第148話 タロウ、目的地を知る
すいません!すいません!すいません!
書こうと思ったタイミングでいつの何かがあってごちゃごちゃしてました。m(。_。)m
先週は風邪を引いてただけですが……
とりあえず、よろしくお願いします!
前回のあらすじ
カルミナが王都から帰って来たよ。
精霊達が精霊集会に行ったよ。
家に戻ったよ。
家に戻ってくると、既に晩御飯の準備が出来ているという事で、急いで手を洗ってから皆の待つ部屋へと向かった。
「タロウ! 遅いからもう、食べ始めてるわよ!」
「ごめんごめん、ちょっと寄り道して帰って来たから。シェリーフ達はまだ帰ってない?」
カルミナに軽く怒られながら席について、精霊達が会議から戻ったかと聞くと、カルミナは首を横に振った。
結構な時間が経っていると思うが、話し合いが長引いているのだろう。何についての話かは分からないが、俺もカルミナと麻津里とで話したい事があるし、このあと部屋に来てもらわないといけない。
「カルミナ、ご飯食べて風呂に入ったら俺の部屋で王都での事とか今後の予定について話しておこう。だから、麻津里も連れて来てくれ」
「分かったわ! 私の活躍を聞かせてあげるから!」
何かウキウキしている様にもみえる。これは……何かをやらかしたに違いないな。後で問題にならなければいいけど。
そんな事を話ながら食事を終えて、カルミナ達が風呂へと向かった間に、俺はウイング兄様に今日の進捗についての報告をしておく。
領主となった兄様は毎日が忙しそうだが、家臣や避難してきた人達、この街の住民の為にと頑張っている。
俺がしてあげられる事は、一刻も早く魔王を倒して兄様の仕事を減らしてあげる事ぐらいだろう。
「……という事で、順調に片付けは進んでますよ」
「うん、報告ありがとう。今日はもう遅いから明日で良いけど、カルミナ様に王都の状況を教えて欲しいと伝えてくれるかい?」
「分かりました。では、おやすみなさい」
「うん、おやすみ」
まだ、寝るわけではないけどそう挨拶をして部屋を出た。自分の部屋へと戻り、カルミナ達を待ってる間に装備の点検をしておく。こんな空き時間でも無ければ、点検もままならない程に忙しいのだ。
「よし、オッケー……」
「タロウ、来たわよ! 入るわよ!」
カルミナがドアをノックするとほぼ同時に入ってくる。別に構わないけど、ノックの意味を考えて貰いたいものだな。
「失礼しますね、旦那様」
「いらっしゃい。カルミナも麻津里も座ってくれ……すぐ飲み物を用意するから」
風呂上がりという事も加味して、冷たいジュースを二人に用意する。話す事はいろいろあるけど、とりあえずはそう構えなくて良いようにラフな感じで話を進めて行く事にした。
「じゃあ、早速だけど……王都はどうだった?」
「そうね~、街並みはそこまで変わって無かったわよ! それで……」
カルミナから王都での出来事を話して貰った。
レートに会った事。王都にピヨリで乗り込んで、街で少し騒ぎを起こしたり、城の最上階で騎士と対峙したり、国王との謁見時に王を含めた周囲の貴族に殺気を当てる……など。なるほど、土下座で済むと良いけど大丈夫かな?
だが、悪いのはそこまでで王都に攻めてきた魔物や魔族の撃退に貢献したらしい。
「魔族の幹部は厄介ね……いままで出会った魔族とは雲泥の差だったわ」
たしかに、カルミナの言う通りだ。エドヌで会った魔族と比較するのがおこがましいくらいの差がある。俺も負けなかったが、逃げられるという失態をおかしてしまった。
「魔族が出てきたし、ここで話は少し変えるぞ。魔王についてだ。正確に言うなら魔王の居場所について」
幹部魔族だって決して無視出来る存在じゃない。攻められれば街や国が滅茶苦茶になる。だが、それも結局は魔王というシステムを破壊しなければ終わらせられない。
だから俺達の優先順位が高いのは魔王だ。
「そう言えば……魔王が暴れた場所というのは聞かないわね。そもそも、魔王が名乗ってから暴れてるのかも分からないし、一人も生き延びてない可能性だってあるわ」
「早急に居場所を特定しないとな」
「旦那様、カルミナさん、それなら分かる方に聞けば良いと思いますよ? 八名の内の誰かなら……きっと分かる筈ですし」
最初は分かる奴が居るなら楽だ……なんて言おうとしたが、麻津里の八名という言葉で納得した。俺とカルミナなら真っ先に思い浮かべる筈なのに、分からない事は自分の足で調べるという冒険者の癖が残っていたのかもしれない。
『えぇ、その話について皆で話し合っていたのです』
「シェリーフ! タイミングが良いわね……狙ってた? とりあえずお帰り!」
『狙ってなんていませんよ、カルミナ。そして、タロウの二人には話しておきましょう。麻津里にはあなた方から話してあげてください』
麻津里は精霊が見えない。まぁ、世のほとんどの人が見えない存在だから、不思議な事じゃない。その、ほとんど関わりの無い麻津里が精霊に尋ねるという方法を思い付いた方がよっぽど不思議である。
『帰宅……夜は良い……マント返す……』
「お帰りダークレム。という事は……」
『私も居るの!』
『べ、別に気になる訳じゃないけど、私にもそのマント貸しなさいよね』
アクエスもアイガルも帰って来たみたいだ。カルミナの方も皆が戻って来ており、部屋の中が一気に華やかになった。
『では、話す前にタロウとカルミナに尋ねます』
シェリーフの一声で、空気がピリつき、重くなる。
『結論から言いますと、魔王の居場所は分かっています。が……あれは魔族の王という存在を越えた化け物となっています。暴力の化身、災害……上手い言葉が見付かりませんが、恐ろしい。ただただ恐ろしい存在へと変化しました。竜の加護を集めるというよりは、力ずくで奪ってきたのでしょう。本来なら竜達から愛されてる者だったというのに……無理矢理手に入れたモノはどこかで歪み、歯車が噛み合わなくなるものです。魔王は、暴走する一歩手前の“魔龍”へと成り果てました』
以前対峙した時。俺と似た背丈で、竜の加護が無ければ魔族としてはパッとしない見た目をしていた。それが、今や龍へと成り果てたらしい。加護を集めきったのだろう。きっと、恐ろしいまでの成長を遂げている。
『カルミナ、タロウの二人の成長は近くで見守って来た我々は知っています。知っていて問います。アレを目の当たりにして、戦う覚悟を捨てずにいられますか? 我々の力を結集すれば幾年かの封印を施す事は可能でしょう。ですが、その封印に掛かりっきりとなれば、この世界はきっと荒れてしまうでしょう。どちらを選択……』
「シェリーフ! あなた達精霊だってこの世界に生きる者よ。その全てを救う為に私とタロウは戦うの。あなた達の力は魔王の封印に使わなくて良い。ただ、私達に貸せば良い。契約者からの命令よ。魔王は絶対に倒すわ……だから、私達に力を貸しなさい!」
あら……まぁ! いつの間にこんなに立派になっちゃって……カルミナの成長を感じる。昔はもっとオドオドしていたというのに……あれ、目に汗が。
「ちょ、ちょっと! タロウ、何泣いてんのよ! まさかビビってる訳じゃないでしょうね!?」
「カルミナ……口汚くなったなぁ~、これも成長かぁ……うぅ」
「旦那様……何だか嬉しそうな顔をしてますね、これは私もカルミナさんを見習った方がよろしいのでしょうか?」
『タロウ! あなたのせいで話がそれたじゃないの! それでも私の契約者なのかしら!?』
『しっかりするの!』
『うぅ……私は別に……どうでも……いいけど』
怒られてしまった……。別に茶化すつもりでの発言では無かったけど、たしかに場違いだったかもしれない。でも、それを言うならシェリーフの問いだって今更な事だろう。
せっかく二度目の人生を謳歌しているのだ、脅威は取り除かねばなるまい。カルミナや麻津里、精霊達や家族の皆の為にも。そして、俺自身の為にも。
「勝つよ。だから、安心して俺に力を預けて欲しい。この時代の平和は……俺とカルミナ、それに麻津里……精霊の皆で一緒に守ろう。シェリーフ、魔王の場所を教えてくれ」
『分かりました……その気持ちが揺らがぬ事を願います。魔王が居るのは――』
シェリーフに伝えられた場所は、意外でも何でもなく、俺も何となくそこだろうと思っていた場所だった。
本当は今すぐに行きたいが、まだやっておくべき事が残っている。兄様への報告や国王への報せ。その他の準備だ。
『被害はそこを中心に広がっています。つまり、今の魔王軍の本拠地と言っても良いでしょう』
「緋鬼王や紅緋は除いて、二人……麻津里を含めても三人じゃ、流石に人手が足りないかもしれない」
『任せるの!』
『私にも考えがあるよ』
アクエスとフレイミアの二人がそう言った。
『私はエルフ達に話してみる』
『私はドワーフ達に』
「魔法のエルフに強靭なドワーフ……アクエス、フレイミアよろしく頼む! だけど、全員じゃなくていい。戦える者達だけを誘ってくれ」
『そういう事なら……私の眷族達……』
『私の所にも氷の民がいるんだから!』
アクエスに続き、ダークレムもアイガルも。なんなら、他の精霊達も自分の住む場所で一緒に暮らしていた者を呼んでくれると言い出した。
それからの行動は早く、翌日から俺達は急速に準備を整え始めた。精霊達は自分の友を連れて目的地へ向かい、そこで合流となる。
俺達はピヨリで移動するが、緋鬼王達は後から再召喚する必要がある。だから魔力の回復に少しの余裕を持って移動する予定だ。
準備を始めてから三日。とりあえず、やるべき事は終わらせた。正確に言えば、ウイング兄様に押し付けた。
俺とカルミナはグラウェル家の皆と手を振りあって、また少しの別れを惜しみながらピヨリに乗って出発した。
――目的地であるヒートテ国の火山へと向けて。
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