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タロウ冒険記  作者: じょー
第2章 タロウの学園生活
32/148

第32話 タロウ、戦いは前日から始まってる

本日2話目です!よろしくお願いいたします


会場にはすでに他国の選手も集まっている。会場には、三国の王が並んで一段高い場所に座っており、選手達は学校ごとに固まっていた。


「私のファン1号…」

「君は昼間の…」


コインとスターバとも目はあったが、2人共さすがに声をあげたりはしなかった。後で来るだろうなぁ。



「三国の選手達も揃ったようだな。今年の三国武道祭が拓かれるこの国の王として、私が代表で選手を(ねぎら)わせて貰う。」



あの人がウォンド王国の王様か…スターバの父親だけあってかなりイケイケなメンズの顔をしている



「この武道祭は三国の技術を見せ合うと共に、絆を深める為のものでもある。戦いには全力で挑み、終わった後はお互いを認め合うそんな武道祭にして欲しい。この場にいる選手諸君は将来を担っていくもの達だ。今のうちに交流を深めて手を取り合う事を願う。今日はその為の懇親会だ。存分に語らってくれ。以上だ。」



ウォンド国王の言葉に続きルールト、コフィンの王も席を立ち乾杯の掛け声で懇親会がスタートした。



◇◇◇


早歩きでこちらに向かってくる者がにひ…2人いる。コインとスターバだ。


「カルミナ、悪いけど隣に居てくれ、厄介なのが来る」


「それは構わないけど、厄介なのって何よ」


すぐに分かる。ていうか来たし…


「どうしてあなたがここにいるの!?私のファンだからってさすがに来ちゃダメよ?」


「君も代表選手だったんだね?昼間は情報だけ抜き取るなんてやってくれるね。それにカルミナ第2王女様、お久しぶりにございます」


さすがアホと騎士くん。理解度が雲泥の差だな。カルミナとは知り合いか?…そう言えば前に1度来たことがあるって言ってたな。



「えぇ、久しぶりですね第2王子」


「いやですね、スターバと名前で呼んでください。私と貴女の仲じゃないですか。」


ほーう。どうやらただならぬ関係のご様子。他国の王子と王女様、まるで物語だな。


「ねぇ、1号。イケメン王子とそっちのカワイイ王女様親密みたいよ!なんか物語みたいね。」



ひそひそ声でコインが話かけてきた…

くそっ!アホと同じ思考だと!……今日1番死にたくなるぞ。あと1号って呼ぶな。


「そ、その様ですね。ははは」


「まぁ、私達には関係ないわね!さ、1号、美味しい物を食べに行くわよ!」


「そうでやんすね。それを楽しみにここまできたでやんす。」


「私と同じね!さすが私のファンだわ!」


王子とカルミナの会話も気になるがお腹すいたし、コインと食べに行くのも面白そうだ。

お…?カルミナと騎士くんもこっちに来るぞ?話は終わったのだろうか?



「君、タロウ君って言うんだね。改めて自己紹介するよ。僕はスターバ=ウォンド。この国の第2王子だ。」


「俺はタロウ。1号だ。」

「私はコイン。お腹すいた」


「いや、タロウ。何ふざけてんのよ…てか、1号って何よ?」


「1号は私のファンなのよ!いいでしょ~」


「タロウ!どういう事!?こ、この子の事好きなの!?」


「当たり前だろ!1号は私のファンだぞ!」


外から見たらプチ修羅場だな。


「カルミナ、落ち着いて聞くんだ。このコインという少女はアホだ。応援してますと言っただけでこうなるくらいのアホだ。分かったな」


「あー!またアホって言った!ファン1号なのにー!」


「落ち着けコイン。これはファンとコインの仲のよさを表す為のものだ。心の大きなコインなら分かるよな?」


「タロウ、あんたって奴は…」


うるさいぞカルミナ。見ろよコインを…純粋すぎてなんか苦しい…

カルミナとコインが話始めた。アホとポンコツ…中々の組み合わせじゃないだろうか。



「ほぅ、中々手慣れてるねタロウ君」


手慣れてるとか言うな、手慣れてるとか。



「ま、まぁな。そう言えばどういう仲なんだ?騎士くんとうちの王女様は」


「あぁ、ただの婚約者だよ?少しうやむやになってるけど」


はい。カルミナって俺に気があるんじゃ?なんて思ってた自分に致死性の毒を塗りたい。あ、僕毒耐性あるんでした。



「友好国の王子と王女。2人とも10歳となればむしろ自然な事なのかな?」


「昔1度だけ会った時にその事を言われたんだけどね。それから会う機会も無かったしうやむやになりつつあるけどね。」


ルールト王国での陛下からの拐ってくれ発言はこういう事だったのか?王女様を冒険者が拐って結ばれる…よくある物語だな。だが、物語は物語だ。



「カルミナがその話を受け入れてるとは思えないけど?」


「本人はそうでしょうけど、国と国の話です。個人の意見など通用しないと思いますよ?」


「俺らの国はすでに協力関係にあるだろ?わざわざ本人が嫌がってるのに婚約する必要は無いと思うぞ?」


「タロウ君はカルミナ様をどう思いますか?容姿に強さに賢さ。…僕は彼女が欲しいんですよ。」


なんだよ…国を後ろ楯に婚約を迫ってるならどうにかしようと思ったのに普通に惚れてるなら先にそう言えよ。でもな、



「悪いがカルミナは渡せない。あいつとは将来的な(旅に出る)約束をしてるし、俺とカルミナは(冒険者的な)パートナーだから」



「そうか。君も彼女に惚れているんだね。4日目にエキシビションマッチが予定されている。そこでなら僕と君の一騎討ちができる。決闘だタロウ君!」



「あ、そういうのはいいです、はい。」



「ん?聞き間違いかな?4日目に決闘だタロウ君!」



「いえ、間違って無いです。あと別に惚れてるとかでも無いので…カルミナを賭けて決闘って言うのもちょっと…」


カルミナの居ないところで勝手に賭けるのも悪いだろ?


「え、あ、そうなん…だ…?じゃ、僕が彼女を口説いてもいいのかい?」


「カルミナが決める事だし、ご自由にどうぞ?」


もし、カルミナが王子に惚れて冒険者を辞めたとしても祝福してやろう。

まぁ、精霊魔法を広めたいって言ったカルミナの意思は強そうだし、特に心配はしてないけど。ていうかそこに居るんだから聞けばいいか…


「カルミナ、ちょっといいか?」


「ん?何よタロウ」


「王子と婚約してるんだろ?どうすんの?」



「え?拐ってくれるんでしょ?タロウが。でなきゃ、旅なんて出来ないじゃない。頼んだわよ!」


そうか。うん、そうだよな。信じた通りだ。



「悪いがスターバ王子。こいつは俺が貰っていく。」


「え?え?な、何の話してんのよ!?も、貰うってそういう…」


「そうか、ならやはり戦って貰うぞタロウ君。このままでは納得出来なくてね。」


「いいのか?俺は冒険者。勝つべき時は真正面からなんて戦ってやらない。どんな手を使ってでも勝ちにいくぞ」


「全てを正面からねじ伏せる。それが騎士だ。」



そうか。なら4日目を楽しみにしてる。



「あたしも戦うぞ!1号と王子をぶっ飛ばすのよ!」


男の戦いに水を差すなよアホ女!


「タロウがあたしを貰うって…貰うって…えへへ」



懇親会はほぼ1年生で話しただけだったが他は上級生ばかりだしこれはこれで気が楽で良かったな。とりあえずスターバは倒す。出し惜しみはなしでいこう。



◇◇◇


翌日になり、武道祭のメインである代表選手同士の試合をするため、または観るために人が集まった。会場となる場所は中央に選手が戦う為の場所があって、その周囲を取り囲む様に観客席が作られていた。観客席には安全の為に結界が張ってある。



「えー、お集まりの皆様、選手諸君、これより国王陛下より開会宣言を行っていただきます。お静かにするようお願い申し上げます。」



「ごほん。選手諸君。君達は国の代表だ。強さも品位も全て見られている。自分の持てる力を出しきる事を考え挑んで貰いたい。健闘を祈る。以上だ。」


「陛下ありがとうございました。それでは次に解説をしてくださる方を紹介いたしましょう。左からルールト王国の国王陛下。隣に、コフィン王国の国王陛下。隣に、ウォンド王国の国王陛下。そして、ウォンド王国騎士団の騎士長と魔法師団の師団長にお越しいただきました。司会進行はウォンド王国の宰相(さいしょう)である私が務めさせていただきます。」



今日の試合はルールト王国対コフィン王国だ。先輩達から情報はいただいてる。コフィンの選手は皆が魔法師風のローブ姿だ。ちなみにウォンド王国は騎士のような格好で、軽装やらローブが混ざってるのがルールト王国の特徴だ。





「この試合は5対5の一騎討ち方式となっております。先に3勝した方が勝ちになりますが、戦いは最後の5人目まで執り行います。本日の試合はルールト王国対コフィン王国です!選手の皆様は準備の方をお願いします!」


会場も歓声と熱気にに包まれ盛り上がってきた。誰と当たるか気になるし楽しみだな。



「皆様、順番を発表しますわよ!…と、言いたいところですが、結局考えが纏まりませんでしたので、好きな順番で出て構いませんよ?オーホッホッホッホッホ」


おぉ…それならそれで良いのかも知れないな。手の内を読まれなくてすむし。さすがはローズ先輩だ。さて、先陣はやっぱり1年の俺が行かなきゃな。



◇◇◇



「さぁ、両選手が出揃いました!ルールト王国からは期待の新生!タロウ選手です!」


俺は選手の控え場所から闘技場の中心に飛び出た。国王陛下のいる場所に一礼をしてから観客席にも手を振ったりしてみた。



「おい、お前の出番は最後だろ!?」

「あたしが出るったら出るの!ファンがここまで駆け付けてくれたんだから私が出なきゃ!」

「あれはお前のファンじゃなくてルールト王国の選手だ!落ち着けって!」


コフィンの選手が控えてる場所から一悶着の様子が見える。アホだから混乱したのか…すまんコフィンの先輩たちよ。


「コイン!出てこい!ファンとしてお前と戦ってやる」


「やっぱりあたしのファンなんだ!先輩あたし行かなきゃ!」


先輩達を振り切ってコインが出て来た。


「1号がなんでここにまで居るのかは分からないけど、試合と言うからには容赦しないわよ!」


いや、そろそろ状況くらいは理解してくれよ。まぁ、ただのファンじゃないってところを見せつけるか


「アホ、よく聞け。俺はお前を応援してるがそんなにファンじゃない。」


「な、なんですってぇぇぇ!ファンじゃなかったらあんた何者なのよ!」


「勝負の後にでも教えてやるよ」



「さぁ、そろそろ試合開始間際です。選手の紹介を各国の王にしていただきたいと思います。」


「ルールト王国のタロウ君はな良い子だ。あと賢い。」


…終わり!?短っ!


「コフィン王国のコインじゃが、あの子も良い子じゃ。あと賢い。」


コフィンのじじい、俺とアホを同レベルにしやがったな!許されない事をしたよコフィンの王は…


「なるほど。ではさっそく試合にまいりましょう!準備はよろしいですか?」


俺とコインは戦闘耐性に入る。俺は刀をコインはハンマーを構えた。アホだが身体強化とあのハンマーの組み合わせは凶悪だ。さて…


「ルールト王国対コフィン王国の第1試合…始め!」


「うりゃああああ!」


「光魔法 目眩まし(フラッシュ)!」


「ぎゃあああ目があああ」


先手は取った。俺は空中に足場を作りコインの後ろへと跳んだ。後方からコインに魔法を放つ


氷の槍(アイススピア)!」


「くぅ~…身体強化!うおりゃあああ!」



身体強化って目も行けんのかよ。だが、次だ。


氷縛り(アイスバインド)岩爆破(ロックブラスト)!」


「ハンマーシューーット!」


滅茶苦茶なパワーだな。氷縛りを腕力で破壊した上に岩爆発もハンマーの一振りで不発に終わった。



「こっちからいくわよぉぉぉぉ!」


デカイハンマー使ってるせいか、動きが速いけど単調だ。避けることなら難しくはない。

まずは動きを止める事が最優先だな。



「吹き荒れろ! 風魔法 暴風(ストーム)!」


「くっ…なんて風よ…動き…づらい。身体強化 集中 足!」


な…あの風の中動けるのか!?一筋縄じゃいかないなやっぱり!



「はああああ!」


上からの振り下ろしを横に跳んで回避する。地面がハンマーで抉られてる…一撃でもくらったら終わりだな。


「ちょこまかと!くらいなさいよ!」


「アホ!死なないとはいえ、そんなのくらったら痛いじゃすまないぞ」


くそ、どうする?気絶以上のダメージを1発あてるか?それとも数で潰すか?



(タロウ君は冒険者でござる!)



迷ってる俺の頭の中に声が聞こえた。そうだ、俺は冒険者。

迷ったら死ぬ世界で生きていかなくてはならない。

この試合では死ぬ事なんてない。

だからこそ、相手を殺す気でいかなければ全力なんてだせっこない。


「コイン、死ぬことは無いと思うが痛いと思う。先に謝っておく、すまんな。水魔法(ミスト)


俺はコインの周り1M付近に薄く水を漂わせた。


「はぁ?何言ってんのよ!…何よこの水は…」



「その身を貫き喰らえ!雷の化身、雷鳥(サンダーバード)!!!」



「いぎゃああああああああぁぁ…あ…」


コインが雷に感電して痺れながら倒れた。

ダメージは…と、思ったがちゃんと人形が肩代わりしてくれたみたいだ。コインは気絶してるだけだな。良かった。



「コイン選手の人形が割れました!勝者、ルールト王国タロウ選手!!」


うわぁぁぁぁぁぁっと会場から歓声が聞こえて来た。


「凄かったぞー!」

「中々の迫力だったー」

「お嬢ちゃんの方も良くやった!」


色んな声が聞こえてきた。カルミナや先輩達も喜んでくれてるみたいで良かった。俺は国王達の方へ一礼をして、コインに駆け寄った。


「おーい、生きてるかコイン?」


「………」

「ありゃ、目を覚ましそうにないな。運ぶか」


俺はコインを抱えて、コフィン王国の選手の控え場所に連れてきた。気絶してる人って重いのな…



「コインをありがとう。タロウ君だったね、凄い試合だったよ。普通の魔法だったらコインには通用しないんだけどね」


「いえ、あれでも奥の手の1つですんで結構追い詰められてました。コインが目を覚ましたらまた戦いたいと伝言をお願いします。」


「分かったよ。それは喜ぶと思う」


「あ、それとあと1つだけ伝言を。俺の正体は、お前の真っ直ぐな戦い惚れてファンになった1人目だと伝えて下さい。では。」


対戦相手のコインを運んだ事が評価されたのか、また拍手が鳴った。とりあえずペコペコしながら自分陣地に帰還した。



「白星上げてきましたよっと」


「タロウ!凄かったわ!」

「えぇ、タロウさんお見事でしたわ!オーホッホッホッホッホ」

「うむ、タロウともぜひ対戦してみたいな。」

「初戦からハードルが上がった気がするなぁ。」

「対戦相手の子可愛かったね」


先輩達からのコメントも貰って、俺は休憩することにした。もちろんキール先輩のコメントは無視だ。



「タロウさん、怪我とかは無いですか?」

「タロウさん、お疲れ様」


「ありがとう、キスカさん、ハル。ちょっと飛んできた地面の破片で足を切ったくらいかな。」


「そうですか、なら、この傷薬でよさそうですね。塗っておけばすぐに治りますよ!」


「ハルって何よ!この前までバルベルデちゃんだったじゃない!」


「いや、少し長いなぁとは思ってたんだよ…あと、友達だしな。」


「と、友達…ふふ」


「タロウさん、私はと、友達でしょうか?」


「もちろん。これからもよろしくね」


「タロウ!私は!?私は!?」


「とも…パートナーだろ?」


「うん!なら、許してあげる!」


おっと、いつの間にか許されない何かをしていたみたいだな。危ない危ない。



「はいはい。ありがとう。じゃ、先輩達の応援しますか!」


誤字脱字の報告よろしくお願いいたします!


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「転移したよ in 異世界」 http://ncode.syosetu.com/n1888eg/ という物も書いてます!よろしくお願いします。 こっちはラブコメです! https://ncode.syosetu.com/n7917ej/ よろしくお願いします!
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