第16話 タロウ、冒険の準備をする
よろしくお願いします。
次の日。学園の授業をぼちぼちとこなし、放課後になったところでカルミナに話しかけた。
「カルミナ、今日の放課後時間あるか?」
教室がざわついた。今あいつ王女様を呼び捨てだぞ?放課後2人でどっか行くのか?などの声が聞こえて来る。しまった、様付けくらいするべきだったな。
「ほ、放課後は暇よ!全然暇だわ!な、何の用事かしら?街へ行ったりするのかしら、き、着替えて来なきゃね」
「街へは行くがそうだな…地味目な服がいいかもな?持ってるか?」
「そういう服がいいのかしら?大丈夫よ!地味目な服ね、お忍びってやつかしら?とりあえず分かったわ!」
「す、すいませんタロウさん!あの…カルミナ様の事呼び捨てにされて…いえ、それよりもこれから2人で出掛けるのですか…?」
「えぇまぁ、必要な物を揃えないといけないですし、こいつ1人じゃまだ何も出来ないでしょうしね」
「そ、そうなのですか…2人で…街に…」
「冒険者に必要な道具やクスリなんかしっかり準備しておかないと命に関わってきますからね、早めに教えておかないといけないんですよ」
えぇー!ってカルミナが驚いてる。何を驚いてるんだ?逆にキスカさんは笑顔だ、何で笑ってるんだ?
「そうだったのですね。良かったで…いえ何でもないです。そうだ、タロウさん今度私の買い物に付き合って貰えませんか?」
「買い物ですか?良いですけど、クエストとか受けない日に合わせて貰う形になりますけど大丈夫ですか?」
「大丈夫です。大丈夫です。お願いしますね。」
「タロウ!私の買い物にも付き合いなさいよ!ズルいわよ!」
「じゃ、キスカさんまた明日」
「はい。行ってらっしゃいタロウさん、カルミナ様」
「無視するんじゃないわよーー!」
◇◇◇
そんな訳で街へやってきた。髪の色を黒に変えたがやっぱり似合っているな。
「カルミナ、お前はどんな装備使ってるんだ?」
「え?槍以外は持ってないわよ?」
「え?持ってないのか?胸当てとかの防具は」
「持ってないわね!」
「そうか…じゃあまずは防具からだな。」
「お金も持ってないわ!」
何しに来たんだこいつは。というかお金を持ってないってなんだよ?一応王女だろこいつ。
「金無いってなんだよ、王族は貧乏なのか?」
「そんなわけ無いでしょ!私から要らないって言ったの。自分で稼ぐつもりだったからね!」
マジかよ…。冒険者は金がかかる。予備の武器に食料にクスリになんやかんやで出費は多い。金無いってのは、ほとんど低ランクか考え無しのその日ぐらし冒険者ぐらいだ。
「…しょうがない。とりあえず今日のお代は俺が持つが、少しずつ返して貰うからな?ちゃんと稼げよカルミナ」
「わ、分かってるわよ!借りっぱなしは嫌だしすぐ返すわよ!」
「ゆっくりでいいさ、どうせ最初は稼げないしな。」
◇◇◇
俺らはまず防具屋へ向かった。中に入ると様々な防具が飾ってあり、綺麗な物から中古品の様なものまである。
「いらっしゃい!おや?坊っちゃんのその制服は…学園の生徒さんかい?ああ、て言うことは冒険者に仮登録って事だね?もう登録はすんでいるのかい?まだなら先に登録を済ませておいで、少し値引きさせて貰うよ」
マシンガントークである。屈強な戦士を彷彿させる容姿をしといてマシンガントークはビビる。勢いがすごい。
「あ、いえ…登録は済んでます。今日は彼女の防具を買いに来ました」
「そうかそうか、もう登録はすんでいるんだな。防具の要望はあるか?うちは良いのが揃ってるぞ!予算はどのくらいだ?」
「そうですね。軽くて丈夫な革製の鎧でお願いします。」
「それなら初心者用のがオススメだな。安いけどちゃんと頑丈なものだし…とりあえず嬢ちゃんこれを着けてみてくれ」
「軽いわね!動きやすいわ!でも少し大きいわね…」
「大きさはこっちで調整しておこう!初回は無料だ!坊主の方は何か買わんのか?」
「僕は自分のを持ってますんで大丈夫ですよ。今のが使えなくなったら買いに来ますね」
「その時は良いものを紹介してやるぞ!まぁ、うちには良いものしかないがなガハハ!」
豪快な人だなぁ。
「お代は先払いだ!皮の防具一式で銀貨3枚だぜ。」
「ふーん。意外と安いのね!」
この国で使われてる貨幣は下から銅貨、銀貨、大銀貨、金貨、大金貨、黒貨、白貨の7種類だ。
銅貨:100円
銀貨:1000円
大銀貨:1万円
金貨:10万円
大金貨:100万円
黒貨:1000万円
白貨幣:1億円
と、なっている。平民の4人家族1ヶ月で大銀貨1枚もかからないだろう。金貨を持っている家なんてほとんどない。大金貨なんて大手の商会や貴族ぐらいしか使わないだろう。黒貨より上は国レベルである。だから銀貨3枚といえどけして安くはないのだ。
「冒険者として報酬貰ったときに驚くなよ銀貨なんてDランクにならないと稼げない様な額だぞ」
「そんなに儲からないの!?私お金ないのよ!」
今からでも遅くないから家からかっぱらってきて貰いたい。
「店長!はいお金!明日は学園休みだし朝のうちに取りに来ますね。」
「まいど!それまでには調整も終わってるだろうし、待ってるぞ」
防具屋を出た。次に向かうのは武器屋だ。俺は杖とナイフくらいしか持ってないし、良いのがあれば買おうと思ってる。
「銀貨って安くないのね…今まで大銀貨より下は端数だと思っていたわ…」
王族も貴族とお金の考えは割と同じなんだな。見栄の為に銀貨以下の硬貨は持たないしお釣りも受け取らない。勿体無いことだ。
「次は武器屋に行くぞ、カルミナは基本槍だろうが短剣や仕込みの武器も持っていた方がいいだろう」
「そうね。槍は一級品のを持ってるわ!魔槍なのよ!凄いでしょ。」
模擬戦の時にも持っていたあの槍は魔槍なのか。いや、模擬戦に何て物を持ち出してんだって話だ。
魔槍や魔剣など、魔法の効果が付与されている武器はどれも強力だ。強さはピンきりだが一流の武器職人が作った一流の魔剣は森を破壊し、海を割り、山を斬るなどと言われるほどだ。
さすがにそこまでの威力はないが持ってるだけで強さが2ランクは上がるとされている。
「魔槍か…それはすごいな!でも、予備の槍やナイフくらいは必要だな。ウサギを狩るのに魔槍は勿体無いだろ」
「確かに他の武器も欲しいわ!早く行きましょう!」
◇◇◇
武器屋に来ました。ここも品揃えがよさそうだ
「あら?ずいぶん可愛らしいお客さんだこと。何が入り用だい?」
スリムだけと胸の大きい褐色肌のお姉さんが出迎えてくれた。何かカルミナが頭を叩いてきたが気にしない。
「えっと、手頃な槍とナイフ、後は短剣とか見せて貰いたいんですが…」
「あいよ、どっちがどの武器を使うんだい?」
「彼女が槍とナイフですね。僕が短剣で」
「これなんかどうだい?鉄製で少し重いが短いめだから彼女でも扱えるんじゃないかい?」
「ん…確かに使いやすいわね!これにするわ!」
即決だな。どうやら気に入ったようだ。俺の短剣も初心者用にしてもらった。
ケースに飾られてる魔法の付与された短剣も大金だが買えない事もない。が、いたずらに目を付けられるだけなのでまだ買わない。
「全部で銀貨5枚だね!坊や達、金はあるのかい?」
「大丈夫ですよ、どうぞ」
「毎度あり!うちの店は簡単な武器の修理もやってるから刃が欠けたりしたらまたおいで、工房と連携してるから安く済ませられるよ」
貰った武器を収納して、武器の店主に礼を言い店を後にした。次は道具屋だな。
カルミナが買ったばかりの槍で突きや払いの型を試している。人通りが少ないからいいがやめて欲しい。満足げ顔でうなずいているからまぁ、いいか。
「次はどこ行くの?ご飯?お腹すいちゃったわ!」
「次は道具屋だ。道具屋ってのは薬師から買い取った回復アイテムや、調理器具に寝具やロープなど冒険する際に必要な物が買い揃えられるから頻繁に使う店だな。」
「へぇー」
こいつぅ~誰のために説明してやってると思ってんだ。お腹すいた途端興味なくすなよ!そうだ…カルミナに買いに行かせてみようか…良い経験になるだろ。
「お前、回復アイテムは売る人間もまちまちで、粗悪品なんて物もあったりするんだぞ?今回はクスリをカルミナに買って来て貰うからな」
「わ、私が買うの!?クスリの良し悪しなんて分からないわよ!」
「何事も経験だ!俺は他のアイテムを買っておくから任せたぞ」
そうして俺達は道具屋に入った。店内は広く、パッと見ただけでもそうとうの数のアイテムがある。
「いらっしゃいませ。道具屋ボッタクルへようこそ!本日は何をお探しで?うちは色々取り扱ってますよ!」
ダメだ。商品がどうのこうのじゃなく店名がダメだ。この店員もヤバい。肌が白くて目が細いもん。それにしても、なんとまぁ信用ならない店名にしたこと。やっていけるのかこの店。
「クスリ関係はどこかしら?」
「回復アイテムをご所望ですか?こちらでございますよ?どうぞどうぞ」
カルミナがクスリを見に行ったのを見送って俺も持ってなかった夜営のためのテントや食器類等必要な物を買い揃えた。正直かなり手頃な値段で質も良いのが何か悔しかった。
カルミナが行った方から店員の褒め言葉が聞こえてくる。……客を一目見てどう扱っていいのか判断したその早さと正確性には驚いた。
「まぁ、最初は騙されるよな…俺もそうだったし」
鑑定を使えばなんの問題なく買うことはできる。が、最初は自分の目利きを信じて鑑定せずに買っていた。騙されまくったから止めたけど…
奴らのよいしょに騙された苦い過去を思い出しながらクスリも買い足しておいた。
「ありがとうございました。またお越しくださいませ~」
店を出たところでカルミナが買ったクスリを見せてきた。見事に粗悪品を掴まされてる。しかも全部だ…
「ふふーん!私だってやればできるのよ!」
全く出来ていないのだが適当に褒めておいた。今度怪我したらこのクスリを使ってやろう
「じゃ、飯屋にでもいくか。何かオススメあるか?王都の飯屋は知らなくてな。」
「やったー!やっとご飯ね!私に任せなさい!オススメがあるわ!」
そう言ってカルミナに連れてこられたのは高級店だった。店先でやんわり止められたが金はあるとか言って店に入っていった。払うの俺なんだけど…
高級店なだけあって個室だった。注文はカルミナに任せて料理を待っていた。
「そういえばアンタ荷物はどこにやったのよ?」
どうやらずっと自分だけが荷物を持っていた事にようやく気がついたみたいだ。ぷぷぷ。
「アイテムボックスに全部入れてる。便利だぞ」
「便利だぞ…じゃないわよ!じゃあ私の荷物も持ちなさいよね!自分だけズルいわよ!」
俺だってアイテムボックスを習得するために頑張ったんだズルくなんてない。
「冒険者は自分の事は自分でする。成功も失敗も自己責任が基本だぞ。頑張ってくださいな。」
「うっ……」
カルミナが言葉に詰まったとこで料理が運ばれてきた。さすが王都の店だな、めちゃくちゃ美味い。最後にデザートも頼んで俺もカルミナも満足した。
「お会計が大銀貨2枚になります。」
平民の家族4人分の生活費2ヶ月分である。美味いけどめったに来れないな……
なんとなくカルミナの荷物はカルミナに持たせたまま学園まで帰って来た。髪の色を戻し、寮の近くで明日の予定を話し合って今日は解散となった。
明日はついにクエストを受けてみる予定だ。冒険者の手伝いで色々とやって来たが自分で受けるのは初めてだから少し楽しみだな。
自分の部屋へ戻り、武器の手入れをして今日は早めに寝た。
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