第41話 タロウ、班長になる
よろしくお願いします!
誤字脱字の報告よろしくお願いします
「お姉様!今日の放課後ご予定はあるんですか!?」
朝、珍しくカルミナと登校していると新入生エルフのミーナさんが声をかけてきた。カルミナにだけだけど。俺も居るんだけど?
「今日は冒険者ギルドよ。タロウ何のクエスト受けるの?」
「そうだなぁ。放課後からだし薬草採取かお使いクエストかな?」
「お姉様!お姉様が薬草採取なんて似合いません!それはこの男に任せて私達はお茶でもしましょう?」
「…この男…」
「ミーナ、あなたまだ分かってないようね…」
「い、いえ…すいません。で、では私も冒険者ギルドへ連れていってください!私の方が活躍出来る事をお見せします!」
「ミーナさん?冒険者ギルドはまだ早いと思うよ?何て言うか、そんな軽い気持ちで行ったり怖いよ?」
「脅そうと思ってもその手には乗りません!」
「いいじゃないタロウ、連れていくだけなら。冒険者になれるかどうかはこの子しだいよ。」
「カルミナ悪い顔してるぞ」
「洗礼よ洗礼!」
「?冒険者って誰でもなれるんですよね?」
「なれるっちゃなれるな。なろうとしないだけで。」
「そうね。なろうと思わなくなるだけで。」
「?まぁ、とりあえず放課後よろしくお願いしますね、お姉様!」
俺は放課後に起こるであろう悲劇を想像して……洗礼だから仕方ないと割りきって教室に向かった。しょうがないよね洗礼だもの。アイツら楽しんでるもん。
◇◇◇
教室についていつもの様に挨拶を交わし先生が来るまで待ってた。
「全員揃ってるな。よし、じゃあ今日のホームルームはお知らせがある。しっかり聞くように。」
いつもは出欠確認をして終わりだが今日は違うらしい。お知らせとな?
「今週末、2年生恒例のキャンプという名の合宿訓練が始まる。」
「キャンプ!?」
「訓練!?」
生徒達もザワザワし始めた。
「その説明をする。今回の合宿は班行動だ。クラス単位ではない、学年単位での班行動だ。1クラス2名の4クラス分、計8人で1つの班とする。まぁ、20班だけ人が少なく6人班だがな。他のクラス、平民や貴族と班編成はバラバラだ。キャンプ地での食料の調達、火おこし等やることはやってもらう。上手く対応しろ。このキャンプの難易度はそう難しくない。ま、これが訓練の部分だ。もちろん1人1人に評価を付ける。頑張るように。」
冒険者をしてる俺やカルミナやハル辺りは大丈夫そうだし、植物の知識があるキスカさんは役に立つだろう。でも慣れてない者には難しい事だらけだろう。
「タロウ、どう思う?」
「うーん、傲慢な貴族とだけは組みたくない。」
「協調性無さそうだもんね。早めに知らせて貰ってるのに前準備も何もしなそうだし。」
「先生!班別けってどうやって決めるんですか?」
「今からここにある紙を引いて貰う。1~20まで書いてある、それが班番号だ。他のクラスに行って班のメンバーは見付けて来るように。班の中でリーダーを決めたらAクラスの担任の元へ行くこと。1つの班に金貨1枚が支給される。これで必要と思う物を自分達で買うように。そこも評価の対象です。金貨を班のメンバーで分けるのもありだ。質問は?」
「先生、ランダム性が高過ぎて班のレベルにバラつきが出ると思うのですが?」
「カルミナ、冒険者をやってるお前なら運も必要な事を知っているだろう。それ以前に前もって知らせてるのに準備を怠る者にはそういう評価をするだけだ。分かったな」
「そういう事なら納得です。」
「よし、まぁ、不安を煽る言い方をしたがこれは授業の一環だ。ちゃんと準備すればいい思い出となるだろう。多少の危険はあるけど楽しんでくれ。」
班別けの番号を皆が引きに行った。ランダム性なら最後に残ってるのを引くのも面白いと思って待っていると、他のクラスも動き出している音が聞こえてきた。ていうかこのクラスに集まって来ている。
「レート、何番だった?」
「5番だったよ。それよりも凄いね、タロウ君とカルミナ様狙いだよきっと。」
「まぁ、冒険者してるからな一応。でも、期待され過ぎるのもちょっとね…」
「後はタロウ君とカルミナ様だけだよ。」
「じゃ、引いてくる。」
注目されるとやりづらいけど引かないとこのままだしな…
「タロウ、違う班になりそうだけど私がいなくて大丈夫でしょうね?暴走とかしないでよ?」
「前向きに検討の上、善処します。」
「はぁ。キャンプ地を破壊しなければそれでいいわ。…3番ね」
「さすがにそれは無いっての。…20番か」
6人班の20番になっちゃったな。カルミナとは離れたけどカルミナも1人で野営の準備とか出来るし大丈夫だろう。それより自分の班のメンバー探しだ。
「カルミナ様は3番らしいわ!」
「マジか!俺3番だぜ!」
「タロウ君は20番なんだって」
「へぇ~」
俺は何も聞こえないフリをしてメンバー探しに教室を出た。
「20班の方~どこですかー。20班の方の~」
◇◇◇
「あ、アイツ20班探してるニャ。きっとアタシらと同じ班ニャ。ミーコ、早く行くニャ。」
「待つのですよシャルル。慌てなくても逃げない…ワウ…コン!」
「ミーコ、無理やり狐感出さなくていいニャ。普通にするニャ。」
「そ、そうですね。」
「それでいいニャ。おーい、アタシら20班ニャ。」
◇◇◇
あれは猫人のシャルルさんと狐人のミーコさん?直接話した事は無いけど獣人は目立つからたまに見かけてたな。それにしても、獣人って可愛い動物を可愛く擬人化した姿してるよなぁ。
「えっと、シャルルさんとミーコさんですよね?よろしくお願いします。Bクラスのタロウです。」
「知ってるニャ!」
「この学年でタロウさんを知らない人はいませんよ…コン」
「ん?コン?狐の鳴き声はもっと犬っぽさがあったと思いますが狐人は違うんですね。」
「ミーコが変な事するから変なイメージがつくのニャ。」
「す、すいません、タロウさん。本当は普通に話せます…」
「あ、そうだったんですね。少し驚きましたよ。」
「あ、あの!僕達も20班です…」
声の方に振り返ると、見たことはあるけど名前は知らない生徒が3人いた。こっちはみんな人族だ。
「これでみんな揃ったかニャ?自己紹介するニャ。アタシはシャルルだニャ。」
「私はミーコです。」
「僕はオリオです。Cクラスです。」
「俺はバート。Dクラスでだ。」
「アタシはミレーナ。Dクラスよ。」
「タロウです。Bクラスです。」
「タロウ君と同じ班なんてラッキーね。」
「う、うん。安心するね。」
「キャンプで合宿で訓練だからみんなやることはやって貰うからね。勿論、分からない事で答えられる事なら教えるから。」
「えっと、まず何からすれば良いのかな?」
「リーダー決めて、資金を貰いに行くニャ!」
「じゃあ、タロウさんお願いします。」
「そうね、それが1番いいわね。」
「俺も賛成だ。」
まぁ、うん。リーダーくらいなら引き受けようじゃないか。どうせ飾りの班長だろうし。
「分かった。じゃあお金を貰って来る前にそれぞれやってもらいたい事あるんだけど。ちょっと小声で話すから耳を貸して。」
「何だニャ?」
「じゃあ、シャルルさんにはキャンプ地の場所と移動距離を。ミーコさんにはキャンプ地で支給される物があるか、キャンプ地で買えるものがあるかを。オリオ君には宿泊の日数とキャンプ中に何をするのかを。バート君には、自腹で物を買っていいのかを。ミレーナさんには、先輩に去年はどうだったかを調べて貰いたいんだけどいいかな?」
「そういえば、キャンプがあるって事しか聞かされてないニャ。」
「多分、意図してそうしてるんだと思う。テントとか灯りは用意してくれてるかもしれないし、出費はなるべく避けよう」
「それを調べれば良いのですね?これは…先生に聞いて教えてくれるのでしょうか?」
「最初は先生に聞きに行こう。多分、普通に教えてくれる。このキャンプはそこまで難しくないらしいし。」
「わかりました。放課後また集まればいいんですか?」
「そうだね、授業終わったら集まろうか。じゃ、とりあえずは資金を貰いに行こう。」
俺達はAクラスの担任ブレノフ先生の所にやって来た。実はこの先生かなり傲慢というか貴族らしい貴族の先生であんまり得意じゃない。
「お忙しい所すいません、ブレノフ先生。20班の班長タロウです。資金を頂戴しに参りました。」
「ほう。タロウ君が班長ですか…ミーコさんしっかり学ぶんですよ?いいですね?」
「は、はい。」
「うんうん。20班の資金は6名という事もありますから大銀貨7枚です。異論反論は受け付けません、決まったことですから。」
「はい。ありがとうございました。」
Aクラスはこんなやり取りを毎日しなきゃいけないのか…良かったBクラスで。
「じゃ、大銀貨1枚ずつ配るね。1枚残るけどこれは取っておくから。」
「タロウ君、僕何を買えばいいのか分からないんだけど…」
「私もニャ。」
「じゃ、放課後に情報を纏めたら街まで見に行こうか」
俺は何か忘れている様な気がしたが合宿の方が大事だろうし、気にしない事にした。そのまま今日の授業が終わり、放課後になって俺達は校門で待ち合わせた。
「よし、集まったな。じゃあケーキ食べながら報告会でもしようか」
「け、ケーキですか?ごめんタロウ君、僕はそこまで裕福じゃなくて…」
やべ、いつもの感覚で言ったけど冒険者として稼いでるカルミナとかと違って普通は滅多にそういう店にいかないんだった。
「あ、ごめん。今日は僕が出すから気にしないで食べて。…こういう感覚の差も知っていかなきゃならないわけか…」
「やったニャ!ミーコ、ケーキを食べまくるのニャ。」
「さすがに食べまくるのは悪いですよ。」
「ホントにいいんですか?」
やっぱり女の子の方が食い付きはいいみたいだ。
「うん。オリオ君とバート君も食べたいのあったら遠慮しないで食べてくれな。」
「タロウ君は貴族なんだよね。凄いなぁ~」
「やっぱ違うんだな貴族って」
「僕は普通の貴族とは少し違ってるからあまり参考にしないでね、貴族にもいろいろ居るわけだし。冒険者やってるなんてごく一部さ。」
俺達はワイワイ言いながらお店に入り、好きなように注文してもらった。お金はこの間稼いだから気にしなくてすむ。
「それじゃあ報告よろしく。」
「アタシから報告するニャ。キャンプ地はここから歩いて1日で着く所にある小さな山の中ニャ。普段はキャンプ場として使われてるニャ。」
普段から使われてるって事は設備もありそうだな。
「次は私ですね。キャンプ地で支給されるのは、薪と3人は入るテント1つと食事の時の調理器具や飲料水です。現地では食材と調味料とか各種お薬が買えるらしいですが、基本的には自分達で山に入り、捕獲するように言われました。」
なるほど食材の現地調達は可能なわけね。テントは1つ買って行けばいいか。
「次は僕だね。この合宿は3泊4日。初日と4日目はほぼ移動ですね。間の2日は基本的に班で行動するなら自由だそうです。勝手な下山とかは認めてないらしいですが。」
2日は移動で残りの2日は自由と。その間の行動で評価を付けられるんだろうが自由と言われると何していいか分からんな。
「次は俺だな。自腹で買うのは原則禁止といわれたぜ。支給された金の中から使うようにだって。まぁ、大銀貨1枚もありゃある程度は揃えられるしな。でも、もともと自分の持ち物なら構わないそうだ」
結構ゆるゆるな規則だなぁ。確かに1万もありゃ結構揃えられるよな。
「最後は私ね。先輩の話だと、森で怪我した子のグループの誰も回復薬を持っていなかったそうなの。慌てて先生の所に買いに行ったらしいわ。あと、残った所持金は班で分けていいらしいわ。」
なるほど、その話を聞いて薬をケチった結果、先生から買うことになって評価も下がるって流れな訳か。
「じゃあ、買うものは3人用のテントが1つ各種薬。これは余ってる1大銀貨で買おう。」
「他に必要な物って何かな?」
「食料は現地調達だから動物を捕まえる罠とか、ナイフとかロープに地面に敷くマット…日中に飲む為の水分とか雨が降った時の為の雨具とかかな?まぁ、水は魔法でどうにかなるから今回は気にしないでいいよ。」
「それでも結構必要なものは多そうですね…」
「薬の目利きが出来る人いる?……それじゃ、薬は任せて。とりあえず道具屋ボッタクルに行こう。細かいのはそこで見付けたらいいし」
「そうだな、タロウ君が居て助かったぜ。普通の貴族様はここまで詳しくないぞ。」
「しかも、僕らからしてみたら貴族様の機嫌悪くしたらどうしようって不安だったんだけどそこもタロウ君で良かったよ。」
「ま、そう思うよね普通。俺もこのメンバーで良かったと思ってるよ。楽しくなりそうだね」
「貴族は怖いニャ!でも、タロウは違うニャ。」
「こら、シャルル、呼び捨てはダメでしょ」
「あ、別に良いよ。呼び捨てで。同じ学年なんだし好きに呼んでくれ。でも他の貴族の時は気を付けないとダメだよ?首ちょんぱになるからね。」
「さすがタロウニャ!アタシは堅苦しいの苦手ニャ」
「すいません、タロウさん」
「全然いいよ。じゃ、今度こそ行こうか」
俺達は店を出て道具屋ボッタクルに向かい、必要な道具を揃えた。実際に店まで行くと、トンカチを見付けたりして工具も幾つか買ってしまった。食料は週末の出発前に俺が買っておく事で今日の集まりは解散となった。
◇◇◇
「あの男!私との約束破ったわねーーーーーーーー!」
どこからか叫び声が聞こえた気がしたが気のせいだろうな。
「転移したよin異世界」というのも書いてます!こちらもよろしくお願いします(´ω`)
http://ncode.syosetu.com/n1888eg/




