第51話 その頃のルールト王国
閑話的な話で短めになっております。
「補助魔法 攻撃力上昇!」
「んっ!」
「ありがとうキスカ。いいタイミングだった。」
「いえ、ハルさんこそ攻撃を任せてしまって申し訳ないです。」
私とハルさんはタロウさん、カルミナ様から手紙を貰った日から一緒に強くなろうと決めてダンジョンに潜っています。ダンジョンに入れるのはハルさんがDランクになってくれたお陰ですね。
「ハルさん!足を…」
「大丈夫。少し引っ掻けただけ。」
「傷口を放置してはダメですよ。薬を塗ってあげますから。」
「遠慮する。キスカの薬は効くけど痛い。」
私は薬の調合を勉強しています。私は戦う事は苦手ですから何か自分に出来ることを探した時に植物採取が真っ先に出て来て、そこから薬の調合にたどり着きました。私の採取した薬草は品質が良いと褒められたのを思い出して、仲間が傷付いた時に私の薬が役に立てばいいなと考えたのです。ハルさん曰く、どうやら良く効くらしいのですが…他の薬よりしみて痛いらしいのです。
「これで大丈夫です!歩けますか?」
「元々そこまで酷くない。キスカは過保護」
「ち、違いますよ!これしか私の出来ることはないんです。」
「そんな事無い。キスカは色々と出来る。キスカが待っていてくれるから帰らなきゃと思える。きっとタロウさんもカルミナ様もそう。」
「そ、そんな事…ですが、くよくよはしていられませんね。」
「そう。じゃあ行こうか。虫ダンジョンの攻略も最後のボスだけ。」
「待ってくださいよ~、酸瓶、毒瓶、火炎瓶、他にも準備はあるんですからぁ~」
「…キスカは物騒になりすぎた。タロウさんに会わせる顔がない…」
「ん?ハルさん今何か言いました?」
「気のせい。次のボスは私が倒すから補助魔法をかけれるだけお願い。私のメイスにも。」
「分かりました。では行きましょうか。」
その日、ルールトのギルドでは女の子ペアの虫ダンジョン攻略祝いが盛大に行われた。
「タロウさん、カルミナ様、私達も強くなりますからね。お二人が帰ってくるまでこの街は私達に任せてください。」
そんな私の声は夜空へ吸い込まれるように消えていった。
◇◇◇
「お、ベリー…今回のクエストはどうだった?」
「ギルド長…なんでござるかあのクエストは!?頭がおかしいのでござるか!?」
「おいおい…何があった?お前が受けたのはワイバーンの討伐だろう?」
「あれはもうワイバーンじゃないでござる!強化種でござるよ!強化種!群れの強化種とか死ぬところだったでござる…」
「情報ではそんな事無かったぞ…ちょっと抗議だしてくる。報酬も上乗せしとくからとりあえずはそれで」
「はぁ…妹に会いたいでござるなぁ。最近タロウ君とカルミナさんは居ないし…ハルちゃんとキスカはちゃんによれば旅に出たとか…」
旅か…旅…旅!そうでござる!拙者も旅に出ればいいでござる!久しぶりに故郷へと妹に会いに行くでござるよ…報酬も上乗せしてくれるらしいでござるからお土産も買っていくでござる!
「ベリー、これ追加の報酬だ。」
「助かるでござる。…拙者もちょっと故郷へと帰るでござるよ!妹に会いに旅をする事にしたでござる!」
「なんだと!?おい、お前が居なくなったら誰が高ランクのクエスト受けんだよ!おい、ベリーー!」
「冒険者を育てるでござるよ~、ではこれにてドロンでござる。」
私は妹の好きな果物やアクセサリーを買い漁り、我が故郷ジパンヌへと走り出した。
「すぐ帰るでござるからなぁー桃!」
◇◇◇
「今年の三国武道祭はこのルールトで行われます!その代表になった選手をご紹介します!圧倒的な魔法でAグループを勝ち上がりました5年生 キール選手!」
「速さとパワーを兼ね備えています。Bグループ代表5年生 ウルフィン選手!」
「剣の腕は学校1!Cグループ代表5年生 ショーイ選手!」
「魔法も棒も得意な風紀委員長!Dグループ代表4年生 ニーナ選手!」
「最後は昨年と同じ1年生ながらトーナメントを勝ち上がりました!キール選手の妹で得意な弓と魔法で相手を圧倒する。Eグループ代表1年生 ミール選手!」
今年の代表選手が登壇して紹介され生徒からは大きな拍手を集めた。その中でもやはり1年生のミールには相当の期待がのしかかっている。主に去年の代表のせいだが。
1ヶ月後に控えた武道祭に向けて代表選手達は自主練に励む。開催国でしかも連覇がかかっているから選手は皆気合いが入っている。
「お姉ちゃん、ウォンド王国とコフィン王国で強い選手ってだれ?」
「両方とも5年生が卒業したからメンバーが変わっていると思うけど、ウォンドのスターバ、コフィンのコイン…この二人は去年1年生。つまり今年も出てくるし強いよ。」
「タロウとかいう先輩は去年どうだったの?」
「タロウ君は凄かったよ。コインには勝ってたし、スターバには戦う事を拒否されてた。まぁ、大規模魔法で会場をボコボコにしてたからね。」
「キッ!実力があるのがムカつきますね!負けてられません!お姉ちゃん休憩は終わりです!続きをやりますよ!」
「ふふっ、はいはい。私も嫌いなウルフィンとやっていくストレスがありますから手加減はしませんよ!」
その年のルールト王国はギリギリの戦いの末になんとか優勝出来たが、ミールはスターバとコインにおもいっきり負けてしばらく落ち込む事になった。逆にスターバとコインはタロウが出てない事に安堵したが、タロウをライバルとファン1号として会いたかったが為に少し寂しそうだった。
「タロウ君、次戦える時は勝ってみせるから!」
「私のファン1号!早く迎えにきてよーーー」
◇◇◇
「父上、この書類なんですが…」
私は仕事のほとんどを領地を継ぐ息子ウイングに任せている。私がするのは最終確認と分からない事の助言くらいなもんだ。空いてる時間は妻のカリナやウイングの妻になったセルミナとお茶をしたり趣味に没頭したりしている。
「どれどれ……うむ、これなら問題あるまい。」
「そうですか、ならこの予定で進めますね。」
「あなた、少し休憩してはいかがですか?」
「そうよウイングちゃん。ほら、お茶を淹れてくるから座ってなさい」
「いや、しかしまだ仕事が…」
「ウイング、仕事を人に任せる事も上に立つ人間には必要な事だ。」
「はぁ…そ、そういうことなら。」
とは言ったものの、本当はどっちにしろカリナが強制的に休ませるから深い意味はない。タロウが旅立つという手紙が来てからカリナは家にいるウイングとセルミナをいたく可愛がるようになった。カリナは元々子供達に甘いのにそれに拍車がかかってしまっている。こんど家で飼えるペットでも探して来ようか…少しくらいはウイングとセルミナの時間も増えるだろう。私も早く孫をこの腕で抱きたいと思っておるからな。
「父上、タロウの事ですが大丈夫でしょうか?アイツはまだ11ですし…」
「心配は要らんよ。カルミナ様という守らなきゃいけない方と一緒だ。そういう男は強いものさ。」
「そう…ですね。タロウがいつでも帰って来て良いようにこの領地も賑やかにしていかないとですね。」
「どうやら、魔族の動きが少しずつ活発になっているらしい。いつぞやか魔王が力を取り戻し動き出すかもしれん。ウイング、お前らの時代は何かと荒れるだろう。それを見越して動きなさい。領民は守るのだぞ」
「はい。心得ております。」
「ウイングさん。私も微力ながら力添えいたしますわ。」
「セルミナが居てくれれば百人力だよ」
「おやおや、これは年寄りはお邪魔かな?私はカリナと散歩でもしてくる。二人でゆっくりするといい。」
二人に子供が出来たらこの領地も安泰だな。後は私に出来ることで息子達の後押しをしてやろう。
先当たって、まずはカリナの甘えん坊を治さないとな。
もう1つの作品、「転移したよin異世界」も更新しますので、よろしくお願いいたします
(´ω`)




