第135話 タロウ、転移先は
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よろしくお願いします!
ルミナスの転移魔法が発動されて、魔力が急激に減った事により……俺は物凄い倦怠感に襲われていた。
「あっ……景色が変わったわね!タロウ、大丈夫かしら?」
「いや、なんか……どっと疲れたというか、やる気が出ない……」
「お二人様!!そんな呑気な事を言ってる場合じゃ、無いですよ!後ろ!後ろ!」
麻津里が慌ただしく叫んでいるからやる気が出ないが、振り返ってみた。わぁーお……魔物の軍勢。まだ遠いがこっちに向かって来ていた。
「これはまた、変なばしょに飛んだわねぇ。タロウ、走れるかしら?」
「う~ん。怠い……かも」
でも、そんな事は言ってられない状況だし……走るか。
『タロウ、向こうの方角に砦があります。おそらくこの魔物達を討伐する為の軍もあるでしょう』
「分かった……ありがとう……ルミナス。でも、たぶん追い付かれそう……あっちに行こうか」
俺達はルミナスに教えて貰った砦と少し方角の違う、森へ向けて走り出した。
魔物達は一直線に砦の方に進んでいる所を見るに……誰か指揮を取っている魔族が居るかもしれない。だが……もうしばらく休ませてくれ。
◇◇◇
森に入る訳では無く、入り口付近で腰を下ろして休憩していた。魔物達は、先ほど砦に向けて進軍していたが思った程の量では無かった。種類は多かったけど……。
少しずつ魔力の量は回復してきて、今なら誰かを召喚くらいは出来そうだった。誰を最初に喚び出すか迷った結果、俺はピヨリを召喚する事にした。
『ッピ! ご主人、ここはどこッピ?』
「まだ、分かって無いんだ。ちょっと上に上がって……砦があると思うんだけど、どうなってるか確認を頼む」
ピヨリが飛んで、空で何回か旋回してゆっくりと降下して来た。
『砦の方で戦ってるッピ! 』
「ありがとうピヨリ。悪いけど、俺を運んでくれ。まだ魔力が回復しきって無くてな」
ピヨリの足が俺の両肩を掴んだ。あれ? 何か思ってた運び方と違う……。
「麻津里、私達は上に乗るわよ!」
「わっ……乗っても大丈夫なのでしょうか?」
『大丈夫ッピ!』
「大丈夫だって。ピヨリも大きくなったなぁ……ホント。出会ったこ……わぁあぁあぁああぁぁぁ!!」
飛ぶなら飛ぶと言ってくれ!!……というかピヨリ!まだご主人が話してたでしょうがっ!
「わぁ……いい眺めね」
「ですね!広いです広いです!」
木の少し上ぐらいの高さだが、水平線の彼方まで見えてる気がする。遠くにある山、村、川……別の方向を見ると土煙とか血の色とかが凄いけど、この高さでもいい眺めである。
「じゃあ、ピヨリ……お願い」
『任せるッピ!』
俺達は戦っている砦を目指して進んだ。カルミナが風の調整をしてくれた事で強風に煽られる事も無く、束の間だけど空の旅を楽しんだ。
何故、束の間かというと……
「矢を放てー!!人が拐われているぞぉ!!」
「違います!この子は安全な子です!そこらの魔物とは違うんです!!駄目だ……ピヨリ!高度を上げて、砦の中に俺を落としてくれ。連絡があるまで空で待機……良いね?」
『分かったッピ!』
「タロウ、着地の補助は私が空からするわ!安心して落ちなさい」
おっ、なら何も気にしなくて良いな。水のクッションでも作ろうかと思ったが……カルミナがやってくれるならありがたい。
ピヨリが砦の真上を通り過ぎるタイミングで、俺を離した。自由落下に従って、俺の体は落ちていく……うん。こえええぇぇぇ!!
「ぶつかる!ぶつかるぅぅぅぅ…………っと、ギリギリじゃないか……」
地面から一メートルくらいの場所から失速し、地面スレスレで停止した。カルミナの技量の高さというか……無駄の無い着地にはなったけど、一瞬だけ焦った。うん、ほんの一瞬だけ。
「きみ!大丈夫か!?魔物に拐われていただろう!?」
「お疲れ様です。すいません、紛らわしい事をしたのを先に謝っておきますね。あの鳥は僕の契約してる召喚獣ですから……矢を打つのを止めて貰って良いでしょうか?」
丁寧で落ち着いた口調で話したのが正解だったのか、砦の最上階に居た見張り役……的な人はすぐにその指示を出してくれた。
「すまない、拐われていると思ってつい」
「いえ、こちらが悪かったです。ピヨリー降りておいで!」
上空に居たピヨリがゆっくりと降りてくる。ピヨリの大きさとか見た目の綺麗さに、最上階に居た人達が目を見開いて注目している。
「お疲れ様ピヨリ。ほら、果物」
『美味しいッピ!』
「はぁ~あ、短い空の旅だったわね?」
「でも、貴重な体験ですね!いいなぁ、私も欲しいです……」
そんな目で見てもピヨリはやらんぞ?貸し出す事は考えなくもないけど。
「すいません、いきなり来といてなんですが……ここはどの国でしょうか?旅の途中でして……」
「ここかい?ここは……」
「空からも敵が攻めて来てるぞー!!矢を用意しろぉ!!急げ!!」
一際大きい声が響いて、遠くをみると、魔物が追加されるかの様に砦に向かって移動していた。
「すまない!私も行かねば……君達はあの扉から中に避難しておいてくれ。落ち着いたら私が砦を案内しよう……」
ありがたい申し出だが、それならば早く終わる手伝いをしようじゃないか。カルミナもやる気の様だしな。
「ピヨリ!飛んで来ている魔物を出来るだけ減らして来てくれ!」
『倒しても良いッピ?』
勿論。とピヨリに伝えて、先に行って貰う。カルミナは見張らしの良いこの場所から魔法の準備をしていた。俺は……手伝いたいが、魔力の回復に専念させてもらう。
「私は遠距離の攻撃手段はまだ威力が出せないので……カルミナさんの後ろにいてスキルでの援護をしますね!」
麻津里も自分の出来る事を考えて行動出来ている。何もしてないのは俺だけだが……仕方ないよね?
「おーい!今、ここから飛んだ大きな鳥は味方だから射つなよ!」
「分かりました!ですが……あの鳥は何ですか!?魔物が次々に地面へと墜ちて行きますが?」
ピヨリが氷の息吹を敵の魔物に吐いたり、上昇した後に、急降下しながら突撃したり……かなり暴れていた。見ない内に成長したものだ。頼もしい限りで……嬉しいよ。
「この調子なら被害は少なく済みそうです。手助け……感謝します。自己紹介がまだでしたね。私は監視長のラカスタと言います……ここでの監視長とは、簡単に言うと分隊長くらいのものです」
「初めまして、僕はタロウって言います。あの魔法を放ってるのがカルミナで、その後ろに居るのが麻津里です。僕達は……冒険者というか、旅人みたいなものでして」
お互いに自己紹介が終わり、改めて感謝の言葉を貰った所でここの場所を教えて貰った。
ここはコフィン王国の東に位置する砦らしい。コフィン王国は俺の産まれたルールト王国から東にある国で……そして、三国同盟を結んでいる国である。意外と近くまで転移していた事に驚きと嬉しさを感じながら、ホッとした。
「コフィン王国。実は僕はルールトの出身なんですよ。ちょっと武者修行で別の国に行っていたんですけどね」
「おぉ!そうでしたか!今やルールト、コフィン、ウォンドの三国はより堅い同盟を結んでいまして……お互いの国を行き来しながら皆で戦っているんですよ!」
おぉ……。そういう話を聞くと王様……カルミナのお父さんだが、俺達の手紙を信じて動いてくれたんだと感動する。俺達が魔王と戦ったという根拠の調べようの無い話だったのに……ありがたい。
『ご主人、ヤバイッピ!ヤバイのが居るッピ!』
ピヨリからの声が頭に響いた。離れた所に居るピヨリの周囲には既に飛んでいる他の魔物は居ない。なのに、何かから回避しているかの様に飛び回っている。
「どうしたピヨリ!?」
『地面から跳び上がって攻撃してくる奴がいるッピ!ただ者じゃないッピ!回避は出来るッピ!』
意外と余裕そうではあるが……敵を倒したならもう向こうの空に用は無いな。せっかく少しずつ回復してる魔力を使う事になるが、ピヨリを戻す事にした。
「召喚 ピヨリ」
『ご主人ッピ~。危ない奴だったッピ~!人族だったッピ~』
泣きながらすり寄ってくるピヨリを優しく撫でながら、さっきまで戦ってくれた事をを労う。
しばらくすると、カルミナも満足気に戻ってきた。敵の魔物をだいぶ殲滅出来たのだろう。
「素晴らしい活躍……助かりました。では、砦の中を案内させて頂きます!まずは、ここの責任者を紹介致しましょう。こちらです……」
ラカスタさんに案内されながら最上階を後にして、砦の中に入って行った。当然とでも言うかの様に、ピヨリも一緒について来るみたいだ。攻撃されないように注意しないとな……。
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第5章のスタートです!




