第112話 タロウ、海への準備
お待たせしました!
よろしくお願いします!
剣武祭が終わり、次なる目標も見付けてから2ヶ月程……最近は気温も少しずつ上がり、暑さのせいで修行のキツさが増したように感じる。
「はぁ……うぇ……はぁ……はぁ……」
「タ、タロウ……の、飲み物……を」
キツい所か、今にも吐きそうである。まだ、本格的な修行が始まる前の山登りを終えたばかりだというのに……。
「桃も含めて……まぁ、冬から走り始めたとはいえ、夏はまた別物でござるからなぁ~。少しだけ休憩を取るでござるよ!」
「お姉ちゃん……やっぱり……凄いね……はぁ……はぁ……」
冬は体温を上げててくれた優しい太陽が、今は体力をや水分を奪う悪魔の様な存在に思える。勝手にそう思って太陽には悪いが、この暑さは凶悪だ。
「あー、海が青い、空も青い、カルミナの顔色も青い……」
「いや、タロウも十分青いわよ……?たしかに、こんなに暑いと海にでも入りたくなるわね……」
「いいですねぇ~海。かき氷も食べたいです~」
「じゃあ、近々行くでござるか?」
「行きたい!お姉ちゃん連れてってー!」
「いいでござるよ!穴場も知ってるでござるしな!……でも、まずは今日の修行をやるでござるよー!」
「「「はーい」」」
俺達は炎天下の中、汗水垂らしながらも体を動かしたり刀を降ったり、いつもと同じメニューをしっかりとこなした。
冬も終わり、どんどん日が長くなったこともあり、それと平行する様に修行の時間も少しだけ延びていた。夕方になっても収まらない暑さに嫌気がさしながらも今日の修行をやり終えたのだった。
「もう……無理だぁぁぁぁぁぁ!」
「タロウ君、最近はいつもそう言うでござるな!」
「あぁ……すいません。本気じゃないんですが、何となく言いたくなっちゃうんですよねー」
「タロウ、早く下山しておきましょう?じゃないと、ちゃんと休めないわよ?」
「それもそうだな。最後の力を振り絞って、頑張って下りようか……」
俺達は山を下りて九重家までやって戻ってきた。明日は週に1度の休みの日だからこのまま九重家に泊まる予定になっている。あと、海に行く計画も立てておきたいしな。
「まずは疲れた筋肉を休ませる為に風呂にでも入るでござるよ!その後はしっかりご飯を食べるでござる!疲労回復の速さが違ってくるでござるからな」
「分かりました。じゃあ風呂から上がってご飯を食べた後にでも海に行く予定について話そうか」
「分かったわ!まずはお風呂ね、汗を流さないと」
「お姉ちゃん、カルミナさん、行きましょう」
風呂は男湯と女湯で別々になっている為、そこまで広くは無いがご飯前のこの時間なら入ってる人も少ないし順番待ちとかしないで入れるだろう。早速入りますか……。
風呂の中で筋肉を揉みほぐし、十分に温まってから風呂を出た。カルミナ達はまだ入っているみたいだし、先にご飯でも食べに行くかな。
先にご飯を食べていたら、しばらくしてカルミナ達が上がってきた。先に食べていた事に、『待っててよ!』と言われたが、お腹も空いてたしそれは仕方ないだろう。
「ごちそうさまでした。カルミナ、先に部屋に戻ってるから」
「もぐもぐ……分かったわ……もぐもぐ……」
「ゆっくりでいいからな?」
「もぐ!」
カルミナの返事を聞いてから俺は先に部屋へと戻り、静かに本を読んでいた。吉晴さんに借りてる本もこれで5冊目くらいだ。最近はどんどん読むペースも速くなって、今読んでいる本ももうすぐ読み終わりそうだ。
「お待たせタロウ!」
「ううん、本読んでたから大丈夫だよ」
「あと、桃さんは眠たくなったみたいだから先に寝るって!ベリー先生もそれについていったわ」
「なるほど。海に行く予定はまた今度立てるって感じ?」
「お風呂で少し話したんだけど、水着は明日にでも買うとして、晴海さん達も誘いたいね……って話になったの!」
「待て、晴海さんが来るって事は……双葉さんも居るって事だろ?俺、行けないんじゃないか?」
おそらく、慎ましい御国柄のジパンヌで売られている水着は布面積は多い物がほとんどだと思う。思うが、そんな事は関係無く双葉さんに刃を向けられる可能性しかない。
「まぁ、そこは……ね?」
「ね……ってなに!?全然分かんないんだげど!?」
「双葉さんに近寄り過ぎなきゃ大丈夫よ!……多分」
「もう、許可が出なかったら俺抜きで楽しんで来てくれ……」
「それじゃ意味無いじゃないの!私の水着姿でタロウの視線を釘付けにするんだから!」
「ほぉー……それは楽しみだけど、あんまりきわどい水着にするなよ?他のメンバーが引くぞ?」
「大丈夫よ、ちゃんと上品さも忘れないんだから!」
「じゃあ、明日は水着を買いに行くって事でいいんだな?」
「えぇ、一応桐華にも休みが取れるかの確認をしておきたいわ」
「分かった。まずはギルドから行くか」
「うん!」
海はもう少し本格的に暑くなってからでもいいから、せめて準備だけはしておこうと思い、俺とカルミナは明日動き出そうとしていた。
「俺達も、もう寝るか」
「そうね……眠気は確かにあるしね」
そう言って俺の布団に寝転がったカルミナを転がして自分のスペースを確保した。
「電気消すぞ~」
「はーい。おやすみなさいタロウ」
「おやすみカルミナ」
◇◇◇
翌朝、朝御飯を食べ終えた俺とカルミナはギルドへと来ていた。桃さんには安倍家にいる晴海さん達に海に行く予定を立てている事を伝えに言って貰っている。
「最近はギルドに入っても視線を感じなくなったな……」
「そうね。慣れたのよ、皆も。それより……何でいつも桐華の列って長いのかしら?」
そりゃ、ペチャッとした胸に塩対応がお好みの、大人のお友達が多いからだろう。この国では歳の差婚も珍しい訳では無いからな……例え、12歳だろうとも。
「とりあえず並ぶか」
「そうね!長いけど順番が回ってくるのは案外早いのよね」
俺とカルミナが並んでから10分くらい経った所で順番が回って来た。
「おはよう」
「おはよう、桐華」
「おはようございます!カルミナ、タロウくん。今日はクエストを?」
「ううん、今、皆で海に行こうって話してるのよ。だから桐華も誘いに来たのよ!ベリー先生が穴場を教えてくれるらしいわ!」
「行く!絶対に行くわ!」
友達の居なかった桐華さんは、おそらく友達と海に行くというイベントをした事が無いのだろうな。だから、この食い付き様なのだろう。
「まだ、ちゃんとした予定は決まってないのよね。それが決まったらまた伝えに来るわ!」
「お願いしますね!」
「桐華さん、たくさん水着が売ってる場所って知ってる?」
「そうですね……。たしか、防具屋にもありますが装飾店の方が種類は豊富だと思いますよ!この時期ならどこも売り始めていると思いますね」
「分かった。行ってみるね!」
「じゃあまたね、桐華」
「はい!お待ちしておりますね!」
他の客の数倍もの時間を掛けてしまった事で、後ろの客に睨まれたが……これは仕方ないだろう。
俺達はギルドから出て、街の装飾店に向かって歩きだした。
◇◇
「見てタロウ!これも!これも!可愛いわよ」
「あー、うん。やっぱり……外で待ってて良いかな?」
「良いわけ無いでしょ?ちゃんと選んでよ!」
装飾店に入って水着の場所を聞いくと、男性用と女性用で別の売り場らしく、先に俺の水着を買うことになった。とりあえずシンプルなデザインで良いと思ってすぐに買い物をすませだが、カルミナの水着を買いに来てから時間ばかりが過ぎていった。
「いや、でも……あんまり男の人とか居ないしね?」
「良いじゃないのよ、そんな事は気にしないで。注意されないって事は大丈夫って事よ!」
確かに注意はされてないけど……他の女性客にチラチラと見られていて、居心地はあまり良くない。あと、女性用の水着に囲まれているとなんだか落ち着かない。
「タロウ、これとこれならどっちがいい?」
カルミナが手に持っているのはビキニタイプとワンピースタイプの水着だ。どちらがいいと聞かれると……
「ビキニタイプの方かな?でも、赤は派手すぎないか?」
「そうかしら?じゃあ、白?青?」
「うーん……見比べてみると~やっぱり派手だけど赤が似合ってるのかなぁ~」
「そう?じゃあこれにしちゃおうかしら?」
「サイズは?大丈夫」
「そうね、一応試着させて貰いましょうか……すいませーん」
カルミナが店員さんを呼ぶと、試着室へと案内されて行った。流石に一人ぼっちでここにいる勇気は無く、俺は水着売り場から少し離れた場所で待つことにした。
それほど時間も掛からずに、カルミナが戻ってきた。その手には買い物袋がぶら下がっていたとこを見ると、サイズも良くて即購入したのだろう。
「お待たせ!」
「うん、とりあえず……これで水着の準備は大丈夫だな。そう言えばさ、カルミナって泳げたっけ?」
「え?いやいや……泳げるんじゃないの?」
それを今、聞いているんだが……何故にカルミナも疑問系なのだろうか?川で遊んだ事くらいはあるけど……。
「ま、まぁ……いざとなったら魔法を使えば溺れる事も無いだろうし、砂浜で遊ぶことも出来るか」
「そうよ、泳げる泳げないはこの際どうでもいいよ!さ、この後はどうする?お昼でも食べに行く?」
まだ、お昼には少しだけ早い気もするが、並ぶ時間を考えたらそろそろ行くのも悪くないだろう。
「そうだな。最近暑いし、蕎麦にでもする?」
「いいわね!私の箸使いの成長っぷりを見せてあげるわ!」
カルミナの箸使いはともかく、俺達のお昼は蕎麦に決定だ。その後は冷たい氷菓子でも食べながら散歩でもするかな。せっかくの休日だしね。
◇◇◇
「晴海ちゃーん、晴海ちゃーん!」
「桃ちゃんなのでして~、どうかしたのでして~?」
「あのね、最近暑いでしょ?だから、海に行く計画を立ててるの。まだ、全然決まってはないんだけど……晴海ちゃん達もどうかな?」
「双葉に聞いてみるのでして~」
晴海ちゃんがどこかに行って、双葉さんを連れて戻って来た。双葉さんだけという事は今日は麻津里様は居ないのかな?
「桃ちゃんお待たせなのでして~」
「海は……悪くない。それで、もちろん男は居ないんだろうな?」
「あっ……その、タロウ……さんは……ね?」
「ちっ、あの男か」
「だ、ダメですか?双葉さん」
やっぱり駄目なのでしょうか?双葉さんの男嫌いは完全に治る事は無いのかもしれません……けど、少しぐらいはマシになって欲しいと私も思いますね。
「双葉~」
「……ちっ、分かった。行くが、私は水着なんて着んぞ!お前達も出来るだけ露出の少ない物にする事だ!」
よ、良かった……。これで皆で思い出が作れますね。おそらく、これ以上男性を増やすのは良くないでしょうし、晴太とかは放っておきますかね。
「良かった!では、今度予定を決めましょうね!……そう言えば、お姉ちゃんはどこ?」
一緒に来たはずなのにいつの間にか居なくなってまし……
ドゴォォォォォン!!!
「な、なに!?今の音」
「向こうの方だ、行くぞ!」
「行くのでして~」
「ま、待ってー!晴海ちゃん、双葉さーん」
私達が音の鳴ってる方に走っていくと、そこには――
「はっはっはーでござる!」
『くっ……なんて武人だ。蒼鬼王、魔法メインの貴女は援護を頼む』
『分かりました。緋鬼王、頼みます』
「タロウ君の居ない内に手合わせをしておくでござる!!」
お姉ちゃーーーん!!人様のお庭で何やってんの!?あぁ……地面もこんなにボコボコにしちゃって……。でも、戦いのレベルが高過ぎて誰も近寄れないよぉ~
「タロウさーーん帰って来てーーー!!」
私の叫びは空に消えていくだけで、タロウさんに届くことはなく、お姉ちゃんが満足するまで戦いは続けられた。
「ふぅ……今度はもっと広い所で戦うでござるよ!サポートをしていた蒼鬼王の力は全然発揮されて無かったでござるからな!」
『この私がこんな台詞を言うことになるとはな……貴女は“鬼より鬼らしい”ですよ』
『いつの時代にも貴女の様な者は居るものですね。良いですよ、今度はもっと広い場所でやりましょうか』
その後、返って来たタロウさんとカルミナさんが土を均してくれたから良かったけど、やり過ぎだとお姉ちゃんも式神さんも怒られていた。流石に同情はできないかな?
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