第126話 タロウ、魔族のシステムを知る
すいません、お待たせしました!
よろしくお願いします!
カルミナ達が帰って来てからしばらくすると、陸部隊の残り最後のパーティーも帰還した。マリカルさん達も帰ってきているし、これで今回のクエストに出ていた冒険者が全員集合した事になる。
「今回は特に戦いの連続で大変だったと聞いている。だから、さっさと報酬を分けて終わりにするぞ!」
ギルド長が大金が入ってますと、目に見えて分かるくらいの袋を持ち出して……それによって、冒険者達が騒ぎ出す。まぁ、これが目当てで頑張ってる所があるしな。当然の反応だろう。
「じゃあ、報酬の説明をするぞ!」
昨日の夜に説明された内容と同じ事を冒険者に伝えている。ベリー先生が何かを期待した眼差しを他の冒険者達に向けているが……。
「なるほど。よっしゃ!お前ら欲しい素材は持っていけ!金が良いやつも素材を自分で持って換金して来い!」
「おい!それは、俺が狙ってた素材だぞ!?」
「うるせぇ!二つあるんだから一つくらいよこせや!」
説明が終わると共に、各パーティーで話し合いや争奪戦が始まった。流石は冒険者……報酬になると動きも早いし理解も早い。
ベリー先生……待つのは自由にしてて良いですが、誰も聞きに来ませんよ?
よくよく考えれば、報酬について理解出来ないのは脳筋が過ぎるよ。
「タロウ、こっちで素材を分けるから来なさーい!」
「あっ、はい!すぐに行きます」
海部隊のリーダーであるマリカルさんに呼ばれたから行くけど……ベリー先生、空部隊の人が素材を分けられないっぽいから早く行ってあげて!
◇◇◇
「はぁ~この素材があれば……ぐへへへへ」
「マリカルさん……笑い方が下品ですよ?」
素材を分けて良いと聞いたときから目が輝いているとは思っていたが……まぁ、港に居た時にも素材に執着していたしな。
「一体、その素材で何を作るんですか?」
「これだけあれば……装備品を新調出来るし、武器も良いやつに変えれるわ!……って、私よりタロウの方はどうするの?」
俺も幾つか素材を貰ったが、全部お金に換えるつもりである。特に素材に困っていないというのと、お菓子代の為だ……。
「とりあえず換金ですね……大食らいが居るもんで」
「ふーん?勿体ないわね、せっかくこんなに素材があるのに」
まぁ、必要になったら取りに行けば良いだけだからな……狩りに狩りまくったから、これからしばらくは全然取れなそうだけど。
「じゃあ、換金してきますね」
「はいよ、私はまだまだ素材を……うへへへへ」
素材に執着心しかないマリカルさんを置いて、俺は素材を換金して貰った。そこそこの値段にはなったが……やはり少しだけ安めに買い叩かれているか。一気に素材の供給が増えたから仕方ないけど。
「タロウ!タロウ、ちょっと来てー!」
カルミナの声が聞こえてギルド内を見渡すと、受付から離れた所から手を振っていた。来てという事は何かあったのだろうか?
「どうした?カルミナ」
「うん、私が今回お世話になったパーティーの皆にじま……じゃなくて牽せ……でもなくて、紹介しようと思って!」
ぐちゃぐちゃ……ってなったけど、紹介ね。紹介。カルミナがお世話になったのならちゃんとお礼も言っておかないとだな。
「へぇ~これがカルミナの男かい?なるほどねぇ……」
「この人はミミンさん。今回組んだパーティーのリーダーでBランクよ」
「カルミナがお世話になりました」
結構鍛えているみたいだな。それに……アネゴって感じがする。
「は、初めまして。カルミナさんには助けて貰ってばっかりで……」
「自分もです……もしや、タロウさんもお強いのですか?」
「チルさんとコランさんよ。まだDランクらしいけど、基礎は出来ているみたいだし……すぐに上に上がかしらね!」
「歳上ですよ……ね?すいません、カルミナが。失礼な事も多かったと思いますが……。強い……いえ、自分もまだまだですよ」
二つくらいは上だろうか?チルさんは気弱そうで、コランさんはしっかりしてそうだ。
「私はサラ」
「私はミラ」
「貴方が」
「タロウ?」
ふ、双子だ……この世界で初めて見た気がする!見れば見るほど似てるなぁ。
「双子ちゃんはね、Cランクで……やっぱり、息がピッタリだったわ!」
「タロウです。カルミナがお世話になりました」
とりあえず全員に挨拶をし終わったが……どうするかな。まだ素材の振り分けが終わってないみたいだし、どこかで座って待ってるか?
「カルミナ、その辺で待ってるから終わったら今日は帰ろう」
「うん!もう少しだから少し待っててね」
◇◇
女の子の『少し』というものは信用出来ない。……三十分も掛からないだろうと思っていたら普通に二時間くらい経過していた。外もすっかり暗くなって、冒険者達も残っているのは僅かだ。ベリー先生も最初は待つつもで居たのだろうが、先に帰ってしまった。
「よし!後はギルドに買い取って貰いましょうか」
「す、凄いです……私のランクじゃ、こんな良い素材を手に入れられるとは思ってませんでした」
「はっはっは!チルももっと頑張るさね!……じゃ、あたしは先に帰るよ。機会があればまたクエストにでも行くさね」
それからカルミナが皆と別れの挨拶をして戻って来るまでに少しの時間を要した。俺も手元に本が無ければ先に帰っていたかもな。
「お待たせ。ごめんね、タロウ」
「うん、お腹空いたし……何か食べて帰る?」
今から安倍家か九重家に帰っても食事の時間は終わっているだろうし、何かを作って貰うのも申し訳ないからな。
「そうね!」
「明日からまた修行だろうし、ガッツリ食べよう!ガッツリ!」
◇◇◇
まだやってるお店の中ですぐに食べれそうな所に入り、俺達は今回のクエストでどんな事があったのかを改めて話し合いながらお腹いっぱいになるまでご飯を食べた。
「タロウ、強さって何かしら?」
店を出てカルミナと夜道を歩いている時に、ふとカルミナから問い掛けがやってきた。
「強さ……かぁ。単純な武力から気持ちの強さまで様々だと思うよ?でもまぁ……覚悟かな?」
だいたいの物事には二面性という物があると思う。一つの行動によって起こる損得。喜ぶ人悲しむ人。表と裏。
良い面も悪い面も受け入れる覚悟をする事が強さだと俺は思うかな。少し別の言い方をするなら勇気。意味合いも少しだけ変わるかも知れないが、『立ち向かう覚悟』も『立ち向かう勇気』もそれが出来るなら強さだろう。
「覚悟……ね。私も似たような事を考えてたわ。泥にまみれようと立ち上がる事や諦めない事。気持ちを考えると……うん、覚悟がしっくりくるかしら」
「どうしたの?急に……強さだなんて」
クエスト中に何かあったのだろうか?
「ただ、私達は最低でもベリー先生を越えなきゃならないでしょ? 今の状態で修行してて良いのかしらと思ってね。勿論、基礎も出来てなかったら話にもならないけど……私達は教えて貰ってるだけで良いのかなって。それで、ベリー先生を越えられのかなぁ~って……ちょっと思ったのよね」
……そういう事か。たしかに、ベリー先生を越えれもしないなら俺達は魔王に一方的に負けて終わりだろう。たしか、魔王は強者を求めていた筈だ……そのために世界を脅かそうとしている。負けたら……終わる。それだけはハッキリと…………。
“タロウ……お前の目的は何だ?”
決まっている。生きること。生きてこの世界を見て回ること。
“タロウ……魔王に勝てるのか?”
ベリー先生にも勝てないなら魔王にも勝てないだろう
“タロウ……魔王を倒す力を持つ意味は分かるか?”
何となく。人の欲は際限無い事も分かる。恐れられる、利用される、争いの火種になるかも知れない。
“それでも、強くなりますか……タロウ”
うん、覚悟は出来てるよ。ハルミナ様。問い掛けてくれたお陰で確認出来たよ。
『タロウ、カルミナ……少し良いですか?』
「あら?ルミナス……いきなりどうしたの?」
俺の気持ちを読み取っていたルミナスが妖精の姿を現した。
『話しておかなければいけない事があります』
「なにかしら?急ぎの話?」
ルミナスと魔力で繋がっているからだろうか、何となくだけど……ルミナスから焦りの感情が伝わって来る。
◇◇
「「魔王討伐を手伝えなくなった!?」」
『えぇ……そうですね。どこからはなしましょうか……』
ルミナスが静かに話し出した。
『魔王……その存在の意義から話していきましょう。カルミナには少し難しいかも知れませんが、そもそも、世界というのはこのチェルトだけではありません。この空の遥か遠くに幾つもの星が在るように、様々な世界が存在しています』
それは、つまり俺が死んだ世界も宇宙のどこかに在る……という事だろうか?初めて知った……。いや、帰れる技術が無いし生きてる内にたどり着けるかも分からないのか。
『世界が存在すると言うことは、その管理者もまた、存在しています。つまり、我々です。私はこの世界が目覚めた時に同じ様に目覚め、世界を創り初めました。ですが私は――魔族を創ってはいません。』
「で、でも……魔族は確かに居るわ……よね?」
『はい。知っての通り、魔族は居ます。魔族とは……数多くある世界を壊し、減らすために遣わされた存在。誰が、何の基準をもってして送り込むのかは私も知りません。恐らく魔族もいつからこの世界に居て、誰に送り込まれたのかは知らないでしょう。人が人の中から王を選ぶように、魔族も魔族の中から王を選定し、君臨して来ました。唯一分かるのは、魔族は暴れ、それを倒さねば世界は滅びるという事です。その魔族を倒す為に神の権限として魔王が現れる時に勇者を……いえ、この話は止めておきましょう』
そうか、エドヌの最初の転生者も……魔王を倒す為に。
「それで……どうしてルミナスは戦えないんだ?前に一度魔王と相対した時は……」
撹乱や防御、攻撃はしてなかった気はするが……戦えていた筈だ。
『戦えなくなった訳ではありません。手伝えなくなったのです。理由は……おそらく魔族を世界に送り込んだとされる者からの忠告があったのです。“世界に干渉し過ぎるな。許容出来るのは人間の転生のみ。直接の干渉は世界の崩壊を早める”と。恐らく、本来は私が現界している事がギリギリなのでしょう。タロウに召喚され、力を抑えられていたから大丈夫だったのでしょう……しかし、タロウが成長するに連れて私も力を強くします。そろそろが限界なのでしょう』
「俺が強くなったから。ルミナスが存在する事への対価……この世界にあるリソースが足りなくなってきたのか?」
「ど、どういう事!?難しいよ……タロウ!」
話は分かった……分かったけど、カルミナにどう説明したら良いのだろうか。ルミナスが勇者を転生って所はボヤかしてくれたが……。
『カルミナ、貴女は難しい事を考える必要がありません。貴女がするのはタロウを支える事。タロウとこの世界を救うこと。分かりますね?タロウ、貴方も覚悟を決めたのなら……やれますね?』
「タロウを……支える……」
「覚悟を……」
ルミナスの手は……借りられない。俺は俺だけの力で……。
『少し、気負わせ過ぎましたか?……ですが、タロウ、カルミナ、あなた達なら大丈夫です。苦しかったら隣を見なさい。隣の人を守る為に戦いなさい。必死になりなさい。その他大勢の為じゃなくても良いです、その隣にある手をいつまでも握るために立ち上がりなさい。私は手を貸せない、でも……出来ることはあります』
「タロウ……」
カルミナが寄せてきた手を握り締める。
『明日、神社へと来なさい。そこから私の元に連れていきます……時間は思ったより無いですよ。現世に居る間、タロウは刀でベリーを倒しなさい。カルミナは槍でグレイプを倒しなさい。それが最低条件ですよ』
淡々と告げられる言葉に頷くしか無かった。それしか選択肢が無かったけど、お陰で迷いや悩みは消し飛んだ。
「カルミナ……俺はお前と生きていくこの世界を守る為に強くなるよ。誰よりも……ね」
「それは無理よ。だって……タロウと生きていく為に私がこの世界の誰よりも強くなるんだか」
俺達は世界を救う覚悟を固めた。魔族が誰に遣わされたとか、魔族は何も知らないただのシステムだとか……そんな事はどうでもいい。
――ただ、俺はカルミナが居るこの世界を守りたいだけだから。
誤字脱字がありましたら報告お願いします!
(´ω`)




