第130話 タロウ、未だ勝てず
お待たせしました!
よろしくお願いします!(´ω`)
朝は神社でハルミナ様とカルミナと魔力の限界値をひたすら伸ばし、そして……そのまま朝からベリー先生とひたすら戦う日を続け一年もの月日が経った。
俺の目標は変わらずベリー先生を越える事だが、カルミナの目標は葡萄さんを越える事になっていた。
これは、ハードルを下げた訳じゃなくて槍に関して言えばグレイプさんの方が強いとベリー先生が言ったからである。修行は主にベリー先生としているが、グレイプさんに時間が出来たらひたすら挑んでは悔しくて泣いて戻ってくる日ばっかである。
「くっそ……今日も全然駄目だったな……ぅぐ」
かく言う俺も、ベリー先生にボコボコにされている日しか無い。それでも確実に強くはなっているし、ダメージも与える事は出来ているのだ。
「カルミナ、お願い……痛みに慣れるとか嘘だわ、マジいてぇ……」
「はいはい。サンライカ頼むわね」
もう、木刀での模擬戦は卒業している。自分の刀を使って斬り合っている。つまり、当然ボコボコにされている俺は流血が酷い。ベリー先生の遠慮の無さは見習いたいがエグい……。
「回復魔法が在るから可能な修行だよな……ありがとうカルミナ」
「良いのよ、次は私の番ね!行ってくるわ!」
「おっ、タロウ君の回復は終わったでござるか?じゃあ、カルミナさん、今日も死ぬ気で掛かってくるでござるよ!」
一年経った。のだが、ベリー先生は今日も俺達の修行を手伝ってくれている……本当、俺の兄貴でも紹介しないとなぁ。ウイング兄さんは結婚してるから次男のダーツ兄さんしか居ないけど。いや、もうダーツ兄さんも結婚してるかな?だとしたら、マジすいません。
「あ、カルミナが刀で突き刺された……これは急ぎだな」
たまに、大ケガを負う。俺も何回かある……致命傷じゃないから良かったが、その度に急いで治している。痛みってのは我慢出来ない事はないが、慣れるっていう事は無いと思う。
「タロ……ウ、私はもうダメ……だわ。貴方だけでも……カハッ」
「はいはい、すぐ治すからなぁ~」
やっぱり訂正だ。怪我と回復を繰り返していれば慣れて余裕が生まれる様だ。
◇◇◇
今日の修行も終わり、安倍家の方に戻って来た。とりあえずカルミナと二人で今日の反省会もし終わって暇な時間だ。
「風呂にでも入ろう……」
今日の疲れを洗い流してサッパリしても、暇な事に変わりは無い。寝るには少し早すぎるしな……。
「うし、せっかく暇なんだから有意義に使わないとな!新技の開発だ!」
結局はいつもと同じ様な事をして過ごす。修行して修行して、反省会を開いて、試行錯誤する。これが一日の流れになっていた。着実に強くなっているが、まだ足りないからな。
――風呂で疲れが取れたが眠気の波に襲われて、結局は普通に寝ていた。気付いたら朝が来ており、また修行が始まる。
◇◇
「カルミナ、だいぶ魔力が増えたんじゃないか?」
「そうね!タロウは覚えているかしら?魔力を込めると色が変わる式札の事。あれをたまに、やるんだけど良い感じよ!」
懐かしい……そういえば前に一度だけやったが測れる魔力量を越えそうだったから途中で止めたんだよな。まぁ、カルミナの魔力が増えた時の目安とする物があるならやる気も変わってくるだろう。ちょっと嫌みっぽいが、羨ましいと思う。
「今日も命さんと魔法の練習か?」
「ううん、今日は命先生に用事があって居ないのよ……だからタロウの方にお邪魔させて貰うわ!」
命さんも何かと忙しい。どうしても外せない用事というのが月に一度はあって、カルミナはやる事を言い付けられていたらしいが……どうやら最近はカルミナ自身に任せている様だ。だからこうして、俺や晴海さん、麻津里の方にやって来る事がある。
「タロウが、ちゃんと修行してるか見ておかないと!」
と言うのがカルミナの理由付けだが……本当は俺と麻津里が仲良くなり過ぎない様に監視に来ている事を何となく察している。気にしすぎと思うのは多分、俺だけなんだろうなぁ……。
そんな事を話ながら神社から戻ってきて、まずは朝食にする。規則正しい生活をしていたおかげか、身長もそこそこ伸びてカルミナと差が出てきていた。まぁ、まだ少ししか差は無いがこれからどんどん伸びる気がする。成長期だからな。
「……ごちそうさまでした。よし、行こうかカルミナ」
「待って、あとスープだけ飲んじゃうから」
俺達は朝食に少し遅れて来たが、だいたいこの時間だから俺達の分を用意してくれている、命さんには感謝だ。
カルミナがスープを飲み終わるのを待って、一緒に向かう。
「カルミナ、今日は何の修行するんだ?また緋鬼王と戦うの?」
「確かに毎回良いところで力負けするから挑みたい気持ちはあるけど……今日はマツリ様の様子を見るわ!ふっ……ふふふ……」
おぉ……頑張れ麻津里。ほぼ嫌がらせに近い事をしようとしているけどな。
「麻津里も頑張っ……あっ」
「麻津里?……タロウ、いつから呼び捨てにしているのかしら?」
あああああああっ!!やっちまった……俺の一年の頑張りがぁ!カルミナと居る時はマツリ様と呼んでいた努力が!
くそ、何とか誤魔化そう。
「いや、ほら……良く考えたら本人を目の前にしてたら様を付けないといけないじゃん?でも、今は居ない……じゃん?」
「目……泳ぎすぎよ?はぁ……タロウ、隠し事はなるべく無しで正直に言う約束でしょ?」
うっ……強制的に頷かされたその約束か。まぁ、そうだよな……こんな事で蟠りが出来るくらいなら正直に言って叩かれた方がマシだな……叩かれる前提で考えてる事がもう、ね。
「あの、一年前くら……」
「長いわよっ!」
台詞と共にビンタのモーションに入る。見えてるし、避けようと思えばそう出来る。だが、仕方ないから受け入れよう。まだ話の序盤しか話してないけど……それはまぁ良いか。
屋敷の中に手を打った様な音が響き渡った。
◇◇◇
「タロウさん、どうしたのでして~?」
「あぁ、おはようございます晴海さん。これですか?これです」
俺は自分の頬を指差した後に隣のカルミナを指差す。頭の良い晴海さんならだいたいの事情は察してくれるだろう。
「カルミナさんも今日はこっちなのでして~?」
「そうよ!お邪魔させて貰うわね……マツリ様はどこかしら?」
部屋の中には居ない。まぁ、この時間帯なら準備運動がてら双葉さんと打ち合っているだろう。晴海さんも外を指差したし、間違いないな。
「タロウはどうするの?一緒に来る?」
「……そうだな。カルミナが何をしでかすか心配だしな」
ちょっとした仕返しとして、軽口を叩いておく。つねられた……イーブンにならないじゃないか。
外に出ると冷たい風が体温を下げてくる。寒いからちゃんと準備運動しておかないと怪我に繋がから気を付けないと……あと単純に動いてないと寒さにやられてしまうからそれもだな。刀にしろ槍にしろ、しっかり握れないと話にならない。
「マツリ様は……あっちね!行くわよ!」
「はいよ、木製の武器でやるのか?」
カルミナはもう用意していたようだですから普通に、自分の、武器を。ははぁーん、カルミナ……さては殺る気になってるな?回復魔法の準備はしておこう。
「マツリ様、双葉さん」
「あっ、カルミナさんに旦……タロウさん!」
「お前等か、なんだ……珍しいな?」
練習している二人の元に駆け寄って、事情を話した。命さんが忙しくてこっちに来た事から、呼び捨ての件まで。
「ついにバレてしまいましたか……」
「まぁ、気付いて無かったのはカルミナだけだな。他は気付いていただろう。あと、麻津里がその男を旦那と呼んでる事もな」
「タ~ロ~ウ~!!?そんな話は聞いてないのだけど!?どういう事かしら?どういう事かしら!?」
おっと……双葉さん今のはワザとだな?
「カルミナ、それに関しては俺じゃなくてマツリ様を責めるべきだな」
双葉さんが知ってる事に関しては驚かない。何故なら毎回とは言わないが大抵はタロウの前に『だん……』が付くからな。関係性を知ってる者なら気付くだろうな。全然気付いて無かったのはカルミナぐらいだろう。
「ふっふっふ……バレてしまった以上、遠慮は要らない訳ですね!」
「そうじゃないでしょ!遠慮しなさいよ!何、旦那とか呼んでるのよ!」
ヤバい……カルミナがヒートアップし始めた。少し落ち着かせないと。
「落ち着けカルミナ、旦那じゃなくて旦那様だ」
ちっがぁぁぁぁう!これじゃ煽っただけだ。
「良い度胸じゃない……タロウ……」
違う違う……もっと伝える事がある筈だ。とりあえずカルミナを持ち上げる感じで……。
「カルミナ……まだ挙式は行って無いが、俺の嫁はお前が最初だ。とりあえず余裕を持ってくれ、麻津里にも言ったと思うが、カルミナが一番な事は変わらない。勿論、麻津里を蔑ろにするつもりは無いがどうしても優先しないといけないならカルミナだ」
「それは分かってるつもりですが……面と向かって言われると少しキツいのですよ?」
うっ……確かにちょっと配慮が足りてなかったかも知れないが、事実として受け入れて貰わなければな。カルミナは……どうだ?
「ふふ~っ、んふー……えへへ」
「旦那様?何か気持ち悪いくらいにニヤケてますが……」
「そ、そうだな……でも、これで大丈夫な筈だ。カルミナが落ち着いたら修行しようか。あっ、麻津里……カルミナが自分の槍でやるつもりだから死なない様に頑張れよ?」
俺の発言に麻津里は青ざめ、双葉さんは戦闘狂なだけあって口元が吊り上がって楽しげ?な、顔をしている。
「はぁ……俺はそこら辺で見てるから頑張ってね?」
「旦那様!?助けてくださいよぉ~」
無理だ……無理じゃないけど……無理だ。壁を乗り越えて強くなってくれ麻津里。
よし、俺は俺でなんかやっておかないとな。緋鬼王と打ち合うか、蒼鬼王と魔法の技術を高めるか……まぁ、何かやろう。
「よし!麻津里、私も麻津里と呼ぶから!さぁ、やりましょうか……楽しい修行を」
「あぁ、私も混ぜて貰えるか?回復役が居ると少し乱暴でも構わないし、中々に楽しめそうだ」
「ひぃぃ……助けてー旦那様ーー!」
そんな麻津里の悲鳴を聞こえないフリをして、それぞれ今日も今日とていつもの様に修行を開始した。
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