第31話 タロウ、ライバル?に出会う
よろしくお願いいたします!
「いや~、初めて来たけどこの街も活気があるね」
「そうね、ウォンド王国は食品関係が強くて、美味しい物がたくさんあるのよ!」
コフィン王国が明日あたりに到着するという連絡が来て今日は1日自由にしていいという事になった。さっそく街へ出掛けようとしたところ、カルミナに捕まった。結果オーライだけど。
「お祭り騒ぎだな…あ、あっちの店のやつとか美味しそう!早く行こうカルミナ」
人が多いからはぐれない様にしつつ、いろいろ回らないとな。
「あ、手、手………ぷしゅ~//」
「おじさん、この串2本ください。」
「あいよ!お嬢ちゃんの方がぐったりしてるけど大丈夫かい?」
「え?あ、カルミナ!?どうしたカルミナ!?」
「手…手…て…テ…」
手が何だって?…手……て…手!?…って!手、繋いでるぅぅぅ!
「ご、ごめんカルミナ、人多かったからはぐれない様にって」
「そ、そうよね?はぐれたら大変だもの、離さないでね」
いや、改めてそうされると恥ずかしくてあれなんだけど…
「とりあえず、串2本お待ち!どうやら坊っちゃん達はこの串より熱いようだな!ガハハハハ」
笑ってやらないでくださいよ。照れてるんですから。
「カルミナ、この串食べたら他も回ろうか」
「そ、そうね…せっかくだから楽しみましょう」
人混みが凄いから手を繋ぐのは普通だよね。うん。当然の事だ。
「カルミナ、あそこに見えるのがウォンド王国の王城か?」
「そうよ、私も1回だけお父様に連れられて行ったことあるわ」
どこも城はデカイんだな、なんて陳腐な事を思いながら屋台の食べ歩きを続けた。何食っても上手かったな。
◇◇◇
ルールト王国の選手団に与えられた屋敷に戻ると先輩達が唸っていた。
「どうしたんですか?」
「いやなに、先ほど知らせが入ってな。ウォンド王国、コフィン王国にも1年生がいるみたいなんだ。うちが言えたことじゃないが普通じゃないだろ?」
たしかに普通に考えれば10歳で代表になるなんて普通じゃない。きっとおかしな奴らだろう。相当の実力があると思った方がいいという訳で、先輩達は色々考えているのだろうな。
「タロウさんカルミナさん、もし他国の1年生と話す機会がありましたら情報収集の方お願いできるかしら?」
「ええ、機会がありましたら何か探ってみますね。先輩達はウォンド王国とコフィン王国で知ってる選手はいたりするんですか? 」
「そうですわね…コフィンのゼニー選手とウォンドのルーツ選手は去年も出ていらっしゃったから要注意ですわね。」
「コフィン王国の選手は頭の良い生徒が多い。戦術など組み立てて攻撃のパターンが多いのが特徴だな。」
「たしかにあれは厄介ですよね。ウォンド王国の選手は騎士道っていうのかな?とにかく真っ直ぐで強い選手が多いかな。搦め手の対処も訓練に入れてるらしく厄介だよ。」
「この国にもエルフは少なかった…」
先輩方から情報を共有してもらい、俺はどう戦っていくか考えていた。キール先輩だけ情報の方向性が違ったから頭から排除する。
「…うん。あれだ、いつも通りでいいか!」
考えを放棄したんじゃない。考えた結果、この結論に至っただけだ。
次の日の朝一でローズ先輩からお知らせがあった。
「コフィン王国が到着したらしいので、今晩は懇親会となりますわ。皆さん準備をしといてくださいましね。オーホッホッホ」
遂に到着したのか。ということは武道祭は明日からだな。体調管理だけはしておこう。
「昼間の間はまた街にでも行くか!食べ過ぎない様にはしないとな。」
◇◇◇
「ふんふふーん。いやー、他国ってだけで何でこんなに楽しいんだろ?ふんふふふーん。…ん?痛っ」
「あいたっ!ちょっとあんた、どこ見て歩いてんのよ!」
「す、すみません、前見てたんですが…」
後ろから赤い髪をうしろで縛った髪型で頭頂部分からアホ毛が飛び出してる、なんかアホそうな子にぶつかられた。
「今度から後ろにも注意しなさいよね!」
「そうですよね、すみませ…ん?」
待てよ…何かがおかしい気がする…俺は前を見て歩いてた。こいつは後ろから走ってぶつかってきた…
「あー!あんたのせいでお肉落としちゃったじゃない!どうすんのよ!どうしてくれるのよ!買ってよ!」
「何どさくさに紛れて肉奢らせようとしてんだよ!ぶつかってきたのお前じゃねーか!」
「ち、ちがう!ちょっと美味しそうな屋台を見つけたから見てたらあなたがぶつかったの!」
「余所見しながら走るんじゃねーよ!このアホ!」
「アホですってー!?コフィン王国の代表選手である私をアホ呼ばわりとは良い度胸ね!」
おーう…実にアホだがこいつ代表選手なのかよ。コフィンって頭がいいって言ってませんでしたかゴリー先輩。さっそく情報を集めないとな。
「た、たしか、コフィン王国に1年生で代表になった凄い選手がいるとか…ま、まさか!?」
「ふーん!ここにまで私の噂が流れているのね、まいっちゃうわ~」
よし、アホそうだぞこいつ。アホ女だな。
「そ、そうだったのですね。握手してください!あと、凄い1年生と言われるあなたがどんな戦い方するのか教えてください。」
「握手かぁ~、しょうがないわねぇ~へへー。私はね魔法がちょぴっとだけ苦手だから、魔力で身体強化してハンマーで相手を叩き潰すのよ!」
ほー…身体強化か。魔法で物理な威力をアシストするわけでもない、シンプルに肉体の強さが変わる技術だ。アホの癖にやっかいだな。
「凄いですね!応援してますよ!」
「あなた私のファンなのね!いいわ、私のファン1号はあなたよ!」
いや、まったくいらない称号だな。
「ファン1号、さっそくだけど、私の泊まってる屋敷に連れてって!迷っちゃった」
こいつの仲間はなんで1人で行動させたんだよ…いや、このアホが勝手に飛び出した方があり得るな…
「そう言われても分からないですし、あ!あそこに人だかりがありますねちょっと行ってみましょうか!」
「たしかにあれは楽しそうな事してるに違いない!行くわよ私のファン!」
誰かの周りに人が集まってるようだ。この国の有名人でもいるのかな?
「スターバ王子、武道祭頑張って下さい」
「王子、応援してます」
「10歳で代表になるとは、この国の将来も明るいな」
どうやら王子様が街に来ているようだ。周りの人が話してる事を聞くと、ウォンド王国の1年生代表はそのスターバ王子とやららしい。
「人だかりで見えねーな、おいちょっと肩車してくれ」
「なんでよ!普通逆でしょうよ!」
「いや、よく考えるんだ。お前は代表になるくらいの凄い選手で俺は村人Aだ。つまりお前の方が凄いから肩車をする。お分かり?」
「たしかにそうね!私の方が凄いんだもの。細いあんたを肩車するくらい簡単よ」
よし、脳筋でアホな子は簡単でいいな。お、なんだあれは…
「ちょっと、見えたの?どうなのよー?」
「凄いイケメンがいる。金色のサラサラ髪に整った顔立ち。10歳であれなら将来はとんでもない男になるぞきっと」
「交代よ!私も見たいわ!」
「結局俺も肩車するのかよ…よっこらせ。どうだ?見えたか?」
「うーん…なんかあんたと同じでひょろひょろね。強いのかしら?」
「代表になるくらいだから強いんじゃないか?周りの人の期待具合が半端じゃないし。それより見たか?なんか物語の主人公みたいな感じするよな」
「私が囚われの姫だとしたら強かったらOKね。弱かったらダメダメね。」
「なんだ?強い人が好きなのか?」
「当たり前じゃない。私より弱くてどうやって守ってくれるのよ?」
あー、この世界じゃ強さを第1条件に持ってくる人はけっこうな数がいると聞いたことある。
「代表になるような子より強いってなかなか厳しいですね」
「ふん!村人Aでファン1号のあんたもせいぜい頑張りなさいよ」
そう言って人の頭をペシペシ叩いてくる。やめろ脳筋アホ女め。勘違いも凄いし、いつまで人の肩に乗ってるつもりなのか聞きたい。
あのスターバとか言う騎士くんの情報は街の人に聞けば簡単に手に入りそうだな。
「なぁ、お前は1人で行動してるのか?」
「先輩達がはぐれたのよ!まったく、情けないわね」
そっか、はぐれちゃって街を走り回ってたのか。ならこの肩車は意外と目立つし良いかもしれない。
「なら、泊まってる屋敷を探すより屋台巡りのついでにお前の先輩を探すって方がよくないか?」
「分かんないけどそれでいいわ!早く食べに行きましょう」
バカなら治った可能性もあるがアホは治らないかもな。
「うーん。美味しいわねぇ~。あんたにもあげるわ!一口だけよ」
俺の金で豪遊してるアホを肩に乗せて歩いているがまだ先輩らしき人には出会ってない。ん、このクレープ美味しいな。
「見付からないな先輩」
「困ったものね。クレープ美味しい」
こいつどっかに放り捨ててそろそろ帰ろうかなんて考え始めた時に誰かの呼ぶ声がした。
「そこの君達、待ってくれ」
「ん?…さっきの騎士くんじゃないか。」
「そうね。何か用かしら」
「き、騎士くん?…えぇと、すまない。コインさんとは君の事かな?」
「何であたしの事知ってるの!?まさかファン2号!?」
「ファン…?よく分からないけど君の先輩達が探してたよ?僕も手伝わせて貰ってるんだ。今は中央の広場で待ってるよ」
「見付かったみたいで良かったな。あとお前コインって名前だったんだな」
「ちょっと!ファン1号なのに知らないってどういうことよ!…まぁ良いわ、早く先輩達の所に行きましょう」
行きましょうって何だよ。降りてくれよ
「後はこの騎士くんが案内してくれるぞ」
「僕はスターバだ。この国の第2王子だけど将来は騎士団に入るつもりだ。ちなみにこの国の代表にもなっている。コインさんとはライバルになるね。」
「あなた強いの?得意な技は?」
「普通なら言わないけど、1年生同士仲良くしたいからね。僕の得意なのは剣と魔法だ。魔法は光魔法が1番得意だけど他も使えるよ。」
何だよこの爽やかさ。物語の主人公かよ。
「ふーん、強いならそれでいいわ。さ、行きましょう」
いや、早く行ってくれよ。棚ぼた的に情報も集められたしもうそろそろ帰らないと。
「えっと、さっきから下にいる君は誰かな?」
「ぼ、僕は村人Aでやんす。コインさんの先輩方が見つかって僕も嬉しいでやんす。スターバ様、後はよろしくでやんす。」
我ながら頭おかしくなったのかと思う豹変ぶりだ。
「き、君はなかなか個性的だね。コインさん早くこちらへ、その方は少し危なそうなので…」
「私のファン1号に危ないとか言わないでよね!さ、行くのよファン1号」
くそ、騎士くんに肩車ごと擦り付ける予定がアホのせいで…ちゃっちゃと運んで帰るか。
「走るでやんす。」
「いいわよ!ファン1号!風になりなさい!」
「ちょっと、危ないから走らないでくれーー!」
結局、中央広場まで走った。アホを放り投げたが何故か先輩達には感謝され。騎士くんもやって来たところでさりげなくその場を後にした。どうせこの後の懇親会で会うしな。
◇◇◇
「ただいま戻りました。」
ルールトの選手に用意された屋敷に戻って来ると玄関をくぐってすぐの談話スペースに先輩達とカルミナが集まっていた。
「タロウ!どこ行ってたのよ!早く準備しなさい、もうすぐ出発よ」
なんか、アホ女と被るな。何かしら性格的な部分が。カルミナは、ポンコツだけど。
「お待たせしてしまい申し訳ありません。すぐ準備してきます。」
懇親会に着ていく服に着替えて戻る。
「タロウさん。なかなか似合ってますわね」
「ローズ先輩の足下にも及びませんよ」
ローズ先輩は赤のドレスで先輩に似合ってるし、先輩らしさがよく出ていた。
「まぁ、お上手ですこと。オーホッホッホッホッホ」
「タロウ。なかなか似合ってるわね」
「ありがとう」
「ちっがぁーーう!ローズ先輩からの流で分かるでしょ!タロウほんとは分かっててやってるんでしょ!」
「分かっててやってるに決まってるだろ!」
「だろ!じゃないわよ。」
「似合ってるよカルミナ」
「………最初からそういいなさいよまったく」
カルミナとのこういうやりとりが楽しいからしょうがないよな。
「あ、そうだ!懇親会へ向かいながら話ますけど。他国の1年生について少し分かりました」
懇親会の会場は王城らしい。そこへ行く間に昼間の出来事、コインとスターバの得意な事を話しておいた。
「さすがタロウさん。仕事が早いですわね!オーホッホッホ」
「いえ、たまたま出会っただけですから。後は偽の情報を喋ったのかどうかの確認ですね。」
「それは今日の懇親会での探り合いで聞き出すしかないですわね。そちらは私に任せて皆は普通に楽しんでくださいましね。オーホッホッホッホッホ」
◇◇◇
俺達は王城の一室で待機していた。これから順番に大広間に入っていくらしい。三国の王達からの話を聞いてから選手同士の交流が始まるみたいだ。
「…タロウ、その片なお面は何かしら?」
「いや、昼間会ったときは突発的な出来事で変装するのを忘れていてね」
「いや、もういいじゃないの別に…私もギルドへは変装していって無いわよ?」
「それな…ベリーさんから黒にしろって圧力きてるから、ベリーさんの居るときは黒な」
「タロウはどう思うの?黒と金髪じゃ」
「どっちでも似合ってるからな迷うな、黒でも金でもどっちも良い」
「そ、そう。ならどっちにしても構わないわよ!」
「すいませーん。そろそろお願いします」
係りっぽい騎士の人が呼びに来たから俺達も会場へ歩き出す。
「この国の食べ物は美味いから楽しみだな。」
「ちゃんと他の選手と交流しなさいよ!」
「あいよ~」
やることはとりあえず、晩飯にありつく事。コインとスターバに会っても普通にする事だけだな。
「どうぞ、こちらが会場になっております。」
情報収集はローズ先輩がしてくれるらしいから普通に楽しみますか!
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