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体育祭から数日後。


放課後、部活が終わって今日もあたしは宗と一緒に帰っていた。


別に待ち合わせをしていたワケじゃないけれど。


たまたま一緒になった。




いや・・・またまた・・・かな?




ちなみに宗もあたしと同じ駅で降りる。




だから帰りが一緒になると自然と並んでそのまま駅に向かう。


そして同じ駅で降りてそれぞれ違う方向へ。






「琴美って、誕生日いつ?」


駅のホームで電車を待っている時、


宗が誕生日を聞いてきた。




「3月14日。」




あたしの一番嫌いな日。




「お。ホワイト・デーの日かー。」




そうとも言うね。




「いいな、俺なんか普通になんにもない日。」




あたしはむしろそっちの方がいいかも。




「ホワイト・デーだからって、なんにもいい事ないよ。」




「なんで?“愛の告白”と“おめでとう”がいっぺんに聞けるじゃん。」




モテる男の辞書には“失恋”の二文字がないからそんなコト言えるんだよ。




「“愛の告白”どころか“失恋記念日”になる可能性もあるでしょ?」




あたしがまさにそうだもん。




「琴美は失恋した事なんてないだろ?」


宗はくすりと笑ってあたしの顔をちらりと見た。




だから・・・それが大有りなんだよね・・・つい3ヶ月前の話だけど・・。




「・・・ある。」


「またまた。」


「ホント。」


「だから髪切ったのか?」




・・・う。




やっぱ髪切ったらみんなに失恋したと思われちゃうのかな?


高杉くんにもそう思われてるのかな・・・?




まぁ、高杉くんに今さらどう思われようが別にいいけど。




・・・て。




・・・ん?




あれ・・・?




あたし・・・




高校入る前までは髪が長かったとか


宗に話したことあるっけ?




「宗・・・なんで、あたしが髪長かったの知ってるの?」


あたしがそう聞くと宗はちょっと驚いた顔をした。




「やっぱ、憶えてなかったんだ?」


宗は苦笑しながらあたしの顔を覗き込んだ。




あ・・・やっぱ、あたしが憶えていないだけで


話したことあったのかな?




「あの時・・・」


宗が何か言いかけた時、ちょうどホームに電車が入ってきた。


その音で宗の声がかき消された。




口の動きでなんて言ってるのか読み取ろうとしたけど・・・




・・・無理だった。




なんて言ったの?




電車のドアが開いて、何人かの乗客が降りてきた。




「宗、今なん・・・」


「姉ちゃん。」


あたしが宗になんて言ったか聞こうとしていたら


毎日聞いている声に呼ばれた。




「誠。」


弟の誠だった。




「姉ちゃん、友達?」


誠は一緒に電車に乗ってきた宗に視線を向けた。




「うん、同じクラスの二ノ宮宗くん。」


「ふーん。」


「宗、弟の誠。」


あたしが誠を紹介すると宗は爽やかな笑顔で、


「よろしく。」と言った。




「今日の試合どうだった?」


誠は今日、練習試合で他の中学校に遠征していた。


遠征・・・と言っても隣の隣町だけど。




「・・・負けた。」




「そっか・・・。」




「俺のシュートが全然決まらなくってさ。


 練習だとめちゃめちゃ調子良かったのに・・・。」




「そんな日もあるよ。」


誠はバスケ部に入っている。


今年、2年生になってレギュラーになれたと喜んでいた。




「俺って本番に弱いのかな・・・?」




「いつも練習通りに上手くいってれば天才だよ。」




「まぁ・・・そーだけど。」




あ・・・




そーいえば、ここにバスケ部がもう一人いるじゃない。




「宗もそういう時、ある?」




「ん?練習通りにいかない事?」




「うん。」




「そりゃ、あるよ。俺もいつもそうだし。」




「ほら、誠。バスケの先輩もそう言ってるよ?」




「シュウさんもバスケやってるの?」




「うん。」


宗は柔らかい笑みを誠に向けた。






それから二人はバスケの話で盛り上がっていた。


部活ではどんな練習をしているとか、家ではどんな事しているかとか。




宗は1年生だけど既にレギュラーらしく、


家ではテレビで放送されたバスケの試合を


プロ・アマ問わずDVDに全部録っていて


繰り返し見ながら研究しているとか。




・・・宗ってバスケに対しては意外と真面目なんだね。






「姉ちゃん、シュウさんていい人だね。」


宗と別れてから、家に向かってあたしの自転車を二人乗りで帰ってる途中、


誠が満面の笑みで言った。


宗からいろいろ教えてもらって元気になったみたいだ。




「悪いヤツではないね。」




時々、ムカつくほど悪知恵が働くけど。




「姉ちゃんの彼氏?」




ぷはっ。




「そんなワケないじゃん。」




「でも、シュウさんずっと姉ちゃんのコト守るように立ってたよ?」




そういえば、電車の中は結構混んでいたのに全然窮屈じゃなかったし、


押しつぶされそうになる事もなかったな・・・。


宗がガードしてくれてたのか。




あたしは今さらながら気がついた。




「姉ちゃん今頃気づいたのかよー。」


誠が呆れたように言った。


そしてボソリと呟いた。


「姉ちゃんて・・・結構鈍かったんだな・・・。」




宗は誰にでも優しいんですっ。

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