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続編 -1 on 1・6-

――翌日。


昨日、宗に言われた通り動きやすい格好とタオル持参で待ち合わせ場所に行った。


ちなみに今日の待ち合わせ場所はいつもの駅じゃなくて、


あたしの家と宗の家のほぼ中間地点にある大きな公園の噴水前。


場所は知っているけれど来た事のない公園だ。




「琴美~っ」


噴水前に行くと宗の方が先に来ていた。


何故かバスケットボールを小脇に抱えている。




(?)




「バスケやろ~♪」




「へ?」




「琴美とバスケやりたい」




あ、そうか。


だから今日動きやすい格好で来いだのタオルを持って来いだの言ったんだ?






宗の後についていくと噴水から少し離れた場所にフェンスで囲まれた


バスケットコートがあった。




「ここ、俺がいつも練習で使ってるトコなんだ。道路からは見え難くて


 あんまり利用する人がいないから、ほぼいつも貸し切り状態」




「あはは、そうなんだ」


バスケットコートの隣には同じ様にフェンスで囲まれたテニスコートがあった。


そっちの方も道路から見え難いからか使っている人はいない。










「琴美、行くよー」


軽くストレッチで体を解した後、宗はバスケットボールを手にして言った。




「な、何すればいいの?」




「1 on 1」




「それって一対一の勝負って事?」




「そ♪」


宗は短く返事してニッと笑った。




「え……無理でしょ」


だって、あたしはただでさえまともにバスケ出来ないんだから


宗の相手が務まるわけがない。




「いいから、いいから♪」


宗はタンタンとボールを数回ドリブルさせてあたしにパスを投げた。




「そこからシュートして」




「?」


いきなり普通の1 on 1とは違う気がするけれど……しかし、それよりも問題はそんな事じゃない。




「と、届かないと思う」


だってあたしが今立っている位置はフリースローライン。


ここからシュートしてゴールに届いた例がないのだ。




「……え」


すると宗はさすがにちょっと引いたみたいだった。




そしてあたしがとりあえずシュートをしてみせると案の定、ポールはゴールまで届く事無く


バウンドを数回繰り返してフェンスに当たった。




(やっぱりこんなんじゃ、いくら宗だって一緒にバスケやりたいなんて気を失くしちゃうよね……?)




きっと呆れてるんだろうな……と思っていると、


「もう少し頑張れば届きそうじゃん。琴美の場合は、まずボールをもう少し胸のあたりに持って来て、


 そこからシュートを打ってみて」


宗が優しい口調で言った。




(……え)




意外だった。




「う、うん」


あたしは宗に言われた通り、顔のあたりから投げていたボールの位置を胸のあたりに下げてシュートした。


すると、今までゴールに届いた事がなかったボールがバスケットのリングに当たった。




(届いたっ)




「ほら、ちゃんと届いただろ?」




「うんっ」




「じゃあ、今度は腕だけで投げるんじゃなくて少し腰を落として膝も使う感じで」




「うん」


そしてまた言われた通り、少し腰を落として膝を意識してシュートしてみた。


すると今度はバッグボードに当たってあたしの目の前に跳ね返ってきた。




「今、結構力入れてた?」




「うん」




「じゃあ、今度はあんまり力を入れずに打ってみて」




「……? うん」


今まではずっとただバスケットを目掛けて力任せに投げていた。


それでもボールが届かず、一体みんなはどれだけ力があるんだろう?


なんて思っていたくらいだ。


しかし、今度は力を入れずにと言われた。




あたしはさっきよりも力を半分くらいにしてシュートした。




ポスンッ――、




「あ、入った」


あたしが放ったボールはゆっくりとバスケットに向かって飛んでいき、


するんとリングの中を通った。




「やった♪ ナイスシュート!」


宗はそう言うとあたしにハイタッチを求めてきた。




両手で宗とハイタッチ。




何度も、何度も。




初めてまともに出来たシュートが嬉しくて、宗もきっとシュートを決めた後は


こんな風に気持ちいいのかなって思った。




宗がバスケットを好きな理由が少しだけわかった気がした――。

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