第136話 タロウ、再会
すいません、お待たせ致しました(^_^;)
よろしくお願いします!
砦の最上階から一階だけ下に降りたフロアは、騒然としていた。兵士が慌てて駆け出している。
「おい!何があった!」
「監視長!大変です!隊長が前線に飛び出して行きました……すいまんせ、我々では止めることは出来ずに」
イメージでしかないが、隊長格は指揮を取ったり作戦を考えたりで、よっぽどの事がないと前線には出ないと思う。この国のやり方を知らないから何とも言えないが……兵士も連れずに前線に出るのは違和感しかない。
と、考えると……ここに居る責任者で隊長は、良く言えば武人。悪く言えばアホだな。戦闘に自信があるのかもしれないが、仮に隊長が殺られたら士気は低下し、安心感も無くなる。次席が何とかするのかも知れないが、無責任過ぎるだろう。
「分かった、お客様もいる。早々に連れて戻れ……という事ですまないが、部屋でしばらく待って貰いたい。食料に余裕は無いが……茶くらいなら用意しよう」
「ありがとうございます。まぁ、ここが何処かだけでも知れたので十分何ですけどね」
「コフィン王国でしょ?学術肌というか研究者の育成に力を入れている筈よね?」
カルミナの言いたい事は分かる。俺と同じ考えに至ったのだろうな。でも、全員が全員そうでは無いからな。学問は苦手でも、武に特出してるタイプの人も居るのだろう。むしろ、そういう人が居るからこそ、戦略も活きるというものだしな。
「異国の武人……どんな技を持つのか見せて貰いたいですわ!」
流石は双葉さんに鍛えられただけある。背丈格好よりも相手の持つ技に興味を抱くとは。あらまぁ、すっかり戦闘狂になっちゃって……。その内、毎日の様に模擬戦を仕掛けられそうで怖いな。
「まぁ、とりあえず待っておこうぜ。お菓子でも食べながらさ」
『そうするッピ!そうするッピ!』
案内された部屋で一息をつく。石造りの砦だが、家具は木製の物を使っていて、石の壁や床に木製の家具……意外とおしゃれな雰囲気が出ている。
たまに外から聞こえて来る魔物の断末魔や、何かの爆発音。それすらも部屋を彩る為の演出……には、流石にならないな。うるさいだけだし。
用意して貰ったお茶を飲みながら麻津里にルールト王国についてやコフィン王国、ウォンド王国について話していると、部屋の外から声が聞こえて来る。だいぶ待つことになったが、ようやく責任者の方が帰ってきたのだろう。こっちとしてはと挨拶を済ませ、ルールトがあるの方角を最後に聞いて、さっさとおさらばをしたいのだ。
騒がし声がどんどん大きくなるにつれて、会話の様な物も聞き取れる様になって来た。
「姫、魔物の退治を手伝って頂いたお客様ですから、丁寧にお願いしますね?」
「わ、分かってるわよ!そのくらいの分別はあるわ!それで……部屋はこっちね!」
そんな台詞を最後に、声が遠ざかっていく。想像だがおそらく、姫と呼ばれてた者が責任者なのだろう。そして、方向音痴。姫だというのに、こんな魔物が出てきそうな森が近くにある砦に来るって事は、『戦姫』みたいな、強さでその地位に着いた人なのかもしれない。
そうすると厄介だな……何が厄介かと言うと、内にも戦闘狂が居る事だ。特に相手が強い女性という場合、是非手合わせという形になりかねない。何やかんやあった結果、最後に割りを食うのは俺になるのだ。
「こっちね!」
「そう……で、ござい……ます。そこの……ケホッケホッ……部屋です」
このフロアをぐるっと回ってきたのか、一度近付いてから数分して、戻って来た。ようやく辿り着いてくれたみたいで良かった。
「さて、挨拶の準備でも……」
そう言って俺が腰を上げると、それに続いてカルミナと麻津里も椅子から立ち上がる。一応は、この砦のトップだ。いくら他国の姫が居ようと、この場に置いては向こうを立てなければ。
「ここね!良く来たわね、お客人!わたしが………………あなた!まさか、ファン一号!?」
この部屋に入ってきたのは、真っ赤な髪にキュートなアホ毛、それに、どことなくアホっぽそうな雰囲気。覚えている。こいつは……コフィン王国の姫、コイン。ガチ姫だ。
◇◇◇
部屋に入ってきたコイン姫が席に着いた所で、俺達も着席する。それにしても……昔より背も伸びて、子供っぽさも少しは抜けている。三国武闘祭?武道祭?の時に会って以来だから、その変わり様には驚いている。
女の子の成長は早いと聞くが、あのアホっぽかったこいつが責任者にまでなっているとはな……。それにしてもピヨリがさっきから羽で器用に顔を隠している。そして、物置みたいに微動だにしていない。どうしたんだろうか?
「やっぱり、私のファンとして会いに来てくれたのか!?そうだよなぁ~ずっと待ってたんだぞ~?」
「いや、違うけど?」
あっやべ、一刀両断が過ぎた。確かにいつか訪れるって言った記憶がうっすらと在るような気がしないでもない。つまり、ほとんど覚えていない。でも、ここでリップサービスでもしようものなら、隣から鉄拳が飛んでくるだろう。
「うぅ~……これでも、ファン一号に追い付こうと頑張ったのにぃ……さっきは大きな鳥を逃がしちゃったけど」
ピヨリが一瞬だけビクッとして、焦りの感情が伝わってくる。なるほど、そういうことか……。ピヨリが地面から跳んで来るヤバイ奴というのはコインの事だったか。ピヨリ、そこで我慢しておくんだぞ。
「でも、話を聞くと……隊長なんだろ?凄いじゃんか」
「す、凄いかな?え、えへへ……やっぱり凄いよね私!ちゃんとしたファンはまだ一人しか居ないけど、そのファンが言うんだもんね!」
その明るさというかポジティブさは変わっていないようだな。いくら歳をとっても、見た目に変化があったとしても、その人の良いポイントが変わってないのは微笑ましいというか、懐かしくなるというか、うん……何か凄いよ。
でも、そろそろ本題に入るか。と言っても、ルールトの方角を教えて貰うだけだが。明るい内に移動しておきたいし。
「コイン王女、私を覚えてらっしゃいますか?」
「う~ん?分かんないわ!」
普通はカルミナの方を覚えているもんなんだけどなぁ。同じ王女として。会った回数も俺よりは多かっただろうし……どんまいカルミナ!でも、カルミナのお陰でコインをどう呼べば良いか確認できた。それは助かったよ。
「コイン王女、ここからルールトの方角を教えて……」
自分で口にして、先程のこいつの行動を思い出した。この部屋に辿り着くまでの遠回り……方向音痴ってことを。
「ルールトに戻るのか!?私もコフィンに戻るのだ!皆で一緒に帰ろう!」
コフィンへと戻るのか……俺はカルミナに目線をやって問いかける。すると、カルミナが軽く頷いて返答してきた。俺達は馬車が無いから助かる提案ではある。ピヨリに三人も乗ってたら長距離は流石に無理だろうし。コフィンに行くことになるが、方向が一緒ならば、一度そこに立ち寄って馬車を手に入れる方が良さそうだな。
「コイン王女、コフィンまでご一緒して良いですか?護衛の足しにはなりますよ」
「勿論だ!ファンが私を守るのは当然の事なのだからな!ま、私には護衛なんて必要無いんだけどね!」
本当に今日の午後から出発する予定だったみたいで、砦に残る人にあれこれと指示を出したり、色々と準備をしたり……少し待つことになったが、コインの準備が整うまで先に外で待機していた。
魔物の討伐もある程度終わっているみたいで、こっちも問題は無い様だ。
「待たせたのだ!馬車の準備は整っているのかー!?」
「はっ!滞りなく!いつでも出発可能です!」
王女にしては付き添う兵士の数は少なく、女性が多いのは理解出来るが良く父親は許したと思う……それくらいコインが強くなって、それが周知されているという事の表れなのかもしれないが。
「ファン~!早くしなさいー!出発よ!」
「じゃあ、よろしくお願いしますね、コイン王女」
「ねぇ、カルミナ様?何か……親しすぎやしませんか?」
「コイン王女は……強い人が好きみたいだしね。この旅路の途中はタロウに戦わせない様にしなきゃね」
俺達は馬車に乗させて頂き、コフィンまでご同行させて貰う事になった。残念ながら、ピヨリはコインに見付かるのを嫌がったというか、面倒臭がったので送還したけど。
魔力はだいぶ回復したし、いつ敵が出てきてもとりあえずは大丈夫だな!
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