第44話 タロウ、魔族と戦う。そして…
駆け足で進みますよ。誤字脱字の報告よろしくお願いします!
「Aクラスの生徒とブレノフ先生が消えた!?」
「えぇ、それもいつの間にか居なくなってたらしいのよ!」
クソ…後手に回ってしまってるな。どうする?勝手に動いてしまっていいのか?
「タロウ、カルミナ、私と来い。探しに行くぞ」
「ローラン先生!?俺達が動いてもいいんですか?」
「ここの守りは冒険者に任せている。複数居なくなってる事も考えてまだ遠くには行っていないだろう。急ぐぞ」
「分かりました!」
俺とカルミナはローラン先生と共に居なくなった生徒とブレノフ先生を探しに行った。ピヨリとルミナスを召喚して捜索の範囲を広げた。
『タロウ。この先に、』
「ああ、俺の探知にも引っ掛かった。そこを左に真っ直ぐです。」
休んでいるのか、動いてる様子はない。これならすぐに追い付ける。
「いた!みんな、大丈夫か!?」
「君達!逃げろ!後ろだ!」
『タロウ、危ない!』
俺の真後ろで刃物を止めてるルミナスとカルミナの姿があった…。
な、なんで?どういう…事だ?なんで…なんで…ローラン先生が?
「ふっ、殺し損ねたか…本当に厄介だよお前らは」
「ど、どういう事ですか!!ローラン先生!」
「簡単な事だ…」
ローラン先生の姿が変わっていく。羽と角が生え、肌も青白く、爪も鋭く…これじゃ、まるで…
「魔族か!?」
「そうだ。がっかりしたか?タロウ」
「カルミナ、ブレノフ先生達を!出来るだけ足止めする」
「分かったわ、すぐに戻る」
「先生、なんでこんな事を今のタイミングで?先生の狙いはなんです?」
「ふふ、良いわよ。最後に教えてあげるわ。私だって人間界の情報を定期的に他の魔族に伝えればここで静かに暮らす予定だったのよ?むしろ、静かに暮らす条件の変わりに情報を送っていたの。そして私は静かに暮らしてた。もう一人の魔族、私の夫と共にね…でも殺された。ブレノフという男にね。最初は分からなかった。分からなかったけど、その日を境にブレノフが接触してくる様になった。ブレノフに言われるままに学園の教師もやっていた。そしてある時、ブレノフが言ったわ。俺は数年前に魔族を殺したと。この国に居るのを偶然見つけたから罠に嵌めて殺したと。それは楽しそうに語ってくれたわ。そして思った、こいつを殺そうと。私の…夫との慎ましい生活をぶち壊してくれたこいつを殺そうって。静かに暮らすとかもういらない。こいつを殺して他の人間も殺そうと。」
「……。事情は理解した。その事をブレノフ先生は知っているのか?」
「言ってないわね。すり寄って来て気持ち悪かったのよアイツは。でも、アイツが夫を殺した。だから私はもう躊躇わずに力を使う。邪魔をするか?タロウ」
別にブレノフ先生に味方する訳じゃない。俺もあの先生は苦手だし。ローラン先生の事情は分かった。人間界の情報を流してたとはいえ、静かに暮らしてただけだし同情はする。でも…
「ブレノフ先生を殺すのは100歩譲っても、他の生徒はやりすぎだ。魔物を強くしてたのも先生だろ?多少の変装は可能のようだし。」
「私がここに連れてきてるのは生活態度の傲慢な貴族ばかり、いずれブレノフみたいになる奴ばかりよ。タロウとカルミナは将来的に邪魔になると思って連れてきたわ。」
「タロウ!縄はほどいたわ!あ、ブレノフ先生!?」
「ローラン先生、どうしてこんなことを!?私は先生の事が…」
「口を開くな下衆が!…そうだ、ちょうどいい。さっきからタロウには掛からなくてな。…魅了。」
「うぅ……ふぅーふぅー。」
「ブレノフ、カルミナを殺しなさい。」
「クソ!ルミナス、ブレノフを吹き飛ばせ。」
『分かりました!!』
「さぁ、始めようか…」
ローラン先生が迫る。俺は刀で爪を弾くが後ろへと吹き飛ばされる。
「なんて力してやがる。ルミナス、俺とカルミナと先生を出来るだけ遠くに転移させてくれ。」
『魔力使いますよ?』
「かまわない!」
『行きます…』
「ずいぶん遠くの場所まで…やってくれるじゃないかタロウ。でもブレノフは正気に戻らない。ずっと私の為に動くだろう。あれは呪いだからな。ふふ。」
「ローラン先生!もう止めてくださいこんな事!」
「カルミナ…お前は私がタロウを殺したとして我慢するのか?」
「それは…」
「無理だろ?幸せなお前には私の気持ちは分からない。無駄な言葉を吐くくらいなら死ぬ気でこい。私は殺す。邪魔をするお前らも」
「先生…」
「カルミナ!しっかりしろ。もう先生としてここには立ってない!覚悟を決めろ。」
「良い判断だ。」
「そりゃどうも!氷縛り!」
「魔族相手に魔法で勝負かい?さすが代表選手は違うねぇ。」
「氷弾!氷弾氷弾!」
「その程度じゃ、避けれるし、壊せるぞ。」
「はっ!魔法がダメなら刀で斬りかかるか。」
「刀エンチャント 光 幻影突!」
「ちっ、厄介な技ね。風魔法 風牙爪」
ローランが爪を振る度にカマイタチの様な風が頬を切る。迂闊に近づけない…でも、斬りかかる。爪で弾かれ、逆に体を切られても少しずつダメージを負わせていく。
「…召喚 ルミナス」
『タロウ…苦戦してますね』
「強いな。まだ、俺1人の近接戦じゃ勝てない。殲滅するぞルミナス」
『分かりました。』
「その使い魔も厄介ね。」
「先生、先生は学園の先生をしててどうだった?」
「何よいきなり…そうね、悪くはなかったわよ?」
「そうですか、僕も先生のあっさりした感じ…嫌いじゃ無かったです。」
「それはどうも、では死になさい。タロウ=グラウェル」
『私の力をタロウに流します。後は任せましたよ。』
「ありがとう、ルミナス。休んでてくれ。」
「魔族の本気見せてあげる。…この火は火に非ず 地獄の業火とりその身を焼き尽くす 肉を焼き 骨を焼き 灰すら残さず焼き尽くす 出でよ出でよ 全てを焼き尽くす業火の化身よ。炎の魔神!」
ローランが詠唱を始めたと同時に俺も詠唱をする。初めて使う詠唱だが技のイメージは出来ている。
「氷 それは生を止め 死を呼び 時間を止める 全てを氷らし全てを終わらす 氷に包まれ 氷と砕けよ 百の氷花に包み冥界へ送り届けよう。氷れ!極大魔法『氷葬百花』!!」
俺とローランの魔法が発動した。ローランの炎は辺りの草や地面すら溶かす熱量だ。だが……
炎の魔神が繰り出す炎を俺の極大魔法が飲み込んでいく。
「バカな!私の炎が!クソ、こんな魔法にクソ…クソクソ…」パキン
ローラン先生が炎の魔神ごと氷漬けになった。炎の魔神はすでに炎の役割も出来ていない。完全に氷った。
「はぁ…はぁ…はぁ…。魔力が…もうギリギリだな…」
俺も地面に倒れた。魔力を限界まで使った反動で体が重い。
「タ、タロウ!?大丈夫なの?」
「うあ~…体が重い。魔力切れっぽいな。」
「とりあえず、これ飲んで。」
「カ…ル…ミ…ナ…殺す…」
「ブレノフ!?クソ…ここまで追い付いて来たのか!?だいぶ離れた筈なのに…ローランの呪いの効果か」
「タロウ、ここで休んでて。後は私に任せなさい」
「ブレノフは一応Aクラスの教師だぞ?」
「大丈夫よ。こんな奴に私は負けない」
「さいで、じゃあ少し眠るから…任せ…たよ」
俺は瞼の重さに耐えきれず眠りに落ちてしまった。
カルミナがどんな戦いをしたのかは分からないけど、目を覚ました時に最初に見たのは俺を膝枕して、俺の顔を見つめるカルミナの笑った顔だった。
◇◇◇
「カルミナ…俺、学園を出ようと思う」
「そう。」
「魔族がここまで来てるとは思わなかった。ローラン先生…ローランでもあの強さなら魔王軍の幹部に会ったらすぐやられる気がする。俺はもう死にたくない。長生きしたいんだ。だから予定は早いけど旅に出るよ。」
「……ったく、いつもいつも、いつもいつもいつもいつも急なんだから!ちょっと待ちなさい!」
カルミナが何かゴソゴソしている。
「はい!お父様と、ハルベンデさんとキスカさんに手紙を書いたわ。ピヨリちゃんに届けさせて。」
「……!俺も父様と姉様にも書かないと!いつも迷惑ばっかりかけてごめん!ありがとう…カルミナ」
「ふ、ふん!パートナーだから仕方なくよ!」
書いた手紙をピヨリに届けさせた。これでまぁ、一応はいいだろ。
「タロウ、行く宛はあるの?」
「カルミナの精霊探しから始めようか。精霊の秘境巡りって感じで。約束だもんね。」
「ったくもう!ったくもう!しょうがないわね!さ、行くわよタロウ」
「あぁ、よろしくな… (お前だけは守ってみせるよ)」
「ん?何か言ったかしら?」
「何でもないよ!さ、行こうぜ!」
「ちょっと、待ちなさいよ~」
俺達はとりあえず太陽のある方角へ走り出した。
◇◇◇
タロウさんとカルミナさん、ローラン先生とブレノフ先生が居なくなった。最後に姿を見た人達の話ではローラン先生が魔族でブレノフ先生も操られてたらしい。それで4人で消えたという話だ。先生が魔族という事に生徒は驚き、魔族が王都に紛れてた事に大人達は驚いていた。
「キスカさん、タロウさんなら大丈夫。」
「ハルベンデさん…そうですよね、タロウさん達なら…」
『ピヨ!ピヨピヨ!』
「あら?この子はタロウさんの…手紙?」
「タロウさんからかも!」
ピヨリちゃんは私達に手紙を届けるとすぐに立ち去って行った。
「キスカさん、私とタロウは学園を辞めて旅に出るわ。魔族の強さをおもい知らされたの。ローラン先生はタロウがブレノフ先生は私が息を止めたわ。ギリギリの戦いで今のままじゃ魔王軍と戦えば負ける。そう思ったから私たちは旅に出る。生きてはいるから安心してね。カルミナより」
「カルミナ様…」
「キスカさん、タロウさん達は生きてた。」
「そうですね、良かったです。安心しました。」
「私はダンジョンで鍛える。キスカさん、私とダンジョンにい行かない?」
「私も自衛くらいは出来ないと足手まといですね…。ハルベンデさん、私はまだまだ弱いですがよろしくお願いします。」
タロウ達が居なくなってから数日、ここに変わろうとしている女の子達のパーティーが結成された。
◇◇◇
『ピヨ!ピヨピヨ!』
「ん?何だこの鳥は…手紙?」
「カルミナからか…どれどれ……な!?魔族だと!…そうか。タロウ君についていくのか。気を付けるんだよカルミナ。…急いで事に当たらないと」
この日を境に国王から魔王軍への戦力強化が言い渡されて魔族と人族、亜人族との戦いは日に日に激しくなっていく。
◇◇◇
『ピヨ!ピヨピヨ!』
「おや?ピヨリちゃんどうしたんだい?タロウも一緒かな?…ん、手紙?」
「ふむ…ふむ…なるほど。カリナ!タロウが学園を辞めて旅に出たらしい!」
「タロウちゃ~~~ん!帰ってきてぇ~~」
「魔族を倒すとはさすがタロウだな。こっちの事は任せておけ、心配は無用だからな、頑張れよタロウ」
この日からカリナの元気を取り戻す為に奔走する男が現れた。
第2章はここまでで次からは3章になります!
「転移したよin異世界」というのも書いてます!よろしくお願いします!(´ω`)
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