第34話 タロウ、雰囲気を壊す
これで武道祭は終りです。途中、駆け足並に展開速いです。よろしくお願いします!
今日は武道祭2日目。ウォンド王国対ルールト王国の試合の日で、俺達は観戦することになる。屋台で食べ物を買い漁り、試合会場へとやってきた。
「どっちが勝つか楽しみだな」
「そうね、明日の為にもちゃんと観ておかないとね!」
明日はルールト王国対ウォンド王国の予定になっている。今日の内に4日目の騎士くんとの試合の為にも実力はしっかり見させて貰わないとな。
会場は既に人で満員になっている。ありがたい事に俺達代表選手の分の席は確保されている。試合の観やすい位置だ。
「ウォンド対コフィンって何か騎士対魔法師的な戦いになりそうだよな。コインは例外だけど。」
「確かにそうね、でもウォンドは魔法も使ってくるし厄介そうね…」
2日目の開会宣言がなされ、選手達はそれぞれの控え場所へ戻っていく。
「では、早速ですが2日目の第1試合へと参りましょう。選手は中央へ」
1日目に俺が出たからかどうかは分からないがウォンド王国からはスターバ王子が出てきた。対するコフィン王国は昨日キール先輩に負けたドールという選手だ。
「さぁ、両選手出揃いました。ウォンド王国からはスターバ選手です。陛下よろしくお願いいたします。」
「ああ、知っての通り我が息子で第2王子のスターバだ。身贔屓に聞こえるかも知れんが10歳とは思えん戦いのセンスだな。ここには強い選手もおる。しつかりと学んで欲しいと思う。以上だ。」
昨日説明されたコフィン王国の選手の解説は無しだ。明日は俺達もウォンド王国の選手の解説もない。
「では、そろそろ参りましょう。2日目の第1試合…始め!」
先に動いたのはコフィン王国のドール選手だ。風、水、火魔法の同時展開で攻めるみたいだな。
「いくよ…剣エンチャント 光 風 光の斬撃!」
スターバから光の嵐がドール選手の攻撃を全て飲み込み消滅させた。
「なんだよ今の威力…」
「タロウ、ドール選手が!」
ドール選手が倒れていた。
ダメージの負荷で人形は破壊され、気絶してるみたいだ。
会場が一瞬の静けさの後に歓声が響いた。
「さすがスターバ王子だ」
「今のすごかったわね!」
「将来も安泰だな」
ウォンド王国の人達が次々に口にする。たしかに今のは威力、規模、剣に2種類付与する技術…どれを取っても高レベルだったと思う。あれならローズ先輩の技も力押しで解決出来るかもしれない。
「どうするかな…同じ規模で相殺するしかないか?厄介だな。本人を氷付けにするのもダメージがどう扱われるのか分からないし…」
スターバへの対策を考えていたらいつの間にかほとんどの試合が終わっていた。ヤバい。全く観てなかったな…
既にウォンド王国が3勝しているらしく、コフィンの2敗目が決まった為、明日の試合で優勝国が決まる。コフィン王国の選手も悔しそうな顔をしているが、聞くところによると圧倒的に負けたのが最初だけで、後は結構な接戦らしく力を出しきった様な顔付きにも見えた。
ゼニー選手とコインが意地を見せてなんとか2勝をもぎ取っていた。これで今日の試合は全て終了した。コインに一声かけて、俺達は屋敷に帰って来た。これから明日の為の会議をするために。
「本日の試合を観て、皆さんどう思ったかしら?」
「すいません、スターバ選手をどうするか考えてたら試合が終わっていた終わってました」
「あらあら、それで勝つ算段はつきまして?」
「まぁ、魔法のゴリ押しで勝つことはできるでしょうが、剣技での勝負になったら分が悪いかも知れないですね」
「あの技は近接戦を得意としてる俺には対処できないだろう。」
「あの技以外を見れなかったのは少し痛いですね。」
「そうですわね、私の魔法もあの広範囲の攻撃は相性が悪いですし…」
「私が行く。たぶん勝てないと思うけど」
「キール先輩…」
「キール、気持ちは嬉しいですけどその必要はありませんことよ?」
「いえ、もちろんただで負けるつもりはありません。全力でいきますよ」
「わかりましたわ、キール、私たちは負けません。全力でぶつかってきなさい」
「はい!」
キール先輩の気持ちは無駄にできない、俺達は負ける訳にはいかなくなった。
◇◇◇
今日は武道祭3日目、国同士の代表戦は今日までだ。ルールト王国とウォンド王国、どちらか勝った方が優勝となる。
いつもの様にウォンド国王から挨拶があり、早速試合という運びになった。
「やはり最初に出てきたな」
「頼みましたわよキール。」
「任せてください」
キール先輩の気合いは十分の様だ。愛用の弓を携えて戦いの場へ向かって行った。
「本日の第1試合はウォンド王国のスターバ選手とルールト王国のキール選手です。どんな試合になるのでしょうか、楽しみです!それでは…始め!」
「弓エンチャント 風追尾弓!三連」
キール先輩が矢を3本放ち、すべてがスターバへ向かっていくが剣で打ち落としている。正面からの矢を打ち落とすのは難しいはずだが簡単にやってのけている。
「弓エンチャント 土破壊弓!四連」
破壊力の増した矢を放つが寸のところで避けられる。相手を近づかせない様に矢を放っているが今のところ当たってない。
スターバがあの技の構えを取った
「いきますよ…剣エンチャント 光 風 光の斬撃!」
「なめるな!穿て!弓エンチャント 闇 風闇風弓!六連」
光の斬撃が広範囲を飲み込んで行くが、キール先輩の放った闇を纏う弓が先輩の正面の光を打ち消していた。だが…
「はあぁぁぁぁぁ!」
「くっ、早い!」
キール先輩がギリギリの所で回避したが、スターバに近づかれて距離を縮められた。
弓を構える隙もなくスターバに攻められ続け、遂に回避しきれなくなった。スターバの剣がキール先輩の喉元に突きつけられた。
「くっ…私の負けだ」
「勝者、ウォンド王国のスターバ選手です!皆様両選手に盛大な拍手を!!」
キール先輩が戻ってきた。とても悔しそうな顔だ。
「お疲れ様キール、後は任せなさい。後輩の頑張りには応えないとね。オーホッホッホッホッホ」
「そうだな。」
「後は任せて、少し休んでるといい。」
次の試合からは先輩達の出番でそれは圧勝と言って良いほどの戦いだった。よほどキール先輩に負担を背負わせたく無かったようだ。
さ、ラストは俺の出番だな
「じゃあ、もう先輩達のお陰で勝ちは決まったので気楽にやってきます」
「タロウ!勝負は勝負なのよ!勝ちなさい」
それもそうか。
「相手はルーツ選手、強いですわよ?」
「それは楽しみです!とっておきを出しますよ」
「それでは3日目の最後の試合となります!ウォンド王国からは選手をまとめるルーツ選手、ルールト王国からは期待の1年生タロウ選手です!それでは……始め!」
相手は5年生、しかもウォンド王国の選手のリーダーだ。
「召喚 ルミナス」
『タロウ、待ちくたびれました。』
強いのかもしれないが、俺とルミナスの方が強い。
「妖精?いったい何をするつもりだ?」
「死にはしないですよ…きっと」
『いきますよ。私が守ります』
「殲滅魔法 火 土 風 岩流星」
『防御魔法 氷 氷岩円 』
自分の周りから灼熱の岩を止めどなく放出する。避けられても休まずに放つ。魔力が続くか敵に当たるまで止めない。集中できる環境をルミナスが作ってくれるがゆえの攻撃。俺達の技だ。
「くそ、どんな魔力してんだよ!普通じゃねぇ!」
悪いな。でも俺は冒険者。勝つためなら容赦はしない。
「くそ、くそ、くそーーグアッ」
ルーツ選手に1発当たった所で攻撃をやめる。人形がダメージを受けてるハズだから死んではないはずだ。
「え…えっと、勝者はタロウ選手です…。正直何が起きてるのか分からないくらいの攻撃でしたね…はい。」
おっと?会場も静まりきってるぞ…。おかしい、ここはもっと拍手喝采みたいな所じゃないのか?あ、あれー?
戻ろう、戻ってカルミナに聞こう。
俺は走ってカルミナの元にやってきた。
「カルミナ…俺、やりすぎたかな?」
「バカタロウ!自分が戦ってた周りを見なさいよ!焼け野原じゃない!そりゃ皆引くわよ!!」
えぇ…勝負は勝負って言って焚き付けたのカルミナじゃん…
「タロウ、あんた本気出しすぎよ!」
「え?」
「え?」
「ん?今の本気だったんでしょ!?だからあんな事になったんでしょ!」
「あ、うん。そう!じ、実は本気だしてた。本気も本気だった」
「……あんた今の試合で魔力どんくらい使ったの?私ならあんなに燃えた岩を出せない。魔力の多い方の私でも無理よ」
「…割です」
「え?なんですって?」
「ルミナスの防御も含めて2割…です。」
「……ばかなの?魔族なの?いや、魔族でも魔王クラスなの?」
いや、魔族が魔力の多い種族なのは知ってるがどれくらいかは知らん。
「しょうがないだろ!俺はボス戦の前はレベルを上げまくって余裕で勝つスタイルなんだ。だから武道祭の前はベリーさんと戦闘してたわけなんだし!」
「なによ!ボス戦って!戦力上がりすぎてんじゃないのよ!!」
「いい事じゃないか…この世の中、いつ死んでもおかしくないんだから」
「それは、そうかも知れないけど…」
「まぁ、私達の優勝は決まってるのでいいではありませんか…。タロウ君、あの辺り修復は出来るのかしら?」
「出来ないとさすがに修繕費を請求されるかもな…」
「ぼこぼこですもんねぇ…」
「タロウ、自然は大切にしないと怒る」
俺は何も言わずに土魔法で地面を均し、壊れた部分を修復していった。その様子が凄かったのか面白かったのかは分からないが観客に拍手は貰えたよ。
「こほん。選手諸君。実に良き試合であった。今日で国同士の試合は終了とする!各自、他国の選手を見習って自身の成長の糧にするといい。少しばかりアクシデントもあったが、今年も無事に終われた事を嬉しく思う。皆、ごくろうだった。これを閉会の挨拶とする。」
「国王陛下、ありがとうございました。明日のエキシビションマッチに参加される方はこの後担当の者に伝えるように。では、今日は解散です。お疲れ様でした。」
宰相さんの言葉の後にすぐ走ってくる奴がいた。アホだ。
「タロウ!さっきの凄かったぞ!凄かったぞ!」
「ありがとよ、相手がお前だったら全部打ち返されてたかもな」
「あ~!その手があったかぁ!なんで私の時には使わなかったんだ?」
「まぁ、お前が早すぎて使う余裕が無かったというか、ぶっちゃけ忘れてたというか…」
「タロウ君、さっきの技は凄かったね。僕も驚いたよ」
おぉ、いつの間にか騎士くんも来ていたのか。
「騎士くん、明日の試合だけど…」
「あ、それはもういいや。うん、大丈夫だ」
「どうしたんだ騎士くん?闘おうよ騎士くん。ねぇ騎士くん」
「いや、ホントに大丈夫。カルミナ様の事ももう大丈夫だから」
「私がなんですって?」
「あぁ、カルミナ様。丁度良かったです。タロウさんとどうぞお幸せに」
「き、急に何言ってんのよ!そりゃ、まぁ…お幸せ…には…//」
「あー、ズルいズルい!私もだ!」
「騎士くん、タタカオウヨ、人形は、ナシデ」
「タロウ君…?僕はまだ死にたくない!では、これにて失礼する」
あら、騎士くんが帰ってしまった。
「じゃ、俺らも帰るかカルミナ」
「そ、そうね」
「屋台巡りしたい!お腹すいた」
俺とカルミナは食いしん坊アホコインに可哀想な目を向けながらも一緒に屋台巡りをしてから屋敷に帰った。聞くところ、明日のエキシビションマッチの参加者は居なかったため、選手は明日帰っても良いみたいだ。帰ろ。
◇◇◇
翌朝、帰る為の準備をしていたらコインと騎士くんが見送りに来てくれた。
「タロウ君、君はどんなトレーニングをしているんだい?」
「現役のAランク冒険者にぶっ飛ばされてる」
「そ、そうか。参考にさせて貰うよ」
最初は辛いが頑張れよ騎士くん。
「タロウ!いつ私の国には来てくれるんだ?」
「いや、行く予定とか立ててないから」
「えぇ!ファンなら私の所にいないといけないんじゃないのか!?」
「それは大丈夫だ。離れていても応援してるからな。頑張れよコイン」
「うん!」
「それじゃ、2人共見送りありがとう。また会えるその日まで!」
「ああ、またな。」
「ばいばいタロウー!」
俺達はルールト王国へ向けて出発した。三国武道祭は楽しかったし、強くもなれたし、岩流星クラスの技はダメって事が分かった。知り合いも出来たし、代表になって良かった。……あ!
「カルミナ大変だ!」
「どうしたの?タロウ」
「お土産何も買ってない」
「…あっ!」
「タロウさん、カルミナさん、クラスの皆の分は買っていますよ」
「私達で買っておいた」
さすがキスカさんとハルだ。頼りになる。が、違うんだ
「自分の分を買ってない!せっかくなのに…行こうカルミナ」
「そうね、私のアイテムボックスが火を吹くわ!…お金は貸してね」
最後はどこか締まらないけど、ちゃんとお土産をかってルールトに帰った来た。
そろそろ暑い季節が終わり、肌寒くなろうとしてた。
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