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声の主を確認するべく振り向くと


二ノ宮くんが立っていた。




なんとなくそんな気がしたのよね・・・。




「ちょっと来て。」


二ノ宮くんはそう言うなり、いきなりあたしの手首を掴んで歩き始めた。




・・・え?




・・・何?




何なの?




何がなんだかわからず慌てるあたしに構わずに


二ノ宮くんはぐいぐいとあたしの手を引っ張って


どんどん歩いていく。




「・・・二ノ宮くん?」


「いいから、いいから。」




どこへ連れて行く気?




ワケがわからず、不安なまま二ノ宮くんは茂みの中へと入って行き、


更に少し進んだところで足を止めた。


「着いた!ここ!」




・・・そこは、眼下に広がる森林を見渡せる絶景ポイント。


遠くの方に太陽の光に反射してキラキラ光る海も見えていた。




うぁー・・・、すごい・・・きれい・・・。




「ここ、スケッチするのにいいかなと思って。」


二ノ宮くんは言葉を失ってその景色に吸い込まれてそうになっているあたしに微笑んだ。




「うん・・・すごい・・・綺麗。」


あたしはただただ景色に見惚れていた。




さっそくデジカメに収める。




「ありがとう、二ノ宮くん。」


あたしがそう言うと、二ノ宮くんはニコッと笑った。




「さっき逃げてる途中で偶然ここ見つけたんだ。」


「また逃げてるんだ?」


「うん。」


「今度はなんて言って逃げてきたの?」


あたしはクスクス笑いながら腰を下ろした。




「強行突破。」


二ノ宮くんもあたしの隣に腰を下ろすとニヤリと笑った。




よーするに撒いたのか。




二人で並んで景色を眺めているとふわりと風が吹いた。




「・・・気持ちいい・・・。」


大自然の中を拭きぬける風をあたしは目を閉じて感じていた。




「・・・うん。」


二ノ宮くんもそう言って大きく息を吸い込んだ。




「そういえばさ・・・」




「うん?」




「なんで武田のヤツ、平野さんのコト“琴美ちゃん”て呼んでんの?」




あ・・・そういえば。


登山始めた時くらいからそう呼ばれてる気がする。




・・・なんでだろ?




「俺も名前で呼んでいい?」




・・・?


別にいいけど。




「うん・・・別に構わないけど?」




「んじゃ、今度から名前で呼ぶ。」


二ノ宮くんはニッと笑った。




「あ、俺のコトも名前で呼んでね?」




はぁ?




・・・まぁ、それも別にいいけど・・・。




「・・・“ソウ”君・・・だっけ?」




「シュウ。」




・・・え?


“ソウ”じゃないの?




「だってみんな“ソウ”君て呼んでない?」


「うん、でもホントは“シュウ”が正解。」


「えー、なんでみんなに違うって言わないの?」


「訂正するのが面倒くさいから。」


「はぁ・・・。」




「琴美。」




・・・およっ!?


いきなり呼び捨て?




「・・・宗くん。」




・・・あたしはいきなり呼び捨てなんてできない。




「“君”付けはダメ。」




「え・・・じゃ・・・」


「“さん”付けもダメ。」




う・・・先に言われた。




「・・・なら・・・」


「“ちゃん”もイヤ。」




・・・むむむ。




「・・・宗。」


あたしは仕方なく呼び捨てにした。


すると宗は満足そうににんまりと笑った。




こーゆー可愛い笑顔をするトコが女子に人気があるんだろうな。






それから、あたしと宗はまたしばらくボーッと景色を一緒に眺めた。




・・・ピピピッ、ピピピッ、ピピピッ・・・




あたしの時計のアラームが鳴った・・・そろそろ下山する時間だ。




「戻ろうぜ。」


そう言って宗が立ち上がった。




「うん。」




結局、この場所には誰も来なかった。


茂みの奥にあるから誰も気がつかなかったのかな?




あたしと宗の二人だけの秘密の場所・・・かな。






夕方。


今日の夕食はバーベキュー。


野菜を洗って切るだけだから簡単。


後は飯盒でごはんを炊くだけ。




登山で疲れていたから助かった・・・。




武田くん達も登山で体力を消耗して空腹なのか“飢えた野獣”4人・・・


いや、4匹はすでにお箸とお皿を片手に戦闘態勢にはいっている。




“野獣4匹 vs 食べながらしかも焼く係2人”




この闘いに絶対勝ち目は・・・ない・・・。




「いただきまーす!」のゴングの後、4匹の野獣は一斉に食べ始めた。


あたしとメグちゃんも食べながら焼いていく。


だけど、ひたすら食べている野獣共には勝てるワケがなく、


半ばやけくそ気味にお肉や野菜をどんどん焼いていった。




あっという間に試合終了・・・。






そして夕食の後はキャンプファイア。


焚き火を背にあたし達のグループはまたまた撮影大会。


あたしは女神様・安藤さんのおかげですごく楽しい校外学習になった。

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