第53話 タロウ、カルミナと模擬戦をする
少し遅れました。今回は甘い部分もありますよ!
よろしくお願いします!
『タロウ、初めて聞きましたよ?そんな詠唱。』
「ごめん、何かそっちの方が盛り上がるかなって。」
『あ、あ…あなた様は…』
『久しぶりですね。シェリーフ』
『ど、どうしてここに…?今、召喚って…』
『私はタロウの使い魔ですよ。』
『つ、つ、使い魔~~~!!?タロウと言ったわね、どういうつもりよ!?ハ、ハルミナ様を使い魔ですって!?人間、度が過ぎますよ!』
『シェリーフ、その口を今すぐ閉じなさい』
『うっ……』
「ルミナス、別にいいよ。精霊からしたら普通の反応だろうしさ。たぶん、人間だったらもっと酷い反応だろうし。」
『分かりました。…シェリーフ』
『は、はい。』
『あなたはこの二人にナニか感を感じてますね。まず、このカルミナは精霊に好かれる加護持ちです。あなたが協力したくなるのはこの加護のせいでしょう。そして、タロウには私の加護があります。私を召喚出来るのは愛の成せるワザですが、私の加護がある事の意味を考えて今後の態度を改めなさい。』
『ハルミナ様の加護…そんな人間はこれまで居なかったはずです…。失礼しましたタロウ様。先程のご無礼をお許しください。』
「良いよ…って言うか、そんなに改まらなくていいよ?」
『いえ、そんな訳には…』
『タロウが良いと言っているのですよ?』
『は、はい!かしこまりました…タロウ…でいいのでしょうか?』
「タロウ、タロウ、この地に留まらなくて言いようにルミナスから言って貰って。」
「ルミナス、シェリーフはここに居ないといけないのか?」
『そうですね……シェリーフ、この地は貴女の創りだした中位精霊と下位精霊に任せてカルミナと契約し、私達の旅について来なさい。』
『はっ。承知致しました。カルミナ…こんな形になりましたが貴女に協力したい気持ちはあるのですよ。どうぞ私の力を使いこなして下さい』
「ありがとう。シェリーフ。では、契約を」
カルミナのオデコにシェリーフが口付けをした。これで契約は完了らしい。
「どうだ?何か変化はあったか?」
「うーん、いつでもシェリーフを呼び出せる様にはなったみたい。シェリーフは風になる事も出来るし、実体化も出来るみたい。今の姿が実体化の姿ね。あと…ほら、右手の甲に模様が」
カルミナの右手の甲の真ん中あたりから、上に向けて波線の模様が1本浮かんでいる。これ、他の精霊と契約すれば増えるのかな?え…カッコ良すぎない?
『その模様は私達、上位精霊との契約の印。今まで数度だけ契約したことがありますがこんなに力を浸透させる事ができる器は初めてです。』
「カルミナ、森を出たらさっそく試して見よう…シェリーフの力を」
「そうね。上位精霊の力なんて全然想像も出来ないわから楽しみね。」
◇◇◇
森の外への帰りはすんなりと帰ってこれた。シェリーフが道案内をしてくれたからだ。
「ピヨリ、アトラス、ただいま。」
『ご主人様ッピ!早かったッピ!それより、アトラスを止めて欲しいッピ!』
アトラスを止める?暴れてる訳でもなさそうだけど…まさか!
「アトラス!」
『もう、食べられないぞ~』
我慢しきれなかったか…置いていった食料を全部食べてしまっている。お菓子は最後に食べる予定だったのか、まだ残っているが。
「食べちゃったのか?アトラス」
『うん…お腹空いちゃったぞ~…』
『止まることを知らなかったッピ!ルミナスが居なくなってから食べ始めたッピ!ピヨリじゃ止められなかったッピ!』
「いいよ、気にするなピヨリ。アトラスは食いしん坊だからな。その分いつも助けて貰ってるし、今回はアトラスも気にしなくていいよ。」
『分かったッピ!』
『主は優しいぞ~…アトラスもこれからもっと頑張るぞ~』
反省はしないでその分これからも頑張るというのがアトラスのスタイル。嫌いじゃないよ。さて、戻って来た事だしカルミナと一戦交えますか。
「ピヨリもアトラスも手伝ってくれ。カルミナが無事に風の精霊と契約出来たから、今から力試しをする予定なんだ。」
『それは良かったッピ!』
『お~』
カルミナがシェリーフと何かを話し合っている。俺達も作戦会議といくか。
「はい、まずはカルミナの攻撃を防ぐ事を中心にしたいと思います。まずは俺だけで防げるか試す。無理そうならルミナスと二人がかりでいく。ある程度攻撃を防ぎきったら、ピヨリは空からアトラスは地上から攻撃だ。」
『分かりました。ですが、少し上位精霊を甘く見ていませんか?シェリーフは、言うなればこの世界の風の概念ですよ?契約者の器によって能力は下がるでしょうが、カルミナなら下がるとしても十分強いと言って良い能力となるでしょう。』
「今回、カルミナが精霊の力を十全に扱いきって俺を負かすならそれはそれでいいと思ってる。まぁ、簡単には負けてやらないけどね。まだ、俺はカルミナの目標でいたいしな。」
『タロウの考えは分かりました。ピヨリ、アトラス、まだ私達は負けるわけにいきませんよ。いいですね?』
『もちろんッピ!』
『頑張るぞ~』
こっちの作戦会議は終わった。…どうやら向こうも終わったようだな。俺達は無言のまま距離を取って向かい合う。カルミナとの試合は学園で模擬戦をして以来だな…楽しみだ。
「カルミナ~いつでもいいぞ~」
「呑気なものね!もうとっくに始まってるわよ!」
何を言って…いっ!!
「アイスウォール!!…くそ、カマイタチか?頬や腕が切られてるな」
「憎きアイスウォール…行くわよシェリーフ!」
『お任せを…』
パリ…パリ…
「アイスウォールが削られていく…あれって初級の魔法だろ?威力が今までと段違いだな。これは…壊されるか。」
俺はアイスウォールを残して横に走り出す。バリン!とアイスウォールが破壊される音を背中で聞きながら、どうするか考える。
「やったわ!遂に破壊したわよ!シェリーフ!」
『喜んで頂けたようで良かったですがまだ倒した訳ではありませんよ』
「そうね、頼むわよシェリーフ!」
『えぇ、私を使いこなしてみせなさい』
カルミナからどんどん風の魔法が飛んでくる。
「アイスドーム!ウイングドーム!」
自分を覆うドーム状のアイスウォールに風のコーティングをする二重構造の防御壁だ。相手が風なら外側のウイングドームで散らしてアイスドームで完全に止める。これならさっきまでの攻撃も防げるだろう。
「基本的にタロウには苦手な魔法がない…ホントに厄介よね…シェリーフ、何か方法は無いかしら?」
『任せてください。圧縮』
攻撃してくる様子がないな…ん?水滴が…あれ!?俺のアイスドームが溶けてるぞ!?どういう事だ?
パリ…パリ…
くそ、しかもまたヒビが!何されたかわかんねぇ…風だろ?風でどうやってこんな現象を?熱風か?でも、そうするとヒビの理由が分からないぞ。
「ルミナス!」
『任されました。』
ルミナスが何かをしてくれたみたいで氷が溶けるのもヒビが入るのも止まった。これは後で聞いてみよう。何かに使えるかもしれない。
『流石はハルミナ様ですね。どうやら地上では力が落ちているみたいですが』
「ルミナスはね、タロウと同じ強さよ。タロウが成長すると一緒に強くなるみたいなの。」
『…カルミナ、1つ聞きたかったのですが、先程から言っているルミナスと何ですか?ハルミナ様の事なのですか?』
「タロウがね、ハルミナ様を召喚した時に名前を付けたのよ。妖精の姿の時はルミナスって。」
『なるほど、それなら私もルミナス様と呼んだ方がよさそうですね。…っと、カルミナ、そろそろいきますよ。今までのは肩慣らしです。長々とやる必要はありません。今出来る1番強い技でいきましょう。』
「ええ、行くわよ! 吹き荒れろ 吹き荒れろ 吹き荒れろ 全てを呑み込み吹き飛ばし暴れろ!風の暴力の化身! 風の鷲獅子」
は……?
なんだ…あれは?風なのにハッキリとグリフォンの姿が見えるぞ。翼が生えたあれだ。バチバチと音が聞こえてくる所をみると空気を相当回転させて電気を発生させているのかもしれない。あれは、ヤバい!
「ピヨリ、アトラス!俺の後ろに…ルミナス、今の魔力の全部を使え!生半可な防御じゃ、突破されるぞ」
『分かりました…詠唱をします。タロウはあれの勢いを少しでも削ってください。』
「殲滅魔法 火 土 風 岩流星!岩流星 岩流星 岩流星 岩流星!!!」
『この力は守るため 持てる力の全てを守りに 如何なる災難からも守り通そう。多重結界 守護堅牢』
『ゴオォォォォォォ!』
「いっけぇぇぇぇぇ!」
「負けるかぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」」
◇◇◇
「痛ぇ…死ぬぞ…模擬戦なのに死ぬぞこれ…。」
「タロウ、大丈夫?」
結果からしたら引き分け…かな。俺はまだ立ってる…ちょっとボロボロだけど。
『タロウ、また少し強くなった気がします。魔力をおもいっきり使ったからでしょうかね。』
『今出せる最大の技を出したつもりですが防がれましたか…凄いですね』
とりあえず回復薬を飲んで休憩をする。こっちが攻め入るタイミングが無かったが今回の模擬戦でカルミナの戦力が大幅に上がったのを確認出来た。上位精霊1体でこれである。魔力に限界が有るとはいえ、他にも精霊の力が加わったら強くなりすぎるんじゃないだろうか…。や、ヤバくない?俺の立場的なあれが。
「よ、よし…反省会と言うか戦いを振り替えってみようか。」
「そうね、まずシェリーフの事だけど。シェリーフは風。風そのものね。風が吹いてる所ならどこに居ても召喚出来るわ。」
『私達精霊は契約者の魔力に精霊の力を加える事で契約者の力となります。カルミナは凄いですね…魔力が良いですよ、力が浸透し易いです。』
「最初のカマイタチは気付かなかった。前なら風のブレで分かったんだけど、なめらか過ぎて気付かなかったぞ。」
「私自信も戸惑ってるわ。下位精霊と何もかも違いすぎるんだもの。」
「次はあれ、俺が二重の防御を張った時に氷が溶けてきたんだけど。あれは?」
『あれは、空気と風の圧縮です。空気を圧縮させて熱を発すると同時に風の圧力で氷を押し潰しました。』
なるほど、なるほどなるほど!圧縮か。これは使えるぞ!
「うんうん。風魔法の使える幅が広がるな。それで、最後のグリフォンだけど…ヤバくないか?なんで風なのに形が見えるんだよ」
「不思議よね~」
『カルミナ、先程も説明したでしょう。あれも圧縮の1つです。空気を圧縮に圧縮を重ねた際にでる熱が変化したものだと。グリフォンサイズにすると流石に魔力が尽きますね。今度からは両手サイズにしましょう。』
プラズマってやつの一種かな?よく分かんないけど…これも使える技術だな。1回の模擬戦でここまで色々と吸収出来るとは思わなかった。
「ルミナスも最後の結界凄かったな。助かったよ」
『破られてしまいましたけどね。ですが魔力も上がりましたし、次は止めてみせます。』
「どう?タロウ。私は」
「上位精霊は強い。それと契約したから強いのは分かった。でも、それだけじゃここまで強くないはずだ。これまでの頑張りがあったからこんなに強いんだと思う。俺も鍛え直さないとって思ったよ。」
「へへ、ありがとうタロウ。」
『何ですか?顔がふにゃけてますが、カルミナはタロウが好きなんですか?』
「……」
「……//」
『シェリーフ、人とは難しいモノなのです。』
『はて?よく分かりません。好きなら好きと伝えるべきでは?』
『その意見はわかりますが、複雑なのですよ人って。あと、私はタロウが好きです』
うん。まぁ…ね。そこはほら、ね?あるでしょ?タイミングとか。
カルミナも顔が赤くなってるし、ね。ルミナスのはいつも通りだから置いておくとして、シェリーフは追い打ちをかけないで欲しい。
『こういうのは男の方が攻めるモノではないのですか?ルミナス様。』
『タロウは恥ずかしがり屋なのですよ。私にもまだ何も言ってきません。照れているのです。まぁ、もう少し男らしくなって欲しいとは思いますが…。』
「……」
「……ぷっ。」
あ、あぁ…なんかすいません。カルミナも期待の眼差しで見ないで頂けると助かります。え?何この空気。落ち着いて、一旦、落ち着いて考えてみようか。
ルミナスは俺が好きで、俺はルミナスを頼りにしてる。…普通だな。うん。
カルミナはたぶん俺が好きで、まぁ、俺もカルミナは好きだ。……好きなんじゃん俺…。
あれ、何か…恥ずかしいぞ。前世が21歳でこの世界に来て11年。21歳より上の経験をしている訳じゃないから精神的に32歳とかではない。よくて21+この世界での経験だ。前世で恋愛経験も多い方じゃないし。言うなら片想い以上の事は何もない。
どうしたらいいんだろ?こういう時って。告白するのか?いや、でもまだ11歳だぞ?こっちの世界は危険が多いから、結婚する年齢は早い。おかしくはない…のか?あれ、混乱してきたぞ?どうしようどうしよう…
ふと、カルミナを見てみると深呼吸をしておもいっきり息を吸い込んでいる……
「タロウーーー私はータロウがーー好きよーーーー!!」
カルミナが息を整えながらも赤くなった顔でこちらを見ている。
…逞しいよ。ホントに。
俺もすぅーっと息を吸い込めるだけ吸い込んだ。
「俺もーーカルミナがー好きだーー!!」
見渡す限り何もない草原へ向けて自分の想いを叫んだ。言ってみればなんて事ない。スッキリとした気分になるだけだった。出会ってからカルミナを意識し始めて悩んでた時間の分、今は凄く良い気分だ。
「タロウ…えへへ。嬉しい」
「ちゃんと言葉にはしとかないとな。ま、カルミナが叫んでくれたから気持ちが固まった部分はあるけどね。」
『世話が焼けますねタロウ。これからもタロウはカルミナの尻に敷かれる事になりそうですね。』
それは言わないでおくれ、ルミナス。薄々気づいてるから。
「タロウ………チュッ」
「ん!?…カ、カルミナ!?」
「今度は回復薬のない普通のキス。やっとタロウの気持ちを知れたから。へへ。」
それから少しの間、シェリーフにからかわれながらも甘い空間を作り出していた。
◇◇◇
「んん、なんか恥ずかしいけど、無事に風の精霊シェリーフと契約出来たし、予定通り次の精霊を求めて出発しようか。」
「うん!次はどこの精霊を?」
「南東にいる水の精霊に会いに行こうと思う。」
『水の精霊…アクエスですね。たしか湖の管理をしている筈です。』
水の精霊はアクエスと言うのか。
「シェリーフ、そのアクエスはカルミナと契約してくれそうな性格なのか?」
『精霊1の静な子ですよ。ルミナス様が出れば何の問題もありませんがカルミナだけでも問題ないと思います。』
そうか、それなら精霊の元まで行ければ、すんなりと話は進みそうだな。
『ですが、あの森は静かで綺麗な森ですからね。たしかエルフが住んでいた筈です』
「エルフか…精霊が大丈夫だとしてもエルフが何て言うかな…。とりあえずありがとうシェリーフ。それじゃあそろそろ行こうか。リリーとトリーの準備も良さそうだし。まずは村か街を目指して出発だ!」
「おー!」
迷いの森でシェリーフというカルミナだけじゃなく、仲間である俺にとっても頼もしい精霊を加えて、俺達は次の精霊の元へと出発した。
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