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―――7月。


週に一度の選択授業の日。


今週はあたしが楽しみにしていたシルバークレイで


アクセサリー作り。




何を作ろうかな・・・?




今日は朝からその事で頭がいっぱいだった。


ちなみにメグちゃんは西山くんにバングルを作ってあげるらしい。




あたしは自分用にしようか、それとも誰かの為に


作ってみようか・・・悩んでいた。




“誰かの為に”・・・と言っても相手がいないか・・・。






結局、あたしは自分用にペンダントトップを作る事にした。


後でストラップやキーホルダーにもできそうなモノ。




デザインは夏だというのに真逆をいく“雪の結晶”にした。






6時限目になり、いよいよ製作開始。


昼休憩の間に集めた資料やデザイン画を元に形を作ったからか、


案外あっさりいい形が出来た。




と、いうワケであたしは遊びでもう一つ簡単なモノを作るコトにした。




そしてドライヤーでひたすら乾燥。




乾いたところで今度は形の修正。


少しずつ削ったりしながら細かく形を整える。




よしよし・・・なかなかいい感じ。




次はガスバーナーで焼成。




ホント、ココの学校は何でもあるな。




後は仕上げ。


磨いて磨いてキラキラに。


遊びで作った方もピカピカにした。




「わぁっ!琴美、すごい。」


隣でバングルを磨いていたメグちゃんが


手を休めて話しかけてきた。




「やっぱ琴美は手先が器用だね。」


「そぉ?」


「うん、すごく綺麗にできてるもん。」


「えへへ、ありがと。」




「ところで・・・コレ何?」


メグちゃんはあたしが遊びで作ったモノを掌に乗せた。




「メタルスライム。」




「メタルスライム?」


メグちゃんはゲームをやらないからわからないか。




「ドラクエシリーズに出てくるモンスターだよ。」


「ゲーム?」


「うん。」


「ふーん、なんかよくわかんないけど、かわいいね。」


メグちゃんは掌の上でメタルスライムをコロコロと転がして笑った。




「お、メタルスライム。」


突然、後ろから声がして振り向くと宗が覗き込んでいた。




宗はゲームやるのかな?




「あはは、すげー、そっくり。」


そう言ってメグちゃんの掌の上のメタルスライムをツンツンつついた。




「琴美が作ったの?」


「うん。」


「俺にくれ!」


「へ?」


「メタルスライム。」


宗はニッと笑った。




相変わらず可愛い顔で笑うなぁ・・・。




「ん・・・まぁ、いいけど・・・どーせ遊びで作った方だし。」




「本気で作った方は?」




「こっちだよ。」


あたしは出来上がったばかりの“雪の結晶”を見せた。




「おぉっ!すげーっ!琴美って手先が器用だなー。」


メグちゃんと同じコト言ってる。




「宗は何作ったの?」


「ふふん・・・内緒。」


宗はそう言ってニヤリと笑うとメタルスライムと共に


そそくさと去って行った。




・・・?


彼女にでもあげるつもりなのかな?


それで照れくさくて言わなかったとか。




プププッ・・・案外可愛いトコあるじゃない。






―――放課後。


HRが終わるなりメグちゃんは丁寧にラッピングしたバングルを持って


西山くんの所へ行った。


部活が終わった後、いつも一緒に帰っているのに、


よっぽど早く渡したかったんだね。




さて・・・あたしも部活へ行こうかな。




あたしは帰り支度をしながらふとメグちゃんの机の上に


何かがあるのを視界の端で捕らえた。




・・・あれ?


メグちゃん、お弁当箱忘れてる。




メグちゃんの机の上にいつもお弁当箱を入れている小さなバッグがあった。


西山くんにバングル渡すのに頭がいっぱいで忘れていったのかな?






あたしはメグちゃんのお弁当バッグを持って


女子バレー部がいつも使っている第一体育館の中に入った。




あ・・・宗がいる。




そういえば男子バスケ部も第一体育館でやってるんだった。




宗はあたしに気が付いていないみたいで、シュート練習をしていた。


いつもの宗と違ってすごく真剣な顔でやっている。




あたしはその真剣な横顔に少しドキッとした。




・・・て、何ときめいちゃってんだろ。


メグちゃんよ、メグちゃん。




男子バスケ部の横を通って、奥でやっている女子バレー部のコートに近づいた。


メグちゃんはレシーブ練習の真っ最中だった。




邪魔しちゃ悪いからしばしこのまま待ってよう・・・。




と、思っていたらメグちゃんと目が合った。


あたしがお弁当バッグを少し持ち上げてブラブラと振って


忘れて行ったよサインを送ると、メグちゃんは両手を合わせて


ありがとうサインを返してきた。






メグちゃんにお弁当バッグを渡して部活に行くと


顧問の長谷川先生が学園祭の話をしにきた。


ちなみに選択授業の美術の先生でもある。




美術部は毎年、学園祭でいろいろ作品を展示しているらしい。


最低一人一点。


作品は絵でも粘土細工でも彫刻でも何でもよし。


学園祭は11月。


まだまだ先だけど製作に夏休みを使う人もいるから


早めに告知・・・てコトかな。






そして今日の部活はさっきまであたしのクラスでやっていた


シルバークレイでアクセサリーを作った。


長谷川先生が余ったシルバークレイをくれたから。




何を作ろうかまたまた迷ったけれど・・・無難にペンダントトップにした。


ペンダントトップといっても、コレもまた後でストラップなんかにできるように


少し小さめに作った。




翼のペンダントトップ。


中抜きのデザインにして軽い感じに天使の翼をイメージ。


これも“雪の結晶”と同じ様にキラキラピカピカに仕上げた。


我ながら満足な出来。




窓の外に目をやるとすっかり暗くなっていた。


今日もまた結構な時間になってしまったかも。




美術室の時計を見ると、むしろ今までで一番遅い時間だった。




さすがにもう帰ろ。


疲れたし・・・。






美術室を出て、薄暗い廊下を足早に歩いて


昇降口に行くと宗がいた・・・。

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