第132話 タロウ、越える
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踏み込みと一緒に抜刀し、ベリー先生に向けて走りだし……斬りかかる。
「はああああああああ!!」
「――――っ!!」
散々になるまで身体に叩き込まれた基礎通りに刀を振るう。勿論、このままならいつも通りに練度で負けるだろう。だから、ここからは基礎を基盤に進化させた技で攻め込む!!
「タロウ流突技 『秘突』!!」
「九重流 『柳』」
秘突は刀の特徴を活かして突き刺す技。だが、普通に突く訳でない。簡単に言うならチェンジオブペース。普通の突から身体強化での瞬発力を底上げし、相手の防御、回避をミスリードさせる。
……が、そこはベリー先生。俺の最小限に抑えた筈の魔力の流れを見逃さず、しっかりと回避してみせる。いちいち驚いてはいられない。次の手を放つ機会を狙ってる間にも刀での打ち合いが続く。一瞬の油断が首を断つ結果になる。
「良い……良いぞ!やっと、私を楽しませる程に成長したっ!!待った甲斐があった!さぁ、私を楽しませろ!私を越えてみせろぉ!!」
「ちっ、冒険者『黒霧』としての戦闘狂の本性が出たかっ! タロウ流刀技 『流水』」
入れ替わり立ち替わり、回避の為に跳び回り、時には木すらを使って戦っていく。寸で避け、寸で避けられ……殴り蹴り何でもアリの戦闘。
蹴られ投げられ斬られ、それでも――俺は立ち上がる。まだ心は折れていない。ベリー先生より怪我は多いだろう。だが、まだ倒れない。魂が燃え盛る感覚というのを味わっている。先程より雪が少しだけ強くなっただろうか。だが、身体の奥底から熱が込み上がってくる。
「まだまだ、これからだ!!いくぞっ!!」
「ははっ……死ぬ気で来い!もっともっともっともっと!私を満足させてみせろぉ!」
また、激しく打ち合う。瞬きの一瞬すら惜しい、俺もベリー先生の事は言えないのかもしれない。俺も十分、戦闘狂かもしれない。この師匠……いや、この化け物を倒したくて仕方がない!!
「はははははははは!!先生、疲れて来たんじゃないですか!?」
「あははははははは!!なめるなよ!ほら、足元がおる……かはぁっ」
足元に振り下ろされた刀を身体を回転させながら跳んで回避し、そのまま強化した足で蹴り飛ばした。まともな蹴りを食らわせたが、すぐに戻ってくる。この人のタフさは以上だ。
少しだけ積もった雪の一部……所々が赤く染まっている。俺の血、ベリー先生の血、それが周囲に撒き散らされている。
「はぁ……はぁ……くっ」
「ふぅ……ふぅ……かはっ」
お互いに少し距離を開けたまま膠着状態になった。俺もベリー先生もフラフラだ。切り傷も打撲後も酷い。
「ベリー先生……はぁ……うぐっ……はぁ、その瞳の中にある狂気ごと、ぶった切って……やります」
「それ……は、嬉しい。私の狂“喜”を抑えられるなら……やってみろ!!」
――おそらく、最後の斬り合いになるだろう……その一歩を両者同時に踏み出した。
◇◇◇
「カルミナ流槍術 『乱』!!」
「九重流槍術 『烈火』!!」
エドヌの街から少し離れた荒野。槍と槍のぶつかり合い。私は、グレイプさんと戦っている。グレイプさんもここ半年はお互いを殺す勢いで修行をしてくれた。今日はそれ以上だ。下手するとどちらかを殺してしまうかもしれない程の本気。手加減なんて考えれば、身体に穴が開く。そんな戦い。
これは、今日まで育ててくれた事の恩返し。だから、私は私の全部をぶつけている。
「まだまだ小娘に負けるかっ!!」
「肩で息して、説得力無いわよっ!!はぁぁぁぁ!」
槍の特性上、近付き過ぎても離れ過ぎてもお互いが槍なら意味がない。だからひたすら自分の間合いで突いて叩いて防御する。勿論、一度距離を取ってから攻め込む事もあるし、懐へと踏み込んで蹴り飛ばす事もある。
だが、ひたすら槍を高速で動かす。間合いで止まったら串刺しになるからだ。腕が疲れたら離れる。槍の戦いはそういうものと教わった。
「うおらぁぁぁぁぁぁ!!」
グレイプさんの槍が変則的になる。私の苦手な攻撃だ。突きとフェイントの交互に攻撃が来る。私は良く引っ掛かっていた。正直、今も引っ掛かる。だから――。
「いぎっ!?…………あああああああっ!!」
「おいっ、本気かよっ!!……があぁぁっ!!」
強化した手で槍を掴み離さない。無茶苦茶な手段だとは自分でも分かっている。魔力がなければ手から流れている血で滑るか、傷口のダメージで槍をまともに握れなくなるのだから。それでも、私は勝つ為には何でもする。それも、教わった事だから。
「油断してると、槍ごと……その体、叩き折るわよっ!!」
「恐ろしいぜホント……もう一段ギアを上げるぞっ、ついて来いよぉ!!」
距離を取って、槍を構える。グレイプさんは槍を上段に構え、私は槍を刀を持つかのように少し特殊な構えを取る。
「「身体強化ぁ!!」」
同時に踏み込む。お互いの突きを寸で回避し、そのまますれ違って切り返す。先端から柄の最後まで余すとこなく槍を使う。私の白い槍が赤く染まり、グレイプさんの槍も赤く染まる。
「……がぁぁぁっ!!」
「……くぅぅぅっ!!」
タロウやベリー先生の様に変幻自在にはいかない。私とグレイプさんの戦い方、それはひたすら真っ直ぐに突き進むというもの。本当は痛いし足は震えてる。だけど、この戦いには意味があって、タロウも同じように戦っている。タロウと一緒だからまだ立ってるし、心は死んでいない。今日、ここに来る前にタロウと約束した。
『全力を出そう。そして……壁を打ち破って行こう、世界を守りに』
『えぇ、最後の血の一滴まで絞り尽くすのよ』
やはり、目の前に立つこの人は強い。化け物だ。だが、私はこの化け物を倒して修羅になると決めて来た。もうフラフラだ。そう長くは立っていられないだろう。
「次で――決めますっ!!」
「良いぜ……見せてみろっ!!」
私はタロウと考えて編み出した技を繰り出す為に、全神経を注ぎ集中した。
『奥義――――』
私はグレイプさんに向けて駆け出した。
◇◇◇
山の山頂の一部が血で赤く染まり、その中心に俺とベリー先生が伏せていた。力が抜けていく。目が霞む。それでも立とうと足掻くが上手く立てない。
「かはっ……はぁ…………はぁ…………」
「久しぶり……こんなに血を流すなんて」
ベリー先生は立ち上がろうとしている。なら俺も立たないと。この人を越えないと。約束を守らないと。
身体を刀で支えながら立ち上がり、真っ直ぐにベリー先生を見つめる。フラフラになりながらも刀を構える。本当に尊敬する。こんなに強い……身体も心も刀も技も強いこの人を尊敬する。だから、ぶつからないと。正面から、心からぶつからないと。俺は一人じゃない、今も戦ってるカルミナの分もベリー先生に恩を返さないと。
「ベリー……先生、いきますよ。受け取って……くだ……さいっ!!」
「あぁ……師匠の私に……ぶつかって……来いっ!!」
俺は霞む目や全身に力を入れて、カルミナと一緒に考えた最後の技に全神経を集中させる。
『奥義――』
俺はベリー先生に向けて駆け出した。何故だか分からないが、カルミナと声や行動が重なっている気がしている。震えは止まっている。
『刀槍流――』
最後の最後まで目を見開き、ベリー先生の動きを見逃さない。そして、最後の一歩を踏み出した。
『『刹那玲瓏』』
「……見事」
ベリー先生は膝から崩れ落ち、地に伏せた。かく言う俺も、全身の力が抜けて……そのまま眠るかの様に気を失った。
◇◇◇
「うぅ……ん?」
重い瞼を上げると、そこには満点の星空が広がっていた。身体が動かない……拘束されている訳では無いのに、だ。
「あれ……?痛みが無い?」
動けないだけで傷は回復していた。肌に暖かみを感じ取り、とりあえず死んでない事にホッとする。そんな俺をルミナスが覗き込むかの様に見ている。
『起きたのね、良かったわ』
「ルミナス……傷の処置、ありがとう。ベリー先生は?」
ルミナスはまだ寝ていると教えてくれた。どうやら暖かいのは周囲を魔法で暖めてくれているかららしい。冬の夜で外なのに寒くないのはおかしいと思ったけど、そういう事だったか。
どうやら、俺が動けないのは血を流しすぎたからだそうだ。だから正確に言うと、動けないのではなくて、動きたく無いと思っているだけらしい……。
「ルミナス……俺は、勝ったんだよね?」
『実感が湧かない?でも、勝ったわ。すぐに倒れたから相討ちと言う人も居るかもしれないけど、確かにタロウは勝ったのよ。誇りなさい』
そうか……うん。実感はたしかに湧かないけど、勝ったんだよな……俺。駄目だな……まだ上手く頭が働いて無いみたいだ。
「ごめんルミナス……少し眠い」
『えぇ、周囲は気にしないでゆっくり休みなさい。おめでとう……愛しい私のタロウ』
俺は目を閉じて、深く呼吸をしながら眠りについた。
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