第118話 タロウ、荷物持ちと伝令係
お待たせしました!
よろしくお願いします!(/o\)
ギルドに到着すると、ギルド前は冒険者が沢山いて皆それぞれ傘を持っていた。
「邪魔だと思ったから持ってこなかったけど、一本くらいは持ってくるべきだったな」
「そうね……まぁ、魔力もそこまで使わないからいいのだけどね」
しばらく待っていると、ギルドの中からギルド長である坂本颯馬が出て来た。
「待たせたな!皆、召集に応じてくれて助かる。今回の緊急クエストは難易度が高い。かなり危険だと認識しておいてくれ!」
前回、皇帝種が出た時にはそんな事言っていなかった筈だが……。今回は切羽詰まってる感もあるし、本当に危険なのかもしれないな。
「皆も知っていると思うが、近年、魔族の動きが活発になっている。それに伴って魔物の量、強さ共に格段に上がっている」
各地で下級魔族、中級魔族が暴れているという話は知っている。上級魔族と魔王が現れたという話は、不思議と聞いていないが。中級程度なら、余程の田舎、もしくは人が少ない所では無い限り対処は可能だろう。
「今回は、山から海からそして、空からも魔物がエドヌに向かっているのが確認された。空からの敵を既に討伐しに向かわせているが、早めに応援も送りたい!今回も、街の事は安倍家、九重家に任せることになっているから……とりあえずお前達は敵を殺してこい!!いいな!!」
「「「おう!!」」」
また、前回と同じようにランク毎に別れるのかと思いきや今回は違うみたいだ。
「まず、陸部隊だが、これはとにかく数が多い!体力に自信がある者は右に集まれ!次に、海部隊だが……遠距離まで飛ばせる魔法に自信のある者に戦ってもらう!真ん中に集まれ!最後に、空部隊だが……弓を扱う者や残った者はとりあえず左に行け!」
陸海空……どこに行こうか。ぶっちゃけ、どこでもこなせる自信はある。空を飛ぶ魔物だけは厄介そうであるが。
「カルミナ、ベリー先生、どうしますか?」
「私は……そうね、陸かしら?」
「拙者はどこでも大丈夫でござるよ」
カルミナが陸部隊?……正直に言えば意外だな。海か空で魔法を使って殲滅するモノだと思っていたしな。森の中に入るとしたら、視界も悪いし広域魔法は使いづらいだろうに。
「あら、そんなに意外かしら?ベリー先生、これも修行の一環ですよね?」
「そうでござるな!実戦は良い経験になるでござるよ!」
「……なるほど、槍の修行をする訳か。そうだな……だったら俺は」
海か空か。海の魔物は、港から陸へと上がってくる可能性もあるよな。空の魔物は地面に落とす必要がある……うーん。
「修行と言っても、街を守るのが最優先でござる!タロウ君は海に行くでござるよ。空は私に任せるでござる!」
そうか、そうだよな。優先順位は街の安全だ……なら、アクエスの力やアイガルの力を借りれる俺が海に行くべきだな。よし!
「召喚 ピヨリ アトラス」
『ッピ!』
『雨が降ってるぞー?』
「カルミナ、アトラスを連れて行ってくれ。土魔法なら扱えるし、力もあるから、役に立ってくれる筈。ベリー先生はピヨリをお願いします。言葉は理解しますので色々と教えてあげてください」
「分かったわ!よろしくねアトラス」
『お菓子持ってるのかー?』
「ピヨリ殿、空飛ぶ敵を殲滅するでござるよ!」
『ッピ!』
雨で土砂崩れなんかが起きててもアトラスが居れば平気だろうし、ピヨリもベリー先生や先生の使い魔に戦いを教えて貰えばより強くなれるだろう。
「カルミナ、これアトラスのお菓子。ベリー先生にはピヨリの果物を渡しておきますね。では、次に会う時は戦いの後で」
「えぇ、タロウ!遠慮なんてするんじゃないわよ?」
「二人共、先輩冒険者に舐められても気にしないで良いでござるよ!結果が全てでござるからな!」
俺は真ん中、カルミナは右へ、ベリー先生は左へと並んだ。他の冒険者も別れたが、敵の数が多いという陸部隊に人数が少し多くなっている。体力自慢って感じの奴らが多い中で、カルミナは少し浮いて見えるな。アトラスをおんぶしてのがより……ね。
空部隊が一番少ないが、ベリー先生が加わっている事で士気は高い。気持ちは分からなくも無い。ベリー先生の手が回らない程敵が多い場合は少し不安だけどな。
そして、俺がいる海部隊は俺を含めてローブばかりだ。女性の割合が多いが、男性もいる。エドヌの価値観的には魔法より武術に力を入れている為、魔法を使う冒険者がどのくらいの実力か、把握が難しい。
「よしっ!じゃあ、そのグループの中でリーダーを決めろ!陸部隊は人数が多いから五、六人でパーティーを組め、一人で良いヤツはそれでも良いが働けよっ!!決まったら食料が入った荷物を用意してある、取りに来い」
ギルド長の一声で、各部隊は話し合いに入った。とは言っても、空部隊は既に決まっているみたいだけど。
陸部隊はパーティーを組み始め、その中でも一人の総大将を決める感じだ。カルミナとアトラスは二人で動くのかな?誰かとパーティー組んだ方が危険も減ると思うんだが……。
「君、ねぇ、そこの君ってば!」
「え、あっ……はい!すいません」
他の事考えてたら自分の所が疎かになってしまっていた。気を付けないと。
「それで、代表を誰にするかって話なんだけど!」
「あぁ……それなら、一番つよ……頼りになる人が良いんじゃないですか?」
本当は強くて頼りになる人が一番だけど、とりあえずは判断力があって経験豊富な人が良いと思う。この海部隊も冒険者ランクがバラバラだろうし、そこを纏められる人が適任だろう。
「そうね。私達、海部隊は二十人にも届いて無いでしょ?私達だけで港を守りきる訳じゃないけど、皆で力を合わせないといけないものね!」
「……って、そうなるとやっぱり姉さんしかいないわよね!」
「意義なーし!」
「私もそれで構いません」
ほぼ満場一致?そんな魔法使いって誰か居たかな……?この一年二年でたまには冒険者ギルドに立ち寄ったけど、実力者はどこかに駆り出される事が多い為、意外と会うことは少ない。
だから、ここに居る人も見たことある気はするが……名前は知らないって人が大半だ。逆も然り……か、どうかは分からないがお互いの実力は知らないだろう。剣武祭に出てそうでも無いしな。
「やれやれ、私ですか」
「姉さん、Aランクパーティー何ですから当然ですよ!」
「今日、偶々この街に居てくれて助かりました!」
あれが、姉……さん?
姉さんと言うくらいだから、もっと背の高くて綺麗なお姉さまを想像していたぞ!?俺の方が背も高いし、大人びてみえるんじゃないか?
「まぁ、仕方ありませんね。私がリーダーとして指揮を執りましょう。この街の魔法使いの事は調べてるつもりなのである程度は知っていますが……そこの君は知らない子ですね」
何だろう……しっかりしてる人なんだろうが、身長のせいで“背伸びしている子供”にしか見えない。俺の勉強不足だが、Aランクパーティーだというこの人を知らない。
「あ、僕はタロウって言います。普段はあまり冒険者の仕事をしていないので知らなくても当然かと……」
「そうですか。私はマリカル。先に言っておきますが二十二歳です」
嘘っ!?俺より十歳も歳上だと!?そんな馬鹿なっ!
「それよりも君は魔法で雨避けをしているのですね……これから戦闘だと言うのに馬鹿なのですか?」
あー……ド正論。言い返せないし、黙秘しとこう。伏し目がちで。
「……まぁ、良いです。子供とは言え何かの役には立つでしょう。無理はしなくていいので指示した事をこなしてください」
「あ、はい!」
それからマリカルさんが一枚の紙とペンを回して、名前と得意魔法を一人一人に書かせていった。当然、俺も書くものだと思って待っていたが、またしても子供扱いされてしまった。『ローブはとても良い物だけど、得意なのはどうせその雨避けに使っている風魔法でしょ?』との事だ。
「海の魔物は陸に上がるタイプと海上から遠距離で魔法を放つタイプがいるのは知っていますね?」
「へぇ~……あっ、いえ、知ってます!」
基本的に山だもん!仕方ないじゃないですか!調べてない俺が悪いですけど!すいませんっ!
「こほん……。ですから陸に上がって来た魔物は冒険者と別の組織の者達に任せ、私達は遠くから攻撃してくる魔物の討伐に尽力します」
「「「はい!!」」」
小さいけど、流石は大人。そしてリーダーに推薦させるだけある。短時間で効率よく皆を纏めて理解して作戦まで立案するとは……。
「あのー……敵の攻撃は各自で防げば良いんですかね?あと、攻撃も……」
「君……タロウと言ったね。まさか、隊での戦闘は初めてか?」
基本的にソロで、あとはカルミナとのペアくらいしか経験は無い。この人数での戦い方は申し訳無いですけど知りませんね。
「はぁ……やれやれ。人手不足とはいえ素人とは……。良いかい?集団戦闘の基礎は、個人で動かない事だ。一人一人に役割があって、それをやりきる事で勝利へと繋がるんだよ。簡単に言えば守る人と攻める人。交代に数人残す。理解出来たかな?」
「分かりました。交代のタイミングが難しそうですね……まぁ、それはリーダーにお任せですね」
たぶん、攻める人が先に魔力切れを起こすだろう。その前に削り切れれば問題無いが、今回は緊急クエストで難易度も高いらしいから油断は出来ない。
俺も俺に与えられた役割をしっかりやりきろう。何事も経験だな。
「では、荷物を受け取りに行ってくる。タロウ、ついておいで。君はとりあえず荷物持ちだ」
……納得はいかないけどリーダーの指示に従おう。
「海部隊だが、荷物を受け取りに来た。人数は全員で十八名だ」
「かしこまりました。えっと、十八名だと……これとこのカバンをお持ちください。マジックバックでは無いので申し訳ありませんがよろしくお願いします」
少し大きめなカバンを二つ用意され、荷物の受け渡しを担当している女の人が持ち上げるのを諦めるくらいだから、そこそこ重たいのだろう。
せっかくだし、荷物は背負って行くことにしよう。今回のクエストでは、カルミナやベリー先生ほど体を動かす事も無さそうだからな。
「タロウ……君は意外と力があるのだな。少し驚いた」
「まぁ、普段は刀を振ってますから」
自分でも言って気付いた。なんで魔法職を集めた海部隊に居るんだろ。別に陸部隊や空部隊でも良かったと今更ながら思い始めた。
ほら、マリカルさんも微妙な顔をしているし。
俺達が出発したのは二番目だ。一番目は空部隊で、少し前に出発をしていた。
俺はカルミナに軽く目配せをして、海部隊の最後尾を歩く。魔物が活性化して暴れているという海に向けて雨の中を進み始めた。
◇◇◇
港へと向かう最中、ピヨリとアトラスへ定期的に連絡をする様に伝えておいた。こちらが大丈夫そうなら駆け付けられるように。
急いで家を飛び出した為、安倍家に寄って緋鬼王や紅緋を連れて来るのを忘れていた。呼び出すことは一応可能だけど、魔力の消費がえげつない為、今回は街に残って防衛でもして貰おう。
近距離の敵であれば式札の使い道も色々とあるが、遠距離の敵だと限られてしまうし、今回は精霊魔法を中心にやっていこうと考えている。
「タロウ、荷物は私のアイテムボックスにしまっても良いのだぞ?」
「いえ、これくらいは平気ですよ」
マリカルさんとは港への道すがら、色々と話をしていた。主にマリカルさんの今までの武勇伝を聞かされているだけ……だがな。
「姉さん、見えてきましたよっ!既に戦った形跡もあるみたいです!」
ギルドを出発して一時間は歩いただろうか、港が見えてきた。戦いの形跡とは倒れてる木や建物の木材が散らばっているからだろう。敵の魔法でやられたのが見て取れる。
「お前ら、戦闘の準備をしろ!今から名前を呼んだ者が攻撃隊、その次に名前を呼ぶ者は守備隊だ!走りながら呼ぶからとりあえず港へ走り出せ!」
それから、攻撃隊九人と守備隊七人が決まった。各隊一名ずつは交代要員である為、実際は八人と六人だ。リーダーが含まれてないのは何となく理解出来る。指揮をしながら、どっちにも参加する為だろう。
分からないのは俺の名前が呼ばれていない事だ。……まさか、子供だから戦いに参加させないつもりでは無いよな?
「タロウ、安心しろ!お前にも役割はある」
「おぉ!な、何ですか!?」
良かった、ちゃんとあるらしい。無かったら勝手に暴れさせて貰う所だった。
「先に来てるここの警備隊の役職者に私達の役割を伝えて来い!!」
「伝令、行って参りますっ!!」
ちくしょおおおおおおおお!!思ってたのと違うぞぉ!?でも、リーダーの指示だから従わないといけないぃぃぃ!!
俺、この役割が終わったら勝手に守って勝手に攻撃するんだぁ……。
誤字脱字がありましたら報告お願いします!
(´ω`)




