第29話 タロウ、パレードに出る
本日2話目です。よろしくお願いします!
「タロウ君、魔法に比べてこっちの方はまだまだでござるな!」
くそっ、楽しそうにしやがって!
「くらえ、剣エンチャント 光 目潰し!」
「目がぁぁぁぁぁぁでござるぅぅぅ」
目を潰した間に斬りかかる。…なんで避けられるんだよ!気配察知の熟練度高すぎるだろ!
「タロウ君、それは卑怯でござる!」
「お褒めの言葉ですね!剣エンチャント 光 陽炎!」
今度は光の屈折で剣の軌道を読ませないようにした。
「タロウ君、弓とか槍なら効果的でござるが、剣くらいの長さなら腕の振りとかでバレるでござるよ!」
ちっ!ちょっと自信ありげに使ったから恥ずかしい。
「魔法に頼る前にもっと技術からやり直した方がいいでござるな!どんどん来るでござる!」
魔法の付与も無しで斬りかかる。当然返り討ちにされたけど、基礎的な剣の能力を上げる事を優先して訓練している。武道祭までの残りの時間でどのくらい剣のレベルが上げれるかが今の目標だ。
「いたたたた…」
『大丈夫ですかタロウ』
「大丈夫だよルミナス。痛くなりたく無いから早く上達しないとね」
「そのいきでござるよタロウ君。とことん実践でやるでござるから覚悟しとくでござるよ!」
「はい!明日もまたお願いします。」
パレードまでは後5日ぐらいしかない。それが終わったら次の日にはこの国を出発しないといけないから、時間はあまり残ってない。朝の練習以外にも出来る事をやっていこう。
よし、クエストに行きますか。
◇◇◇
いつもの様にギルドにやって来て訓練を開始してからもう何時間か経っていた。
「で…できた!」「わ、私も!」
「タロウ!見て見て!これで荷物運びが楽になるわ!」
カルミナ…実際にはおまえの使い方が正しいんだけど双子ちゃんと比べると理由が汚いな。
「皆、頑張ったね!おめでとう」
結局、アイテムボックスが完成したのは夕方頃のそろそろ帰ろうと言い出す時間になってからだ。まさか2,3日で習得するなんてな…
「ほら、アリッサちゃん、メリッサちゃん、クッキーあげるからしまってごらん。」
「はい!」「分かりました…」
2人ともクッキーをしまったり、取り出したりして楽しそうで嬉しそうだ。
「タロウ、私にもクッキーくださいな!」
「どうせ食べてお腹にしまったとか言い出すんだろ?あげない」
「なんでわかったの!?」
いや、冗談だったのに本気でするつもりだったのかよ…今日1番驚いたよ!
「お前のする事なんてお見通しだ」
「えへへ…タロウってば私の事何でも分かっちゃうのね!」
いや、そこまでは言ってない。
「お兄ちゃん私の事は!?」「私の事も…」
「いや、カルミナの事も分かんないからな?」
とりあえず双子ちゃんは頭を撫で回してごまかしておく。
「へへへ…目が回る」「……くらくらします…」
おっと、少し回しすぎたようだ。とりあえず2人がアイテムボックスを習得出来た祝いにケーキでも食べに行きますか。
「カルミナ、この辺に美味しいケーキが食べれる所ってあるか?2人の習得祝いに今から行こう。」
「それなら任せて!夕飯前だから量より質でお持ち帰りも出来る所にしましょう!」
やっぱりこういう事はカルミナに任せるのがいいな。
カルミナが紹介してくれたらカフェらしき所でケーキを食べて、持ち帰り用にいくつか買っていった。
「アイテムボックスはね、魔力の多さで入る物の量が決まって、熟練度が高ければそれだけ時間の流れが遅くなるから普段から使うのがオススメだよ」
「わかった!」「ありがとうございますタロウさん…」
「メリッサも、今すぐという事じゃないけどもっと自信を持つと良い、アイテムボックスを数日で覚えれるなんて凄いんだからさ!」
「そうよ、タロウの言うとおり、人前に立つなら自信たっぷりでいなきゃダメよ?」
「わ、分かりました、頑張ります!」
「2人で頑張ろうねメリッサ」
「うん。頑張ろうアリッサ」
この2人なら双子パワーで凄いショーを見せてくれるに違いない。その日が来るのが今から楽しみだな
◇◇◇
「タロウ君、フェイントに引っかかり過ぎでござる。フェイントすらさせないつもりで攻めるでござる!」
「はっ!」
右から左からの振り下ろし、とにかくがむしゃらに攻め続けた。
「甘いでござる!」
「ぐはっ…」
顔を思いっきり蹴り飛ばされて戦闘が止まる。
「はぁ…いてぇ…」
「タロウ君は剣だけなら対処もそこそこ出来ているでござるが、体術が含まれると避けれなくなるでござるな。」
確かに今の感じだと剣に注意がいきすぎて視野が狭くなってる気がするな…
「あと、タロウ君には突き刺す剣よりは斬撃の用の武器方が合ってる気がするでござる。嫌じゃなければ刀を勧めるでござるよ?」
刀か…今から練習して時間的に間に合うかな…
「分かりました。ちょっと武器屋に行ってみようと思います」
「刀なら拙者が教えてあげるでござる。明日からは刀の扱い方とひたすら回避の練習でござる!」
「分かりました。よろしくお願いします!」
◇◇◇
武器屋か…前にカルミナの槍とかナイフとか買いに来たな。
たしか店員さんが胸のデカイ人だったのは覚えている。むしろそれ以外は覚えてない
「すいませーん。刀を探してるんですがー」
「おや~?いつぞやの坊やじゃないか?前に一緒に来てたガールフレンドはどうしたんだい?」
「そんなんじゃないですよ、今日はこの後訓練するんで合流しますよ。」
「そうかい、それより刀だったね。坊やの身長だと大人が使うのは少し長いから、少し短めのにするといいさ。刀はそっちの方よ」
「分かりました」
うーん…魔法が付与されてる刀なら鑑定で見ればいいが、今回欲しいのは普通の刀だ。…良し悪しなんてわからんな
「すいませんお姉さん、どれがオススメですかね?自分じゃ分からなくって」
「そうだなぁ、これはどうだ?坊やには少し長いかもしれないが、刀身は黒鉄に輝いていて頑丈だしよく切れる。」
持った感じだと、振るのには問題ない様に思える。
「すいません、少し素振りしたいんですけど出来ますか?」
「ああ、んじゃ、店の裏にスペースがあるからそこを使いな。」
「ありがとうございます。場所をお借りしますね」
とりあえず昔、学校の剣道の授業で習ったように素振りをしてみる……けっこう良い感じだな。
魔力も込めやすいし、これはけっこう良いものかもしれない。買うかな。
「すいません、これにします。」
「毎度あり、大銀貨8枚よ」
やはりちょっと値段はするな。日本円だと8万で買えるから安いけどこの世界だと子供が買うには高い部類だ。買えるけど
「では金貨1枚からで」
「大銀貨2枚のお釣だよ、刃こぼれしたらいつでもくるんだよ」
「はい。ありがとうございましたー。」
ふぅ…とりあえず手に馴染むくらいに素振りをしないとな。
刀を買った俺は、双子ちゃんを連れてギルドにやって来た。すると、帽子をかぶったカルミナがギルドの前で待っていた。
「タロウ早く髪の色を変えて!そしてトレーニングよ!」
「私達も!」「トレーニングします」
「はいよ。じゃあ今日はそれぞれトレーニングという訳で」
カルミナは槍と体術の練習を。双子ちゃんはアイテムボックスを使った技の練習を。俺はひたすら素振りをした。
夕方になったころ、カルミナがお腹が減ったと言い出したので今日の練習を終える。
「そういえばタロウ、刀に変えたのね。」
「今日からだけどね。ベリーさんが刀の方がいいだろうって」
「武道祭に間に合うの?」
「うーん、間に合わないかもしれないけど、やるだけやってみるさ。最悪、魔法のゴリ押しで何とかするよ。秘密兵器も出来たしね!」
「そ、大丈夫ならそれでいいのよ」
「私もお兄ちゃん応援する!」「私も応援してます。」
「ありがとう2人とも。明日も今日みたいにそれぞれの練習になると思うけどごめんね。」
「大丈夫!」「お兄さんからはもう教えてもらえました。」
良い子達だなホント。クエスト修了まであと数日しかないのが寂しくなってくるな。応援してくれるって言ってるし頑張らないと!
◇◇◇
それから数日、朝の猛特訓に午後の自主トレを繰り返した。今日はパレードのある日、つまり武道祭前の最後のベリーさんとの修行である。
「はぁぁぁ!」
「その調子でござる!」
刀で斬りかかり、時には足蹴りをしかけ、距離が出来たらすかさず魔法を放つ。
今までの集大成というか練習の成果をベリーさんに見せている。
「刀エンチャント 風 烈風斬!」
刀は斬撃を飛ばすのに優れていた。やっぱり反ってないとね。
「刀エンチャント 光 幻影突!」
「いいでござる!いいでござる!さ、もっと見せるでござるよ!」
『氷つかせて切り刻め、霧の氷片」』
「水に伝わり感電せよ、紫電の線!」
やったか!?…やべ、つい言っちゃった
「ルミナス、油断するな。ベリーさんはあんなんじゃくたばらない」
『Aランクというのは皆あんな化け物なのですか?』
「分かんないけどたぶんそうなんじゃないか?」
『それは凄いで…タロウ来ますよ!』
「中々いいコンビネーションでござったな!防御が遅れたら危なかったでござるよ。」
その後も魔法での攻撃に刀での攻撃、今までやって来たことを全部見せた。今までの中で1番戦闘時間は長かったんじゃないだろうか?結果?いつもの様に最後に吹っ飛ばされたよ…
「ベリーさん…なんか俺、自信なくすんですけど…」
『私もタロウと同じ力になった今、同じ気持ちを抱いてます。』
だよなぁ~結局ベリーさんを倒しきるどころか膝を地面に着かせるビジョンさえ見えなかったよ…
「何を言うでござるか。タロウ君は普通にBランク上位くらいはあるでござる。戦闘面に至っては学園に通う意味などもはや無くなったでござるな!あはははは」
そうか、Bランク上位くらいはあるのか…良かったぁ~
学園は戦闘だけじゃないからこれからも通うが、戦闘面はこれからもベリーさんとか他の人に師事を仰いだ方が良いかもしれないな。
「すいませんこの後パレードですので先に行きますね。修行付けてくださって本当にありがとうございました。」
俺は深々と頭を下げて、パレードの出発地点である学園に向かった。
◇◇◇
「タロウ来たわね!もう先輩方も待っているわよ!」
「悪い、今日こそは土を付けてやれると思ったんだけどダメだったわ。」
「やっぱり、ベリーさんっておかしいわね…」
「タロウさん、こちらへ。代表者の付けるバッチをお渡ししますわ。オーホッホッホ」
「ローズ先輩おはようございます。このバッチを付ければいいんですね?」
「タロウ君は今日の朝までトレーニングかい?心強いね。」
「Aランクのベリー=ココノエ氏とトレーニングと聞くだけで恐ろしいな」
「ダダン先輩、ゴリー先輩、おはようございます。一方的にぼこぼこにされましたよ…」
「それじゃあ最終確認をしますわよ!スタートはこの学園でゴールは王城ですわ。途中、魔法の芸を披露してもらう場がありますわ。王城に着いてからは、国王陛下にお言葉をもらい今日は王城に泊まります。次の日の朝にウォンド王国に向けて出発としますわ!皆さんよろしいですわね?オーホッホッホッホッホ」
流は分かった。馬車で街を移動している間は手を振ったり何かしてもいいらしい。
「それじゃあ、そろそろ出発ですわ。皆さん笑顔でお願いいたしますわね。特にゴリーあなたよ!」
「努力はするが過度な期待はしないでくれ」
常日頃から表情が固いもんなゴリー先輩は。
俺達は馬車に乗り込み、街へと向かった。
「カルミナ、今日はやっぱり人が多いな、少し緊張するよ。」
「当たり前よ、国の代表なんだから私達は!」
「でも、人にこんなに見られる事ってなかなか無くてな。カルミナは流石だな。」
「ふ、ふん!当たり前よ!」
「タロウ!」「タロウちゃん!」
ん?今人混みの中から聞き覚えのある声が…あ、あれは!
「父様!母様!おーい!」
手をぶんぶん振ってお互いを確認する。
「ニーナからの手紙でお前が代表になったと聞いて急いで来たんだ!」
「タロウちゃん、手紙全然寄越さなくて心配したのよ!」
やっべ、完全に忘れてたな。やっべ。
「父様、母様、僕頑張りますんで!手紙はそのうち書きます!」
「頑張れよタロウ!」「タロウちゃん帰って来て~」
父様達が人混みに飲まれていく。数ヶ月ぶりだが何となく懐かしい気持ちになるな…あとなんか元気が湧いてきた!
俺達は馬車から手を振りながら魔法芸の会場へとたどり着いた。たしかアリッサちゃん、メリッサちゃんのご両親が出るんだよな。楽しみだ。
「楽しみだな、どんな感じになるんだろうか?」
「私も楽しそうだだわ!」
さっそく1組目の登場だ。この人達は2人でやるみたいだ。
「色んな属性の鳥を飛ばしているわね」
「そうだな」
「私も出来るわ…」
「それは言わねぇ約束だろ…」
次の組は1人のマッチョな男が岩や氷の壁を破壊するって演目だった。派手な見た目で会場とゴリー先輩は楽しんでいるみたいだ。
その次もまたその次も色々なモノが見られて思ったよりは楽しめた。
「お、次なんだな」
「どうしたのタロウ?知り合い?」
「あぁ、あの人達はアリッサちゃん、メリッサちゃんのご両親なんだ。お父さんが一座の座長をしているらしいんだ。俺はこれを見に来たと言ってもいい」
「双子ちゃんのご両親なのね。あら?タロウ、双子ちゃんが物陰から手を振っているわよ?」
「え?あ、ホントだ!」
俺もカルミナも手を振り返してたら、どうやら始まったようだ。
魔法で応援の文字を作ってくれたり、派手な演出で会場中が大盛り上がりしていた。
「皆様こんにちは!旅芸人の座長をしていますビータです!えっと、この街に来てまだそんな時間はたっていませんが知り合いも出来まして、その方のお陰でこうしてこの舞台に立てました!その方や代表選手への応援として見せたいものがあります!娘から話を聞いて思い付いた技です。見てください」
なんだろうか新技とは…とても楽しみだな。
旅芸人のメンバーが2人1組となって魔法の準備をしている。
「お前ら息を合わせていけよ!」
「「おう!」」
ペアになった人達が真上に手を伸ばした。
「ひゅ~~~ん…」
これは…まさか…
何かを包んだ物体を空へ飛ばしている。
「ドーーーーン!パラパラパラ…」
「うわぁ~」
「きれい…」
「空に花がさいているわ…」
花火か…久しぶりに見たな。綺麗だ、やっぱり花火ってのはいいな。空がまだ完全に暗くはないけど…そうか!
「召喚 ルミナス」
『タロウ何でしょうか?』
「ちょっと空を暗くしたい。あの花火が上がっているあたりだ。」
『わかりました。』
「タロウ何よその妖精みたいなのは?」
「俺の新技の1つだ。いくぞルミナス。闇魔法 暗黒の空」
「おい、空が急に暗くなったぞ!」
「なんだ?代表の選手が何かやってるぞ」
「見て!花火が!」
会場が、夜空に浮かぶ花火にに先ほどより盛り上がりを見せた。代表選手としての実力も少しは見せれて一石二鳥かな?
「タロウ、凄い綺麗ね」
「いや、君のほう…げふんげふん」
「どうしたのタロウ?」
あっぶねぇ~、花火の雰囲気に惑わされてありがちな台詞を吐くところだったわ!
「暗い方が花火の明かりと夜とのコントラストが…ゴニョゴニョ」
「変なタロウね!まぁ、いいわ。今は楽しみましょう」
花火はそれからしばらく続いた。最初は誰もが騒いでいたのに途中から皆静かにただただ花火を見ていた。黙っちゃうよね、分かる分かる。
花火も最後にでっかいのがはじけて終った。空の暗闇を解除してステキな演出をしてくれた、ビータさん達に拍手をした。
1人、また1人と拍手が増えていって、会場中が拍手に包まれた。
後で聞いた話だが、この花火が話題になり。ビータさん一座は色んな街から招待される事になる。
「さ、皆後は王城へ行って最後ですわ!気を抜かずにいきましょう!オーホッホッホッホッホ」
誤字脱字の報告よろしくお願いします!
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