第20話 タロウ、Aランク冒険者に出会う
よろしくお願いします!
週末になり、カルミナとハルベンデちゃんを連れて冒険者ギルドにやってきた。
道中、カルミナに「何で勝手にメンバー増やしてるのよ!」と散々言われたが、ハルベンデちゃんが魔力よりメイスが得意で前衛で活躍して貰うという話で何とか認めさせた経緯がある。
まだ、討伐クエストは受けていないので俺がお使いクエストを受けてる時に2人は基礎訓練をしていたりする。
前衛にハルベンデちゃん、後衛に俺、中衛にカルミナと割とバランスはいいパーティーになったような気がする。
「今日は何のクエスト受けようか?」
「そろそろ討伐クエスト受けたいわ!訓練ばかりで暇なのよ!」
「私は光魔法の訓練楽しいですけど。」
まぁ、カルミナとハルベンデちゃんじゃ方向性が少し違うからな…解散なんて事にはならないで欲しい。
「そろそろ同伴してくれる冒険者も見つかってるかもしれないし、受付で聞いてみようか」
俺達は受付のお姉さんに聞きにいった。
「いらっしゃい!丁度良かったわ!見つかったわよ、冒険者!」
タイミングが良かったらしい。今日来てもらう事になってるらしくて、俺達はギルドの中でしばらく待っていた。
「待たせたでござる。君達がタロウ君とその仲間達でご……」
「ねぇ、タロウ……気のせいじゃなければ何か私の事見てない?」
「見てるな、瞬きすらしないでみてるな。」
「やっぱりそうよね?この人が私達の面倒をみてくれる冒険者なの?綺麗な人だけど変な人じゃない?ござるとか言ってたわよ?」
「ああ、ござるって言ってたな。それに黒髪なのに装備は甲冑じゃない」
「いや、甲冑って何よ?普通の軽装のようだけど」
たしかにそれもそうか。黒髪にござるで刀を持ってたからついつい甲冑とか言ってしまった。ん?黒髪?
「あ、あの?お姉さん?出身って……「か、可愛いでござるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」……え?」
「きゃ、ちょっと抱きつかないでよ!く、苦しい」
「こっちの国にも黒髪の子いたのでござるな!あ、隣の子も可愛いでござる!!」
「く、苦しいです」
カルミナとハルベンデちゃんが捕まってしまった。まさか転生者か?
その後もお姉さんに抱きつかれた2人はくたくたになるまで解放されなかったのだった。
◇◇◇
「いやー、失礼したでござる。故郷の……この大陸の東にあるジパンヌという国から来たのでござるが、拙者には妹がおりましてついつい思い出したのでござるよ」
あ、転生者じゃないのか…ジパンヌとか…やめとけよ異世界。
「そ、そうだったのですね……」
「苦しかったです。」
「おい、あいつAランク冒険者の『黒霧』じゃねーか?」
「長期のクエストに行ってるって聞いたぞ?」
「どうやら昨日帰ってきたらしいぞ」
他の冒険者の会話が聞こえてきた。このござるがAランク?しかも相当有名らしいな。
「ごめんでござるな。それで……君達がタロウとそのお仲間でござるか?」
「違うわよ!私とハルベンデとついでにタロウよ!」
「違う。私達は友達とそのついでにカルミナ様」
どっちも違うが2人とも今の件について話し出してしまった。ポンコツズは置いといて話を進めよう。
「なんかすいません…はい、僕がタロウで間違いないです」
「私は君達の同伴を頼まれた、九重苺……こちらの国だと、ベリー=ココノエと言うでござるかな?」
イチゴじゃなくてベリーなのか?しかもストロベリーじゃなくてベリーなのか、元居た世界でもキラキラネームというのが流行ったりしたがこの世界のジパンヌという国でも流行っているのかもしれない
「ココノエさん、よろしくお願いします。あの……Aランクの冒険者が僕達みたいなのに同伴なんてあるんですか?」
「拙者の事はベリーと呼ぶでござるよ。」
「いえいえ、そんないきなりは呼べませんよココノエさん」
「拙者の事はベリーと呼ぶでござるよ。」
「いえいえ、だからまだ会ったばかりですし、敬意を込めましててココノエさんと…」
「拙者の事はベリーと呼ぶでござるよ。」
「ベリーさん……」
「何でござろうかタロウくん!」
耳腐ってんのか!
こんな奴ばっかりだよ!どうなってんだこの世界
「いや、あのさっきの質問なんですが…」
「あぁ、普通仮登録の冒険者に同伴するのはDランクぐらいの冒険者でござるな」
「ではなぜココ…ベリーさんが同伴してくれるのでしょうか?いえ、大変ありがたい話なんですが。」
「ひまだ…才能あるパーティーだからと頼まれたでござる!」
こいつ…こいつもポンコツなんだろうか…チェンジしたい
「それは光栄な話ですけど僕らまだまだ駆け出しですよ?」
「そっちの2人も含めて幾つか質問したいでござる」
カルミナとハルベンデちゃんも醜い言い争いを止めてこちらの話に入ってきた
「いいわよ!何でも聞いてちょうだい!」
「答えます。」
「これからアドバイスをする事もあるでござろうからな、簡単に質問させて欲しいでござる。1つ目は、みんな生き物は殺したことあるでござるか?」
直球だな。だが、冒険者で上にいくためには必ずモンスターは討伐する必要があるし、クエストによっては盗賊等も狩らなくてはならない。
「僕はありますよ」
「私はないわ…」
「私もです…」
「次の質問でござる。冒険者になって何をしたいでござるか?」
「僕はこの世界をみてまわりたいです。」
「私は強くなるためよ。」
「私は…」
ハルベンデちゃんだけが答えられずにいた。ハルベンデちゃんは別に自分の意思で冒険者になろうとはしていない。何をしたいかなんて答えられるわけなかった。
「3つ目でござる……貴様ら、本気で冒険者をやるつもりはあるのか?冒険者の世界を少々甘くみてないか?」
空気が震えた。心臓が締め付けられる様な押し潰される様な感覚にとらわれる。急になんなんだ!?
世の中に善があれば悪があるなんてそんな当たり前の事は知ってたつもりだった。つもりなだけだった。冒険者なんて日々仕事の取り合い、嫉妬や憎悪が渦巻いてるそんなとこじゃないか。
……考えが甘かった。魔法という力があれば何でも出来るとどこかで慢心していた。神からの忠告もいつしか聞き流す様になっていた。冒険者になろうとしている奴がAランクの人間も知らない…情報を集めてないなんて致命的な事をやらかすなんてナメていると思われても仕方無いことだ。
今にも気を失いそうなカルミナとハルベンデちゃんを何とかしないといけないと思った時に男の声がした。
「黒霧、そこまでにしておけ」
「よろしいんですか?……ギルド長」
「まぁ、抑えていたとはいえ、お前の威圧に3人とも耐えてるんだ後は必要な事をこれから教えてやっていけばいいだろう」
「まぁ、学園に入って早々ギルドに来る奴は毎年いますが今年のはマシな部類ですね。」
「な…な…」
「うっ…く…」
カルミナもハルベンデちゃんもまだ声は出せないようだ。変わりに聞きたいであろう事を聞いてやるか。
「いつもカルミナに絡んでたのはまだ俺達が本当の準備が出来てない事を確かめる為だったんですか?…"ハゲ"のギルド長さん」
「クソ坊主、お前は話せるみたいだな?で、お前らに足りないものは分かったか?」
「1つは情報。もう1つは実力だな、そして後は覚悟…まぁ、情報については今思い知らされたよ。」
「そうか、そうか。で、実力の方は?」
「冒険者に1番必要なのは実力だ。情報収集も含めてだけど、今言う実力は単純な戦闘能力。10歳だからとか大人だからとか関係ない。俺達には足りてない」
「坊主は一応冒険者について分かってるみたいだな」
「俺に冒険者のいろはを教えてくれた奴がいた。…こんなんじゃ顔向けできねーな。覚悟も甘々だった…クソッ」
「はっはっは!今気付けたなら今この瞬間からスタートしたまえ。茶番に付き合わせて悪かったな。頑張れひよっこ共」
「拙者からも謝るでござる。拙者も嫌な役目を押し付けられたでござるよ!でも、必要な事でござったからな。」
「……どっちが素ですか?」
「こっちでござる!」
「ちっ」
「何で舌打ちしたでござるか!年上を敬うでござるぅぅ!」
威圧してきた時の方がかっこよかったぞ。残念過ぎてつい舌打ちをしてしまう程だ。
「まぁ、いいでござる。とりあえず実力を底上げするために拙者が協力するでござる。もちろん学園が休みの日にみっちりでござるよ」
Aランク冒険者に鍛えて貰えるのはありがたい。2人にはさっきの威圧を耐えれるレベルにはなって貰いたいしな。
「お願いします。ベリーさん」
「あ、タロウくんはこれからギルドの施設で私と模擬戦するから。耐えられたって事はそこそこ強いんだろう?他の2人は落ち着くまでやすんでな。」
「は?」
「わ…わかりました…」
「…やすみます」
なんでマジになるときだけ口調変わるんだよ…
力ずくで訓練場みたいな所に連れていかれた。勝敗?魔法使う暇なくブッ飛ばされたよ。3回も。
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