第121話 タロウ、釣る
少し短めですが、よろしくお願いします!
(´ω`)
「カルミナは私と同じ槍だが……森の中に入ったらどうするんだい?振り回しづらいだろ?」
Bランク冒険者のミミンさんとDランクのチルさんと私は槍で、木々の多い森の中はたしかに不利だ。まったく振り回せない程では無いにしても、気を付けなければ足を掬われる可能性がある。
「私には魔法があるから……でも、槍も使っていくわよ。地形を把握出来れば無理なんて事は無いわ!」
「わ、私は足を引っ張らないように……」
チルさんはDランクらしいし、とりあえずは自分の身くらいは守れる事に期待しておきましょうか。いざ戦闘になれば、構ってられなくなることもあるのだし。
「「私達はコンビ技で翻弄する」」
「私もチルちゃんと同じでお邪魔にならない様に」
双子のサラとミラはCランクだし、そこそこ期待しても大丈夫かしら?コランさんはDランクだし、チルさんと組ませた方が安全かもしれないわね。
「敵の数は多いって話さね!早く飯でも食って準備するよっ」
「長い戦いになるかも知れないし、気を引き締めないとね!」
昼の休憩を取る前の話では、まずはAランク冒険者である万里さんのパーティーから森に入るらしい。その間に他の冒険者は別の場所に移動して、そこから森の中へと入っていく流れになっていた。
私達のパーティーもギルドから支給されたご飯を食べ終えたら移動する事になっている。
『分かったぞ~』
「ん?どうしたの、アトラス……タロウから?」
お昼ご飯の代わりにお菓子を食べていたアトラスにタロウから伝言があったらしい。タロウの方は大丈夫なのかしら?
『魔族が居る可能性があるらしいぞ~?』
「「「「「魔族!?」」」」」
「そう、分かったわ。こちらに問題は無いと伝えておいて」
双子でも無いのに皆の息が揃った。でも、よく考えれば魔物を使わないと攻めて来られないレベルである。
「カ、カルミナ!?どういう事だい!?魔族なんて話は聞いていないさね」
「まぁ、緊急クエストですし……魔族の有無よりも、魔物の数を危険視したのではないかしら?」
「で、ですが……魔族って」
「私達にはとても……」
「「危険」」
たぶん、万里さんのパーティーや高ランクで編成されたパーティーなら対処できるでしょうけど……このパーティーの様な編成なら危険かもしれないわね。どうせなら私の所に来て欲しい。
「せいぜい中位魔族でしょうし、とりあえず私達は目の前の敵に集中すれば良いのよ!」
言葉ではそんな事を良いながらも、シェリーフに魔族らしき者を見付けたら私の所に誘導するように頼んでおいた。このパーティーとはそこで離れる事になるけど、魔族が元凶なら先に倒さねばならないのだし。
「では、みんな行くさね!気を抜くんじゃないよ」
ミミンさんの一声で私達は移動を開始した。
◇◇
「『土の槍』!」
「やるねぇ!せらぁ!!」
森を燃やす訳にもいかず、フレイミアとサンドラはお休みで土ならそこら中にあるという理由からランディアの土魔法を使って敵を倒している。倒していると言っても初手だけで、残った魔物は槍で倒してる。
ミミンさんの槍技も中々に冴えており、敵をバンバン倒してるいた。
「「コンビ技 『双牙』」」
双子も短剣を振るって魔物を狩っている。調子は良さそうね。
「チルちゃん、来ますよ!」
「は、はい!」
Dランクで一番心配だった二人も、このくらいの魔物になら臆せず戦って倒していた。でも、一回の戦闘時間が長く体力面が心配になってくる。
「はぁっ!!……ふぅ、とりあえず倒しきったかしら?」
「確かに数が多いさね。こちらから行かなくても勝手に来てしまうさね。お前達、今の間に休んでおくさね!」
この数は……恐らく冒険者だけでは抜けられるわね。そこから街に行くとすれば大変な事になってしまう。早く魔族を倒さなくちゃ……。
「休憩はやめだ!来るさねっ!」
「ひぃ、ふぅ、みぃ……この数なら私に任せて休んでいていいわよ。身体強化!!」
魔族との戦いの前に体を暖めておかないと。雨で体温は奪われるし、視界の悪さにも慣れておかないと。地面に関してはアトラスのお陰で一時的に水気は飛んで、足を取られる事は無い。タロウとアトラスには感謝しなくっちゃ。
「は、早い……」
「「驚き」」
森を駆ける狼型の魔物を倒して、魔石を取って今度こそ休憩に入る。まだ全体からすると一部でしか無いと考えると……先はまだ長いわね。
◇◇◇
俺はアクエスの力を借りて、粘着力の高い水を作り出した。その水にダークラムの闇魔法で相手の動きを重くする魔法を付与する。海の中でも分かり易い黒色の水に変わったのは想定外だが、好都合だ。
後はアクエスがこの闇水を魔族へと絡ませればほぼ完了。アイガルの魔法で手元付近から魔族までを凍らせ、引き上げるだけだ。
「頼んだぞアクエス」
『任せてなの!』
『……私の出番は……終わり……ふふ』
アクエスが海に消え、数秒と経たずに手元に反応が帰って来た。
「アイガル、凍らてくれ!」
『分かったのだわ!』
手元あたりから黒色の部分を辿る感じで凍っていく。氷なのに冷たく無い……それに、海中に入っても真っ直ぐ黒色の水だけを固く凍らせていく。
『魔族の一部まで凍ったのだわ!』
『引き上げていいの!』
『……がんばれ……がんばれ……』
「ありがとう!よし……身体強化。いくぞぉぉ!ウォラアアアアア!!」
くそ、重い。下へ下へと泳いでやがるな。だが、負けねぇ!
「部分強化 腕!これでどおだぁぁぁぁぁぁぁ!!」
海から反対側に離れる様に走り、そのまま魔法の竿を腕力に物を言わせておもいっきり振り下ろした。
『出たの!』
『なんか、飛び出してきたのよ!?』
水飛沫をあげ、何者を陸へと釣り上げた。角、人間ではない肌の色、牙、水中に特化してそうな部分。魔族と断定してもいいだろう。
「くそがぁ、誰だぁ?俺様に変な魔法を付けたのは……まさか貴様か小僧?」
「そうだけど。お前は魔族でいいんだよな?」
なんか、細身だしあまり強そうには見えない。魔族は体を変形させる事もあるし……こいつするのか?
「あぁ、たしかに俺様は魔族だぁ。前回この国を攻めきれなかったマヌケが居るらしくてなぁ、そいつの尻拭いさ」
「そうか……残念ながら、そのマヌケが今日また増えるな。今回来た魔族は三人か?」
一人ならこいつを倒して完了だが、予想通りなら……。
「さぁな?仕方ねぇ……せっかく陸に上がったわけだしよ……」
魔族の体がどんどん膨れだした。足から胴体、それに腕まで。……やはり陸用と海用で姿が変わるのか。
「魔物共をけしかけたが役に立たねーし、この俺様が自らテメー等人間を刻んでやるよ」
「練習相手くらいにはなってくれよ?」
俺は妖刀の二本をアイテムボックスに片付け、銘剣『虹陽』を取り出した。魔力の伝達が早く切れ味も良い刀だ。
「しゃしゃしゃっ!この爪で切り刻んだ後にその首を晒してやる!死ねぇ!!」
最初に釣り上げた時よりも二回りくらい大きくなった魔族が爪を振りかぶりながら真っ直ぐに突っ込んで来る。
「思考追跡」
爪の振り下ろしを余裕をもって回避し、居合いの要領で斬りつける。
「ぎぃあいいいぃぃぃぃ!!」
「……っと、マジかよ」
斬りつけた脇腹辺りの傷が塞がっていく。しかも思ったより斬れてない。硬いのになんて回復力だ……。
「てめぇ……よくも!!遊びはここまでだ!」
「かといって、呪傷だとダメージがな……別のアプローチを考えるか」
属性魔力を付与して魔刀として斬ればなんとかなる……か?
「無視か無視か無視か無視か!?……殺す。お前は絶対に殺すぅぅぅぅぅぅぅぅ!」
「刀 エンチャント 氷 『凍傷刀』。はぁぁぁ!!」
魔族の攻撃を当たらない様に回避し、防ぎ、チャンスがあるとすかさず斬りつけた。魔族の腕に氷が作られる。
パリ……パリ……。斬りつける度に腕に足に胴に氷が作られ血が止まる代わりに細胞を固め、傷を直させない。これさえ分かればもう十分である。
「くそ、この氷がぁ!!」
「お前は足りない。俺はお前程度に負けていいレベルにはもういない」
勝った方が強い。それは確かだろうが、弱ければそもそも戦いにすらならない。
「くそが、くそがくそがくそがくそがぁぁ!!」
「……うるさい。一つベリー先生の教えを教えてあげよう。戦いならしっかり殺せ、戦場に出るなら殺される覚悟をしろ。お前は……何も足りてないな」
最後は身体強化を使い一思いに首を断ち切った。傷口は氷、血はでない。
「ふぅ……よし、後は魔物の残党狩りだな。今回は魔族の存在に早くから気付けて良かった」
今回来た魔族は前回、織田家を巻き込んだ奴より小物だったなと思いながら今も戦っているだろうマリカルさんの元に戻った。
◇◇
「戻りました~、やはり一度こちらに注目した魔物は帰りませんか……」
魔族を倒した事で帰って行くかと思ったが、残念な事にそう都合はよくなかったみたいだ。
「タロウ?まさか……もう倒してきたという訳じゃないよな?」
「俺……一応安倍家の門下生ですよ?あんな少し魔力の多い奴には負けませんよ!」
まぁ、実際は刀で倒したから安倍家は関係ないんだけど。
「そ、そうか……凄いんだな、安倍家って」
「それより、魔物は減りませんね……紅緋!まだ余裕だろ?」
『くくっ、造作もないわい!』
陸に上がってきた魔物を大剣で斬り、蹴り飛ばしながらもそう言ってのけた。ま、そのくらいはやってもらわないとね。
「という事でマリカルさん……指示をください」
「お、おう。いや、タロウは一回休憩をするといい……十二分な活躍はして貰ったからな。うんうん……面目がなぁ」
そうですか……なら、少しだけ休ませて貰おうかな。
「紅緋、そいつ等を片付けたらお菓子あるからなぁ~」
『なぬっ!?それを先に言わぬかっ!こんな奴等さっさと片付けるから待っておれ』
順調に海上の魔物の数を減らしている様に思うが、陸に上がってくる敵が増えて来た気がする。冒険者の数人も人員を割いたおかげで無理なく対処出来ているが、今度は海の方が……と、とにかくまだまだ魔物の数が多く時間はかかりそうである。
「雨、止まないなぁー。カルミナもそろそろ終わったかね?」
俺はカルミナの居るであろう森の方を見つめた――が、先程呆気なく倒したとの連絡がアトラスを通じて届いている。もちろん、ベリー先生は俺達より先に倒したみたいだけど。
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