第35話 タロウ、ダンジョンにいく
よろしくお願いします!
「ねぇ、タロウ…私達、最近クエスト受けてない様な気がするんだけど」
カルミナが唐突にそう言ってきた。たしかに武道祭も終えてからは自主トレばっかで何も受けていなかったな。
「Eランクのクエストって地味だしなぁ、でもやらないと上にもあがれないし…」
「そうよね~、とりあえず放課後になったらギルドに行ってみましょう」
ギルドに行けば誰かしらが何かしらを教えてくれるかもしれないし、ランク上げのためにそろそろ活動しますか。
◇◇◇
「おう、クソ坊主共、武道祭で優勝したんだってな!ギルドカード出しな!特別にDランクに上げてやるよ!」
いきなり解決しちゃったなぁ。
「帰るかカルミナ」
「いや、待ちなさいよ!せっかくDランクになったんだからクエスト見ていきましょうよ!」
「ほら、クソ坊主共。これでお前らはDランクだ、これからは初心者じゃない冒険者だ。ダンジョンにも潜れるし頑張んな」
「「……それだ!!」」
「そうよ、タロウ!ダンジョンに行きましょう!そうすれば強い魔物も倒せるし、素材を売ってお金も稼げるじゃない!」
「そうだな!うっかりC,Bランクの魔物とか倒しちゃっても問題ない!まずは情報集めと買い物だ。俺が買い出しに行くから情報は任せたぞ!」
「分かったわ!変な薬品掴まされるんじゃないわよ!」
いや、それはお前の話だ。
そっか、Dランクからダンジョンに潜れるならこれからの活動場所はダンジョンだな。薬品、食料、水とか足りない物を補充しないとな。
俺は道具屋ボッタクルに来て道具を買い揃えた。店主の顔が引きつるレベルで高品質の薬を買っていった。
「戻ったぞカルミナ。どのくらい情報は集まった?」
「そうね…まず、この付近には3つのダンジョンが在るわ。昆虫系の魔物が多い『植物の庭園』通称虫ダンジョン。アンデットの多い『死者の庭園』通称骨ダンジョン。そして、色んな種類の強力な魔物が蔓延る『強者の庭園』通称竜ダンジョン。」
竜ダンジョン…最下層に居るのかな?まだ竜は見たことないな。
「虫ダンジョンと骨ダンジョンは最下層まで確認されてるらしいわ。どっちも地下30階ね。10階層毎にボスが配置されてるらしいわ。最下層以外のボスは倒しても割と短い期間で復活するみたいよ。最下層のボスは1ヶ月くらいらしいわ。」
「竜ダンジョンはどうなんだ?」
「それが…1番深く潜った人でも49階層で50階層に竜を見つけて帰って来たらしいわ。その後も続くかそこで終わりか分からないそうよ」
竜ダンジョンは聞くところによると高難易度みたいだし、消耗した状態で竜との戦闘は無理だったのだろう。
「俺達も虫か骨から始めるか」
「そうね、虫ダンジョンは植物も多いし、キスカさんを連れて行きたいわね……アンデットなら光魔法を使えるハルベンデさんを連れていくのもいいわね。」
虫ダンジョンにある植物をキスカさんが採取すれば高く売れるかもしれないな…俺達が護衛って形で行けたらいいけどキスカさん無理かなぁ。
「キスカさんはまず冒険者登録をしないとね。俺達がDランクだし、登録するだけで大丈夫なはずだし。今度話してみるか」
「そうね、じゃあ今日は虫ダンジョンに行く?」
「1番近いのってどこだ?今日は1階層を探索するくらいにしよう。明日が週末だから明日からちゃんと潜ろうか」
「そうね。ここから1番近いのは竜ダンジョンよ」
「じゃあ早速行ってみようか」
◇◇◇
「おいおい、ガキにはまだはえーぞこのダンジョンは」
「お前らは虫か骨あたりからはじめな、死ぬのがオチだぞ」
「しかも2人組、こりゃ素人だな」
まぁ、子供2人で来てたらそりゃそうか。これでも少しは有名なんだけど…代表なんですけど
「お兄さん達は何階層まで行くんですか?」
「あ?俺らは8階層だ。坊主達は10年早いな」
最高が49階層でこいつらは8階層…たぶんCランクの下位かDランクの上位くらいだなこいつら
「僕らは1階層の様子を見に来ただけなので先に行きますね」
入り口は洞窟の様な感じだ。入り口付近には屋台だけじゃなく、荷物持ちの日雇いや武器屋、防具屋、道具屋など出張してきている。階層毎のマップも売られているみたいだが値段が高い。
「じゃ、前衛はカルミナ、後衛が俺で。他の冒険者との接触はなるべく避けて、自分達でマッピングしながらモンスターの強さとか見ていこう。」
「分かったわ、行くわよ!」
ダンジョンの中は特に暗い訳ではなかった。壁や天井がキラキラ光っている。1階層は土の地面に土の壁。土魔法が使いやすそうだ。
「うーん…これ、魔法使っても崩れないわよね?」
「大丈夫だと思うぞ。結構固い壁みたいだし、全力でやらない限り平気だろ」
カルミナと通路を進んで居るとどこかで戦っている音が聞こえてくる。
「そのうちモンスターも出てきそうだな」
「そうね…って、早速来たわよ!」
「4匹のゴブリンだな。1階なら普通だな。」
「1匹だけ杖持ってるわね…外ならなかなか居ないわよ。1階から居るのは竜ダンジョンだからかしら」
「氷の槍!」
杖を持ったゴブリンの頭を貫通させた。いきなり仲間がやられたゴブリン達は襲いかかってくる。
「カルミナ、任せたぞ!」
「はぁぁぁ!」
槍を突き刺し、凪ぎ払い残りのゴブリンを一掃した。
うーん…とりあえず何の問題もないな。
「魔石はあるかなぁ~」
魔物の中には稀に魔石がある。心臓部分にあって強い魔物ほど大きくなる。その大きさと質で魔物のランクを決める基準にしている。
ダンジョンのモンスターは死体を放置しておくと勝手に消える。一説では、ダンジョンに吸収されてるとか何とからしい。
「1匹しか無かったな。質もあまり良くないし、1階層はおいしくないな。」
「どうするの?2階層へむかう?」
「いや、今日は1階層をマッピングしよう。1階ずつクリアしていこうぜ」
「分かったわ、宝箱とか隠し通路も発見出来るといいけどもっと深い所じゃないと期待は出来ないわね」
ダンジョンの中には突如として宝箱が置いてある事がある。1度開けると消えてしまうが中には貴重な物やお金等が入っているらしい。たまにトラップがあるから気を付けないといけないが。
ダンジョンの1階層を歩き回ってマッピングはほとんど完成したといってもいいだろう。
「今日はここまでにして明日は虫ダンジョンにでも行こうか」
「そうね。キスカさんも誘ってみましょうよ」
キスカさんの補助魔法と採取には期待したい。
俺達は手に入れた魔石を売りにギルドに行ってから寮へと帰った。ゴブリンくらいじゃさすがに高くは売れないな
◇◇◇
「キスカさん、俺達とダンジョンに行かない?」
「む、無理ですよ!そんな危ないところ…」
予想通りの反応だな。キスカさん補助系の魔法使いだもんな…
「護衛は俺達がする。キスカさんにして欲しいのは補助魔法と植物の採取なんだけど、ダメかな?ダンジョンにある植物に興味ない?」
「ダンジョンの植物…確かに気にはなりますけど…」
「キスカさん!私とタロウが強いのは知ってるわね。そして私達は冒険者。無謀はしないわ。ムチャをする事はあるけど。私達が守るから一緒に行かないかしら?」
「う…、ハルベルデさんは行くんですか?」
「ハルはもう1つの骨ダンジョンに行くときに一緒に行こうと思ってたけど一緒がいいなら虫ダンジョンにも誘ってくるよ?」
「お、お願いします。それなら…なんとか」
「分かった、後で言っておくよ。キスカさんには冒険者登録をしてもらう事になるけどすぐ終わるから安心してね。」
「私がギルドに連れて行くから、タロウは追加のどうぐを集めてきて!」
「そう…だな。そっちは任せた」
俺達は軽い打ち合わせをして放課後になるまでは普通に授業を受けた。キスカさんはどこか緊張してる様に見え、気の強い方じゃないキスカさんには冒険者は似合わないかもしれないと思った通り。ま、それでも誘うんだけど…
◇◇◇
俺は道具屋へ行き、必要な道具を揃えてギルドに向かった。すると、ギルドからタイミング良く登録を終えたキスカさん達も出て来て虫ダンジョンへ向かった。
ハルがひそひそ話をするように話しかけてきた。
「タロウさん。回復魔法って使って良いの?」
「必要に迫られたらお願いするかもしれない。けど、魔力も伸びては来てるけどまだ少ないから魔法は光魔法中心で」
「わかった。」
「何こそこそ話てんの!?もうすぐ着くわよ虫ダンジョン」
「あ、あはは…。た、楽しみにだな虫ダンジョン。前衛がカルミナとハル。その後ろにキスカさんで最後に俺。この順で行こう。」
「妥当ね。今日もマッピングかしら?」
「うん。時間はあるけど下に進むのは気持ち早めで行こうと思ってる。素材集めするにはやっぱり潜らないとね。」
「分かったわ。戦闘は私とハルベンデさんがやるからタロウはキスカさんを守るのとマッピングをお願い。何かあれば臨機応変にだけどだいたいはこんな感じで行くわよ!」
おぉ…!カルミナも冒険者らしくなってきたじゃないか!少し感動を覚えるね。
虫ダンジョンの入り口も竜ダンジョンと同じで洞窟みたいだ。周りにはやっぱり屋台やら何やらが集まっている。
「さ、行きますか虫ダンジョン。」
◇◇◇
虫ダンジョンは森林のようなジャングルのような木々の生い茂ったステージみたいだな。カルミナの情報によると。毒や麻痺を付与する攻撃をしてくるモンスターもいるみたいだし俺は耐性があるがキスカさんは無いし気を付けないと。
「うーん、冒険者がざっくりと通り道を作っただけのようだな」
「それでもありがたいじゃない!無いよりマシよ」
「少し歩きにくい」
「あ、あの植物は薬になるんですよ?」
早速キスカさんが役に立ってくれた。俺達だけなら見逃していただろう。
「こ、この葉っぱはすり潰して飲み込むと、軽い毒ならすぐに消せるんですよ。」
「キスカさんがいなかったら見逃してたよ。その調子でお願いね」
「が、頑張ります!」
キスカさんの採った葉と俺が1枚だけ採った葉を鑑定で見比べるとやっぱり差が出ていた。キスカさんのユニークスキルは採取系に強いな。
「モンスターが出たわよ!気を付けて」
キスカさんの表情が強張った。というか俺の表情も強張った。
「虫でけぇ…キモい…羽の音がイヤだ…」
予想以上に虫が大きい。的が大きいと思う人もいるだろうが、俺はシンプルにキモいというか怖いと思った。小さい虫でも嫌いなのに。戦いは2人に任せよう。
「キスカさん、近くに。風魔法で僕たちは避難しましょう」
「そ、そうですね。私、小さい虫なら大丈夫ですけどあの大きさはちょっと…」
うわ、虫のお腹側がグロい…カルミナの槍で変な液体出てる…うぇ。ハルが頭をメイスで潰して戦闘は終わったようだ。
「ふぅ。まだこの辺のは強くはないわね…ってタロウ、その魔法は無駄じゃないの?」
「無駄じゃない。キスカさんを守るのが俺の役目だ。」
「あ、ありがとうございます。」
道なりに行ったら下に降りる階段を見つけた。というか繋がっていただけだが。俺達は下に降りてまた道なりに進む。時々キスカさんが植物を採取したり、カルミナ達が戦ったりして俺達は10階層へ降りる階段の前まで来ていた。
「おそらく次の階層はボスよね?さっきまで通りでいいの?」
「そうだな。カルミナとハルが攻撃で。倒せるなら倒して構わないぞ?」
「余裕に決まってるじゃない!」
「大丈夫。」
「一応、キスカさんに補助魔法かけて貰っとこう。じゃ、少し休憩してから行こうか。」
アイテムボックスから地面に敷く布を出して皆で座ってお茶休憩を取った。ここまで歩きっぱなしでキスカさんの疲労が見えていたからな。
「じゃあ、そろそろ行きましょうか?」
「キスカさんは大丈夫?」
「はい、もう大丈夫です。」
キスカさんも大丈夫という事らしかったので俺達はボス部屋に向かった。
10階に降りるとただ真っ直ぐな道があり、進んで行くと大きめの扉があった。
「この先のようね。気合いを入れて行くわよ!」
扉の前でキスカさんが2人に補助魔法をかけた。これで大丈夫だろう。
扉を開けて中に入ると、そこそこ広い部屋でその中央にでっかい蜂とそれよりは小さめの蜂がいた。さしずめ、女王とその家来の様だ。あー…羽の音が無理だ。そしてキモい…。
「キスカさん、安全な場所作りますんで避難しましょう。カルミナ、ハル、任せたぞ!俺は無理だ。」
「情けないわよタロウ!ったく、しょうがないわね!」
「タロウの分も頑張る。」
先制攻撃はハルの光魔法による蜂への目眩ましだった。その隙にカルミナが魔槍の力で小さい蜂を切り刻んでいく。ハルも負けじと飛んでいる蜂をメイスで殴り潰していく。残ったのは女王だけとなった。
「10階層だからかしら?なんかあっけないわね。」
「大したこと無い。」
女王の羽をカルミナが突き破り、ハルがメイスで頭を潰して戦いは終わった。
「2人共、凄いです…」
「まだまだ余裕があるな」
「タロウ!女王からドロップ品出てるわよ」
お、ボスのドロップ品は売ってもいいし何かの素材にしてもいいから落ちたのは幸運だな。
「針と蜂蜜かしら?」
「魔石もあった。」
針と蜂蜜か、割と良くあるドロップ品だな。魔石はそこそこ大きいし売れば良い値段になるだろう。
「じゃ、それらを回収して先に進もうか。11階層でテント張れる場所を探そう」
多分、外はもう夜だろうし今から外に戻るよりは野宿の方がいいかな。
「そうね。見張りはどうするの?」
「それならルミナスにやって貰おうと思ってるから大丈夫だよ」
「それたら安心ね」
「後で会わせて。」
「わかったよ」
11階層の少し開けた場所にテントを2つ設置した。
「召喚 ルミナス」
『タロウ。もっと頻繁に呼び出してください』
「ごめんごめん。カルミナ達の安全は任せたよ」
『タロウは良いのですか?』
「まぁ、特に危険も無さそうだしね。大丈夫だよ」
『分かりました。』
「タロウ…さん。その、ハルミナ様に挨拶をさせてください。」
「そうだね。武道祭の時は少ししか出さなかったからね、どうぞ。」
「ハルミナ様、お久しぶりでございます。」
『ハルベンデ=イノールですね。夢で伝えた事を実行していただき感謝していますよ。結果は違えどこれはこれで良いものです。』
「は、はい。喜んで頂けたなら幸いです。そ、その大変失礼かと思いますが、私の頭を撫でていただけますでしょうか?」
ハルが饒舌になってるな。よほど興奮してるんだろう。
『かまいません。…これでいいですか?』
「あ、ありがとうございます!」
凄い喜び様だな。たまにハルにも会わせてあげよう。
それから夜ご飯を食べながら明日の予定を話して、今日は休む事になった。キスカさんがちゃんと休めるか心配だったが、カルミナ達もいるから大丈夫と思って俺も寝ることにした。
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