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-13-

今、あたしと宗はぴったりと体をくっつけている。


それはなぜか・・・?


二人三脚のスタート位置にいるから。




宗の左足首とあたしの右足首は鉢巻でぐるぐる巻きにされ、


宗はあたしの肩を抱き、あたしは宗の腰に手をまわしていた。




さっきまで不機嫌モードだった宗はニコニコしているし・・・。




てゆーか、女子の視線が・・・。




ゴールしたらすぐに解いてやるっ!






先にあたしと宗がスタートし、堀口くんと相方の南さんは後のグループ。


「琴美ちゃん、二ノ宮がんばって!」


堀口くんは拳を上に突き上げてあたし達に声援を送ってくれた。




「おぅっ!」


宗は軽く手を挙げながらニコっと笑い、


あたしも堀口くん達に手を振った。




スタートピストルが鳴って、あたしと宗は


「せーの。」の掛け声で一緒に走り出した。


練習の甲斐があってなかなかいい調子。


しかも他のペアは呼吸が全然合ってないみたいで


スピードが出ていないし、こけたりしている。


これならホントに1位になれるかも。




だけど油断は禁物。




てか、宗に向けられる声援のすごい事。


学校内の女子全員がキャーキャー言ってる感じだ。




さすが、モテる男は違うね。




あたしはちらりと宗の顔を見た。




お・・・結構真剣な顔して走ってる。


さっきまでデレデレしてたのに。




そんな事を考えていたらいつの間にかゴールテープを切っていた。




1着だー。




「だから言ったろ?愛の力。」


宗はニカッと白い歯を見せながら笑った。


まったく息が乱れてない。




あたしは結構本気で走ったからしゃべれないんですけど?




ゼーゼーと肩で息をしているあたしを見て、宗は「大丈夫?」と笑った。




笑うなー。




あ、そうだ。


足首・・・解こう。




あたしはまだ繋がったままの足首の鉢巻を解こうと


結び目に手をかけた。




・・・あれ?




解けない。




この結び目固っ。




そういえば、宗がやったんだった・・・。




どんだけ固く結んでんの?




「解けない・・・。」


あたしは宗の顔を見上げた。


宗はなんだかにやにやしている。




絶対ワザとだ・・・。




「解いて。」


「いいじゃん、まだこのままで。」


「解いて。」


「俺、疲れたから動きたくねー。」




・・・このチャラ男めー。




「解け。」


「ヤダ。」


「いいから解け。」


「もう少し休んでから。」


「足痛い。」


「俺は平気。」


「・・・。」


宗はまったく解こうとしない。




仕方がない・・・




こうなったら・・・。




「・・・痛い・・・。」




「琴美っ!?」




「・・・お願い・・・解いて・・・?」




「ごめんっ、そんなに痛かったとは思わなかったから・・・。」




宗はまんまと“泣き真似作戦”に引っかかった。


慌てて結び目を解いている。




「琴美、足大丈夫か?」


宗はあたしの顔を心配そうに覗き込んだ。




うほー。


あたしって結構女優?




やっと足が自由になった。




「宗、ありがとっ。」


あたしは満面の笑みを宗に向けた。




「な・・・っ!?」


宗は絶句した。




ばーか。




「・・・おまえ・・・」


「だって、こうでもしないと解いてくれなさそうだったんだもん。」


「騙された・・・。」


「まぁ、お互い様ってコトで。」


「ひでぇー・・・。」


「あ、次堀口くんと南さんが走るよ。」


「そんなのどうでもいい。」


「なんで?さっきあたし達が走る時も堀口くん、応援してくれたのに。」


「・・・。」


宗は黙り込んでそっぽを向いてしまった。




そんなに拗ねなくても・・・。




「宗・・・?」




「・・・。」




「宗ってば。」




「・・・。」




本気で怒っちゃったかな?




「ごめん・・・。」


とりあえず謝ってみる。




「・・・。」




「宗。」


あたしは宗の顔を覗き込んだ。




すると宗は・・・




・・・。




笑っていた。




なんだぁー?




「宗・・・。」


「琴美おもしれぇー。」


宗はケラケラと声を上げて笑い始めた。




「・・・。」




「本気で怒ったかと思った?」




「・・・うん。」




「あんな事されたくらいじゃ怒んないよ。」


その後も宗はしばらくお腹をかかえて笑っていた・・・。




このヤロウ・・・。




いつか絶対シバくっ。

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