第11話 タロウ、再び王都へ行く
本日2話目です。よろしくお願いします。
10歳になりました。ありがとうございます。
身長も150にはまだ届かないもののそこそこ伸びてきましたね。見た目はまぁ、平均よりはいいのかな?冒険者達にもあの両親の子だから納得の顔だなと褒められてる。父様も母様も40くらいだが見た目はまだ若々しいもんな。
えぇ、ついに、ようやく!王都の学園に入学するために家を出発する日が来ました!
「タロウちゃん、行かないで~」
姉様も3年前に王都の学園へ入学している。入学式後の実力試験で良い成績を残し、トップではないもののAクラス入りをはたしている。
次男のダーツは学園を卒業後にそのまま騎士団の隊員となった。まだまだ下っぱだけど期待はされているみたいだ。だから家にいるのはウィング兄さんだけとなり母様は寂しいのだろう。
「母様、手紙はだしますので」
全然納得の顔はしていないがとりあえずは大丈夫そうだ。
今回も王都まで5日、王都にある屋敷で1日休み、入学という流れになっている。父様と2人旅だ。今回は冒険者を雇わずに馬車の馬も俺が乗り、夜営の準備にモンスター退治まで俺がする事になっている。その実力があることは父様も知っているから任せてくれている。
「それでは行ってきますね母様。」
「カリナ、ウィング、入学式を見届けたら帰ってくる。それまでは頼んだぞ」
「はい、父上、お任せを。タロウがんばるんだぞ。」
「タロウちゃん、ムチャだけはしないようにね~」
母様、俺はムチャだけはしない。いや、出来ない。だから冒険者に鍛えて貰ったのだ。他の人のムチャが俺にとっては楽勝になるように。
「それではいってきます!母様、兄様」
こうして、屋敷を出発した。
旅は順調そのもので、途中で狼型の魔物が出たが氷魔法で足止めし、土魔法でその胴体を貫いた。特に危険はない。
「今日も問題という問題はないな。父様、そろそろ休憩にいたしましょう!」
馬車の中にいる父様に聞こえる様に声をかけ、馬車を停めれる所を探して川の近くまできた。
「父様、お茶を淹れますので少し待っていてください。」
「あぁ、頼むよ。それにしても楽な旅路だ。ありがとうタロウ。」
父様に、負担が無いように気を配ってるからな。父様達が息子に甘いように俺もこの家族は大好きだ。
「父様、王都まであと半分ですが特に問題もなくて平和ですねぇ。」
「たしかにこうも何も無いと逆に不安になるが問題は無い方がいいからな。」
あちゃ~、父様、やらかしましたね……。
離れた所から馬が駆けてくる音が聞こえる。
「そこの方々!申し訳ないが助けてくれ!!馬車が盗賊に襲われているんだ!」
oh…父様、フラグ回収早いよ。
「行くぞ!タロウ。おい!案内しろ!」
父様はそう言って俺と馬に乗って知らせに来た男と現場に急いで向かった。
現場は、そう遠くなくすぐに見つけられた。20人くらいの盗賊だ な。馬車の護衛が奮闘しているが人数が足りていない。
「急げ!タロウ!あれはリーガル家の馬車だ!」
リーガル家とは俺らの家がある方のまとめ役の家…つまり辺境伯だ。そんなとこ襲うなよ…
護衛の人数が少しずつ削られていってる。うげぇ。人の死体はまだ慣れないがそうも言ってられない状況だ。時間はかけられないし、一気に捕縛するか。
「ロックバインド!!」
説明しよう。ロックバインドとは地面から固めた土で蛇のようにニュルニュルっと敵を捕縛する土魔法である。兄さんに教えて貰った技だ。強い。
「なんだこれは!」
「どこからだ!」
「くそっ!ほどけねぇぞ!」
盗賊達が土縄をほどこうと頑張っているが魔力も結構込めたしそう簡単にはほどけないだろう。
父様が急いでリーガル家の馬車に近づいた。
「私はグラウェル家当主リヨンだ!中にいるお方はご無事か!?」
馬車の扉が開き、50くらいの紳士が降りてきた。
「リヨン殿、まずは礼を言う。本当に助かった。私だけならいいが今日は娘も一緒でな、この子に被害があると考えただけでゾッとしたよ。」
「レックス殿でございましたか、ご無事で何よりです。娘といいますとキスカ嬢ですか?もしかして王都の学園に?」
レックス殿とはリーガル家の当主である。武力よりは知力に優れるやり手の貴族だ。辺境伯ってくらいだしな。実際に会うのはこれが初めてだな。
レックスさんと娘のキスカさんも王都の学園に入学する途中だったと言う。ということは同じ年だな仲よくしとかないとな。
「リヨン殿、隣の子がタロウ君かな?大きくなったね。私が会ったのは赤ん坊の頃だから覚えてないかもだけど。」
完全に忘れてる。記憶はあるはずなんだが、初めましてとか言うところだったぞ。実際の感覚では初めましてなんだけど。
「グラウェル家が三男タロウ=グラウェルでございます。このたびは賊からの襲撃にて、亡くなられた護衛の方にはお悔やみ申し上げます。」
「ありがとう、タロウ君。今回は君のおかげで本当に助かった。見事な魔法だったね、将来が楽しみだ」
「恐縮です。」
とりあえず褒められたら恐縮ですと言っておけばいいから楽だな。
「そうだ、娘を紹介しておこう。同じ年で学園に通う予定なんだ。君みたいな子がよくてしくれると親としては安心するよ。」
レックスさんも親バカなのかと、思ったがこれは納得だな。淡い水色の長めの髪に余程怖かったのかおどおどした感じがどうも守ってあげたくなるな。保護欲がかきたてられる。
「は、初めまして…、キスカ=リーガルです…」
お、おう。どうもと言って頭を下げておく。辺境伯の娘だし失礼が無いようにしとかないとな。
「キスカお嬢様、お久しぶりです。年を重ねるごとにお母様に似られて綺麗になっていきますな。」
うちの父様どころか貴族というものは、すぐ褒め言葉が浮かんでくるんだと。俺はまだ貴族というものに心の芯から慣れてない。元々ただのフリーターだもん。
「あ、うぅ…」
まだ、先程の恐怖から抜け出せてないようだ。たどたどしい。
そうだ、アレを見せてみるか。
「キスカさん、これを見てください」
俺はキスカさんの目の前にに掌を下にして持っていくと、裏返すと同時に氷魔法で四葉の花を型どった彫刻を出した。
「わぁ、凄いです!凄いです!」
どうやら本当は元気な子みたいだ。そんな難しいもんじゃないけど何はともあれ少し明るくなってくれて良かったです。はい。
「父様、このままレックス様やキスカさんと王都に向かうのはどうでしょう?」
「そうだな、また賊が出ないとも限らないしな。どうでしょうかレックス殿は?」
「願ってもない話だ。こちらからお願いしたいところだ。この賊どもを王都まで運ぶのにも人手がいるし頼めるかね。」
「えぇ、では参りましょうか。タロウ、キスカ嬢様と話しておくといい。同じ学園の生徒になるんだからな。」
こうして、レックスさんとキスカさんと一緒に王都に向かった。
賊どもは王都に着いたら騎士団に引き渡すみたいだな。ぎゃーぎゃーうるさいから魔法で眠らせておこう。強めにな。
賊は殺しても罪には問われないが俺は必要以上に殺すことをしていない。前にも1度、賊を捕縛あるいは消すために冒険者達と動いた事はあるが心の中にモヤモヤとした感情がしばらく残ってた。今でもその事は簡単には割りきれていない。
必要なら消す事もあるが、何も思わないということはこの先も無いのだろうな。
どうやら、キスカさんはもともと大人しい子みたいだ。10歳らしく元気な部分もあるが基本は物静かで読書やお裁縫が得意らしい。魔法も攻撃魔法より支援魔法の方が得意みたいだしね。
この後、無事に王都にたどり着いた。王都の入口でレックスさん達とはお別れだ。まぁ、明日になったら学園の入学式でまた会うけどしばしの別れだ。
レックスさんに娘を守ってあげて欲しいと言われた。なんかすぐ騙されやすそうだしな。そこは注意して見ていてあげようと思う。
おかしな箇所ありましたら、報告よろしくお願いします。