第125話 タロウ、依存気味?
すいません、少し遅れましたね。
よろしくお願いいたします!
ギルドに到着して中に入った俺とピヨリ。ギルド内は冒険者が出払っている事もあり、静かかと思いきや……一人、騒がしい人が居た。
――勿論、ベリー先生である。俺より先に帰って来ているのはこの人くらいだろう。
「ベリー先生、暇だからと言って桐華さんに絡むもんじゃ無いですよ?」
「……おぉ!タロウ君でござる!早かったでござるな?」
「ほっ……助かった」
どれくらいの時間をベリー先生に拘束されていたかは知らないが、桐華さんの表情を見る限り……ベリー先生が戻って来てからずっと、という可能性もありえるな。
「紅緋とお汁粉を食べる為に、ちょっと先に帰ってきましたね。他の方……マリカルさん達のスピードだと明日になると思いますけど」
「拙者も呼んでくれれば行ったでござるよ!……それと、ちゃんと終わらせて来たのでござろうな?」
ちゃんと……と言うのは、魔物だけじゃなく魔族も含めてという事だろう。
「大丈夫ですよ。戦ったら桃さんの方が厄介って思うくらいの強さでしたしね。大量の魔物の方が面倒でした」
「うむ、なら特に言うことは無いでござるよ!さ、タロウ君は飲めないからジュースでござるが、先に勝利の祝杯をあげるげでござる!」
本当ならカルミナを待ちたい所だが……未だ終わっていないのか、連絡が無い。うん、カルミナが来たらもう一回祝杯を上げれば良いよね!先に祝杯を上げてても良いよね!
「ベリー先生達の方の話も聞かせてくださいよ」
「良いでござるよ~まずは……」
ギルド内のテーブルの一つを勝手に占領して、俺とベリー先生とピヨリで飲み食いしながら盛り上がった。途中、ギルド長や職員さんも暇だという理由から職務を放棄してベリー先生の話を聞いていた。
そして、夜になってからようやく、カルミナから帰りは明日になるとの連絡が入った。
「タロウ君の考えた通信手段のお陰で魔族を探し始めたでござるからなぁ~助かったでござるよ!」
「いや、ベリー先生なら敵全員を倒すからあまり意味は無いでしょう?」
あの程度の魔族なら、ベリー先生にとっては少し強めの魔物と遜色無いのだろう。早くこの領域まで達して、越えなきゃだ―な……。
「ま、そうでござるな!あの魔族……次々と再生して羽を出すでござるから、素材が貯まったでござるよ!ウハウハでござる」
なるほどっ!その手があったかぁ……。俺が倒した魔族も何かしらの素材をポンポンと出してくれていたかも知れないのか……ミスったな。
「じゃあ、ベリー先生……そろそろ帰りますか?」
「そうでござるな、ギルド長……明日はいつ頃に来れば良いでござるか?」
「お前等の話を聞くと……冒険者共がこのギルドに到着するのは明日だろ?なら、ベリーとタロウもとりあえず明日の昼頃にまた来てくれ」
明日の昼か……とりあえずグッスリと睡眠は取れそうで安心した。まぁ、帰って風呂にでも入ったらすぐに眠りにつけそうだけど。
「報酬はどう分配するでござるか?」
「そうだな……これだけ人数が多いとな。一律にすると活躍した者から不満が出そうだし、歩合制にするとしても誰がどの程度活躍したかもハッキリしねぇーしな……。何か良い案はねーか?」
報酬か……どう分配しようと結局、誰かしらは不満を漏らしそうなんだよな。それでもまだマシな方法は何かないか……?
「拙者のいた部隊は手に入れた素材が良いでござるからなぁ~。 金よりも、武器の素材になるヤツが欲しいという者が居たでござるよ」
「海部隊も同じ事してた人が居ますね。魔法の触媒になるとか何とか……」
「素材か……そうだな。なら、まずは各部隊で欲しい素材があるならそれを優先的に手に入れられる事にしよう。それで余った分は一度ギルド側で引き取り、代金の一部を報酬として渡す。今度は他の部隊の取って来た素材で欲しいのがあれば買える様にする。勿論、価格はギルドで決めさせて貰うがな……お互いに損はしない様に調整はするつもりだ」
ふむふむ……海部隊で考えると、牙や肉やその他の素材で欲しいのがあれば貰えて、残りはギルドが金に換算して報酬として一部を支払う訳だな。で、ギルドが空部隊と陸部隊から同じように引き取った素材で自分が欲しいのがあれば買える……と。
素材の数は多いし、十分な報酬を得られそうだ。ギルドは一度金を支払うが、冒険者から素材と金が入ってくる。うん、中々に良さそうなシステムじゃないか。
カルミナからは女子だけのパーティーって言っていたし、陸部隊は人員を細かく分けてるみたいだ。だとすれば、活躍したらした分だけ素材を手に入れられるチャンスでもあるし平等に近いな。
「流石はギルド長!中々に悪ど……良い仕組みですね」
「なるほど!なるほどで……ござる!」
「タロウは理解してるみたいだが……ベリーにはちょっと難しかったか?……他の冒険者の説明の時にはもっと分かりやすく伝えないとな……」
ベリー先生……僕を睨まないでください。僕は何も言ってないですよ?ちょっと理解が早かっただけですから……ね?睨むならギルド長を睨んでください……。
「タロウ君、説明してみるでござるよっ!ほ、本当は分かって無いのでござろう?」
「いや、理解はしましたけど……ギルド長、お先に失礼します。ベリー先生、帰りながら説明しますよ」
「おう、明日の昼頃でよろしく頼むわ!」
ベリー先生とギルドを出て、安倍家へと帰る道すがら……二、三回は説明しただろうか、ようやく理解してくれたみたいで満足気な顔をしている。
どうやら、明日説明された時に他の冒険者に教えれる立場になれた事が嬉しいみただ。……忘れてなきゃ良いけどね。
◇◇◇
太陽の光を浴びながら、私達はギルドから支給された食料を朝ごはんとして食べていた。これを食べ終わったらエドヌまで真っ直ぐ帰還する予定だ。陸部隊で一度集まるとかしないで良いらしい。ミミンさんが言うのだから……きっとそういう指示がパーティーのリーダーにはあったのね。
「ご馳走さま。ここから歩いたとするなら、昼前か少し過ぎる頃には着きそうさね!」
「早く帰らないと……ベリー先生とタロウは昨日の内に帰っているみたいなのよね」
なんか、私だけ遅れたみたいでやんなっちゃう。敵が多いから仕方ないと、タロウも分かってくれているのだけど……やっぱり遅れるのは何かイヤ。
「ベリーさんは分かるけど……その子もとんでもないさね。勿論、カルミナだってそうさね」
「ありがとうミミンさん。うん、やっぱり昼頃を目安として普通に帰りましょうか。もっと皆と話しておきたいしね」
焦って帰るよりも、今はここに居るという事を最大限に活かした方が良いかも知れないわね。
「わ、私もカルミナさんに聞きたい事とか沢山ありますっ!」
「私もです。その……強さの秘密……とか?」
「「タロウって人の事とか」」
よし、双子ちゃんは要注意ね。
「じゃあ、テントを片付けておくさね。皆が食べ終わったら出発だよ!」
ミミンさんに後片付けなんかさせられないと、張り切ったチルさんやコランさんが急いで食べて、喉に詰まらせて大変だったりする一幕もあったのだけど、私達は無事にエドヌに向けて帰還する事が出来た。
予定通りに進み、エドヌに着いたのはお昼頃だった。ギルドに行くのは、この空いたお腹を満たすお昼ご飯を食べてから、という話に纏まった。
やはり、甘味処と言って思い付くのは『すぱいす』……桐華のお家よね。味は良いのに値段が通うには最適、人気店の様な爆発的な人が居るわけじゃないけど、常連さんが多く居る素敵なお店。
「すいませーん、六人ですけど」
「はい、いらっしゃ……あら?カルミナちゃん、お疲れ様ね」
店の奥から桐華のお母さんが出て来て、労いの言葉と共に席へと案内された。私も常連と言って良いくらいには通っているお店だし、『いつもの』という品もあるけど今日は別のにする予定。外は寒かったし、温かい物がやっぱりいいわよね。
「えっと、今日はですね……」
「カルミナちゃん……まさか、お汁粉だったりする?」
……凄い。プロだからかしら?長くお客と接していると、何を注文するのか分かるようになったりするのかしら?魔法?特殊能力?
「いやねぇ、そんなものは無いわよ。ただであなた達は似てるわよねって。すぐに、持ってくるから温かいお茶で体を温めておいてね」
……なるほど。それはそれで……何か嬉しくなってくるわね。タロウと同じ事を考えてるというか、何というか。
「カルミナ、どういう事さね?」
「ミ、ミミンさん……カルミナさんがニコニコってし始めましたよ……?」
「「そんな事より、お団子追加で」」
注文したお汁粉は、温かくて、甘くて、疲れが吹き飛ぶくらい美味しかった。私達はホッとした一時を過ごして――既にお昼をかなり回っていた事に気付かなかった。
◇◇
「ミ、ミミンさん少し急ぎませんか?」
「大丈夫さね、どうせ私達が最後という訳でも無いよ!本来なら、まだ帰れて無い可能性もあったんだ。少しくらい遅れたからってどうともないさ」
Bランクのミミンさんは冒険者としての経験がある分、どっしりとしていられるが、Dランクの二人は少し焦りが出ているみたいだった。遅れてた時の心配でもしているのね。
「大丈夫よ、ミミンさんの言った通りよ。文句を言う奴が居たら、私がひっぱたいてあげるから任せておいて!」
「は、はい!」
「お任せします……カルミナさん」
二人の緊張をほぐしながら、私達はギルドへと帰って来た。
「おっ、遅かったな。昼には帰って来ると思ってたんだけど……」
「有言実行よ!!せいっ!!」
◇◇◇
分かんない……分かんないよ……。何で俺はカルミナに平手打ちされたんだ?
「痛い……」
「ごめんね、タロウ。でも私が言った事だから守らないと……」
そうか……うん。言い出した事は守らないとね。でも……痛い。冬にビンタは良くないって……。紅葉だ。俺の頬だけ秋が来たよ?
「と、とりあえずお帰り……カルミナ」
「うん、ただいまタロウ!」
何だか気持ちが……心が……解れていく。カルミナが無事だという事は信じていた。ただ、少し寂しかったのかもしれない。
……駄目だな、いつも一緒に居た弊害がこんな所に現れるとは。カルミナを待たせる事はあっても待つ事は今までほとんど無かった。連絡手段を今回は用意できたから良いけど、無かったら今以上に心細くなっていただろうな。
「どうしたの……タロウ?顔が暗いわよ?」
「いや、こういう時の待つ側になって思ったんだけどさ……こうして戻って来て顔を合わせるまでさ、心細かった」
こんな事を言うのは男らしさが欠片も無いかも知れないがな……。
「ふーん……タロウもようやくその気持ちが分かったのね!待たされる方はいつだって心配なのよ?特に、無茶をやらかす人だと特にねっ!」
「うっ……ごめんよ」
返す言葉もございませんな。俺は心のどこかで、カルミナが居なくなる事を恐れているんだな。
「だから……はい!」
カルミナが手を差し出してくる。
「これは?」
「どちらかが先に行っちゃわない様に、どちらも待たないで良いように、繋いでおきましょ」
この手を取れば物理的に繋がりはする。そしてきっと、心理的にも繋がれる……そんな気がした。
「あぁ、ずっとな」
俺はカルミナの手を握り返した――――ここが冒険者ギルドの中だという事を忘れて。
「二人とも……ちょっと……外に、出るでござる」
「「やばっ!?」」
俺とカルミナは仲良く、ギルドの外でベリー先生にぶん投げられた。痛いんだけど……。
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