第147話 タロウ、魔物処理してる
お待たせしました
短めですが、よろしくお願いします!
「帰ったわよ! タロウ!!」
倒した魔物はかなりの数になっていて、冒険者総出で解体や撤去作業に勤しんでいると、上空から女の子が落ちてきた。
俺の目の前に華麗に着地して、抱きついてくる。落ちて来たと言うよりも、舞い降りたと言うべき軽やかさである。
「お帰り、カルミナ。目的は果たせたか?」
「うん! お父様にも会えたし、キスカやハルにも会えたわ! あと、伝えた通り……結婚の許可を取ってきたわ」
取ってきた……ニュアンスでは強引に認めさせた感がすごいけど、本当に大丈夫なのだろうか? まぁ……今度は俺がちゃんと挨拶に出向かないといけないな。
「そうか、長旅疲れただろ? 俺の家で休んでて良いぞ? 俺はまだ片付けが残ってるからな~」
「手伝うわよ?」
「大丈夫大丈夫。とりあえず兄様に帰還した事の報告とかしてきてくれ」
俺も一緒に戻って王都での数日について話を聞きたいが、自分の家が管理している領地に、魔物の死骸がそのまま在る状態にはしておけない。
それに、他の冒険者達も頑張っている中において、俺だけ先に戻るのも気が引けるしな。魔物の素材は好きにして良いとは言ってあるが……きっと売価は低くなるだろう。すでに、供給が多すぎてギルドも扱いに困ってるらしいし。
「分かったわ。じゃ、先に戻ってるわ! それと……ピヨリとアトラスが居てくれて助かったわ」
「おう。その当人達は……あぁ、ピヨリはご飯か」
再会したばかりだが、カルミナとはまた少し別れた。そして、魔物を食べているピヨリと、そんなピヨリを見ているアトラスの元へと足を運んだ。
俺に気付いたアトラスが先に駆け寄ってくるが、ピヨリは食事を続けている。
よっぽど疲れたのか、お腹が空いていたのかは分からないが、たった今デカイ魔物を飲み込んだばかりだというのに、また次の食事を開始している。
「お帰り、アトラス。王都はどうだったかい?」
『大きかったぞー?』
「そっかそっか」
笑顔でそう言うのをみると、つまらなかったという事は無いだろう。手を伸ばすアトラスを抱えて背中に回し、そろそろピヨリを止めるために動き出した。
別にピヨリの食べる量くらいなら微々たる物とはいえ、鳥らしく啄んで食べている結果、かえって散らかっているようにも思える。
「ピヨリ~、そろそろストップ! もう少し、綺麗に食べてくれよな?」
『ご主人ッピ! ただいまッピ~~!!』
ドスドスと地を駆けるピヨリ。
体格が良くなってからというもの、掌の上でヨチヨチと歩いていた頃が懐かしく感じる。
今は人を乗せて飛べるくらい逞しくなったのだが、それはつまり、猪では無いにしろ猛進されると少し怖い。
だが、ここで避けては飼い主として召喚士としても不甲斐ない。覚悟を決めて受け止める体勢に入った。
『ご~しゅ~じぃ~ん~~』
危機的状況だと言いたいのか、神経が研ぎ澄まされているだけか、ピヨリがゆっくりに見えてきた。
羽を広げ、今にも飛び掛かろうとしているピヨリを抱き締める為に、俺は体に魔力を流して身体強化をしておく。主に腰。下手すれば折れると……俺の直感が囁いていた。
「ピヨ――――グェッ」
『ご主人ッピ!』
『ピヨリ、危なかったぞー!』
アトラスの言う危なかったとはなんなのか。
それは、俺が完全に押し込まれ背中から地面にダイブしそうになった事だ。アトラスが圧死する所だった。とっさに地面に残った足で踏ん張り、横を向けたお陰で怪我もなく済んだ訳だが、アトラスはご立腹のようだ。
1メートル程度の身長しか無いアトラスが、ピヨリと並ぶと大人と子供……いや、それ以上の差があって全然怖そうに見えないのだが。
『ごめんッピ!』
『気を付けるんだぞー』
「ほら、ピヨリは口を拭いて、アトラスもその辺で……一緒に休憩でもしようか」
俺達は魔物の死骸が少ない場所に移動して、休憩に入った。ピヨリやアトラスから見た王都の話を聞いて、思ったよりは変わってないみたいだし、少し安心した。
◇◇◇
休憩が終わって、また魔物達の後処理に奮闘しようと意気込んでいると、アクエス、アイガル、ダークレムの三精霊が何かを話していた。
基本的にはどこに居るのかハッキリとは分からない。呼べばすぐに出てきてはくれるのだが、こんな感じで近くで話している姿を見るのは珍しかった。
「どうした?」
『シェリーフが集まれって言ってるの!』
『でも、ダークレムがそっちが来てと言って動かないのよっ』
『……どっちが動いてもすぐこれる……なら……向こうが来ても良い筈……』
なるほど、俺からすれば早く行った方が良いんじゃ? という気持ちにしかならないけど、ダークレムにはダークレムの考え……もとい性質がある。
だから、ダークレムに急げなんて言わないけど……シェリーフが呼ぶくらいだし、何かがあったのだろうから行かないという選択肢は無い。契約者の俺が何とかしないといけないのだろうが……結局はダークレム次第だからなぁ。
『日陰……心地好い……ここで話し合い……』
『サンライカがまたしっかりしろって怒るの!』
「アイガル、向こうに来て貰う事は出来ないのか? ダークレムに動く気力は無さそうだぞ?」
『契約者のあんたがしっかりしなさいよっ! ……それに、場所は決まっているの。今回はサンライカの決めた場所』
そう言って上を指差す。
精霊達の集まりが雲の上で行われるのには驚きだが、地上に居ても見える人は少ないんだし……と思ってしまう俺には情緒的な、風情的なものが足りないのだろう。
今回は……と言っていたし、それぞれの精霊が自分の落ち着く場所を指定するのだろう。今回はたまたまダークレムの苦手とする場所だから、こんなに渋っているのか。少し理解できた。
「ダークレム、影の無い場所に行くのが嫌って事はなんとなく分かった。布かマントで良ければ貸してやるから頑張ってこい」
『……ぅぅ……仕方ない……マントを頭から……これなら……少し楽』
ようやく動く気持ちが固まったみたいだ。
俺から見たら三人が空に向かって飛んでいく姿がバッチリ見えているのだが、他の人からみれば、誰かのマントが強風に煽られて飛んでいく様にしか見えないのだろう。
「さて、精霊達が何を話してるのか少し気になるが……まだ仕事が残ってるからな! 夕方まで頑張るぞ!」
『手伝うッピ!』
『手伝うぞー?』
ピヨリは食べるだけ。今回からはちゃんと丁寧に食べてるお陰で問題は特に無い。レア素材もばくばくと食べているのが冒険者達にとっては損害かもしれないが。
アトラスは割れた地面や抉られた地面の修復をしてくれていた。こっちは単純にありがたかった。汚れた土もある程度は綺麗に出来るみたいだし、ハイドワーフの土魔法も中々に便利だな。
数時間による作業のお陰で、今日のスタートよりはだいぶ片付いたように思える。今日以降に残っている魔物達は、教会の人達が光魔法で動く死体にならぬ様にしている。きっと明日には燃やされて灰になるだろう。
そもそも、何故このタイミングで侵攻があったのかは不明だが……時と場合と場所は選んで無いのだろうな。
「ピヨリ~、俺も乗せてくれ」
『分かったッピ!』
『あたしも~』
疲れた体をさらに酷使して走る事はあまりしたくない。それに、ピヨリに乗った方が早く帰れそうだし。
俺達を乗せたピヨリが勢いよく上昇して、空を駆ける。
風が気持ちいい。遠くに見える夕日も綺麗だ。
精霊達の会議が終わっているのかは分からないが、このまま雲の上まで行ってやろうかとも思った。ま、流石に高すぎる場所に行く格好はしてないし、またの機会に持ち越しだ。
俺達は少しゆっくり目に空を散歩して、家へと戻って行った。
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