第47話 タロウ、クエスト報酬に驚く
よろしくお願いします!
暗くなる前にはなんとかトレーダスの入り口にまでやってこれた。
「大きな街だなぁ…ルールトの王都よりは少し小さいくらいか?」
「人が集まるから自然と少しずつ大きくなっていったのね、きっと。」
「この時間だと街に入る時の荷物チェックもすぐ出来そうね…とは言っても、馬の道具とかしか置いてないけど。」
「そうだなぁ、狼の毛皮でも一応は置いておくか?何もないと逆に変だし。」
「そうね、ブルートさんから預かった荷物はギリギリまで出したくないし…適当に置いておくわ。」
「任せた。」
夕方から街を出る人は少なく、逆に入る人はそこそこ居たが門番さんを増やしてるみたいで順番はすぐやってきた。
「街へ来た目的は?」
「旅の途中で情報を求めて来ました。」
「荷台も調べさせて貰うよ?…これは毛皮だね?うん、これなら問題ないな。ようこそ、トレーダスへ!」
「ありがとうございます…すいません、冒険者ギルドの場所とミシラン商会の場所を教えて欲しいのですが」
「もちろんいいとも!ギルドとミシラン商会は距離が近い所にあるからすぐ分かると思うよ。この道を真っ直ぐ行って、噴水のある広場に出たら左に曲がると少し進めば見えてくるはずさ」
「ありがとうございました!行ってきます」
門の所に居た衛兵さんに言われた通りに進むと左にミシラン商会で少し進めば冒険者ギルドがあった。まずは馬を止めないとな…
「カルミナ、馬って何処に停めたらいいの?店の前で良いのかな?」
「私達2人共馬から離れるから…先に宿を探して置いてきた方がいいかも知れないわね。」
「なるほど…それもそうだな。」
宿は少し進めば1つは見つかる程に沢山あった。馬も泊められる宿は少し減るけど探してたら簡単に見つける事ができた。
「『風は旅びと』って宿か…すいませーん。馬車もあるんですが空いてますか?」
「いらっしゃい、ママー!お客様が馬小屋空いてるかって!」
接客してくれているのは娘さんだろうか?俺達よりは少し年上そうなお姉さんだった。
「大丈夫だよ!でも、部屋は一部屋でお願いしておいておくれ」
「…って事なんだけど君達大丈夫かな?」
「大丈夫よ!それで1泊いくらかしら?」
「ええと…馬達の分を含めると3食付きで1日銀貨5枚だけどどうなさいますか?」
五千円か。良心的な値段だな。情報集めもあるし、クエストも受けないといけないから…
「とりあえず7日くらいにしておくか?」
「そうね、もっと居るようなら追加で払えばいいしね。」
「7日ね!えっと…」
「大銀貨3枚と銀貨5枚ですかね?」
「そう!僕、頭いいのね。じゃあ確かに。部屋の鍵はこれね。馬達は裏に回してちょうだい。水はあるけどエサは各自でお願いね。」
「分かりました。カルミナ、リリーとトリーを連れてくから待っといてくれ。」
「分かったわ!」
リリーとトリーを馬小屋に連れていき、おやつには少し遅くなったけど、リンゴも置いておいた。
「リリーもトリーもいい子にしておくんだぞー。」
「ヒヒィーン!」
「ヒヒブルル!」
宿の入り口にまで戻ってきてカルミナとミシラン商会のある方へ戻っていった。
「この店はリルターナ支店より広いなぁ。さすがポータル1の街にあるだけあるな。」
「そうね…たしか、バミュールさんって人に会えばいいのよね?」
「店員さんに聞いてみるよ……すいません、バミュールさんはいらっしゃいますか?」
「店長ですか?すいません、何の用事でしょうか?」
「リルターナのミシラン商会から荷物を持ってきました。これ、ブルートさんのサイン入なんですけどバミュールさんに見せろと言われた紙です。」
「リルターナから?…って言うことはアイテムボックス持ちですか?すぐに店長を呼びますから裏の荷物置きまでついてきて貰えますか?」
「分かりました。」
「お待たせ、あんた達がブルートの使いだね?サインが入った紙は見たよ、商品のリストを貰えるかい?」
「あ、はい。これです。」
「ふむ……んん!?あんたらこんなに持ってきたのかい!?凄いじゃないか!まずは海産物から確認するよ、こっちの部屋まで来ておくれ。」
俺とカルミナは例の少し寒い部屋でバミュールさんが言う商品を出していった。1つ1つの箱を確認しながらだから時間はかかったが、間違いなく商品を運んだ事が確認できたのでバミュールさんからお褒めの言葉とサインをいただけた。
「今回はご苦労だったね。そのサインをギルドに提出したら報酬が貰えるからね!少しばかり奮発したよ!ふふ、うちの店と契約しないかい?」
「ははは、ブルートさんにも言われましたよ…でも、旅の途中なんですいません。」
「ならしょうがないね。うちに来たときにはサービスするからまたクエストを受けておくれ。」
「分かりました、その時はよろしくお願いいたしますね。では、失礼します。カルミナ、ギルドに行こうか。」
「そうね、もう1つのクエストも報告したいしね。」
「では、そのうち買い物に来ますね」
「いつでも待ってるよ!」
バミュールさんと挨拶を交わし、すぐ近くのギルドまで歩いていく、外はすっかり暗くなっていた。
◇◇◇
ギルドに来るとギルドに併設されている酒場で冒険者達が酒を手に今日の報酬の話で盛り上がっていたり、馬鹿話で笑いあっている。
「おい、ガキ共がこんな時間にどうしたんだぁ?迷子にでもなっちまったのかぁ~?ガーハッハッハッ」
「なわけないでしょ、クエストの報告に来ただけよ。」
「はっ!仮免冒険者のガキは稼ぎが少なそうで可哀想だなぁ、おじさんが奢ってやろうか?ガハハハハ」
「ふんっ。高級店に連れていけるようになってから出直しなさい。」
「ははっ、ジャガーのやろうが言われてやがるぜ!」
「ジャガーの稼ぎじゃ、高級店なんて10年かかっても無理だよな!ガハハハ」
仲間の冒険者達からもからかわれたジャガーという男が顔を赤くしてカルミナに余計に絡んでいく。酔っぱらいを怒らせるとロクな事にはならないし、ここはカルミナに任せて俺はクエストの報告へ向かった。
「すいません。クエストの報告いいですか?」
「あの…あの子凄く言い争いしてますけど…」
「あ、大丈夫です。この紙とあとこっちは別のクエストですけど小包を運んで来ました。」
「そうですか…はい、お預かりします。……えぇ!?ミシラン商会のクエストですか?報酬が…なるほど、少しお待ちください。小包の分の報酬も一緒にお持ちします」
受付のお姉さんが報酬を取りに行ったと同時に後ろの争いもヒートアップし始めた。
「ガキが調子に乗りやがって!俺様はCランクの冒険者様だぞ!テメー等、下っぱは下っぱらしくヘコヘコしてろや!」
「あんたみたいなのがいるから冒険者がナメられるのよ!」
「んだとぉ~!?」
「なによ!本当の事でしょ!?」
あーあ、引っ込み付かなくなってやがるよ…頑張れカルミナ。
「お待たせい致しました。ギルドカードをお預かりしてもよろしいですか?ミシラン商会からの報酬として、Cランク未満の場合ランクを1つ上げさせて頂きます。それと金貨5枚の報酬も出ております。」
え!?ランクアップ!?
荷物運びでランクアップと50万か…やっぱりヤバイんだな、ミシラン商会って。
「では、お願いします。カルミナ!Cランクに上がるからギルドカード貸してくれ!」
「ホント!?見なさい、これで私達もCランクよ!仮免冒険者ですけど!オーホホホ」
カルミナのギルドカードも一緒に渡して、俺達は今日からCランク冒険者になった。ジャガーがめちゃくちゃ睨んでいるが、酒でも飲んで忘れて欲しいな。恨まれる前に…って、パーティー皆して睨んでるな。あぁ、少し遅かったかなぁ…一応の保険でも用意しておくか。
「カルミナ、落ち着けって今日は宿に戻ろう。精霊の情報は明日からにしよう。」
「そうね!戻りましょう!」
俺はそそくさと、カルミナは堂々とギルドから出ていった。
◇◇◇
「クソッ!あんなガキにナメられるなんて腸が煮えくりかえってしょうがねぇ!」
「確かにな、でも女の方はありゃ美人になるぜぇ?」
「男の方はヒョロっちかったな!ゲハハ」
「へへ、そうだなぁ…先輩冒険者の俺様達が色々教えてやらねぇとなぁ。」
「どうするんだ?次ギルドに来たときに後をつけるか?」
「捕まえたらどうする?売るか?それとも楽しむか?」
「十分楽しませて貰ってから売ればいいだろう…へへ、あいつの苦痛に歪む顔が早く見てぇぜ。」
「明日からアイツらをつけようぜ。…ん、なんだこの小さい虫は。シッシッ」
「お前が酒クセーから寄ってきてんだろ?」
「チッ、しつこい虫だぜ」
その後も男達は酒を飲みながら話し合いを続け計画を練っていった。
『やれやれ、ゲスはどこにでも居ますね。タロウの元に戻りますか。』
◇◇◇
俺達はギルドを出て宿屋『風は旅びと』へ真っ直ぐ帰って来た。娘さんが出迎えてくれてすぐ晩御飯を用意してくれるらしく食堂へ案内された。
「うちは日替わりでメニューを組んでるから注文は出来ないからね!その代わりおかわりは1回だけはタダだから。」
「分かりました。ここって軽食とかって作ってくれるんですか?」
「別料金はかかるけどね、出掛ける時なら30分前には注文を入れて欲しいかな。」
「分かりました。…あ、リリーとトリーにもエサをやらなきゃ!カルミナ、先に料理来たら食べててくれ。すぐに戻る」
「分かったわ、リリーとトリーによろしく。」
「リリー、トリーお待たせご飯だよ。」
『タロウ、今帰りました。』
リリーとトリーにエサと果物をあげていると保険として置いてきたルミナスが帰って来た。ん?どこだ?
「あれ?ルミナス?」
『あぁ、すいません、少し小さくなっていたもので。……これでいつも通りです。』
「肩にいたのか、それで?どうだった?」
『なかなかの下衆でしたね。タロウをヒョロそうだなんて…本来ならあの場で消し去っている所です。やはり今からでも…』
「ストップ!ルミナス。他には何か言ってなかった?」
『そう言えば…明日から尾行するだの、カルミナで楽しんで売るだの言ってましたね』
ルミナスよ、そっちの方がどう考えても話のメインじゃんよ…俺のヒョロさはこの際どうでもいいんだよ…。
「そうか、ありがとうルミナス。戻って一緒にご飯にしようか」
『いいのですよタロウ。その前に、リリーとトリーがもう少し果物が欲しいと言っていますよ?』
「ヒヒィーン!」
「ヒヒブルルゥ~!」
ルミナスの言う通りらしいので果物を追加で食べさせて俺も食堂へ戻ってきた。たった今俺の皿へ野菜を移してるカルミナを見たが、見なかった事にしとこう。
「カルミナ」
「…!?タロウ!お帰り、たった今ご飯が運ばれてきたわよ」
「そう…なんか俺の野菜多くない?肉少なくない?」
「そ、そそ、そうかしら?気のせいだと思うけど?い、いただきまーす。」
「次からは野菜もちゃんと食べるんだぞ~。そうだ、明日から今日ギルドで言い争っていたパーティーに尾行されるから気をつけておけよ。」
「何それ!どういうこと!?」
「酒が入っていたとはいえお互いに言い合っていただろ?それで頭に来たんじゃないか?捕まったら酷いことされる上に売り飛ばされるぞ?」
「私も結構言っちゃったけど…それはお互い様じゃない!」
「今回は相手がCランク程度だから良かったけど、上のランクのパーティーとかギルドに登録をしてない強者に絡むのは止めてくれよ?大人数で来られたら守りきれなくなるかもしれない、いいね?」
「わ、分かったわよ。気を付けるわ…それで、今日のやつらはどうするの?」
「明日はまずギルドで精霊の情報を聞くだろ?場所によっては準備もしないといけないから、その為の資金集めとして数日はクエスト受ける事になると思う。それによって変わるけど、街の中にいる時は細い道、裏道には出来るだけ入らないようにして、街の外に行く時はリリーとトリーで走っていこうと思う。」
「戦わないの?」
「場合によっては戦うけど、避けれるなら出来るだけ避けたい…かな」
「ごめんね、タロウ」
「カルミナは見た目が良い。これからも男に絡まれる事が増えていくだろう。上手くあしらう方法を覚えてくれよ。」
「えへへ。見た目が良いって。あしらい方なら大丈夫よ。任せておいて、秘策があるんだから!」
カルミナの秘策とやらは教えてくれなかったけどあるならそれでいいか。
空になった食器を宿の娘さんが持っていってしまったので俺達も部屋に戻ってきた。寝る前に部屋と自分達に清潔魔法をかけて、皆を召喚して今日も雑魚寝で皆と共に眠りに着いた。
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