第43話 タロウ、合宿を楽しむが…
よろしくお願いいたします!
「はっ、はっ、はっ!」
いつもの朝練で刀の素振りをしているとカルミナもやって来た。
「おはようタロウ。起きてると思ったわ」
「おはようカルミナ、珍しいな朝早く起きるなんて」
「…私がいると他の子が落ち着かないのよ。だから仮眠とって早くから起きていたわ。」
「貴族の子もいるんだろ?」
「いるけど爵位は高くないのよ。私は気軽に話しかけて貰っても気にしないって言ってるんだけどね…。食事の準備も何も手伝わせてくれない状況で。」
「王族も大変だなぁ~」
「タロウも伯爵家でしょ?なんであんたの班はそんなに気楽そうなのよ!?」
「そりゃ、俺のひとが…冗談だよ、うちは獣人のシャルルがタロウって呼び始めてから他のみんなも距離感が分かり始めたって感じかな?」
「なら、私の為に何かアイディア出しなさいよ!」
「それは自分で考えないとな、カルミナ王女殿下」
「ぐぬぬぬぬ…せりゃ!」
「あぶなっ!いきなり槍で突くなよ!」
「うるさいうるさい!ちょっと身体動かすの手伝いなさい!班はそんなだし、冒険者は尾行下手すぎて気になってしょうがないの!」
「それはあるな。わかった、朝の運動といこうじゃんか!せい!」
俺とカルミナは人が起きてくるまで刀と槍をぶつけ合った。清潔魔法でお互いスッキリして自分の班へと戻る。
「タロウ、朝から激しいニャ!」
「見てたのか?それと…言い方に気をつけてくれシャルル」
「…ニャ?」
「いや、何でもない。それより意外と早起きだなシャルルは。朝飯にするか?」
「するニャ!魚はあるのかニャ?」
「あるぞ、すぐ焼くからちょっと待ってて」
俺は鮭に似た魚を火魔法で炙っていく。俺とシャルルの二人分だ。
「美味しそうニャ!早速いただくニャ!…あちーニャ!」
「あ、やっぱり猫舌なんだなシャルルは」
「そうニャ、出来立て食べたいけど冷まさないと無理ニャ」
「まぁ、まだ他の人が起きてくるには時間もあるし、ゆっくり食べるといいよ」
「タロウ、これ骨あるニャ、取るニャ。」
「はいはい。」
なんで猫ってこんなに甘やかしたくなるんだろうか。
「皆が起きてきたら罠の設置と水辺を探しに行こうか。」
「魚を捕まえるのニャ!」
朝食も食べ終わったところで散策の時の昼御飯用のサンドイッチを作る。まぁ、肉と野菜を挟んだだけだが…。
「おはようございます。」
「おはよー。」
女子グループの残り2人が起きてきた。
「おはよう。オリオとバートを起こしてくるから、そこのサンドイッチを作ったやつの残りの部分を食べてもいいよ。」
「いただきますニャ!」
「シャルルは食べたでしょ!」
「ニャ~…」
くっ、卑怯な…猫っぽさで誘惑するとは!!
「…3人で食べるんだよ!」
「やったニャ!」
勝てるわけないんだよなぁ。なんで猫っぽいだけであんなに可愛いんだろ。
「オリオ、バート朝だぞ。」
「う…うん?朝?」
「なんか…眠いぜ…」
2人が初めてかどうかは知らないけど慣れない場所で寝るって疲れが取れないんだよな。
「水の用意しておくから顔でも洗ってシャキッとしてくれ散策にでるぞ!」
「ふぁ~い…」
「お~う…」
よし、これでみんなの準備が整うのを待つだけだな。全員の準備が出来たら先生に言ってそれから出発だ。
「召喚 ピヨリ ルミナス アトラス」
『およびッピ?』
「ピヨリ、この辺に水辺とか渓谷みたいな所を探して来てくれ。魚がいるところで頼む」
『任せるッピ!』
「ルミナスは魔物を探して、他と違うかの確認を頼む。」
『分かりました。頼りにしてくださいね』
「アトラス。はい、これ肉と野菜のサンドイッチ。アトラスには荷物を持って貰いたい。」
『美味しいぞ~。荷物でも何でも持つぞ~』
これである程度はスムーズには行くだろう。後は食料を手に入れられるかだな…アイテムボックスにはあるがこれは使わない様にしよう。
「タロウ君、準備出来たよ。」
「じゃ、先生に点呼取って貰って早速散策へ行こうか!」
◇◇◇
「どの辺に罠を張るかなぁ…」
俺達は山道を歩いていた。少しは整備されてる為、歩きにくい都まではいかない。動物を探知してみると結構な数がいそうだ。
「タロウさん、水辺を見つけてからその周辺に罠を張ればいいんじゃないですか?帰る前に回収できますし…」
「それもそうだね!ピヨリが探しに行ってくれてるばずだからもう少し待とうか」
「ピヨリちゃんが探してくれてるニャ?空を飛べるのは便利だニャ!タロウは飛べないニャ?」
「前に挑戦はしたんだけどバランスが難しくてね…浮くだけならいけるんだけど、飛ぶとなるとまだ出来てないね」
「タロウさんなら何でも出来ると思ってました…」
「まだまだ出来ない事だらけだよ。」
『ご主人ッピ!見付けたッピ!綺麗な水だったッピ!』
「ありがとうピヨリ、案内してくれ。みんな、ピヨリが見付けてくれたって!行こうか」
俺達はピヨリについて行って1時間近くは歩いた。到着したのは綺麗な水の流れる川だった。ここなら魚もいそうだし、遊べるし、近くには動物もいそうだからいいスポットだと思った。
「じゃあ、今日はここで遊ぼうか!俺は近くの森の中に罠を設置してくる。みんなは魚がいるか見たり、先に遊んどいてくれ。すぐ戻る」
「わかったぜ!タロウ君よろしくな!」
俺が森の中に入っていくと、ルミナスが飛んできた。
『タロウ、大変な事になってますよ?』
「大変な事?」
『はい、狼型の魔物に何かをしている男がおりました。その後魔物の持つ魔力が大幅に上がりましたね。恐らく最近の魔物の活性化はその人物のせいでしょう。』
ヤバいな…意図的に魔物を強くしている人物か…人でも魔族でもロクな奴では無いことだけは確かだろうな…。
「その人物は?」
『魔物に襲われる事なく去っていきました。それに続きとして、その魔物を観察していたのですが、魔物が魔物を襲いまして…噛まれた魔物が吸いとられる様に萎んでいきました。』
魔物が魔物を襲うのはまだ分かる。縄張り争いとかもあるから。…でも、噛まれた魔物が萎むなんてそんな能力を持つ狼型の魔物は聞いたことない。男に何かされた、その何かが原因と言っていいかも知れないな。
「ありがとうルミナス。魔物は倒せそうか?」
『あの程度ならまだ余裕ですが、もし、魔物を食べることで強くなっているなら厄介になりますよ?』
「そうだな…。すまないルミナス、さっき見付けた魔物を処理してから、手紙を王都の冒険者ギルドに持って行って報告してきてくれ。念のためだがヤバいのが潜んでる可能性があるからな。探知に引っ掛からない奴がいたら危険過ぎるし。」
『分かりました。では…頭を撫でてください。私は最近頑張ってますよ?』
……そうだな。頭を撫でるくらいはいいか。
『……はふ。では、行ってきますタロウ。すぐ戻って来ますからね。』
「頼んだルミナス!」
それにしても…意図して魔物を強化か…。ルミナスが男という事しか分からなかったらしいし、鑑定が通じないなら俺よりも魔力が多いのかも知れない。…高位魔族とみて動いた方が良さそうだな。
「とりあえずカルミナにも知らせておくか…」
俺はピヨリに手紙を託してカルミナの元へ飛ばした。先生にも知らせた方がいいのか考えたが男が容疑者という事だしやめておいた。ギルドの冒険者に頼った方が疑わなくて済むしな。
「あぁ…そうだ、罠の設置しないとな…」
俺はいくつか設置して、みんなの元に戻った。ここからは魔物の警戒もしないといけないが、みんなには普通に楽しんで貰うために何とかしないとな。
「お帰りタロウ君、罠の設置ありがとう!」
「引っ掛かるかどうかは分からないけどね。魚はいそう?」
「いるニャ!でも、私の網じゃ捕まえられないニャ!」
魚が捕れるならこっちをメインにするか。
「ミーコさんとミレーナさんで水流を操って魚を逃がさない様にして、シャルルの網で捕まえよう」
「やるニャ!!絶対に捕まえるニャ!!2人共任せたニャ!」
「私はそこまで魔力が多く無いから早めにしてよ」
「タロウ君、俺達はどうするんだ?」
「そうだな……土魔法 創造銛」
「はい、返しの付いた、ただの硬い棒の完成だ。」
「これで直接捕るのか!腕がなるぜ」
「僕に出来ますかね…」
「とりあえずやってみよう!楽しかったらそれで良し!」
「そうだぜオリオ、楽しんでいこうぜ」
「そうだね!やってみよう。」
俺達は魚を直接狙うがなかなか上手くいかなかった。魚が速いのか俺達が遅いのか…結局女子グループの方が多く捕まえてたよ。シャルルのやる気が違ったからね。
「そろそろ休憩にしようか、サンドイッチ作って来たから食べといて。ちょっと罠の様子を見てくるよ」
「やったニャ!お昼ご飯ニャ!」
「ありがとうございますタロウさん。」
「いただくぜ!」
「罠の調子はどうかな~?ん?」
これは!?…罠が力ずくで壊されてるな。そんな魔物がこの辺にいるのか!?
罠は全部で6ヶ所に設置した。5ヶ所を回って全てが破壊されている。
「次のが最後の1つか…」
『痛いぞ~さっきから何なんだ~?』
おぉ…うん。やっちゃったのか…アトラス。お前ならあの壊しかたも納得だよ。
「アトラス」
『助けて~さっきからご飯取ったら痛いのが~』
「アトラス、それはね俺が森の動物を捕まえる為に設置した罠とエサなんだ。」
『そうなのか~、食べちゃったぞ~?』
「アトラス、もう1回設置するけど食べちゃダメだぞ。あと、森の中の物を食べるくらいなら俺の所においで。ちゃんと食べ物あげるから」
『わかった~約束だぞ~』
俺はアトラスを連れて罠を設置しなおした。良かった、魚をメインにしておいて。
俺はみんなの所に戻り、事情を説明した。アトラスの荷物持ちとしての活躍のおかげか笑って許して貰えた。良かったなアトラス。
「早めにキャンプ場に戻るとして、午後は普通に遊ぼうか」
「おう!魚も捕れたしな。他の班に売ってもいいくらいはあるぜ!」
「それ、いい考えね!」
「ダメニャ!魚はアタシが全部食べるニャ!」
「こら、シャルル。全部は食べられないでしょ。」
「食べ物を捕れなかった班に売るってのはいいかもね。よほど高値で売り付けさえしなければ大丈夫だと思うし。」
それから俺達は遊びまくった。川で水切りをしてみたり、川の水を操って色んな形にしてみたり。子供らしく思う存分遊びまくった。そして、そろそろ帰ろうというところで俺達について来ている冒険者が慌てて話しかけてきた。
「君達!すぐキャンプ場へ戻る用意をしてくれ、緊急事態だ!」
「みんな、荷物を纏めて、話は聞いておく」
「わ、わかった!」
「すいません、何が起きましたか?」
「森を歩いてた生徒が魔物に襲われた。同じ班の他のメンバーで何とか撃退したが複数が怪我をしたらしい。」
「なるほど、回復薬は?」
「伝えてくれた冒険者からは少し足りないって話だ。」
「分かりました。その班の今の居場所はどこですか?」
「そろそろキャンプ地に戻っているらしい。」
「なら、先生達が対処するか…。」
「あぁ、だから君達もキャンプ場へ戻ってくれ先頭は俺が走る」
「お願いします」
クソ!魔物の動きの方が早かったか…。冒険者の足の速い人でも来るのは夜になるだろう。
「みんな、キャンプ場に戻る。話は戻りながら話すからこの人についていってくれ。荷物は俺が持つ。」
「わ、分かった!」
「荷物持ってくれるのかにゃ?」
「アイテムボックスに入れるから自分の荷物は覚えといてくれ。」
「君はアイテムボックス持ちか…。なら、最後尾は君に任せるよ。」
「はい。行きましょう。」
帰りは設置した罠も無視して走って戻った。みんなに説明すると生徒が襲われたのが余程驚いたのか言葉が返ってこなかった。
帰りは休憩を挟みながら40分ほどで帰って来た。
「ローラン先生、20班戻りました。怪我人は無しです。」
「うむ。それは良かった。事情は?」
「冒険者から聞きました。」
「そうか、今は冒険者の方達に周囲の調査を頼んでいる。生徒は待機だ。」
「分かりました。怪我人は?」
「あぁ、ハルベンデがな…。」
「…回復魔法ですか。」
「知っていたのか…驚いたが、あいつの祖父は神父だしな。使うのを初めて見るが不思議ではないな。」
そろそろ、使い初めてもおかしくは無いのか。ならこれからはどんどん使っていけるのかな?
「なら、怪我人は大丈夫ですかね。先生、僕の使い魔に冒険者ギルドに行って貰ってます。早くても夜になると思いますが応援を呼びました。」
「…良くやった。いい判断だ。今、山を降りるかどうかの協議もしている。恐らく、山を降りるのは明日になるだろう。…まさかここまで成長しているとはね。」
…ん?先生達も情報は持っていたがここまでとは予想していなかったのだろうか。とりあえず、魔物に何かした男をどうにかしないと解決しない…か。
「タロウ!」
「カルミナ、そっちは?」
「大丈夫よ。それより…」
「あぁ、男を何とかしないと何も解決しないな。冒険者が集まってからだな。強さが分からないし、下手に俺達だけじゃ動けない。一応、魔物の警戒はしておこう。」
「分かったわ。とりあえず、先生達が起きてる間に私達は休んでおきましょう。」
「そうだな。このまま何も起きなきゃいいけど…。」
その夜、冒険者が集まった時には生徒数名と教員1名がいつの間にか行方不明となっていた。
「転移したよin異世界」というのも書いてます。こちらもよろしくお願いいたします!
(´ω`)
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