第119話 タロウ、海部隊の心配をする
年の瀬感なんてないでござるよ!
でも、よろしくお願いします!
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ジパンヌへと初めて来る船でも見掛けた、巨大海蛇が離れた海上に数匹現れて魔法を放ってくる。それを港の警備隊の人達が防いでいた。
その中の一人だけ制服の色が違う男が居た。きっと立場が上の人間だろうと思い、声を掛ける為に近付くと怒鳴られた。
「ガキがこんな所にいるんじゃねぇ!!死にてーのかっ!!」
ひっ……厳つい見た目にデカイ声。絶対にヤバイ人だな。いや、そんな事より伝令だった。冒険者カードは確か……あった!
「冒険者です。魔法職十八名到着しまして既に戦闘へと入っています!えーっとなんだっけ……そうだ!我らは海上にいる魔物の討伐を行います。警備隊の方には陸に上がって来た魔物と、飛来する魔法の防御をお願いします。以上です!」
「来たかっ!よし分かった、そちらは冒険者に任せよう。私は警備隊長ミークだ。……お前達!!陸に上がって来た魔物の討伐に移行せよ!」
「「はっ!」」
ミーク隊長が部下に指示をだして動こうとした時に巨大海蛇から魔法が放たれた。
「お前達!まだ、防御魔法は解くんじゃないっ!!」
警備隊の一人が動いたのに釣られ、他の人も数人動き出してしまった為、敵の攻撃に対する守りが薄くなった。でも――
「水の盾!!」
巨大海蛇から雨のカーテンを貫くような水の弾丸が複数飛んで来るが、俺とアクエスの水の盾までは貫け無い。貫かせるつもりも無いけど。
「おぉ!!」
「スゲーぞ、この子供」
「頼もしいなっ!」
警備隊から称賛の声が上がったが、すぐにミーク隊長に怒鳴られていた。まぁ、そりゃあ……ね。
「感謝する。君の名前を聞いておこうか」
「タロウです。敵の数は多いそうなので気を付けてください。最優先はエドヌまで敵を行かせない事ですから、お互い頑張りましょう!では、失礼します」
俺は伝令の仕事を終わらせて、マリカルさんの所へと戻って来た。港は広いが、一定の距離感で警備隊が応戦しているみたいで、とりあえず一番広いこの辺りを俺達は守護すれば良さそうだ。
「マリカルさん、伝令に行って来ました。陸に来た敵と自衛はやってくれるそうですよ」
「分かった。こちらも既に二体倒している……が、減った気しないなぁ~。これは時間が掛かるかも」
確かに、二体倒したと言われても来た時と景色が変わっていないどころか、少し増えている様な気までしてくる。早朝だし冬だし雨だし……ローブを着ていても寒く感じて、長引くと人間側の体力が危ういかもしれない。
「マリカルさん、ここにいる冒険者で近接戦が出来るのは何人ですか?海の中を泳いで陸に来るんですよね?ここら辺は冒険者担当ですけど……」
「……むぅ」
嘘……だろ?分かるよ、みんな魔法職っていうのは分かる。でも、流石に……。
「冗談ですよ……ね?海ってすぐそこですよ!?」
「パーティーの魔法職だけ集めたんだから仕方ないでしょ!これは、私が悪いんじゃなくてギルド長が悪いんだから!」
遠くにいる敵は今の間にも魔法で倒してはいる。警備隊の中から誰か一人くらい連れてこられればいいけど……どこも手一杯だよなぁ。
「まぁ、ギルド長も少し悪いのかもしれませんね……では、マリカルさん、近接は僕とマリカルさんで頑張りましょう」
「え……?無理だよ?私、魔法を補助する為の杖しか持って無いし。タロウ、刀振ってるって言ってたもんね!頼んだよ!」
え!?Aランクパーティーなんじゃないのか!?なのに魔法特化?ベリー先生は魔法も出来……比較対象にしちゃ駄目か。
俺だって魔法を鍛えようと思って来たのに近接戦なら意味無いじゃないか……。
「マリカルさん、マリカルさんも身体強化とか使えば戦えますよね!?」
「何を言っているんだい?それは、魔力の少ない剣士の為の技術だろう?魔力の多い魔法職がやるのは無謀だよ?」
そうだったぁぁぁぁぁ!!くそぅ……ベリー先生のせいで感覚がズレていってる気がするな。
「はぁ……じゃあ、僕がやりますね。大きい敵があんだけ居るし、陸に上がるような魔物は少ないと考えるのは希望的過ぎるよなぁ~」
「まぁ、あのデカイのは任せなさい!」
正直、マリカルさんの魔力量は多い方だと思う。感覚的にはだけど。少し溢れている魔力とAランクパーティーにいるという条件を考えても多いのだろう。
ベリー先生ほど上手くは無いが、俺も他人に魔力を感じさせない様に押さえる技術は習得している。だから、俺の事を知らない人からみれば魔力が少なく思われるだろう。マリカルさんが俺を魔法で戦わせないのはそれが理由かもしれない。
「いくよ……敵を食い散らかせ『水ノ竜』!!」
「おぉ!流石、マリカルさんだ!私達も負けない様に行くよ!」
「守りは任せて!攻撃部隊もどんどん攻めちゃって!!」
マリカルさんの魔法で士気が高まった。海辺での水魔法は効率の面でとても便利だし、海に生きる海産物へのダメージも少ない。
他の人は雷や土属性……自分の得意な魔法を使っているのだろうが、もう少し考えて欲しいかな。
「でも、あの魔法なら一体じゃなく、複数体くらい出した方が早くすむんじゃないか?それに、わざわざ海の上にある首や頭に噛みつかなくても水中にある胴体に攻撃した方が……海の中に敵が潜んでいる可能性もあるが、それを気にしてもしょうがないと割りきって……もしや、何か俺の知らない海中での法則とかあったり?いや、でも…………」
「どうだいタロウ。私の魔法……って!なんか一人でブツブツ言ってる!?タロウ!ねぇ、タロウ君!?」
つまりは、俺がやるのが一番早いか……。っと、なんかマリカルさんに呼ばれているぞ?
「何ですか、マリカルさん?」
「いや、何かブツブツと言っているみたいだったから……。それで、どうだった!?私の魔法は?」
やべ……声に出てたのか。マリカルさんの魔法か。環境に優しいって事以外はカルミナの魔法に霞んでしまうからな……どう答えようか。ここは、魔法に詳しくない設定で行った方が俺の気持ち的に楽になりそうだ。知らないからこそ疑問として突っ込める。
「あの、なんでわざわざ海上の頭や首を狙ってるんでしょうか?」
海の中だと威力が出ない?それとも狙いが付けられない?どんな理由があるんだろうか。
「……えっ?」
「えっ!?」
あ、あれ?そんなに難しい言い回しも内容もしていなかったと思うんだけど?とりあえず答えが出るまで待ってみようか。
「…………」
「……………………Aランクパーティー?」
本当にAランクパーティーなのだろうか?ポロっと言ってしまった。
「わ、私はBランク。Aランクパーティーに居るけど……」
「あぁ……そうなんですか」
俺もBランクだよっ!!って事はここにいる冒険者ってBランク以下って事だよな!?ちょ……厳しくない!?
たしかに、近接戦闘の方に力を入れている国とはいえ……安倍家までとは言わないけど、魔法だって使える人はそこそこ居るし。えぇー……一気に不安になって来たぞ?
「僕もBランクなんですけど……あ、これ冒険者カードです」
「え!?あっ……本当だ。……えっ!?タロウ、あんたBランクなの!?」
本当に大丈夫かよ、海部隊。
◇◇◇
私は魔法が得意。……正確には精霊と契約する事で得意となった。なのに、この前のタロウとの模擬戦ではあと少しの所で勝てなかった。ちょっとどころじゃなく悔しい。
だけど、陸、海、空で別れる時に、魔法が求められそうな海と空をあえて捨てて、この陸部隊へとやって来た。魔法ならあの時に全部見せたわけじゃないけど、最後の最後で基本的な身体能力がタロウと離れていると思わされたからだ。
「よし!各パーティー、荷物は受け取ったな。それでは殲滅へ向かう!行くぞ!!」
陸部隊は人数が多く、四人組、五人組でパーティーを組む方針の様だけど、私はアトラスと二人きり。誘われたりしたけど、何だか気持ち悪い笑顔だったから全て断ったわ。
「アトラス、背中から落ちない様に掴まってるのよ?」
『分かった~』
背中にアトラスを背負って行く為、荷物は槍以外をアイテムボックスにしまい、歩き出した。私は列の最後尾をついて行くが……。
「おいおい、お嬢ちゃんよぉ~俺らのパーティーなら今でも入れてやるぜ?痩せ我慢なんかしてねーで、来いよぉ~」
しつこいわね!気持ち悪いし、清潔感……は、冒険者に求めても仕方ないけど、それでも不潔ね。火魔法で燃やし尽くそうかしら?
「大丈夫です。お気遣い無く……私を誘うという事はAランクの方ですか?Bランクならまだしも……それ以下って事は無いですよね?」
「んだと?オメーみてーな子供に声を掛けてやってるんだ!黙って従えや」
はぁ……なんで冒険者ってこうなのかしら?特にランクが中間くらいの人間なのよね、こいつもきっとCかD。何だったかしら?タロウが言ってたわね……冒険者に絡まれるのはテン……テン……そうそう!『テンプラ』!確か、相手から手を出してきたなら仕返して良いやつよね。
「さっさと自分のパーティーに戻りなさい。私が魔法を発動させる準備に入ってる事にも気付かないレベルの冒険者さん」
「テメェ!馬鹿にしてんのかっ!?」
「はい、そこまでだ。これから討伐に向かうというのに……何を争って居るんだ?」
この人は……たしか、陸部隊のリーダーの何とかの何とか。何だったかしら?剣技に定評があって、魔剣を使わなくてもAランク相当とか言われてたかしら?……まぁ、名前なんて気にしなくて良いわよね。
「万里さん、聞いてくだせぇ!この女が」
「あぁ、カルミナさんか。それで、どうした?」
「し、知ってるんですか?……俺が、パーティーに誘ってやったんですが、コイツ舐めた態度を取りやがってですね!」
「はぁ……。カルミナさん、うちの冒険者がすまなかった」
「まぁ、今は私の身体強化無しの槍では貴方に少しだけ届かない様な気がしますので……その貴方が謝罪するなら気にしない事にします」
実力を見たこと無いから分からないけど、Aランクなのだし……きっとまだ無理かしらね。
「万里さん!?どうして、謝罪なんかをこんなガキに!?」
「アホか貴様は……。ランクに限らず横暴な態度を取らなければ良いだけの話だろうが!よりにもよって……カルミナさんはBランクだし、ベリーの弟子だ。ここまで言えば分かるだろ?背中に何か背負っているのに重心のブレ無い歩き、槍、ローブの価値、手の傷……もう少し観察力を鍛えろ。さ、戻れ戻れ」
絡んで来た男の方は少し青ざめていたわね。ベリー先生の名前が出た辺りから。
「これは提案なんだが……カルミナさん、ソロでも構わないが陸部隊にも女だけのパーティーがある。そこに入らないか?」
「ランクは?」
「Bランク一人、Cが二人、Dが二人だ。Bランクの子は強いけど、流石に数で攻められたら他の子が危ないと思う」
ならDの子は最初から……なんて言える余裕なんて無いって話よね、今回は。
「アトラス、どう思う?」
『ちょっと待ってて~……。分かったぞ~『カルミナの好きにすれば良い。けど、パーティーでの戦い方を学ぶチャンス』って言ってるぞ~』
言ってる……?まさか、タロウ!? もしやアトラスを私に預けたのって連絡を取るために?ったく、もう心配性なんだからぁ~。
「カルミナさん、その子は……」
「とりあえず、そのパーティーに入ってもいいけど連携については何も知らない事は伝えてください。基本的にソロかペアなので」
その女の子達のパーティーが居たのは全体の中盤くらいの位置で、近くを男だけのパーティーがいくつか歩いていたが、私を案内して来たこの男が来た途端にすこし離れて行った。
「おや、万里さんじゃないか!私らのパーティーに入ってくれるのかい?あんたみたいなのなら大歓迎だよ!」
「ミミン、入るのは俺じゃなくこの子だ。名前は……知ってるかな?カルミナさん。基本的にソロかペアらしくて連携は分からないそうだが、強さは保証する」
「た、確かギルドで桐華ちゃんと話しているのを、見掛けた事があります」
「私もありますね」
この二人……たしかに、ギルドに行った時に見た事があるような無いような?
「「歓迎する」」
「双子……貴女達もギルドでお見掛けした事が有るような無いような?」
女冒険者は魔法使いの方が割合として多い。だから、基本的にはフード付きローブを着ているし、最初からしっかり観察する訳でも無いからうろ覚えなのよね……。
「自己紹介しておくよ!私はミミン。得物はアンタと同じく槍だ。よろしく頼むよ!この双子はCランクのサラとミラ。どっちがどっちかは私も分からん!そして、刀の方がコラン、槍の方がチルだ。Dランクさね」
「紹介助かるわ。私はカルミナ……槍も魔法も使うわ」
お互い簡単な自己紹介が終わると、万里さんは先頭へと戻っていった。このパーティーは元々は別のパーティー同士らしいが、男の人パーティーは怖いという理由で組んだらしい。
日帰りで戻れるならパーティーに男が居ても構わないかも知れないけど、今回はいつまで掛かるか分からないし、その点では女の子だけというのはありがたいかしら。
それから街を出てどんどん進み、森へと入るか入らないかで揉めたせいでお昼の時間が少し遅くなってしまった。
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