表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/102

First Love-本編宗視点・11-

7月―――。


週末の金曜日。


俺が一番楽しみにしている選択授業の日。


だって、他の女子共に邪魔される事なく琴美と話す事が出来るから。




そして、今日の授業はシルバークレイでアクセサリー作り。




俺は何を作るかもう決めていた。




小さなハートのペンダントトップ。




もちろん、俺のじゃなくて琴美へのプレゼント。


体育祭の二人三脚の時に結構無理矢理指名したからって言うのもあるけど、


いつもなかなか話せないから身に付けられる物を渡したかった。




別に付き合ってるワケじゃないし、まだ告ってもないワケだけど・・・。






―――6時限目。


昨夜、ネットでいろいろ検索しながらどんなデザインがいいか


どんなのが琴美に似合いそうか頭の中でイメージしたものを形にしてみた。


最初は上手くいくか不安だったけどなんとか可愛く出来た。


・・・と、思う。






琴美の方をちらっと見ると俺よりもすでに一段階先の工程に取り掛かっていた。




さすが、琴美・・・早ぇ・・・。




てか、何作ってんのかな?


後で覗きに行ってみよっと。






―――7時限目。


一段落ついたところで琴美の所へ行ってみた。


すると、琴美の横で藤村さんが掌に何かを乗せて遊んでいた。




「お、メタルスライム。」


藤村さんの掌の上にはドラクエシリーズに出てくる


メタルスライムが乗っていた。




「琴美が作ったの?」


藤村さんはメタルスライムを珍しそうに見ていたから


きっと琴美が作ったんだろう。




「うん。」


案の定、琴美は笑いながらコクンと頷いた。




つーか、琴美・・・これを本気で作ってたワケじゃないよな?




まさか・・・な?




「俺にくれ!」


「へ?」


「メタルスライム。」


俺がそう言うと琴美は


「ん・・・まぁ、いいけど・・・どーせ遊びで作った方だし。」


と言った。




やっぱな、さすがに本気でコレはないよな?




「本気で作った方は?」




琴美の事だからきっともっと手の込んだモノを作ってるはず。




「こっちだよ。」


そう言って琴美が俺に見せてくれたのは綺麗な雪の結晶の


ペンダントトップだった。




俺は一瞬、もしかして高杉にあげるつもりで作ったのかと思った。


けど・・・どう見ても女の子仕様のデザイン。


きっと自分用に作ったんだろう。


その事にホッとしていると


「宗は何作ったの?」


と聞かれた。




「ふふん・・・内緒。」


別に素直に答えてもよかった。


だけど、今はまだ内緒。






―――放課後。


俺はHRが終わると同時にダッシュで教室を飛び出した。


選択授業で作ったペンダントトップを琴美へのプレゼント用に


ラッピングする為。


教室じゃ女子共がうるさいし、琴美に見られるかもしれない。


そうなると全然サプライズ感ゼロだし。




そんなワケで俺は誰もいない屋上に行った。




後は部活が終わって琴美に渡すだけ。






だけど―――。




部活が終わってこの間のように正門で待っていても


なかなか琴美は現れなかった。




もしかして、今日はもう帰ったのかな?




そう思って昇降口に行って琴美の下駄箱を覗いて見た。


すると、まだ部活をしているらしく通学用の靴があった。




部活が長引いてるだけか。




俺はそのまま、また正門のところまで歩いて行き、


琴美を待つことにした。


門柱に寄りかかって待っているとそれからすぐに


琴美が正門に向かって歩いてくるのが見えた。




「あ、きたきた。」


俺がそう言うと琴美はまた周りをキョロキョロと見回した。




「毎回同じコトするんだな?琴美を待ってたんだよ。」


そんな琴美の反応が可笑しくて俺はつい吹き出した。




「あ、あたし・・・?」


「うん。」


俺がそう返事をすると琴美は自分を待っていたとは


まったく思っていなかったらしく、少し驚いた顔で俺を見上げた。




「遅いから今日はもう帰ったのかと思ってたけど、


 さっき下駄箱見に行ったらまだ靴があったから。


 ・・・琴美にこれ渡そうと思って。」


ラッピングしたペンダントトップを琴美に差し出すと


不思議そうな顔で遠慮がちに受け取った。




「開けてみてもいい?」


「うん。」


俺が返事をすると琴美はゆっくりとリボンを解いた。


そして中から出てきたペンダントトップに目をパチパチとさせた。




「今日の授業で作ったヤツ。」




「え・・・っ!?」




「琴美にプレゼントしようと思って。」


「な、なんで・・・?」


「体育祭の時、強引に二人三脚指名したから。」


「そ、それでなの・・・?」


「うん、それにこれからもずっと指名するから。」


俺がそう言うと琴美はポカーンと口を開けた。






「・・・てか、コレあたしがもらってもいいの?」


しばしの沈黙の後、琴美はハッとしながら言った。




「琴美の為に作ったんだし。」


「えっ!?うそっ!?」


「ホント。・・・それずっとつけててね。」


ちょっとダメ元で言って見た。




すると・・・




「早く言ってくれればあたしも宗の為に何か作ったのに。」


琴美が意外な事を言った。




「ホント?」


「うん、そしたらあんなメタルスライムじゃなくて


 もっと別のものプレゼント出来たんだけどな。」


「でも、あのスライムすっげぇカワイイし、気に入ってるけど?」


「そぉ?」


「うん。」




だって・・・琴美が作ったモノなんだし。




「そういえば、今日の部活何してたの?」


今日は随分と遅くまでやっていたみたいだから


なんとなく気になった。




「んとね、長谷川先生が余ったシルバークレイくれたから


 それでまたアクセ作ってたの。」




「へぇー。」




「メタルスライム量産しようと思ったけど、さすがにそれはやめた。」




「あはは、・・・で?結局、何作ったの?」


俺がそう聞くと琴美はカバンの中から何かを取り出した。






それは、少し小さめの翼のペンダントトップだった。


「・・・すげぇー。」


中抜きになっていてシンプルなデザインのものだ。




「宗が作ってくれたのよりは簡単だよ?」




「でも、いいじゃん。コレ、かっこいい。」


俺が素直に感想を言うと琴美は少し嬉しそうな顔をした。


そして、「宗、お礼にコレあげる。」と言った。




「えっ!?マジ!?」


俺は思わず琴美に聞き返した。




「マジ。」


琴美はにっこり笑った。




「じゃ、俺もコレずっとつけとく。」




こうして俺と琴美は結果的にお互い作ったものを交換する形になった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ