第128話 タロウ、予定を伝える
すいません、少し遅れた上に短めです。
よろしくお願いします!
神社からいつも修行する山に向かい、俺とカルミナは走っている。少し増えた魔力を身体に纏わせているから、中々のスピードを出していた。
「凄いわ!凄いわよ、タロウ!」
「制御は気を付けろよ?いつもの感じでやっていたら、魔力を込め過ぎて……急に血が吹き出すぞ?」
まぁ、魔力の扱いにも慣れている今ならそんな心配も口だけである。そんな失敗をするほど急激に増えた訳でも無いからな。
山を駆け登り、ラストスパートに行く前に息を整える。カルミナは、魔力が増えたことがよほど嬉しいのかニコニコ顔が止まらない。
「この山登りも慣れたもんだなぁ」
「そうね、こんなに話す余裕なんて無かったもの。さ、行きましょ?」
俺とカルミナは最後の急な勾配を走り抜け、いつもの修行場へと辿り着いた。
◇◇◇
山を登りきると、体術の練習をしていたベリー先生と桃さんがこちらの気配に気付いた。
「あら?タロウ君達……今日は休みかと思っていたでござるよ?」
「私もー……というか、まだ全然始まったばかりだよ?」
まぁ、実際の時間的には神社に寄って立ち寄っただけになるからな。しかも身体強化をして、ここまで走って来たし。
「えぇ、まぁ……ちょっとありまして。ベリー先生にもお願いがあるんですよ」
「拙者でござるか?聞くだけは聞くでござるけど……?」
事情を察してくれるベリー先生はともかく、混乱するであろう桃さんに気を使って言葉を伏せながら何とか説明を試みた。
――その結果、ベリー先生は全く理解してくれなかった。残念な事に……。
カルミナに小声で桃さんの相手をするように頼み、今度はちゃんと説明する事にした。
「その、今日神社に向かったのが……神ハルミナ様の指示でして、どうやらそろそろ魔族が本腰を入れそうだという話でした」
「それは分かったでござるが……どうして毎日神社に訪れるでござるか?」
ここの説明がなぁ……実際に体験した人じゃないと分かりにくい物があるんだよな。とりあえず出来るだけ簡単に言っておくか。
「ハルミナ様からの指示を聞くのと、ちょっとした訓練だと思ってください。それで、ハルミナ様からの指示としまして……俺は、勝つまで何回もベリー先生にひたすらボコボコにされろという事でした。カルミナは、最終的にグレイプさんに槍で勝つようにと」
「ふむふむ……とりあえず基礎はやって来たでござるからな、後はひたすら戦うのも悪くないでござろう。その話、分かったでござるよ!」
よし、とりあえずこっちの説明は終わりだな。次は安倍家での説明を考えないと……あと、麻津里様との話し合いもな。
「じゃ、早速やるでござるか」
「はい!」
めちゃめちゃ気合いの入ったベリー先生にボコボコにされた……。初日から心が折れそうである。
◇◇
「いてててて……」
「サンライカ、私達に回復をお願いするわ」
『分かりました。それにしても……ボロボロになりましたね?』
俺だけじゃなくカルミナまでもボロボロになっていた。ベリー先生はその辺の……男女間で手加減をする様な人じゃないからだ。ありがたいけど。
「これは、早く強くならないと……ずっとこのボロボロが続くな」
「そうね、武器も体術もまだまだ届いてないのが実感出来るわね……」
とりあえず今日のこの修行の復習を明日のあの時間にやろう。とりわけ、反応が出来ない訳じゃない事が分かっただけでも良しとしよう。
俺とカルミナはベリー先生達と下山して、そのまま安倍家の方に帰って行った。
◇
安倍家に着いて、真っ先に向かったのは吉晴さんの部屋だ。とりあえず説明をしなければならないからな。
「タロウ君、カルミナさん、楽にして構わないよ?」
「では、失礼します」
俺達は足を崩して座り直した。昔ならそう言われても正座のままだっただろうが、今はこのくらいの事を出来る距離感だからな。
「それで、今日はまた……改まってどうしたんだい?」
「ちょっと、修行の内容を実戦向きに変更しようと思って相談しに来ました。詳しくは言えませんが、また魔族の動きが活発になり始めたそうで……いつ魔王が動くかも分からないので、少しでも早く強くならないといけなくなりました」
「私もタロウもまだベリー先生にすら勝てて無いですから……少しペースを上げようかと思ってます」
式札だって強力な武器だし、それを怠るつもりは無い。
「ふむ……。もうタロウ君は式札の扱いも上手く行ってますし、私としても好きにやらせてますから構いませんが……カルミナさんの方は命の担当ですからね、確認をしてみなければ……」
「それは私の方で頼んでみます!魔力も増えていますから、戦闘訓練に入っても問題無いと思いますし」
よし……カルミナの方はまだだけど、とりあえず吉晴さんからの許可は出た。明日は緋鬼王や紅緋にも事情を話して、訓練に入って貰わないとな。
「話はこれだけです。お時間頂き、ありがとうございました」
「また、何かあったらいつでも来なさい」
吉晴さんの部屋を出て、俺達は自室へと戻る。明日の朝のランニング途中で神社へ向かおうと話してからそれぞれの部屋へと入っていった。
◇◇◇
「よく来ましたね、タロウ。待っていましたよ?」
「おはようございます、ハルミナ様」
「ちょ、ちょっと!?私もいるんですけど!?」
確かに、意図して無視されてる感あるもんな……カルミナ。
「どぅどぅ、カルミナ。ほら、修行修行」
「わ、分かっているわよ!」
俺達は身体強化を発動させながら体術の練習、武器の扱いの技術を向上させていく。戻った時に筋力はつかないが、それ以外の感覚的な部分はちゃんと覚えているからかなり上達する。
身体強化を使っている為、かなりの高速戦闘になるが……これくらいはやってみせないと話にならない。
「甘いぞカルミナ!」
「くっ……まだよっ!」
刀を使うと見せ掛けての体術。体術と見せ掛けての刀。カルミナはよく引っ掛かるから……そこも何とかしていかないとな。
「タロウは体術の方がまだまだねっ!」
「ちっ、まだカルミナの方が上手いか」
俺の方は単純に技術というか隙が多いのだろう。ここも改善していかないとな。
使える時間の半分を終えて、折り返しに入ったら魔法の打ち合いやお試しの技を放つ。お互いに出来る事を確認したり、教えあったりと切磋琢磨をしていく。一番のライバルはカルミナだからな。
「タロウより魔法の威力は勝ってる筈なんだけど……」
「いや、まぁ……そうだけど、カルミナのは対軍用の魔法だから個人に向けて放つと威力が分散してるっつーかな」
これで改良されたなら、本格的にヤバイ。今でさえ、魔力の量を武器に戦ってるに過ぎないからな……もっと新しい技を開発しなければ。
「タロウ、カルミナ……残念ですが、そろそろ時間ですよ」
「分かりました。また明日に」
「お邪魔するわね」
この場所に精霊の皆が来れる事に関しては驚かなかったが、ルミナスの姿の時より緊張してるのは少し面白かったな。
さて、ランニングの続きをして帰りますか。
◇
ランニングから戻り、朝食を頂いた後はいつもの様に式札の量産をする訳だが、その前に緋鬼王と紅緋を呼び出した。
『主、如何なさいました?』
『どうしたのかえ?』
「まぁ、ちょっと話しとく事がな」
ベリー先生や吉晴さんにした説明よりもこの二人には少し詳しく話しておいた。俺の貴重な戦力だし頼りにしている二人だからな。
「……という事で準備はしておいてくれ。戦いはどのくらい先になるかは分からないけど、エドヌは離れるからな」
『主が居る所にこの緋鬼王在りです。鍛練は欠かさず行っておきましょう、蒼鬼王にも手伝って貰います』
『なぬ!?なら、今のうちに菓子をたらふく……あいたっ!?』
そりゃ、緋鬼王に拳骨を落とされるよ紅緋……まぁ、二人への説明はこの辺で良いかな?後は……マツリ様か。ついて来ると言ってるし……離れる事くらいは先に言っておいた方がいいだろうな。
俺はマツリ様を探して敷地を移動した。いつも午後から双葉さんと修行しているのは知っているが、午前中に何をしているのかは今まで気にして来なかった。
「外には……居ないのか?」
居そうな場所を巡って見付けられなかった俺は建物の中に移動して、探しだした。すると、思わぬ場所にその姿があった――厨房だ。
「マツリ……様?」
「あ、タロウさん!どうかされたのですか?も、もしやお腹が空いたのですか!?なら、これをどうぞ!」
別にそういう訳でも無いが……これはゴマ団子?まさか、マツリ様が作ったのか?
「頂きます……あふっ、あふっ……美味しい。美味しいですよ、マツリ様!」
「本当ですか!?そ、それなら良かったです~」
いや、のんびり食べてる場合じゃ無かった。が、まだ何かを作っている途中らしかったので終わったら来てくれとだけ伝えて、その場を去った。
まさか、修行の他に料理まで習っていたとはな……がんばり屋さんだな、マツリ様は。
いつもの部屋に戻り、式札の補充をしていると……先程作っていたゴマ団子以外の物も乗っているお皿と共にマツリ様がやって来た。紅緋……マツリ様の後ろをついて歩かないで修行してなさい。お菓子に釣られて……鼻が良いな、紅緋は。
「それで、話とはなんでしょうか?あ、紅緋ちゃんもどうぞ?」
『おぉ!それはかたじけないの!くっふっふー』
「まぁ、お菓子でも食べながら話そうか」
俺は、今後の予定についてマツリ様に話始めた。
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