第46話 タロウ、馬を手に入れる
よろしくお願いします!誤字脱字の報告もお待ちしております!(´ω`)
朝目が覚めると、口元にヨダレを垂らしたカルミナの顔が目の前にあった。
「カルミナ、ヨダレ出てるぞ」
「……じゅる…スースー」
「はぁ…」
俺は口元を拭いてあげてカルミナを起こしてあげた。ピヨリもアトラスも起こしてあげる。ルミナスだけは俺が起きると同時に起きていた。
「ん~~っ!良く寝たわ!おはようタロウ」
「おはようカルミナ、お前あれな、寝るとヨダレは出すし髪も爆発するんだな。」
「そ、そんな事無いわよ!髪は…しょうがないじゃない!でも、ヨダレは無いわよ!ほら、見なさいよ…う~…」
「どさくさに紛れて人の唇に自分のを押し付けようとするなっての!そしてヨダレは拭いてあげたんだ」
「あたっ!別に狙ってなんか無いわよ!ちょっと間違っただけなんだから!あと、ヨダレはありがとう」
カルミナも無事ヨダレを認めた所で部屋に清潔魔法をかけて、俺達は朝食をいただきに食堂へとやって来た。他の冒険者はこれからクエストにでも行くのか朝からガッツリ食べてたり、軽食を作って貰ったりしていた。
「おはようございます。モーニングセット二人前で。あの、軽食って作って貰えるんですか?」
「おう、モーニングセットだな少し待ってろ。軽食は1人銀貨1枚だけどどうする?」
「じゃあ、二人前頼みます。」
「あいよ!朝食の後に渡すからな。」
朝食は硬めのパンと目玉焼きに少量のサラダとスープだった。味がいい。量も朝からそんなには食べない俺にとっては丁度いい量だった。
「ごちそうさま。カルミナ、ギルドに先に行こう。クエストの荷物を受け取ってそれから馬を貰いに行こうか。」
「そうね、荷物はアイテムボックスに入れて置けばいいしね。」
店のご主人から軽食を受け取って女将さんに鍵を返して宿を後にした。
「ん~…今日もいい天気ねぇ~…風も気持ちいいわ。」
「たしかに、お昼寝日和だなぁ~」
ぽわぽわした会話をしながらギルドまで歩く。途中に香辛料を売ってる店があったから少し買い足しておいた。
「こちらがトレーダスにまで運んで貰いたい荷物となります。運ぶ場所はトレーダスのギルドまでで構いません。よろしくお願いします。」
「分かりました。」
小包サイズの箱を受け取って落とさない様にアイテムボックスに収納する。
「ちょ、ちょっとすみません、いいですか?今のはアイテムボックスでしよね!?」
受付の人がそこそこの声で言ったが為にギルド内にいた冒険者達から視線を貰ってしまった…。
「そうですけど…なにか?」
「追加でクエストを受けませんか?ミシラン商会のクエストで、鮮度を落としたくない食料品の輸送です。運べる量によっては追加で報酬をお支払いしますよ?」
「ん?……ミシラン商会!?レートの家じゃないか…こんな所にまで手を拡げていたんだな…大商会って言ってたもんな、どうするカルミナ?」
「運ぶ場所はトレーダスのギルドでいいのかしら?」
「……この紙をまずはこの街のミシラン商会へ見せてください。それから、トレーダスにあるミシラン商会に商品と共に見せて受け取りのサインを貰ってください。その後でギルドより報酬の受け取りとなりますがどうでしょうか?」
「別に構わないわ。この街のミシラン商会の場所を教えて貰えるかしら?」
「昨日お教えした、馬の店の向かい側にあります。では、よろしくお願いしますね、沢山運べばその分報酬がいいですので頑張ってくださいね。」
「あ、はい。ありがとうございました。」
予定外のクエストを受けてしまったが行き先は同じだから良いかとも思い、ギルドを出て昨日の店付近まで歩き出した。
「馬の受け取りも出来るし、近いところで良かったな。それにしてもレートの家凄いな。」
「先にミシラン商会から行きましょうか。ミシラン商会はルールトが本店だけど他の国にも結構あるのよ?」
「下級貴族より権力ありそうだな。」
「そりゃあるわよ?ていうか、ミシラン家は食料品関係の元締め的な位置にいるから貴族も手を出せないわよ。ミシラン家に出世欲が少ないのが救いね。」
やベーなミシラン家。レートにこの前あげた肉のお礼は高くして返して貰おうかな…
話してるうちにミシラン商会リルターナ支店に着いた。早速入ってみると、店内には多くの人が訪れていて買い物をしていた。個人から料理店の食材まで扱ってるミシラン商会は、支店ですらも売り上げが凄いことになってそうだ。
「いらっしゃいませ~お店としての注文なら裏手へ、個人のお買い物でしたら店内の商品をお探しください。」
「あ、すいません。ギルドでクエストを受けて来ました。トレーダスに送る商品が有るとか。」
「まさか…アイテムボックスをお持ちの方ですか?ありがとうございます。すぐに店長を呼んできますので少々お待ち下さい。」
店の店員さんがどこかへとはや歩きで去っていき、3分もしない内に店長がやって来た。
「いらっしゃい、よく来てくれたね。私はここの店員のブルート=ミシランだ。」
「初めまして、タロウです。隣はカルミナって言います。ミシランって事はレートの親戚の方ですか?」
「おや?レート坊を知っているのかい?レートは私の甥っ子でレートの父は私の兄だ。君達はルールトから来たのかな?」
「えぇ、ルールトでレートとは知り合いました。ルールトから旅だって来て、精霊の情報を集める為にトレーダスに行くついでにこのクエストを受けさせていただきました。」
「なるほどね、それで早速なんだが、運んで欲しいのは海産物でね…この支店なら近くの海から運んで来ても大丈夫なんだがトレーダスまでとなると流石に鮮度が持たなくてね。ここからでも3日の距離だからね…。氷魔法で冷やして運ぶのもいいんだが魔法使いに払う賃金が高過ぎて困ってたんだ。店の店員にも氷魔法が使える者はいるが1人じゃさすがにね。」
氷魔法はどちらかといえば珍しい方だし魔法師が高値を吹っ掛けるのはなんとなく分かる。レート繋がりだし、申し訳ないがその魔法師の仕事を奪わせて貰おう。
…そういえば氷魔法師の仕事をたまに奪ってる気がするな…教会を涼しくしたりとか…。
「アイテムボックスなら、俺もカルミナも使えますので任せてください。あ、これギルドで渡された紙です。」
「それはありがたい!…どれどれ、ふむふむ、なるほど。…二人ともアイテムボックス使えるんだね?なら報酬は期待してくれていいよ。さ、裏に来てくれ。運んで貰う商品は今からリストにするから手伝っておくれ。これは別料金で払うよ」
店の裏に行くと、冷凍庫の様に気温を下げてる部屋に通された。その部屋でブルートさんが紙にメモをしながら俺達に指示して、俺達はその商品をアイテムボックスにしまっていく。魚や貝に海草などが主で、まだまだ沢山運べる事を知ってからは肉や卵なども追加されていった。
「いや~、これは助かるよ!どうだい?うちと専属で契約を結ばない?」
「実力を買って貰えるのは嬉しいですけと、まだ旅の途中なので…」
「残念、でもクエストを見つけたらまたよろしく頼むよ。…はい、ギルドから貰ってきたこの紙と商品のリストをトレーダスにあるミシラン商会のバミュールに渡しておくれ。ギルドの紙にバミュールのサインを貰えばクエストは完了。後はギルドにいって報酬を受け取るだけだよ!報酬は弾ませて貰うから今後も機会があればよろしくね」
「はい。ありがとうございました。では、しっかりと運ばせて貰います!」
ブルートさんと別れて反対側にある馬の店に入った。店主のおじいさんが迎えてくれて、さっそく裏に用意しているという馬車へ案内してくれた。
「どうかね、左の白い鬣の子がリリーで右の黒い鬣の方がトリーだ。こいつらは賢いし体力もあるし力も強いからよく走ってくれるだろうさ。」
2頭とも茶色の馬で今はエサをムシャムシャしている。
「荷台も注文通りじゃろ?エサとブラシと必要なもんはすでに入れておるぞ。」
「ありがとうございます。何か注意する事ありますか?」
「そうじゃのぉ。馬は賢いからの大切にしてやらないと全く懐かんぞ?注意しとくといい。あと、街中で暴走させんようにな。」
「分かりました、ありがとうございます!…リリー、トリーよろしくな!」
「タロウ!私は先に荷台に乗っておくから」
リリーとトリーの食事が終わるのを待って、俺は荷台に取り付けてある操縦席に座り、手綱をしっかりと握りしめ、店から動き出した。
街中をゆっくりと運転し、リリーとトリーと俺の息を合わせながらトレーダスへ向かう街道に入ると、少しずつペースをあげていった。
「タロウ、風が気持ちいいわね!」
「そうだな!カルミナも操縦席に来いよ!」
リリーとトリーも気持ち良さそうに走っている。やっぱり馬車があると全然違うな。こいつらの足ならトレーダスまで3日もかからないかもしれない。
「リリーにトリー!疲れたら教えるのよ、休憩にするからね!」
「ヒヒィーン!」
「ヒィブルルゥ~!」
「ホントに賢い奴等だな。これから頼みますよ」
リリーとトリーは体力もあって、途中昼の休憩を挟んだら暗くなる少し前までしっかりと走ってくれた。
「屋根付き荷台があればテントも組み立てなくて楽だな。」
「そうね、流石に寒い季節はあれだけど、今の季節なら毛布さえ用意しておけば問題ないわね。」
「そうだな、夜ご飯にしようか、馬達にエサをやってくるから何か用意してて。」
「分かったわ!…とはいっても肉を焼くことしか出来ないのよね、私…。いや、これからよ!これから覚えていけばいいのよ!胃袋さえ掴んだらこっちのモノなんだから!頑張るのよ、カルミナ!」
「ほら、リリー、トリーご飯だぞ。デザートにリンゴも用意したからな。しっかり食べるんだぞ~」
「ヒヒィーン!」
「ブルルゥ!」
「そうか、そうか、嬉しいかぁ!水も沢山あるからなぁ。…さて、俺もご飯にしますか。」
「焦げちゃった!へへへっ。」
「へへへっ、じゃなーい!いつの間に肉すら焼けなくなったんだよ!」
「違うの!違うのよ!ちょーっとだけ目を離したら焦げてたの!」
「目を離すから焦げたんだろ!?…もう、しょうがないな。俺が作るよ…俺も別に料理は上手く無いんだからな?せめて失敗はしないようになってくれよ、カルミナ。」
「こ、これからの私に期待して…」
肉と野菜を炒めるというか、一緒に焼いただけの料理を2人で食べて、その後は交代で見張りをしながらもう寝ることにした。2人で寝て盗賊にでも襲われたら嫌だから交代制だ。
「じゃあ、先に寝るからよろしくな」
「任せておいて。あ、アトラスかルミナスを出してくれない?流石に1人だと暇だわ。」
それもそうだな。俺はアトラスとルミナスを召喚して先に寝る事にした。意外とぐっすり眠れたよ。
翌朝目を覚ますと目の前にはカルミナの顔があった…っておい!見張りはどうした!?
『私たちがいますので。』
『お腹すいたぞ~』
「アトラス、少し待っててな。おい、カルミナ!ヨダレ…は拭いてやるか。起きろカルミナ!」
「どうしたの?タロウ」
「どうしたの?じゃねえ!見張りはどうしたよ!?」
「はっ!?寝ちゃった!」
「100歩譲って寝るのはまぁ、いいとして。どうしてここでガッツリ寝てるんだ?」
「それは…タロウの寝顔をちょっと見ようかなぁ~って思ったら気持ち良さそうに寝てるから…それ見てたら…私も…寝てたわ!」
「ルミナスとアトラス達に感謝だな。はぁ…朝ごはんにしようか。俺が用意しておくからリリーとトリーにエサと水をあげてきて」
「任せて」
俺はカルミナとアトラスと自分の朝ごはんを作ってルミナスには本人の希望で果物を渡した。今日も天気がいいし、ピヨリも呼んでみんなで行くことに決めた。気分はピクニックである。
「さ、行こうか。早ければ今日の夕方くらいには着きそうだしな。」
「そうね、日が暮れる前に着くと良いわね!」
『ふむふむ、リリーにトリー頑張るのですよ。』
「ルミナス?リリーとトリーの言ってる事分かるのか?」
『この子達は賢いですからね。意思の疎通は出来ますよ。今もタロウがリンゴをくれるから頑張ると言っていました』
馬ってニンジンのイメージがあったけどリリーとトリーは果物の方が好きなのかな?
「なら、ルミナスはリリーとトリーが何か言ってたら教えてくれないか?」
『分かりました。では、リリーの上に座らせて貰いますね。』
『私はトリーに乗るぞ~』
『ピヨリは飛ぶッピ!』
まさか、ルミナスが通訳出来るとは思って無かったけどこれでリリーとトリーの負担も減らせると考えたら凄くラッキーだったな。今日も1日楽しくなりそうだな。
「あ、野生のゴブリンがいるわね!私がさっさと……ピヨリ~…」
カルミナが見つけたゴブリンは飛んでいたピヨリの攻撃で一瞬にして沈んだ。
今日も平和だなぁ。
「転移したよin異世界」というのも書いてます!よろしくお願いいたします(´ω`)
http://ncode.syosetu.com/n1888eg/




