第23話 タロウ、終わり良ければホッとする
バトルシーンが課題ですねぇ…
よろしくお願いします!
俺はAグループを優勝した。え?ウルフィン先輩?粗暴な狼人だったから姉様みたいに魔法の遠慮はしないで倒したよ?広範囲に冷気を放って動きを鈍くしたらいくらあのウルフィン先輩とはいえども普通に視えるし対処は簡単だったよ。
「タロウ!優勝おめでとう!いやー、最後の試合は凄かったわね!」
「タロウさん。凄かったです。」
「いや、皆さん?ウルフィン先輩に気を使わなくても…開始1分も経ってなかったですよ…?」
キスカさん…素直なのは君の良いところだけど気を使わないといけないところもあるんだよ?
「ま、まぁ、それはともかくありがとう皆。これで他国にいけ…じゃない、代表として三国武道祭に出られる!うれしー!」
「タロウあんた…旅行じゃないのよ!名誉あるイベントなの!1人目の代表なんだからしっかりしなさいよ!」
ちょっと気が緩んでしまったけど三国武道祭は国同士での競いあいだから同じメンバーの能力くらいは把握しとかないとな。
「明日はBグループだっけか?たしか風紀委員長がいるグループだよな?」
「そうですよ、風紀委員長のゴリー=マッスル先輩、5年生ですね…タロウさんのお姉さんの上司みたいな感じですね…」
ゴリー=マッスル先輩か…たしか1度風紀委員としての仕事をしている所を見たことがある。あの鍛え抜かれた肉体で敵をぶっ飛ばす豪快な先輩だったはずだ。今度姉様がお世話になってる挨拶をしに行こう。
「そこは恐らくマッスル先輩の勝ち抜けで2日後のCグループはカルミナの出番だな」
「そうね!今からとても楽しみだわ…生徒会長にどれだけ食らいつけるかしら…」
「生徒会長は文武両道で隙がないと聞きました。」
「武術だけじゃなく、学問や礼儀作法まで卓越してるとか聞きましたよ…?」
「大丈夫よ!私が一泡吹かせて見せるわ!」
◇◇◇
昨日のトーナメントの後に寮へ戻ると寮母のシャリーさんがお祝いといってパイを焼いてくれていた。甘く美味しいパイだった。
一晩ぐっすり眠り、疲れを取って今からBグループの視察をするために会場へ向かうって所で声を投げかけられた。
「こんな奴がホントにAグループ優勝したのか?俺もAグループが良かったわ!」
「ホントホント!Aグループが弱すぎたんじゃね?」
昨日の帰りはおめでとう等の声をかけてくれる人が多かったのに1日経つと他のグループの人だろうか?不安から来るのか知らないがちょっかいをかけてくる。手を出して来ない限りは無視することにした。
「タロウ!誰を観に行くの?」
「おはようカルミナ!とりあえずはゴリー=マッスル先輩かな?あの人は別格だしね」
「今日もキスカとハルベンデは救護係りに駆り出されてるし2人で観ましょ!」
◇◇◇
「むんっ!!」
「ぐはあっ!」
マッスル先輩のタックルで男子生徒が吹き飛ばされた。魔法の補助で威力を増しているが正直に言って1対1で正面からは戦いたくないな。
次の試合もその次の試合もタックルで相手を吹き飛ばしていた。魔法の壁を作っても突破されるのは魔法使いからすると恐怖だな。
ついには決勝戦までタックル1つで来てしまった。視察の意味ないぞこれ…
「ゴリー!今日こそ貴様の肉体を越えてやる!!」
「俺は負けん!はぁっ!!」
決勝は肉弾戦となった。ゴリー先輩の相手も中々の筋力のようだ。殴る蹴る体当たり頭突き、完全に肉弾戦になっていた。会場もこのシンプルで分かりやすい戦いに盛り上がりを見せていた。
「これで!」「決める!」
「「うおおぉおぉおおお!!」」
両者が頭から当たりにいった。
「………クッ…」「俺は…俺の肉体は誰にも負けん!!」
決着が着いた。戦いを制してみせたのはマッスル先輩だった。会場からは両者に対して割れんばかりの拍手が鳴り響いた。
「凄い戦いだったな…」
「えぇ、マッスル先輩が優勝するとは思ってたけどこんなに白熱するなんてね…」
「明日はカルミナの番だな、大丈夫か?」
「当然でしょ!…でも、今から最後の訓練するから少し付き合いなさいよね」
「あいよ」
「じゃ、さっそく行くわよ!模擬戦よ、模擬戦!」
大丈夫そうには見えるがやはりどこか緊張しているのかもしれないな。相手は生徒会長。1年生と5年生だ。やはり経験の差は大きいだろう。とりあえずは決勝に、後はどれくらい見せつけられるかで変わってくるだろう。
◇◇◇
今日はCグループのトーナメントだ。
カルミナは大丈夫だろうか…トレーニングはしてきたとはいえ、たった1週間だ。濃い1週間でパワーアップはしたと思うがどこまでやれるだろうか。1回戦の相手は俺達に絡んできたAクラスのイータ=ヤンスだった。
「いくら姫様といえど手加減はしませ…「はぁぁぁぁぁ!!」ぐはぁっ!?」
「話す余裕があるなんてナメられたものね!」
…いや、話くらい聞いてやれよ…ヤンス君…哀れなり。
1回戦のこれを観る限り、どうやらいつも通りの力は出せているようだな。あとは決勝までどこまで温存出来るかだな…
「お疲れカルミナ」
「ふん!あんなんじゃ疲れないわよ!」
「今の動きも良かったし後は年上が相手になると思うが緊張すんなよ」
「私は王族よ?大人が相手でも緊張なんてしないわ」
どうやら本当に緊張してないみたいだ。こいつのエクストラスキルに相手を威圧するモノがあったな…そりゃ、子供相手だとむしろ対戦相手が緊張や萎縮してしまうか。
「頑張れよカルミナ、王族の力を見せつけてやれ」
「もちろんよ!見てなさいタロウ、すぐ勝ち上がってみせるわ!」
そう言ったカルミナは言葉通りにどんどん勝ち上がっていった。基本は槍の技術で、たまに精霊魔法を使って。最初に模擬戦をした時からだいぶ強くなっているようだ。俺もうかうかしていられないな。そして遂に決勝の舞台にたったのである。
◇◇◇
「カルミナ様といい、タロウ君だったかしら?ニーナの弟君といい今年の1年生は強いのね?オーホッホッホッホッホ」
「ずいぶん余裕そうですね。生徒会長のスカーレット=ローズ先輩」
「ええ、貴女の試合は見させて頂きました。まだ貴女じゃ私には届きません事よ?タロウ君はまだいろいろ隠してるみたいで実力は把握出来てないんですけど。オーホッホッホ」
うちの学園の生徒会長……見た目のパンチ強ええええ!金髪縦ロールにおほほ様で名前がスカーレット=ローズってどうなの!?俺は好きな個性だけど!
…て言うかなんか俺の事まで調べられてるな。あれはなんか強そうだ、大丈夫かカルミナは。
「届かないかどうかは体験してください!いきますよ! 槍 エンチャント風 効果 ブーメラン!」
試合開始から自分の持つ槍を力一杯投げ抜いた。回転しながらローズ先輩の横を通り過ぎていく。
「どこを狙っている…!?」
「ちっ、かわされましたか!」
槍を投げると同時に先輩へ迫り蹴りを仕掛けたが寸の所で避けられてしまった。
「危ないですわね!ですがそこは私の間合いでしてよ!」
先輩の使う武器はレイピアと呼ばれる刺突がメインの刃の細い剣だ。
「分かってます!精霊よ、槍を!」
試合開始時に投げた槍を回転させながら手元に引き寄せた。普通の魔法じゃ不可能な制御を精霊に任せる事で出来る技か。精霊魔法ならではだな。
「はぁぁぁぁ!」
「くっ!」
ローズ先輩の頬を浅く切り裂いた。先制攻撃はカルミナが手にしたようだ。
「魔法は苦手と聞いていましたのですが、どういうことかしら?」
「誰に聞いたのですか?私は威力が低いだけで魔法は得意なのよ!槍エンチャント 雷 効果 麻痺!」
カルミナの持つ槍の矛先に雷が帯電し始めた。
「はあっ!」
ローズ先輩のレイピアに対してカルミナは槍だ。リーチならカルミナに部があり、しかも矛先には痺れさせる為の雷か…使い方と言うか発想が巧いな。攻撃というよりは相手の行動力を阻害する為の武器と魔法か。
「近接ではやりずらいですわね…行きますわよ!火魔法スカーレットローズ」
「ク…ブフッ!」
あの人なんで魔法に自分の名前付けてんだよ。オリジナルか?イメージさえ出来ていれば無詠唱でいいし魔法名も何だって良いのも分かるけどさ。
「ち、近づけない!?」
「オーホッホッホッホッホ!さぁ、私のオリジナル攻防一体魔法スカーレットローズを攻略出来るならしてごらんなさいな!」
名前で笑ってしまったがアレは厄介だ。
バラの形はこだわりなんだろうが、火でできたバラを自分の周囲に複数展開させ体の周りを回転させる。見たまんまを言えば簡単そうだが、魔法の複数展開、それを常時回転させる魔力操作、そして威力…ついでに造形。高難易度の魔法といっていい技だ。
近づいたら迎撃され、遠距離からの魔法も防がれる。今思い付く攻略法が魔力切れを待つか魔法でのゴリ押しくらいしか考えられない。
恐らく魔力切れを待つ前に先輩に倒されてしまうだろう。どうするカルミナ?
「先輩…申し訳ないのですが少し力を溜める時間をください。他の技じゃその魔法は突破できないのでこの一撃に全部を賭けたいのです」
「一撃にかける訳ですわね…オーホッホッホッホッホ!分かりました、私は生徒会長です。貴女の全力を受け止めましょう!」
「ありがとうございます生徒会長。…精霊よ…」
鑑定…カルミナの周りに精霊が集まりだした。下級精霊だが、火風水土雷光闇…それ以上の種類の精霊がカルミナに力を貸している。やはり精霊に愛されてるなカルミナは
「精霊よ私に力を!槍に力を!精霊の槍!いけぇぇぇぇぇぇぇ!」
「これは!?…防御形態!多重ローズ!!」
カルミナは精霊の力を込めた槍を、ローズ先輩は火のバラに岩を重ねた多重防御を相対させた。土煙が舞い上がる。
どっちだ!?
「はぁ…はぁ…くっ…私の負けですね。参りました先輩。」
「いえ、ホントにギリギリでした。私も防御に徹しなければ敗れていたのは私の方ですわ。恐ろしい子!」
負けたか…惜しかった。ホントにギリギリの様に見えた。もし下級精霊じゃなかったら。やはりそれがカルミナの弱点になってしまっているのだろう…
「凄かったぞカルミナ…」
「今の私の全力を出したわ…悔しいけど満足したわ」
「いい戦いだったぞ。少しは強さに近づいたかもな」
「うん、うん…グスッ…うぅぅぅぅぅ」
「お疲れ様。ゆっくりやすめよ」
◇◇◇
「カルミナ様、負けてしまいましたね…」
「カルミナ様は自分の今までを越えてた。」
「今度お疲れ様会でも開くとするか」
Cグループの試合が終わり。代表選手が3人揃った。後はD、Eグループの結果を待つだけとなった。
◇◇◇
2日後、Eグループの試合も終わり代表選手が出揃った。
Dグループからは生徒会副会長の5年生ダダンさん。魔法オンリーの戦い方だが、種類や威力、使い方が滅茶苦茶上手かった。
Eグループからは弓使いの4年生エルフのキールさんだ。魔剣ならぬ弓に属性魔力を付与して使う魔弓使いだ。戦いを見て思ったのは物凄く格好いいって事だ。火の弓とか雷の弓とか凄く格好よかった。
エルフはこの中央大陸の西にある森か西大陸の森に住んでると言われている。基本は森や精霊と共に暮らしているが人の住む街に出てくる事もあるとされている。エルフは魔力の扱いに関しては人族のはるか上をいくと言われてるくらいである。
今は全生徒の前に並んで整列している。かなり見られて緊張するが仕方ないな…これから生徒会長より補欠の発表がある。選出方法は先生と生徒会のメンバーで決めるらしい
「皆様、まずは校内トーナメントお疲れ様でしたわ。前に居ます生徒が今年の当校の代表選手となります。さっそくですが補欠の方の発表をさせて頂こうと思いますわ。」
決勝まで残った選手は誰もが強者といえた。誰が選ばれてもおかしくはない。…けど、選ばれるならやっぱ……
「私達代表選手の補欠として1年生カルミナ=ルールトさんを選出いたしますわ!!」
カルミナと生徒会長の戦いを観ていた者達からは歓声や拍手が鳴り響いた。
「わ、私が選ばれても…よ、よろしいんですか?」
「もちろんですわ!貴女と戦った私には貴女が代表選手だとしても何の問題も無い実力があるという事は分かっていますわ!他の誰にも文句なんて言わせませんわ!オーホッホッホッホッホ」
「カルミナ、頑張ろうな」
「やったよぉ!タロウ!私嬉しいよぉぉぉぉぉ!うえぇぇぇぇん」
決勝で負けた時はギリギリ涙を堪えてたのに今日は泣いちゃったな。あと首が苦しいから抱きつくのはやめて欲しい
「あらあら、ひゅーひゅーですわ!」
「ひゅーひゅー」
「うぇーーーーん」
まぁ、カルミナが落ち着くまでは良いかと思いながら、お疲れ様会を祝勝会にしなきゃなとか考えていた。とりあえずホッとしたって気持ちかな。
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