第114話 タロウ、量と質と味と
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一通り遊び尽くした海辺は夕暮れに染まり、橙色の光が反射して眩しくもあり綺麗でもあった。
「はぁ~疲れたけど、楽しかったな」
「そうね!暑さを忘れて遊べたわね、また来ましょうよ」
たしかに、また機会があれば来て良いかもしれない。良いリフレッシュになるし……でも、また来年かな?
「タロウくん!あのウォータースライダー?というのはどうするでござるか?」
どうしようか?残しててもいいが……誰かが見付けて遊ぶまでは構わないけど、怪我されたら困るしな。そうじゃなくても、騒ぎになっても大変だ。
「そっちは壊しますか……。砂の作品は残しておくとしても、ウォータースライダーは流石にですしね」
「えぇー?勿体無く無いかしら?」
「そうですよ~せっかくタロウさんが作ったのに」
「凄いのでして~?」
とは、言ってもあれは水の魔法を垂れ流しレベルで使えないと遊べないからな……。次に来たときにまた作ればいいだろう。
「力作だが、また次に来たとき作るよ……。だからこの1号は取り壊します」
凄く残念そうにしてくれるのは嬉しいけどね。工程は分かったし、次はもっと凄いのを作ってあげよう。
俺達は後片付けをして、着替えてから暗くなる前に帰ることにした。
◇◇◇
楽しかった海での休暇も終わり、俺とカルミナは安部家で借りている部屋で休んでいた。そろそろ話しておかないとな。
「カルミナ、ちょっと話があるんだけど……」
「ん?どうしたの?改まって」
話す前に、俺はアクエスを喚び、カルミナに契約している精霊達も喚び寄せて貰った。ルミナスが離れる事を話すから一応は伝えておかないとと思っての判断だ。
「どこから話そうかな……」
「どんな話なの?」
『タロウ、私から話しましょう』
『ルミナス様からですか?』
風の精霊シェリーフがルミナスに問いかけて、ルミナスな話始めた。
修行で手がいっぱいな俺達の為に他の精霊を呼びに行くこと。カルミナの修行の為にルミナスとピヨリの二名で行くこと。半年くらいで帰ってくる事などだ。
ルミナスからの話と言うこともあり、精霊達に反対の意見は無い。むしろ、居ないからこそ頑張る……という勢いだ。
「説明ありがとうルミナス。……と、いう事だから。伝えたかったのはそれだけ」
「分かったわ。ルミナスが半年も居なくなるってのは不思議な感覚だけど、私達の為だもんね!ありがとうルミナス!」
『カルミナ……私の監視が無いからといって、あまり破廉恥な行いを取らないように』
「わ、わ、分かってるわよ!」
これは分かる。俺にも分かってない事だけは分かる。ルミナスがジト目になってカルミナを見つめて、そのカルミナの慌て具合が普通じゃないからな。
「それで、さっそくだけど明日から出発して貰う予定だ。雷、氷、闇の精霊の事は頼んだ」
「私達も修行、頑張らないとね!」
『えぇ、お任せを』
『行ってらっしゃいませ、ルミナス様』
翌朝、ピヨリのご飯を持たせてルミナスとピヨリはエドヌを飛び立った。二人で交代しながら飛ぶ予定らしく、時短に時短を重ねるみたいだ。
――――それから半年後の年が明けて、修行開始から二年が経ち……三年目に入ってしばらく経った今もルミナス達は帰って来ていなかった。
◇◇◇
「あー寒い。けど、夏よりはだいぶマシだな……夏を経験したからこそ分かる」
「そうね。山登り中の今も話せるくらいにはなんとか……ね」
「わ、私も体力は……ついてきました……よ」
「うんうん、皆ペースも上がって来たでござるな!」
確かに山に登った後の修行の時間が伸びている気がしている。日が短い冬の間の練習時間が確保出来たという事だ。
山登りで体を動かして温めた後は、少しの休憩を挟んで最初は体術からだ。
「っ……はっ!」
「蹴りが見え見えでござる!視線を逸らさないでござるよ!」
体術も手加減したベリー先生とはやりあえるくらいになった。攻撃の型受け止めててからの反撃の型、色んな型も覚えて扱える様になって来たと思う。
まだまだ、細かい所は甘いらしいが……それはこれから要練習だな。
「カハ……グッ!?ぐえっ……」
「ふぅ……たまには力技もするでござるよ。わっはっはーでござる!」
くそっ……腕を捕まれて返そうとしたらおもいっきり投げ飛ばされた。力技にも程があると思うんだが……。
「いててて……今のは卑怯じゃないですか?」
「上手く着地して投げ返せば良いのでござるよ!つまり、出来ないタロウ君が悪いのでござる~」
卑怯だ。卑怯なのは言い方だけど、でも正論過ぎて反論が出来ないな。
「カルミナ、交代しよう」
「分かったわ!ベリー先生、行きますよ!」
カルミナは俺よりも体術が巧い。素の力なら当然俺の方があるけど、技ならカルミナの方が上だ。
だからベリー先生とカルミナの練習は攻防の応酬がはげしく、見る分にはとても楽しそうである。
「はっ!」
「鋭い蹴りでござるな。その調子でござるよ」
だがしかし、体格的な問題でどうしても少しだけカルミナが不利みたいだ。まぁ……ベリー先生が強いのは当然だとして。
「そのうちこの体術にも身体強化が加わるんだよなぁ~」
「みたいですね。まずは、カルミナさんくらい体術が出来る様にならないとですが……」
身体強化も体術もそこそこ扱える様になってきたから訓練内容がレベルアップするらしい。その話を聞いた時は成長してる……と、思ったがよく考えればめちゃくちゃ危険が付きまとう事になる。
「危険だからなぁ……ほんと。とりあえず受け流しとか受け身とか、その辺は今のうちに徹底してやっておこう」
「ですね。カルミナさんのさっきの蹴りを受けたら骨が折れそうですし……」
カルミナの次に桃さんがベリー先生と訓練して、次の武器を使っての練習の前に休憩になった。
「ルミナスとピヨリは大丈夫なの?タロウ」
「繋がりが消えたわじゃないから生きているとは思うんだけど……たまに魔力が減るときもあるし。でも、半年は経ったし少し心配かな~」
ルミナスの事だから、半年と言いつつも半年掛からずに帰ってくると勝手に思っていた。精霊達を先にこちらへと向かわせているのかいないのかも分からないし、下手にルミナスとピヨリだけを召喚で喚びだす事も憚られた。
「待つしかないってもどかしいな……」
「繋がりがあるなら大丈夫よ!ルミナスと修行を頑張る約束もしたし、さ!やりましょう!」
カルミナの明るさに押される様にその日も修行に明け暮れた。待ち遠しいというか、心配な気持ちが心を支配しているが……信じて待つしかない。ルミナスは弱い訳じゃないからそこは心配していないけどな。
――約束の半年という期限からさらに1ヶ月。突然ルミナス達が帰還した。突然の事に驚いたが……どちらかというと安心感の方が勝っていて、とりあえずは両手で包んで頬擦りしておいた。
案外、寂しかったのは俺の方かもしれないな。
◇◇◇
「とりあえず、お帰りルミナス。ピヨリもありがとうな」
『タロウ、元気な様で何よりです』
『大変だったッピ!』
何やら空が荒れたり何やかんや季候の影響で飛べなかったりした日があったらしい。
『ですが、ちゃんと皆を連れて参りました。ここから先はタロウ、カルミナにまかせますよ。サンドラ、アイガル、ダークレム』
『おぉ!ルミナス様、この人間達か?可愛らしい子じゃないか!ボクと契約したいのはどっちだ!?』
『ふーん、ルミナス様に言われたから来てみたけど……まだ子供じゃないの』
『うぅ……早く暗い所に行きたい……』
雷属性のサンドラからはとても元気な印象を受けた。パチパチとたまに音が聞こえるけど……ボーイッシュな感じで子供っぽい明るさがある。髪も瞳も金色で少し眩しい。
氷属性のアイガルは……何と言うか、冷たい。視線も言葉も姿も見ていると寒くなってくる。今の季節のせいか、よりいっそう寒く感じる。だが、肌は透き通る様な白さで髪も白い。とりあえず俺が契約する予定の上位精霊だ。
闇属性のダークレムは……真っ黒な髪に真っ黒な瞳。衣装も真っ黒で、どこか儚げな雰囲気がある。少し暗めな子みたいだが、闇の精霊はこういうタイプが多いらしいし、俺の刀『吸魔血』に宿る中位精霊のクロマが珍しいだけだろう。
「ありがとう、ルミナス。……初めまして、僕がタロウで隣に居るのがカルミナです」
「私達二人は精霊も視えるし、魔力もそこそこ多いわ。そして……倒さないといけない敵がいる。どうか力を貸してください」
『ルミナス様からも話は聞いていたよ!』
『そう、あなたがルミナス様を……その件は感謝しておくわ』
『……この辺に闇の精霊の気配がある……気がする。不思議』
ダークレムが言っているのは俺の妖刀に宿るハグとクロマの事だろう。後で紹介しよう。
「俺達は皆さんを除く、他の五属性の上位精霊と契約しています。まぁ、俺がアクエス1体で他の四体はカルミナなんですけど。俺が契約したいのはアイガルさんです。氷の力を使わせて頂きたい」
「私は、サンドラとダークレムよ。でも、相性や私とタロウの得意な魔法もあるから強制ではないわ。力を貸したいと思った方に貸して欲しいと思ってるの。……私達は二人で一人、魔王は二人で倒すと決めているからね。」
『ん~そうだな……。私はこっちの女の子かな!力を貸したく思えるしね!試練をだすならこの子にするよ!』
『そう、貴方の方ね。確かに氷魔法の力を感じるわね……でも、私の求める基準に達して無いのなら力は貸さないわよ』
『闇の精霊と契約しているのはどっち……?そっちにする。たぶん……楽させてくれる……はず』
ほっ……とりあえず契約したくないという事は無くて良かった。闇の精霊ダークレムも流れで俺と契約することになりそうだが、魔力量の関係からしても、俺が三体くらいは契約した方がカルミナも残りの五体と協力しやすいだろう。
「闇の精霊と契約しているのは俺だ。まぁ、刀に宿っていたのを引き取ったんだけどな。試験の基準に達する様に頑張るよ、試験は明日辺りにするとして……今日は休んでくれ、長旅で疲れてるだろうしね」
「そうね。とりあえず契約うんぬんは置いといて休んでね。他の精霊達も喚ぶから話したい事があれば話すといいわよ!」
『闇の精霊……見たい。皆あまり出ない……から、会わない』
サンドラとアイガルはカルミナについて行き、他の精霊達と会うみたいだが、ダークレムは同属の精霊に会いたいみたいだ。
「分かった。ちょっと待ってな……」
俺はアイテムボックスを探して、妖刀である『吸魔血』『呪傷』を取り出して刀を引き抜いた。……1度抜くと満足しないと鞘に戻らないからな、割と久しぶりな気がする。
『おっ!ダークレム様じゃねーか!』
『ハグハグハグハグ……ほんと……ハグハグハグハグ』
『……懐かしい』
「クロマとハグはやっぱり知り合いなんだな。中位精霊だし当然だと思ってたけど」
中位精霊は上位精霊が作り出したらしいし、当然だよな。いつぶりの再開かは分からないが、人間の世代が何代も変わるくらいの時間は経ってるかもしれないな。
『それでぇ!何でダークレム様がここにいるんだぁ!?』
『ハグハグ……何で?……ハグハグ』
『あなた達に聞く……この人はどう?』
おっ、俺の事か。同属からみた印象を参考にでもするのかな?
『タロウかぁ?中々に面白れーぜ?魔力も潤沢だしよぉ!』
『ハグハグハグハグ……あと、美味しく……ハグハグハグハグ』
『なるほど……。これは……中々……楽できそう……かも』
「でも、力を貸して貰いたいから……楽とは言えないかもよ?」
戦闘以外にも力が必要になれば貸して欲しいしな。闇魔法は対人で強かったりするが、認識阻害や非戦闘行為でも役に立つからな。
『とりあえず……魔力の量と質を……見る。多ければ多いほど……私自身の負担は減る……』
「そういう事なら……どうぞ」
俺は掌をダークレムに向け、ダークレムはその内の人差し指を……口に含みだした。
「ちょっ!?」
『……ムグムグ……たしかに……美味しい。……質も量も普通の人間とは違う……ムグムグ……』
思ってたのと違う!もっと、手を合わせて的なのだと思ってたけど……びっくりしたぁ~。
『どうだぁ?タロウの魔力はスゲーだろ?』
『ハグハグ……ダークレム様も契約する……ハグハグ』
『……決めました。合格です……契約します……』
「え!?まだ、何もしてませんよ?いいんですか!?」
ダークレムは静かに頷いて、俺のおでこに契約として口付けをした。右手の甲には水の線と、新しく闇の線が浮かび上がった。
『あなたは闇の力に取り込まれない。決め手はそこ……』
『あぁ~確かにな!タロウはそこんとこ全然大丈夫だよな!』
『ハグハグ……普通は力に溺れるか、制御出来ない……ハグハグ』
「なるほど……一応ちゃんとした理由はあったのね。なんか、量と味で決めつけられた気がしてたけど」
闇属性の精霊三体が声を揃えて、『それもある』……と言ったが、それしか無い様な気もしてきたぞ……。
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