第138話 タロウ、帰宅
すいません、書く時間が中々確保出来ずに後回しになっちゃいました……。(´ω`)
よろしくお願いします!
ルールトへ向けて馬車を発進させて、そろそろ頃合いだし、割りと早くに乗り物を手に入れたという事で、俺は皆を召喚する事にした。
一旦、馬車を停めてから魔力を込めて皆を喚び出した。
「召喚 アトラス 紅緋 緋鬼王」
三つの召喚陣が現れ、皆が現れる。
アトラスは元気一杯に。紅緋は待ちわびたかの様に、緋鬼王は少し嬉しそうに。
『馬車だー!』
『くっふっふー、菓子はあるかえ?』
『主、身辺警護はお任せを』
「あぁ……やっぱ、紅緋と緋鬼王で魔力をだいぶ持っていかれるな……カルミナ、少し馬車は任せた」
「分かったわ! 出発するから……紅緋、暴れない様にね」
流石はカルミナ、一番騒がしくするだろうって奴にちゃんと釘をさしている。
その指摘に対して騒がしくしている所をみれば、紅緋は何故自分だけが注意されたのか分かるだろう。
「紅緋ちゃん。お菓子なら少しありますから、ご一緒しましょ? 勿論アトラスちゃんも!」
『おぉ!流石は麻津里じゃ!胸も懐も大きいのじゃ!』
『お菓子ぃー!』
カルミナからただならぬ殺気が出ている気がする。
別に、紅緋はカルミナと比べた訳では無い……と、思いたい。が、紅緋の言う事だから比べてる筈だな。わざわざ胸を比較した所が確信犯である。
俺は巻き込まれを回避するために、休憩というか、少し寝てしまおうと目を閉じた。
――目が覚めると紅緋との繋がりが途絶えていた。きっと、カルミナを怒らせ過ぎたんだろうな。しばらくは反省の意味を込めて、喚び出すのはやめておこうかな……。カルミナに俺まで怒られそうだし。
◇◇◇
それから天気が荒れる事も無く、順調にルールト方面に進む事が出来た。
晴れ時々魔物。なんて事は何回かあったが、緋鬼王や紅緋が率先して動いてくれたお陰で問題は無かった。
どちらかと言うと、紅緋をこっそりと喚び出してカルミナに謝る様に説得する方が大変だった。わがままだからな……紅緋。
「そろそろ、ルールト王国には入りそうか?」
「そうね、もうすぐ国境を警備してる人達の詰所や検問所が見えて来る筈よ」
ある程度は整備されている街道を真っ直ぐに進んできたから、後どのくらいかはカルミナが覚えているだろう。そのカルミナがもうすぐというならもうすぐなのだろう。
『麻津里よ、ご飯はまだかえ?』
「紅緋ちゃん、さっき食べたでしょ?」
料理を担当してくれる麻津里のご飯は美味しい。だから、紅緋の気持ちも分からないでは無いが、流石に今さっきお昼にしたばかりだ。
その食欲は若干……引くものがある。それに、太らない体質というか特性上というのが、更にカルミナを刺激しているのを後でこっそりと教えないとだな。そう何度も倒されては困るわけだし。
「タロウ……見えてきたわよ。不思議ね、少し緊張するわ」
「俺もだ。自分達の産まれた国なのにな……」
境界といっても小屋が一つ在るだけだ。俺達が来た方向からルールトへ入ろうとすれば、この検問所に来るしかない。ここ以外から侵入しようと思えば出来ない事もないが、この通路の両サイドは崖になっている。一度おりてしまえば上から見付けられるし、労力的には無駄である。
「はい、ここで一度止まって。身分証と荷物の確認、それにいくつか質問をさせて貰います」
「そりゃそうよね……五年も経てば覚えて無いのが普通か。私も成長したしね」
「まぁ、服装も冒険者だしな。まぁ、いいじゃん? はい、これが身分証です」
二十代半ばから三十代辺りにみえる衛兵さんに、代表する訳では無いが、少し凹んでいるカルミナの代わりに俺が冒険者カードを提出した。
提出したのはSランク冒険者の冒険者カード。実質、他のメンバーの確認は必要無くなるくらいの権威が、このカードにはある。
「う、嘘だろ……Sランク……だと? すいません、少々お待ち下さい。水晶で確認してきます」
詰所の外に居て、俺達を迎えてくれた衛兵さんが走って戻っていく。その背中を見送って俺達は会話をし始めた。
「ま、当然の反応だよな」
「そうね……Sランクって、私達でさえ会ったこと無いのだもの。ベリー先生はSランクじゃないし」
そういえば……カルミナの言う通り、Sランク冒険者に会った事が無い。Aランクなら何人かあるのだが……。何人くらい居るのか気になるが、会えるものなのだろうか?
「そういえば、この後は旦那様のご実家に伺うのですよね? ど、どうしましょう……おめかしをする時間は取れるのでしょうか?」
「あー、いや。その格好で大丈夫だと思うよ。俺の家族はその辺ユルいし」
と、言っても結局は髪型がどうとか……何かしらがこうとか……時間が掛かるだろう。それはもうカルミナで慣れてるからどうも思わない。
だからせめて、カルミナの様にギリギリから準備し始めるのではなくて、事前にバッチリ決めて貰いたい。思うことが在るとすれば……そのくらいだ。
『主、戻って来た様ですよ』
「何か……行くときよりも速いわね?」
たしかに。行くときはジョギング程度だったのが、今はダッシュって感じだ。
その変化からも、裏が取れたのだと確信出来る。
「お、お待たせ致しました! 荷物検査は結構です。そ、それで……ルールト王国へはどのようなご用事で……」
別に悪くも無かった態度が、より丁寧になっていた。Sランクの称号がこんな所に影響するとは……。
何か面倒があるからベリー先生はならないって言ってたけど……何か言われたらやらないといけないのかな? やっぱり。
「そう、堅くならずとも良いですよ。僕もルールトの出身ですし。今は修行からようやく帰って来た所です! 通って良いですか?」
「はい! どうぞどうぞ! お帰りなさいませ」
軽く手を上げて、俺達の乗る馬車は進みだした。
紅緋が衛兵さんの反応を楽しむかのように、馬車の上から色々とやっていた。当然、緋鬼王に目配せをして拳骨の刑に処した。
「ここからなら二日と掛からないだろう。ピヨリ! 手紙を先に届けてくれるか?」
『分かったッピ! 久しぶりッピ!』
急に帰ると騒ぎになりかねないからな。紅緋や緋鬼王。それに、麻津里について書き記した手紙をピヨリに持たせて運んで貰う。
父上も母上ももちろん歳を取っている。五年もあれば見た目にも変化はあるだろう。母上はあまり老けて無さそうだが、父上は少し心配だな。
早めに知らせていたし、魔族への対策も上手くウイング兄様がやっていると信じている。
だけど、早く会いたいから少しだけペースを上げていた。
◇◇◇
『ピッピッピヨリ! ピヨリッピー! 空飛ぶピヨリ、ピヨリッピ!』
手紙を託したピヨリが戻って来た事で、グラウェル領の安全も確認出来た。
残念ながら、父上は王都に詰めている為、家には居ないらしい。残念である。
あと、半日くらいで会えるのは母様とウイング兄様とその奥さん。それに屋敷の皆。正直に言うと、名前を忘れてる所があるから今、必死に思い出そうと頑張っていた。
「ピヨリ、いつまで歌ってんだ?」
『気に入ったッピ!』
暇だから何となく口ずさんでいたピヨリの歌を、本人が気に入ってしまった。
他のメンバーには、ピヨリが鳴いてる様にしか聞こえないのだろうが、俺には陽気に歌っているピヨリの声がずっと聞こえる。楽しそうで何よりだが……そろそろ聞くのも飽きる頃合いだし、思い出そうと頑張ってるのに気が散ってしまう。
「着くのは夜かな?」
「夕方は……越えると思うわ。暇なら走ったら?」
身体強化して走れと? ……ふむ。
何かそれもアリだと思える程に暇である。勿論、夜になり馬車を停めた後に訓練はしているが、移動中のこの時間が暇すぎて困る。
「……走るか。疲れるまでは。そして、寝て過ごそうかな」
『なら主。私もご一緒してよろしいでしょうか? 勿論、紅緋も』
『妾も!? い、いやじゃ……けど、仕方ないかのぉ~?』
緋鬼王の眼光に負けた紅緋が、しぶしぶといった様子で馬車から降りる。俺と緋鬼王も降りて……走り出す。
カルミナ達を乗せた荷台を引いてくれている為、馬の全力では無いが、中々速い。それに、遅れないよう俺たちも走り出す。
「久しぶりに走ると爽快だなぁ。キツいけど」
『そうですね。良い鍛練にもなります』
『いや……はぁ……ふつ、うに……はあはあ……キツいの……じゃが?』
お菓子の食べ過ぎだな。
それでも、ちゃんと遅れずに走れる辺りは流石鬼って感じである。強靭な肉体はそれだけで武器だ。勿論、錆びさせ無いようにメンテナンスも必要だけどな。今みたいに。
それから疲れるまでは走り抜け、休憩してはまた走る事を繰り返した。
そうするといつの間にか、俺が住んでいた領地に入っており、俺の住んでいた街が視界へと入ってきた。
「懐かしい……遠くから見る限りはあんまり変わってないかね?」
「タロウ! 暗くなっても街に入れるのかしら?」
うちの街に入る門は日が落ちると同時に閉まってしまう。
今からだとギリギリ間に合わないのだが、グラウェル家が使える出入口というモノが、存在している。
それを使えば夜でも平気だし、今以上に焦る必要はない。そうカルミナに伝えて、また走り出した。
それから数時間後、門を越えて……ようやく。五年振りに、愛しき我が家へと帰ってこれたのであった。
◇◇◇
「お帰りなさいませ。坊っちゃん」
「坊っちゃん、お帰りなせぇ!」
「タロウ様、お帰りなさいませ」
「ローゼフ、スリムにサシャ……久し振り! あぁ……皆、まだ我が家で働いてくれていたんだね! ありがとう!」
老執事のローゼフ。生きてる内に会えて良かった。
コックのスリム。エドヌで手に入れた食材や調味料を分けてあげよう。
メイドのサシャ。もうさすがに結婚はしたのだろうか?
とにかく、また会えて嬉しい。他にもメイドさんが何人か居るが、俺が産まれる前から居たのはこの三人くらいだろう。
そして、その後ろから夜にも関わらず、家族の皆が出迎えてくれた。先陣を切ったのは――。
「タロウちゃん! あぁ、こんなに大きくなって……良かったわ。無事で、本当に良かったわ。もう、何処にも行かなくて良いからね? お家に居て良いんだから」
「ふがふがふふがふふが! ……ぷはぁ。ただいま」
母様の後ろから、出遅れた事を焦りながらニーナ姉様がやって来た。
俺が十五という事は、姉様は十八。花盛りである。今は何をしているのかは分からないが、こうして元気な姿を見れただけで十分だな。
「お帰り! タロウちゃん!」
「ただいま、姉様。無事、戻りましたよ」
母様の抱き着きから抜け出した後に、姉様とのハグを終えて、今や立派な当主である兄様へ挨拶に向かった。
「お久しぶりにございます、兄様」
「タロウ。お前の働きにて迅速に行動が出来た。褒めてつかわす」
「「……っぷ。あははははははっ!!」」
お互いに似合わない事をするものでは無いと、二人で笑い声を上げてハグをする。兄様はイケメンに磨きがかかっていた。母様似だからだな。
「タロウ、馬車の中に居る方達を紹介してくれるかい? 出来れば姫様は最後にね?」
「分かりました」
俺は見慣れてるだろう、ピヨリから順に、アトラスや紅緋と緋鬼王を紹介した。母様とニーナ姉様は愛嬌を振り撒くのが上手くなった紅緋や小さくて可愛いアトラスを気に入った見たいで、メイドの皆や、ウイング兄様は、頼りになる緋鬼王を気に入ったみたいだ。
勿論、ピヨリは既に人気を獲得していた。
「今紹介したのは、僕の契約してる子達です。それで、麻津里!」
「お初にお目にかかります。姓は徳川。名は麻津里と申します。今後とも、是非によろしくお願い致します!」
麻津里の立場なんかは先に手紙で報告した事もあって、一国の姫として扱うスタンスになっていた。当主であるウイング兄様が色々と対応していく。
「最後。カルミナ」
麻津里の時とは違い、自国の姫だ。先程はメイドやコックのスリムは頭を垂れていたが、今度はそれに加え、兄様達も頭を下げ、片膝を地面に着ける。
「お出迎え、感謝いたします。頭を上げ、楽にしてください。今宵の私は、イチ冒険者。堅苦しい作法は要りません」
「はっ! カルミナ姫の帰還。大変喜ばしく思います。お疲れかと存じます、我が家で十分な休息をお取りください」
ある程度の“お決まり”をした所で、立ち上がった皆の膝に付いた汚れを綺麗にし、家の中へと案内して貰う。
スリムは張り切って料理を作ると言っていたし、今晩はご馳走に違いない。
「カルミナと麻津里は部屋で休んでて。あー、紅緋も連れて。俺は緋鬼王と一緒にウイング兄様と少し話して来るから。アトラスとピヨリは屋敷を案内して貰いなね」
「分かったわ。後で聞かせなさいよ」
「かしこまりましたわ! カルミナさん、私も屋敷を見て回りたいですわ!」
『妾は食堂に……は、いかずにカルミナ達について行くとするかえ』
『ッピ!』
『ピヨリの背中に乗るぞ~』
またしても緋鬼王の眼光にやられた紅緋。カルミナ達と一緒なら安心かな。
さて、頼りになる緋鬼王には傍に居て貰うとして……兄様の所へ情報を聞きに行きますかね。
誤字脱字その他諸々ありましたら報告お願いします!٩(๑'﹏')و




