第15話 タロウ、冒険者になる(仮)
よろしくお願いします。
放課後になり、約束通りカルミナと王都の冒険者ギルドに行くため学園からギルドへの道を歩いていた。キスカにも一緒に行くかと聞いたが、怖いです。怖いです。って言って断られた。確かにはあらくれ者も多いしばか騒ぎする奴らで厳つい顔をしているけど…ってよく考えると怖いな冒険者って。
「そういえばカルミナ、お姫様が冒険者って大丈夫なのか?普通に考えてあり得ないだろ?」
「当たり前じゃない、王族が冒険者になるなんて私も聞いたことないわよ?」
「でも、カルミナは冒険者になるんだろ?どうなんだそこんとこ。」
カルミナが沈黙した。真っ直ぐ前を見て歩いているが何も誤魔化せていなない。
「……家族には言ってないんだな」
「言えるわけないじゃない!さすがに止められてそれで終わりよ!そんなの私は認めないわ!」
マジかよ…パーティー組む約束もしてるんだぞ。これでカルミナを唆かしたのが俺とか思われたら捕まるんじゃないかこれ。あー…あれを使うしかないか~。
「カルミナ、ちょっとじっとしといてくれ。」
「な、なによ!」
「髪の色を変えるだけだ。自由の象徴 スキル偽装 変化 黒!」
「髪の色変えるってな…黒になってる!私の綺麗な金色が真っ黒になってる!どうしてくれんの!?どうしてくれんのよー!」
「安心しろ、ちゃんと金色にも戻せる。それに、黒も似合ってるじゃないか。」
元居た世界だと黒の髪色がほとんどだった。この世界の様に赤や青に白や金色なんてのはほとんど居なかったから黒が懐かしくてついつい黒色に変えてしまった。
「そ、そう?似合ってる?えへへ……っじゃなくて!ちゃんと学園に戻るまでには戻しなさいよね!」
態度はぷんすかしているが、心からは怒っていないようでよかった。これでバレなければいいが不安しかない。やっぱ今日はやめとく方がいいかもな。
「カルミナ…とりあえず今日はやめ…「見えて来たわよ!冒険者ギルドが!」……」
走り出してしまった。ヤバいヤバいヤバい!今からでも止めるか!?ダメだ、ギルドの中に入って行きやがった。とりあえず追い付こう…
◇◇◇
「おうおうおう、ここはお嬢ちゃんみたいなのが来るようなとこじゃねーぞ!さっさと帰んなぁ!」
「な、なによ!子供扱いしないでよね!」
いきなり何やってんだ…こういう時は知らんぷりしてるのが1番だ。さっさと受付に行ってしまおう。
「あのー、冒険者登録をしたいのですが」
「ええと…あちらの方はご友人なのでは?」
「いえ、知らない人です!さ、登録お願いします。あ、まだ僕10歳なんで仮登録だけですよね。さ、急ぎましょ」
「ちょっと!タロウ!何あんただけ受付にいるのよ!助けなさいよ!この禿げた人しつこいのよ!」
おい、禿げた人とか言ってやんなよ…スキンヘッドなだけだろ?多分きっと…フフッ
「おい!そこの坊主!てめー今笑いやがったな!許さねーぞ!」
結構な声量で話してるのに誰も止めようともしない。冒険者なんてこんなのが日常茶飯事だもんな。いちいち相手してられないんだろ。俺も無視しとくか。受付のお姉さんも記入用紙を準備してくれてるしな。
「これ、書いてくれる?文字は…学園の生徒の様だし大丈夫かな?分からないところがあったら言ってね」
「ちょっとタロウ!私の分の紙も貰っといてよ!」
「無視すんじゃねぇよガキ共!」
後でやいのやいのとうるさい奴らだ。俺は他人。俺は他人。
「あ、お姉さん書けましたけど、これでいいですか?」
「どれどれ…へぇ得意魔法が氷ね…中々活躍出来そうな子ね暑い季節なんて仕事が増えて稼げるわよ?」
確かに暑い季節…夏には氷魔法が使えるものは重宝される。食材を冷やす氷を作ったり、貴族の屋敷を涼しくしたり。そうとう稼げてウハウハである。
「そうだ、仮登録の説明っているかな?」
「あ、大丈夫ですよ。危険な採取や討伐クエストを受ける時に本登録してる冒険者の同伴が必要なんですよね?」
「そうそう。よく勉強してるわね。それで同伴する冒険者って基本は1人の人について貰って、アドバイスとかしてもらうのよ。同伴する冒険者はもう決まっているの?こっちで探しとく事もできるわよ?」
「まだ、決まってないですね。とりあえずはFランクで受けれる簡単な採取クエストやお使いクエストとかをやって行こうと思ってましたので。」
「なら、こっちで探しておくわね。いい人捕まえておくから期待しといてね!準備が出来たら紹介するわ。そうだ、今日はさっそくクエスト受けていくかしら?」
「出来れば真面目な方でお願いしますね。クエストは今日はいいです。ギルドカード発行して貰ったらもう帰りますんで」
「タロウ!私も書いたわよ!」
ハゲから上手く逃げてこれたのか、いや、ハゲが凄い目でこっちを見てる。建物内の戦闘が禁止で良かったな。そしてこいつ思ったより字が汚ないな。
「聞いてなかった説明は帰りにでもしてやるよ。今からギルドカードを発行して貰うからそしたら今日は帰るぞ。」
「クエストは受けないの?」
「まぁ、今日は止めておこう。準備もしてきてないしな。」
「やっぱり彼女も知り合いなんじゃない。まぁいいわ。2人ともこのカードに血を1滴垂らしてちょうだい。そしたら登録完了よ。再発行するとお金を取るから無くさないようにね。」
「分かりました、ありがとうございます。次はクエスト受けにきますね。」
「私とタロウでどんどんクエストを達成してあげるわ!」
「楽しみにしてますね。ではまたのご利用お待ちしております。」
「おい、カルミナ、ハゲが見てるから走って帰るぞ。」
「分かったわ。学園までは走りましょう。」
そして、俺達は何とか学園まで帰って来た。仮登録の内容や聞いた話をカルミナに伝え、髪の色を戻し今日は解散した。
「冒険者カードかぁ、名前とランクと得意魔法しか書かれてないな。まぁ有名な冒険者は実力が知れ渡ってるし、いちいちカードに細かく記す必要もないのか。」
ああ、カードを見てると何か顔がニヤケてくるな。この世界に来て冒険者を見てからなりたいって思ってきたからな。卒業するまでは仮登録だがこれから楽しくなりそうだ。
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