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タロウ冒険記  作者: じょー
第5章 VS 魔族編
137/148

第137話 タロウ、二時間もいない

すいません、時間の確保が難しい週間で少し遅れました……m(_ _)m



よろしくお願いします!



馬車での帰路。前後はコインの従者が走り、俺達が乗っている馬車を護衛しながら帰っているが、魔物はカルミナが見付け次第魔法で倒していた。

そのお陰でいちいち停まる必要も無く、順調に進んでいた。



「ファン、どうして森から来たんだ?さては……派遣されて来たのか!?」

「残念ながら違いますよ。旅の帰りにたまたまここに辿り着いただけです」


「ねぇ、コイン王女。現状はどうなってるの?優勢なの?」



確かに、それは気になる所だな。あの砦みたいに、撃退に成功した場所もあれば、失敗して敗走せざるを得なかった事もあるだろう。

ルールトも心配だが、グラウェル領も気になる。ウイング兄様の事だから、上手く対処はしていると思うんだけど……。



「優勢……と言いたいけど、被害が甚大だと父上は言っていたわ!勝った所でも被害は少なくないって言ってた!」

「ふむふむ……魔王はまだ出ては無いんだよな?魔王軍の幹部とかはどうだ?何か話に上がっているか?」



被害が少なからず出ているこの状況で、幹部すら出て来ていないとなると、流石に厳しいものがある。

仮に今、魔王を俺とカルミナで倒したとしても、幹部がいれば人の住む場所は蹂躙されるだろう。それに、力を出し尽くしている俺とカルミナもあっさりと敗北するかも知れない。



「ちらほらと話には聞くわね!幹部が出てくると並みの兵士ではいくら束になっても無理だって。だから、私はあちこちに移動して、幹部を倒そうと思っているのよ!……まだ、上手くいってないけど」


「幹部か……中位魔族とは比べ物にならないんだろうなぁ。Aランク冒険者がパーティーを組んで討伐するレベルとかだったら……厳しくないか?」

「幹部って言うくらいだし、戦力は分散してると思うけど……幹部が従えてる魔族を考えると、楽じゃないわね」



楽じゃない……本当にそうだな。人の強さは数と知恵だが、知恵のある魔族相手だと分が悪い。やはり、力がどうしても必要になってくる。

その辺がどうなっているのか、誰かに聞きたい所だが……コインは駄目だろうなぁ。おそらく、難しい事は聞かされて無いだろうし。



「ファンはあの時よりも強くなったのか?」

「当然。ほとんど、修行ばかりしていたんだからな……魔法も刀も。コインこそ強くなったのか?」



コインが私も修行していたと張り合ってきたが、それは軽く流す。こういうものは比べるものじゃないからな。コフィン王国で勉強せずに修行ばかりしていたら浮くだろうなぁ。あそこは一応、戦術や戦略を考えたり、新しい何かを発見したり、とにかく学術的なのが盛んな国だと認識している。

そんな場所で脳筋と思われれでもしたら、居たたまれないな。コインのメンタルは意外と強いのかもしれない……。



「私も強くなったぞー!身体強化の時間も延びたし、無茶をすれば二段階目もあるんだから!」


「二段階目!?やるじゃん、王女!凄いよ、それは!」



魔力の絶対数が違うから、何とも言えないが……二段階目というと、必ず血が吹き出す。一段階目で限界まで強化はするのだから、それを越えた段階に入るとどうなるかはやらなくてもわかるだろう。

だからこそ、無茶をすればと言っていたが、二段階目が出きると言うのは凄いと思う。俺も痛みや出血を気にしなければ可能だが……あまりやりたいとは思わない技術だ。



「ふふーん!よし、私と戦おう!」

「まてまて!戦うのは良いが、それはまた今度だ。疲れた時に魔物が攻めて来るとか冗談じゃないし!」



何故、急に戦いたくなったのかは不明だが、とりあえずカルミナの視線もあったし、まだ本調子じゃないから遠慮しておこう。やるなら全力じゃないと意味がないし。


それからコインを通じて、三国の状況や魔族の進行具合を知っている限り教えたもらった。

とは言っても、コインはあまり話を聞いていなかったのか、こちらの質問に、ほとんど……知らないとの答えを返してきた。



「脳筋に育ったのねぇ~」

「カルミナ、それは言ってあげるな」


「カルミナさん、遠くに魔物を確認しましたよ~」



大量の魔物と遭遇する事もなく、発見次第、即座に対処していた事もあって、危機的な状況に陥る事は無かった。


砦を出発して、おそらくは最短であろう四日で、コフィン王国の王都を囲む壁が見えてきた。

王族専用の入り口から入れるらしく、お昼を越える頃には街に入れるそうだ。コフィン王国……来たことがないから少しだけ、楽しみである。



◇◇◇



「じゃあ、コイン王女。ここまでありがとう」

「んー?何言ってるの?このままお城に行くのよ?」



何言ってるの……それはこちらの台詞である。たしかに、ここまで連れて来てくれた事に関しては感謝しているが、カルミナの護衛でいくらかはチャラになった筈だ。あと、エドヌのお菓子も少し分けてあげたしさ。

だから、わざわざ抜け出せなさそうな城に行くとか勘弁願いたい。



「コイン王女、私達は急がねばなりませんので。この街で馬車を購入したらすぐにでも行かなければ」

「馬車?馬車なら、城にいっぱい居るわ!ファンに私の凄い所をもっと見せなきゃいけないの!あと、一日くらいいいじゃない!」



俺は今も城に向けて着実に進んでいる馬車の中で、カルミナと麻津里と顔を見合わせていた。さて、どうするか……と。

コフィン王国の城になんて行けば、一日で街を出られるとは思えない。無理やり出ようと思えば簡単だが、そんな強引な手段を取るのは少しだけ憚られる。

ルールトのお姫とルールトの貴族の子息。一度城に入ると、この立場が帰るに帰れない状況にしている。

コフィン側は歓待しなければいけないし、こちらもそれを受けねばならないのだ。



「どうする?王と会うとして、くわしい状況を聞くだろ?そしたら……急ぎ帰ると伝えるか?また訪れますとか言って」

「そうね……何かパーティー的なのを開く流れになったら、備蓄がうんぬん言って、私から辞めて貰う様に言うわ。それが無難でしょうね」



コフィン王国が一番戦況を読んでいるだろうし、作戦も考えているだろう。詳しい事が聞けるなら助かるな。

ここからならルールトの方向も分かるし、王都に向かうまでの途中にグラウェル領へも立ち寄れる。急ぐ気持ちはあるが、今日はここに泊まる方がベターだろう。



「麻津里は……そうだな。カルミナの護衛という立場にしておこう。素性は知られなくて良いならそっちの方が楽だからな」

「はい!旦那様の言う通りに!」


「ファン……?聞き間違えよね?今、その子がファンの事を旦那様って言わなかった?ファンは私のファンなのよね?」



ふぅ……こういう時は冷静さが大事だ。今はややこしい問題を増やしている場合じゃない。嘘も方便……そう言うしな。



「聞き間違えだぞ、コイン王女。それよりも、あの建物はなんだ?ファンの俺に教えてくれないか?」

「……き、聞き間違え。な、なーんだ!そうなのね!少し焦っちゃったわ!あの建物?良いわよ、あの建物はねぇ……」



それからお城に着くまで街の建物を次々と教えて貰い、街の様子を観察していた。一番驚いたのは実験場と呼ばれる区画で、あちこちから爆発音が聞こえて来ていた。これが日常だとすると、新しい事に挑戦し過ぎの、ヤバい国だと思うよコフィン王国。



◇◇◇



「おぉ、よくぞ参った。久しいな」


「いきなりの来訪でありますが、お時間を頂き、誠にありがとうございます。……五年前の三国武道祭の時以来でございますね」



老紳士。この国や周辺国家からは賢王と呼ばれているらしい。学者だと言われたら、さぞ高名なお方なのだろうと思わせる容姿をしている。対話はカルミナに任せて、俺と麻津里は顔を伏せていた……が、流石にあの話が出ればそうは言ってられない。



「我々はカルミナ王女、タロウ=グラウェル殿に礼を言わねばならぬな。二人が死ぬ思いで届けてくれた情報のお陰で、この五年、準備に取り掛かれたのだから。中には……少数だが愚かな者が、その情報は嘘と言い出して一悶着あったがの……ま、信じず準備を怠った貴族の領地は(ことごと)く潰れよった」


「いえ、我々の言伝てを子供の戯言と切り捨てられなかっただけ、嬉しく思います」

「賢王様。不躾な質問で申し訳ありません。今の状況をお教え願えませんでしょうか。我々は修行の為、ルールトの地を離れておりましたので……」



賢王から語られた情報は、よろしいとは言えないものだった。

食料やその他の備蓄については問題は無いそうだが、やはり、魔物はともかく強い魔族が出て来てしまったら、建物等の損壊、人的損壊が大きく、苦戦しているそうだ。


冒険者や騎士団、魔法師団も総出で戦いに出ているが、大量の魔物が湧いてしまうと、圧戦闘に携わっている職業の人が圧倒的に足りないらしい。


これは……尚更だな。早く帰らねばならない。魔王が姿を表さなければ終わらない戦いだ。未だに音沙汰無しなのが少し不気味だが、魔族の進行は始まってしまっている。


この国には戦術があり、コインの様にとまではいかないだろうが考えて戦える人間が多い。ウォンド王国は、騎士国家。戦闘に関しては国全体で高いレベルだ。


つまり、全てのバランスは良いだろうが、特出した所があまり無いルールトが一番心配だ。冒険者は多いが、領地によってバラつきがあっただろうし。



「賢王様、質問に答えてくださり、誠にありがとうございました。我々はルールト王国に一刻も早く、戻ろうと思います」


「ふむ……分かった。たしか、馬車が無いのであったな。ならば馬車を一つ持っていくが良い。おい、誰か、城の入り口に用意を!」



察してくれたのだろうか?特にパーティーうんぬんの話は出ずに終わりそうだ。好感の持てる王だ……はっ!さては、これが賢王の力の一端だろうか?



「……ご厚意に甘えさせて頂きますわ。この借りはいずれ」


「気にする事は無い。だが……そうさの、平和になったらゆっくりとこの国へ観光にいらしてくだされ。旦那様と共に」



当てずっぽうなのか、何か根拠があるのか……うん、あれだ。長く会話をしちゃいけない部類の人だな!

気づいた時には、色んな情報や大事な情報を推測出来そうな断片を会話の中で聞き取られている可能性がある。



「……ほれ、うちのバカ娘が着替えて来る前に立ち去るとよい。どちらにせよ騒がしくなるがの……そうじゃ、タロウ殿。うちの娘を……」


「賢王様!御前、失礼させていただきます!」



俺達は逃げるように城を脱出し、仕事の早さに驚いたが、用意してあった馬車をお借りして、その日の内にコフィン王国を旅立った。

滞在時間にして二時間も無かっただろう……そうだな、今度来るときはゆっくりと見物させて貰おうかね。



「何か、城の方で大きな音がしない?……誰かが暴れているような」

「き、気のせいだろ?でも、少し急ごうか……」



何とか無事に、コフィン王国を抜け出せた。

ここからルールトまで、もう一息だな!



誤字脱字その他諸々ありましたら報告お願いします!

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