら面倒だし止めておこう。前の時は偶々人が居なかったから良かったけどさ。」
「ふーん。便利だけど厄介な面もあるのね。まぁ、ゆっくりで良いわよ私は。」
それから5日以上の時間をかけてようやく国境付近の街へとやってこれた。
◇◇◇
「この街も入る時に検問しているのね…」
「まぁ、国境がすぐそこだし色々とあるんだろ。隣の国だからって仲が良いとは限らないからな。同じ国でも争ってる所もあるくらいだし…とりあえず並ぶか」
「そうね。こうしてみるとルールト国って平和だったわね」
「ああ、それは思うよ。」
1人あたりに2,3分くらいの時間をかけて検査が進んでいく。たまに荷物の多い奴が10分以上かかる事もあって、俺達の番が来るまで1時間以上は待った気がする。
「ようこそ、ポータル国の東の端の街イータスへ。早速荷物を調べさせて貰っていいかな?身分を証明出来るものは持ってるかい?あと、この街へ来た目的は?」
「荷物は食料くらいです。冒険者カードなら。目的は明日隣の国へ行こうと思うのでこの街で泊まっていこうかと」
「子供二人でかい?…!Cランク冒険者なら二人でも問題ないか。」
「ええ、修行の旅ですから。」
「うん。荷物も問題ないね。通っていいよ。」
「ありがとうございました。」
「まずは宿を探さないとだな。明日には出るし馬を泊められる所ならどこでも良いか。」
「そうね。荷物置いたら何か食べに行きましょう!」
宿は少し探したら見つかった。値段も丁度いいし、リリーとトリーをエサと一緒に預けて俺達はイータスの街を散策する。
「初めてくる街ってなんか…いいよな。」
「何よ、なんかって。でも、少しワクワクする気持ちなら分かるわよ」
「やっぱりこの街も店というか物を売ってる人が多いな。」
「そういう国だもの、人も集まれば物も集まるわ。」
「そうだな。…そうだ、ギルドに行って国境の先の国について調べないと。それ終わってから晩御飯にしよう」
「そうね。ついでに美味しい料理を出すお店も教えて貰いましょ。」
ギルドは今歩いて来た道の反対側にあった為、俺達は来た道を戻っていく。
この街は国境が近い為か、冒険者風の人やパーティーがトレーダスと同じくらいいてギルドも端にある街にしては大きな造りになっていた。
「結構混んでるな。帰って来て報告してる所かな?時間が時間だし」
「並ばない事には始まらないわよ。早く並んでおきましょう。」
たしかにな。受付は5つあるが5つとも順番待ちの列が出来ていた。その中でもマシな様に見える列に並ぼうとした時にほぼ割り込む様に男が入ってきた。
「おっと、坊主わりぃな。へへ、見えなかったわ」
「そうですか…今気付いたのなら早く退いてくださいませんか?」
「あん?なんだテメェ。俺様に文句あんのか?あ?」
ちっ、話の通じないやつか。言葉覚えたなら会話も覚えてこいよ。
「いや、いいです。」
「はっ、最初っからそう言えばいいってんだ。ガキは早く帰んな。」
無視だ無視。それにしてもこういう時にすぐ噛み付くカルミナが黙っている。成長したようで嬉しいよ。でも、物凄く顔に出てるからね。キレてるのまるわかりだからね?
「ぐぬぬぬぬぬ…」
「どうどう、よく耐えたなカルミナ」
「2度目は無いわ…」
「それはそうだな。ギルドで暴れる訳にはいかないが外なら話は別だ。」
前に割り込んできた男は周りの話を聞く限り、Bランク冒険者らしい。とてもそうは見えないが魔法か武器の扱いが上手かったりするんだろう。…やっと順番が回ってきた。
「本日はどのようなご用件でしょう。」
「明日、国境を渡って隣国に行こうと思うんで隣国の情報を教えてください。」
「銀貨3枚となります。資料をお持ちしますので少々お待ち下さい。」
「隣国の情報聞いただけで金とるのはここだけだよなぁ。」
「そういう国だから仕方ないわよ。」
「お待たせ致しました。持ち出しは禁止となっていますのでギルド内で閲覧をしてください。破損の無いようにお願いします。」
「分かりました、お借りします。」
どれどれ…隣国の名前はサンガーラ国というのか…。自然の綺麗な国で食料自給率もよくて、観光スポットも多く、観光客も冒険者も多いのか。えーっと、森にはエルフが居るため自然を破壊する行為は禁止でエルフを捕らえる事も禁止か。たまに居るんだよな見た目が綺麗なエルフを拐って売り飛ばす輩が。エルフは森と生きているから居なくなると森が荒れるというのに。
他にも国王の名前だとか街の名前だとか書いてあったがテキトーに読み流した。森に入る際は密猟者と間違われない様にしないといけないな。
「カルミナ、何か気になる事あった?」
「そうねぇ…エルフの事は書いてあっても精霊位置の事までは書いてないのね。」
「そうだな…広い森だからかな?それともエルフ以外は誰も知らないのか?静寂の湖…とりあえず森の中で湖を探し出さないとな。」
「エルフに案内して貰えれば楽なんだけどね。エルフの好きな食べ物とかで釣れないかしら…」
それなら楽なんだけどな…何かしら恩を売るとか。
「情報はこれくらいでいいだろ。これ返して何か食べに行こうぜ」
「そうね、お腹空いてきちゃったし」
資料を返却して、ついでに美味しい料理を出してくれる店を教えて貰い、ギルドから出た。教えて貰った店は個室がある少し高めの店だったが料理は美味かった。デザートのお持ち帰りが出来るらしく、幾つか包んで貰った。
宿へと戻って来てからリリーとトリーに果物をあげて、今夜は旅の疲れを取るために早めに就寝することにした。
◇◇◇
宿の裏手にあるスペースで日課の素振りをこなし、カルミナを起こして朝ごはんにする。食べ終わってから荷物を纏め、宿を引き払ってとりあえず国境へと向けて出発をした。
「ふぁ~あ。眠たいわね」
「まぁ、いつも行動するよりは早めに動いてるからな。この街を出たら国境までは止まらずに行きたい…リリー、トリー頼んだよ」
「ヒヒィィン!」
「ヒヒブルルゥ~」
入る時と同じで、出るときも多少の検査があった。この時間から馬車で移動する人は少なく、すぐに街を出ることができた。
国境へと繋がる道の上をリリーとトリーが走りだし1時間もすると、景色が草原からゴツゴツとした地面に変わって行って、さらに走ると人混みが見えてきた。どうやら崖や岩とか森のあるこの辺りが国境となっているらしい。街よりも更に厳しい検査が行われているらしく時間がかかりそうだった。
「朝から凄いな。どのくらい時間がかかるかね?」
「さぁね、でもリリーとトリーの休憩には丁度いいかもね。ここまで走りっぱなしだった訳だし。」
「そうだな、この後も走って貰うし休憩しながら順番を待つか」
俺達が最後尾に並ぼうとした時にまたアイツが現れた。
「おいおい、またオメーらか?じゃ、前は譲って貰うぜぇ?」
「ふっざけんじゃないわよ!!横から割って入るとか恥を知りなさい!」
「んだと、このガキが!誰に口聞いてんだよ?オイ!」
「知るわけないでしょうが、アンタみたいなルールすら守れない頭の弱い人なんて」
煽る…昨日の今日だからカルミナが相手を煽りに煽っている。
「おい、アイツBランクの『狂犬』ビストだろ?」
「あぁ、パーティーが肌に合わないとかでソロをやってる奴だ。あのお嬢ちゃん終ったな…」
「俺様に対して言うじゃねぇか…」
「あなたこそ誰に対してそんな口を聞いているのかしら?頭が高いわよ」
うおっ!?
急に体か重くなった気がする…これは…カルミナのユニークスキルか!『王族の威厳』。カルミナがパーティーとかで使ってる無意識じゃなくて、意図的に使っている所は初めて見たな。
「な…んだ、これ…は。」
「私の威圧に耐えられないくらいなら大した事無いわね。」
「ストップカルミナ。お前、シェリーフと契約したんだぞ?今までと違いすぎるって!俺でも体が少し重く感じるぞ。周りを良く見ろ、誰もが地面に膝をついてまともに立ててないだろ。」
「あっ!相手が少し狼狽えるくらいだと思ってたけど…違ったようね。この威圧のレベルはあの時のベリーさんに近づいたかしら?」
嬉しそうに言うが…初めてベリーさんに会って威圧された時の、本気を出してないベリーさんになら負けないくらいには威圧が凄かった。スキルを解いても周りの人間は肩で息をしている。
「くそ、はぁ…はぁ…なんだ、今のは」
「割り込みは止めて後ろから並びなさい。」
他の人も2人の力関係が分かったようでビストに早く行ってくれというような視線を投げつけている。
「くそ、覚えてやがれ!」
そんな三流の悪役みたいな台詞を吐いてビストは後方へと走って行った。並んでる前の人から順番を譲られそうになったが、それは丁重にお断りをさせて貰い順番が来るまで休憩をしながら待っていた。
「次の方、どうぞ」
「お願いします」
「馬車の中を拝見させて貰っても?」
「どうぞ、と言っても食料くらいしかありませんが」
「そのようですね…では、何か身分証明となるものはお持ちですか?」
「冒険者カードなら持ってます…カルミナ。あ…どうぞ、これ二人分です。」
「……その年でCランクとは驚いたね。それで、サンガーラへ行く目的は何だい?」
「あ、はい。今、修行をしながら旅もしていまして…サンガーラへは観光です。綺麗な自然や景色があると聞いたので。」
「うん…問題ないだろう。通っていいが、1つだけ注意を。知っているとは思うがサンガーラにはエルフが居る。エルフと敵対するという事はサンガーラを敵にするという事だ。自然を大切にな。以上だ。」
「ありがとうございました。気を付けます」
特に問題もなく国境を通過して、ここからはリリーとトリーに頑張って貰う。目的地はこのまま真っ直ぐの村より離れて、目的地の森から1番近い所にある街だ。夜までにそこまで行けたら上々だろう。
「リリー、トリー休憩にはリンゴも出すから頑張ってくれよ!」
「ヒヒィィン!」
「ヒヒブルルゥ」
少しペースが上がった気がする。この調子なら夜までには着きそうだな。
◇◇◇
「あっちゃ~…門が閉まってるな。」
「間に合わなかったわね。」
「ヒヒィィン…」
「ヒヒブルル…」
「リリーとトリーのせいじゃないよ。ここまでこれただけ十分だよ。ありがとうね」
「荷台で寝てもいいし、テントを貼ってもいいんだからリリー、トリー、気にしなくていいのよ。今日はみんな近くで寝ましょう?」
「ヒィィィン!」
「ブルルゥ~」
「よしよし、また後でリンゴを食べさせてあげるからな。」
「タロウ、これからの予定は…どうするの?」
「とりあえず、街で宿を取ろう。リリーとトリーを預けたら…森に行くか、街で情報を集めるか…どっちがいいと思う?」
「湖が森のどの辺かは知りたいけど…それもエルフに聞いた方が早いんじゃないかしら?少し街で話を聞いたら森へ行ってみましょう。」
「そう…だな。それがいいか。じゃあ明日はそんな感じで。今日はテント立てる?荷台で寝るか?」
「荷台で良いんじゃないかしら?うん。荷台でいいわ!」
「そ、そう。なら、ご飯の準備するからリリー、トリーにエサと水をよろしくね。」
俺はいつもの肉と野菜を炒めたモノをご飯に出して、二人でそれを食べた。食後にはデザートを食して今日はおしまいだ。上を見ると夜空に星が輝いている。今日は雲が少ないお陰か、見渡す限り星空だった。
「眠くなるまでは横になって星でも見ていようか。」
「うん!はぁ~…綺麗な星空ね。」
それからカルミナが寝落ちするまで二人で星を見ながらおしゃべりをしていた。
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