第18話 タロウ、信徒に使徒扱いされる
よろしくお願いします。
今日も良い天気だ!寝て昨日の事は頭の隅に追いやれた俺はルンルン気分で教室までついた。
「おはようキスカさん。何読んでるんですか?」
「あ、おはようございますタロウさん。これは植物の本ですよ。植物の知識は私の力になりますので……」
そういえばキスカさんのスキルは植物の知識が多いに役立つな。日頃から頑張ってるなんて凄いなキスカさんは
どうやらカルミナはまだ来ていないようだな。俺も何か本でもよむか。今日は平和な1日になりそうだな!
「あなたが、タロウ様ですね!私を貰って下さい!!」
人が集まり出してた教室が一瞬静まり返りそして騒ぎだした。
……拝啓、父様。父様のフラグ回収の早さは無事受け継いでいるようですよ。
◇◇◇
私の名前はハルベンデ=イノール。お祖父様は教会で神父をしています。私はよく手伝いなんかをしています。自分で言うのもなんですが、私はこの世界の神ハルミナ様の敬遠な信徒です。ハルミナ様は銅像にある美しい姿、様々な逸話、どれをとっても素晴らしいお方です。陳腐な言葉しか述べられない私の語彙力が残念でなりません。
そんな私も今年王都の学園に入学しました。友達はまだ出来ておりません。どうやら私は他人と比べて表情の変化に乏しいらしいです。
私は攻撃魔法を覚えてません。そのせいでAクラスはともかくBクラスもギリギリでした。
使える魔法は回復魔法だけです。回復魔法は教会で修行した者しか使えない奇跡の魔法と言われています。
私は特に修行という修行をした覚えはありません。お祖父様のお手伝いをしたのが全てで、とても修行と言えるものではありませんでした。成長の儀を終えた私はお祖父様に聞きました。
「お祖父様、なぜ私は回復魔法を使えるのですか」と。
お祖父様は言いました。
「修行というのは私達がハルミナ様に人を癒す為の器があることを知って貰う為にするものなんだ。そして、認められた者だけが力を与えられると言われておる。お前は既にその器があるという事なのだろう」と。
実際に回復魔法が使えるのでお祖父様の言葉がホントかウソかは気にとめませんでした。ですが、私にはエクストラスキルがありました。お祖父様にすら言っていません。きっと、このスキルのおかげで私は回復魔法が使えるのでしょう。
お祖父様は修行していない者が回復魔法を使えるというのは何かと問題だから他の人には言っちゃいけないよと言いました。そして修行中という姿を他の人に見せるるためにメイスを渡され素振りを始めるようになりました。それが5歳からの日課になりました。
「そういえばお祖父様、先ほど私と同じぐらいの年の子がいたと思うのですが?」
「あぁ、冒険者の子達だよ。そういえば、学園の子でお前と同じ1年生らしい。同じクラスなのかもな茶色と黒色の髪の色だったよ。」
同じクラス……そういえば2人ほど冒険者志望と言っていた人が居ましたね。ですが、黒い髪ではありませんでしたね。王女様と……忘れましたがその子は茶色だったような気もします。
「黒色の髪の子は知らない子ですね。」
「そうか。中々の実力者のようだぞ?ほら今日は一段と涼しくだろ?茶色の髪の男の子がしてくれたんだよ。」
確かに涼しい。たまに来る冒険者の氷魔法だと隣の部屋にまで冷気が届くような事はない。模擬戦の時には氷魔法のアイスウォールしか使っていませんでしたから特に凄いと思いませんでした。
その後、日課となっているメイスでの素振りをし、明日の学園の為に寝る準備に入りました。目を瞑ると私の意識はすぐ落ちて、その日私は奇跡にあいました。
「……?ここはどこかしら?」
気が付くと真っ白な空間にイスと机のみ設置されている部屋に居ました。
「気が付きましたかハルベルデ=イノール」
息が止まった。
「あ……あ…貴方様は……」
「私の名はハルミナ。少しお願いがありまして貴女をここへ呼び出しました」
ハルミナ……ハルミナ様…私は夢を見ているのだろうか?夢…そうだ、私は眠りについたのだもの。いつも銅像で見ているハルミナ様が夢に出てきても何もおかしくはないわ。
「聞いていますか?ハルベンデ=イノール」
「は、はい!申し訳ありません」
夢でもなんでもいい。この幸福な時間を過ごせるならば
「貴女にお願いがあるのですそれは……」
夢の中のハルミナ様はよく分からない事をおっしゃられた。
曰く、タロウと一緒に行動しなさい。曰く、タロウに会ったら枕元にある指輪を渡しなさい。曰く、タロウに光魔法の降臨術を教わりなさい。曰く、タロウの神ハルミナへの好感度をあげておきなさい。曰く、タロウは私の使徒、タロウは私のモノなど。
ほとんどタロウという人の話である。それに本当に使徒だとするならば私にとっての憧れそのものであった。しかしこれは夢。最後に、タロウは貴方のクラスに居ますよ。と、おっしゃられた所で私は目が覚めた。
既に朝になっていた。いつもより少し遅れぎみになってしまっていた。
「へ、変な夢を見たわね…やけにハッキリ覚えているわ…ん、これは!?」
枕元に指輪が置かれていた。さすかに私でも驚き、私は急いで学園へと急いだ。タロウという者に会うために。
◇◇◇
ヤバいヤバいヤバい!
昨日の今日で何が起こってんだよ!
「昨日は姫様を連れてったよな」
「でも、今度はあのハルベンデから言ってだぞ…」
「あのミステリアスなハルベンデちゃんが…」
「あのいつも無表情なハルベンデちゃんが驚いた顔してたわ!」
教室が騒ぎだしている。なんだよハルベンデちゃんって?目の前にいるこの白い髪に無表情な顔した女の子の事か?ハルベンデちゃん?ちょっと言いたくなる名前だな…
「えぇと…」
「あの神の敬遠な信徒ハルベンデちゃんが自分を貰って下さいって言ったよな…」
「あぁ、僕も聞いたよ」
「私も聞いたわ!」
ハルベンデちゃんもやっと周りの声に気付いたのか、慌てて訂正し始めた。
「すいません。間違えました、私からの指輪を貰ってください…」
「逆プロポーズか!?」
「きゃー!大胆だわ!」
「だだだ、ダメですよぉー…」
キスカさんもうちょっと頑張って声を出そうか…じゃなくて神の敬遠な信徒ってのがもうダメだな。絶対にヤバい。現にヤバい。
ご、ごまかすか…
「…人違いでは?僕はタロウじゃなくて、タケルですよ?ちょっと名前が似てますけどね」
さすがに無理があるか?
「えっ…あ、す、すいません!特徴がいくつか似てただけで早とちりしてしまいました。ホントにごめんなさい」
(た、タロウさんいいんですか?何かタロウさんを探してるみたいですけど?)
(大丈夫です。ハルベンデさんは教会の者。それだけでお腹いっぱいなんです。)
隣から小さな声でキスカさんが聞いてきたけど、これでいいのだ。俺は今日からタケルだ。
そのタイミングでカルミナが登校してきた。
「タロウ、キスカさん、おはようございます。何だか教室が浮わついてる様ですがどうしたんで……なによタロウ。どうして私を睨んでいるのかしら?…タロウ?」
台無しだよ!このポンコツ姫!見てるじゃんハルベンデちゃんがこっちを見てるじゃん!
「やはりあなたが、タロウ様でしたのね。良かったです…」
「おい、カルミナ…今日からお前はポンコツ姫だ」
「何でよ!私何もしてないじゃない!」
「えっと、ハルベンデちゃん?この話は放課後でいいかな?」
「はい、楽しみにしております。」
「どういうことよ!放課後はギルドでしょ!説明しなさいよー!」
「あーそーいえばー指輪ってー昨日落としたやつかもー!届けてくれたのかもー」
俺がわざとらしく言ったことでプロポーズうんぬんを多少は誤魔化せたはずだ…。ポンコツ姫はもちろん無視する。
ハルベンデちゃんのあんな表情見たこと無いやら、ハルベンデちゃんがあんなに楽しそうに話をしてるなんて…やら聞こえてくる。
「放課後ですわね…放課後ですわね…」
「ちょっと無視しないでよ!」
ざわ…ざわ…
「はわわわわ」
ローラン先生が来るまで教室は混沌としていた。
◇◇◇
最後の魔法の授業も終わり、そのままホームルームに入ったが特に連絡事項もないため早めに終わった。
どうするどうする?
ハルベンデちゃんが近づいてくる…1歩1歩確実に近づいてくる。
「タロウ様…どこか人のいないお話しやすい所で…」
クラスメイトが誰も教室から出ていかない。こいつら~。
「分かりました。どこかいい場所ありますか?」
「それなら家へ来てください、教会の近くにありますので」
グッと行きたくない気持ちだけが積み重なっていく、が次の一言を耳元で言われ、行かなければならなくなった。
「さぁ、行きましょう……神ハルミナ様の使徒様。」
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