第14話 タロウ、姫様との距離を縮める
何とか出来ました!よろしくお願いします。
学園2日目です。張り切っていく所存であります。
鏡の前で寝癖を整え8時前には校舎へ向かう。
「おはようございますタロウさん…。」
「おはようキスカさん!」
途中でキスカさんと会ったので一緒に行くことにした。教室に行くと既に生徒はそれぞれ集まって談笑してる。
「よ、お姫様。ご機嫌麗しゅうー。」
「おはようございます。カルミナ様」
「ふん。堅苦しいわ、お姫様なんて止めてよね。それとキスカさん、様付けなんてしなくていいわ。」
挨拶しただけでこうである。どうやらキスカと姫様は知り合いのようだ。
「キスカさん、おひ…カルミナ様と知り合いなのか?」
「えぇ、はい。パーティーで何度もお会いした事ありますよ。」
なるほど。俺は5年前のパーティーしか出たことがない。キスカは何度もパーティーの類いは出ているのだろう。
「たしか、最初にお会いしたのは5年前のカルミナ様の誕生パーティーでしたね。」
まじかよ!じゃ、俺とも会ってたりするんじゃないのか?俺は覚えてないけどお互い覚えてないのか?
あの時は緊張しまくってたし、キスカもそうだったのかもしれないな。
「ふん。あんたら2人とも始めて会ったのはそのパーティーの時よ!」
「覚えていたのか!?てっきり忘れられてると思ってたぞ?」
「タロウさんもパーティーに出ていたのですね…知りませんでした…」
「私を誰だと思っているのよ!人の顔くらい忘れないわよ」
最後に会ったのは5年前だぞ?すごいな。素直に感心する。
ガラガラとドアが開き、ローラン先生が入ってきた。
「ホームルームを始めるぞ。全員来てるな。今日の予定だが今日は午前中のみで内容はレクリエーションだ。私はお前らの実力を知ってるがお前らはお互いの実力は知らないだろ?運動場での模擬戦をしてもらう。存分に交流をはかるといい。」
クラスから驚きの声やウキウキしたような声が聞こえてくる。
隣のキスカさんなんかワナワナしてるけど。
反対側からは「誰であろうと負けないわ…」などど意気込んでる姿が見える。目がガチだ。
「さっそくだが、動きやすい服に着替えて運動場に集合だ。以上。」
◇◇◇
運動場にやって来ました。着替え?してないですよ?制服だって十分に動きやすいし、汚しても清潔魔法がある。
「集まったな。それじゃあ戦いたい奴が居るものは勝手にペアを作れ、残ったものは適当に振り分ける。」
「あのぉ…先生、私、後方支援なら得意なのですが表に出て戦うのが苦手で模擬戦なんかとてもじゃないですが…」
確かにキスカさんのスキルだと1対1は厳しいだろう。
「キスカ=リーガルか…お前の得意な魔法は補助魔法だったな…。わかった。お前は他の模擬戦をしてる生徒に補助魔法をかけろ。それでお前の魔法を知ってもらえ。」
「わ、わかりました。」
少しずつペアを作り始めている。早いとこだとさっそく模擬を始めているみたいだ。俺は振り分けて貰うために残っとくか…。
「あなた、私と模擬戦をしなさい。昨日、私の誘いを断ったどころか虚仮にしたこと許してないんだから!」
虚仮にはしていない…と思う。邪険にはしたかもしれないが。ほら、周りが注目し始めてんだろうが。昨日も目立ちたくないと言ったのによ~。
「早く準備しなさい!私から逃げるんじゃ無いわよ!」
「タロウさん。その…模擬戦に私も補助魔法で参戦していいですか!?」
「あら?それはいいわね!ほらタロウ行くわよ!キスカさん頼みますね。」
もはや逃げられない戦いになってしまった。どうする…?互角を演じて引き分けに持ち込むか?うん。それが良さそう。
クラスの皆が模擬戦を止めて俺らの模擬戦を見に来た。カルミナ様の噂でも確認しに来たのだろうか…?
本人は出来損ないだと自分を評価しているが、それは今の精霊魔法のみだ。槍術や体術はなかなかという話も聞いているし油断は出来ない。
「あなたの武器はその杖だけなのですね?ということは魔法が得意なのかしら……あなたなんかが魔法使えるなんて許せないわね」
理不尽ここに極まりだな。相当なコンプレックスになってるみたいだな。俺に当たらないでほしい。
「じゃ、お互いケガしないよう頑張りましょうねー。キスカさん、補助魔法をお願いします。」
「は、はい。エンチャント! アビリティマジック!」
「キスカさん、今のはどんな効果が?」
「あ、はい。今のエンチャントで魔法の威力が底上げされているはずです!」
なるほど。カルミナの為に威力の上がる魔法を使ったわけだな。いい子だわキスカさん。
「じゃあ!行くわよ!エレメンタルマジック ファイアランス!」
弱い。
魔法の威力を底上げしてもらって普通の火魔法と並ぶレベルだ。MPの減りが少ないのはいいが。補助魔法なしだと使えない。下位精霊だとこんなものなのか…。これは上位精霊と契約してないんじゃ宝の持ち腐れだし、出来損ないってのも理解はできてしまう。
「アイスウォール!」
氷の壁を作りファイアランスを防ぐ。本来の力関係だと火魔法の方が有利なんだが防げてしまっている。
「どうして防げるのよ!次よ!エレメンタルマジック ファイアトルネード!」
「アイスウォール!」
ファイアトルネードはファイアランスより威力の高い魔法だ。その分制御も難しく10歳で扱えるのは凄い方だ。でもやはり、威力が弱い。先ほどより少し強めに魔法を発動させると止められてしまうくらいには。
「な、なんでよ?どうして防げるのよ!」
カルミナ様はやけになったのか、そのあとも属性を変えて魔法を使ってきたが、火魔法ですら攻略できない俺の氷魔法の前についに魔力が底をついたようだ。
「はぁ…はぁ…、なんで、わたしは、こんな、こんな…やっぱり、わたしは…」
カルミナ様がどこかに向けて走りだした。一同が呆然とただ立ち止まってるとこにやはり、クールビューティーな先生だけはいつも通りで変わらなかった。
「タロウ達の模擬戦は終わりとする。他の者もまだ模擬戦をしてない者は速やかにおこなうように!」
先生の一声で生徒達は動き始めた。やはり精霊魔法はダメだ。カルミナ様も不運な。などの声も密かに聞こえてくる。カルミナ様と戦ったからだろうか。周りのカルミナ様への評価に少しだけイラッとするのは。
「タロウ。カルミナを探して来い。私が行くよりお前の方が上手く言葉をかけてやる事ができるだろう。」
「わかりました。連れて帰ってきます。」
「た、タロウさん。カルミナ様は大丈夫でしょうか。」
「きっと大丈夫さ。少し自尊心が傷ついただけだろうし?まぁ、任せといてくれ。」
先生だけではなく周囲にいた生徒、そしてキスカまでが、お前がそれいうの?見たいな顔してた。たぶんそんなことはないはずだ。
◇◇◇
カルミナ様を探すために走っていった方へやってきたわけだが、学園は広く正直闇雲に探しても見付けられる自信はなかった。
「上手くいけるかなぁ~。スキル気配探知!」
気配探知で周囲に人が居ないか探る。俺の魔力量ならかなりの範囲をカバーできる。1人でいる反応が近くに3つあるな。外を走っているのが1つ…って、この反応まさか、学園の外の森にいくつもりじゃ無いだろうな!?学園には結界がはってあるから魔物は入って来ないが森にはたくさんの魔物がいる。魔力が切れてるカルミナ様じゃ喰われて死ぬぞ。移動速度が速いな。急いで追いつかねーと。
◇◇◇
悔しい!悔しい!悔しい!
なんで?なんで?なんで?
私はこんな思いをしなきゃいけないの?
私が5年前に力を授かってから私には苦痛の日々だった。
精霊魔法は強いスキルだ。他人には言っていないがエクストラスキルに精霊魔法との相性がいい、精霊の加護があった。私は恵まれてると思ってた。
両親も兄弟も期待してくれていた。だが、未だに下位精霊との契約しか出来ていない。
精霊は精霊に関するスキルを持っていないと見る事すらできない。だから私の周りに精霊を見える人なんていなかった。珍しいスキルだからしかたはないかもしれないけど。
私がいくら大人数で契約に向かっても精霊は出てくれないと言っても契約できないのは私の実力不足という風に思われて誰も信じてくれなかった。ついには両親や兄弟すらもどこか期待はずれの出来損ないという風な目を私に向けてくるようになった。
私はそれでも頑張った。今は下位精霊しか契約できてないけど、それでも十分に戦えるんだとそう証明したかった。魔法の練習も頑張ってきたつもりだった。なのに、なのに。たかがアイスウォールすら突破する事ができなかった。悔しくて悔しくて、私はただ無我夢中で走り出してしまった。
「はぁ…はぁ……ここは…どこかしら?」
気付くと周りは木々の生い茂った森だった。しまった、どうやら森へ入ってしまったようだ。ここは魔物の出る場所だから立ち入り禁止になっていた場所だ。早く引き返さないと。
グルゥゥ…ワォォォン!!!
「ヒィッ…な、なに?」
目の前にはグレートウルフの群れがいた。前だけじゃない。後や横にまでいる。こわい、こわいこわいこわい。
「た、助けて、誰か!助けて!」
叫ばずにはいられなかった苦しい日々だが死にたい気持ちなんてない。見返すまでは死ぬわけにはいかない。
グレートウルフが私を確実に噛み殺す為に距離を詰めてくる。
「い、いや…」
目の前の魔物が雄叫びをあげながら私へ飛び掛かってくる。
私はそこで耐えきれずに意識を落とした。あり得ないかもしれないが私が見た最後の景色は私を守る様に現れたアイスウォールだった…。
◇◇◇
あ、あっぶねぇー!ホントにヤバかった。間一髪だな。俺との模擬戦の後で王女が死ぬとかヤバすぎるだろ。
それよりまずはこいつらを片付けないとな。「ロックバインド!」
やはり無詠唱は魔物相手には有効だな。魔物は暴れているがほどけまい。姫様を殺そうとした報いは受けてもらう。
まだ無詠唱で唱えるには難しいから詠唱の補助が必要だが…
「来たれ絶滅を呼ぶ死の氷よ……アブソリュート・ゼロ!」
俺を中心に魔物の群れを凍らせていく。魔物だけじゃない。木や地面まで氷に覆われていく。
氷の彫刻の出来上がりだ。このままじゃさすがに邪魔だから粉々に砕いておこう。
「う…うん…」
「お、目が覚めたか?」
「あれ?私は…そう、たしかグレートウルフの群れに襲われ…な、何よ!?この氷の残骸は!!」
「まぁ、落ち着け。結構ギリギリだったけど、死んではいないんだ。」
「まさか、あなたがやったというの?あ、あり得ないわあんな…数を…1人でなんて…」
まぁ、普通はそう思うだろう。たかが10歳のどこにでもいる普通の少年が魔物の群れ相手には勝てるとは思うまい。
だが、俺は普通じゃない。冒険者に鍛えて貰ったチート持ちだ。
「まぁ、助けられてよかったよ。動けるか?」
「だいじょ…ごめんなさい、立てないわ。」
「無理すんな。おんぶするから背中に乗ってくれ。」
「ありがとう。よろしく頼むわね。」
カルミナをおぶり、森の外へ向けて歩き出した。
「ねぇ、ちょっと聞いていいかしら?」
「なんですか?」
「あなたはどうやってそこまで強くなれたの?」
「カルミナ様は強くなりたいのですか?今でも十分につよいと思いますが」
「あなたにはそんなこと言われたくないわ。そうね、私は強くなりたい。失望された両親にまた期待して貰いたい訳じゃないのよ、ただ、弱いのは苦しい」
少し涙ながらにカルミナ姫は言った。両親に失望されたとはどういう事だ?国王には1度しか会ったこと無いがそこまで厳しい人には見えなかった。
カルミナ様はいろいろな事に耐えてきたのだろうか?強がっているがほんとは…いや、強がってこれただけカルミナ様は本当に強い子なのだろう。弱いのは苦しい…か。俺にできる事は多くないが確かにある。例の件手伝ってもいいかもしれない。
「カルミナ様が悩んでた精霊の件。今更で良ければ手伝わせて貰えませんか?」
「あなたも…信じて無いのでしょ?精霊についての話。」
カルミナ様の表情に影が落ちた様に暗くなった。
「いえ、僕は信じますよ。」
「………ほんとに?」
「ええ、信じてます。」
「大人数じゃ会えないのよ?精霊と契約どころか会えないのよ?危険なのよ?」
「それでも信じてますよ。」
「嘘よ!精霊も見えない人には分からない!私の事なんか理解できないのよ!」
危険と分かってて手伝わせようとしていたのかこの姫は。
「では、信じてる証明しましょうか。ここから右に2本前に1本目の木の根元にいるモノ…カルミナ様にも見えますよね?」
「………嘘よ…。ほんとに?あ…あなたにも見えてると言うの…?」
「精霊の話、信じてるって信じて貰えましたか?」
「うん…うん!信じられない…信じられないけど、貴方を信じられる。ありがとう。私を…1人に…しないでぐれで…ありがどう…う、うぇぇぇん!」
泣いてしまった。安心したのだろうか。授業は終わってしまうだろうがゆっくり戻ろう。泣き止むまで。
「グスッ…グスッ…」
「落ち着きましたか?」
「うん…」
「ホントに手伝ってくれると?」
「それは本当です。あ、後出しで悪いのですが条件があります。」
「な、なによ…条件って…」
「そう不安がらないでください。難しい事じゃなくて、お願いみたいなものです。1つ目は僕が精霊を見える事を内緒にすることです。2つ目は断ってくれてもいいんですが、無事に下位精霊以外の中位精霊や上位精霊を契約出来た時は僕とパーティーを組んで欲しい。」
「えっ…?」
「あー、1つ目はなるべく守って欲しい条件で、2つ目は断っていいですよ?」
「いいの?私とパーティー組んでくれるの?」
「えぇ、中位精霊でも契約したらその辺の魔法使いよりよっぽど強いですからね。僕としても助かりますので。」
「条件…飲むわ!私とパーティー組んで!」
「精霊と無事に契約出来たらですけどね。頑張りましょう。」
「うん!」
ようやく森の出口付近までやってきた。
「カルミナ様、もう歩けますか?」
「様付けなんて堅苦しい呼び方はしなくていいわ。カルミナと呼ぶことを許してあげる!ぱ、パーティー組むんだから特別に許可してあげる!!」
ようやくいつものカルミナ様に戻ったな。せっかくだからその好意に甘えておこう。
「まだ正式に組んだ訳じゃないですが、カルミナと呼ばせて貰いますね。」
「敬語も禁止よ!もう私とあなたはパーティーなんだから!」
まだ、パーティーではない。それに精霊との契約…中位精霊からは下位精霊の様に簡単には行かないだろうし、時間はかかるだろう。
「わかりま…分かったよ。」
「うんうん。それでいいのよ!……今の私、精霊の契約の前に学ばないといけないことが多い事が分かったわ。私は弱い。だから、自分を鍛える為に学園だけじゃなくて他でも頑張らないといけないと思うのよ!」
言いたい事はなんとなく分かってきた。確かに、学園でもその選択科目が3年になると取れるし、それなりの事が学べるだろう。でも、俺達の将来の為には他の場所で学んだ方が効率がいい。そう、あの場所だ。
「だから、今日の放課後さっそく行きましょう!冒険者ギルドへ!」
彼女はそう言って笑顔を見せた。もう暗かった顔は影も形もみえない。よかった。
だが…冒険者ギルドに行く前に鬼の形相で睨んでる担任の先生をどうにかするべきじゃないだろうか。そういえば立ち入り禁止だったねここ。この後、滅茶苦茶怒られたよ。でもカルミナの笑顔を取り戻せたならこの説教くらい屁でもないさ。
「明日、反省文を提出するように」
すいません。やっぱ辛いです。許してください。




